鱸のポワレ短編集   作:鱸のポワレ

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僕の中の私

あるサッカー選手は言った。自分の中のもう一人の自分に聞いたと。僕にも、もう一人の自分が僕の中にいた。しかもそれは、リトルなサイズではなくかなりの大きさだ。まるで、本当の自分が飲み込まれてしまいそうなぐらい大きな、もう一人の自分が。それに気づいたのは、小学校5年生の時だった。

その日は、お母さんと買い物に出かけていた。僕は、新しい服が欲しかったんだ。お母さんに自分で選んでいいと言われ、心が踊っていたのをよく覚えている。初めて自分で選んだ服はスカートだった。お母さんは困惑の表情を見せた。

 

「あんた、男の子でしょ?スカートは普通女の子が履くものよ」

「でも僕これがいい」

 

僕がそう言った後、お母さんは落胆し溜息をついた。この時気づいたんだ、僕は少し周りとズレていると。中学校では、自分の履いていた学ランがすごく気に入らなかった。こんなものすぐに脱ぎ捨ててセーラー服に着替える、と叫びたかった。その後も、喋り方や気になっている人の話しなどで違和感は増していった。

高校生になって僕は途方に暮れていた。そんな僕を救ってくれたのは、クラスメイトの高橋だった。高橋は親友だった。ノリが良くていつもふざけていた。ある日、僕と高橋は、僕が転んだ拍子にキスをしてしまった。高橋はふざけ気味に「気持ちわりー」と言ったが僕は、男の人とキスをしたことに対し恥ずかしくてたまらなかった。違和感に気づいたのか高橋は、僕に声をかけた。

 

「どうした?顔真っ赤だぞ」

「いや、なんでもない」

「そうか?もしかして、照れてたりして〜」

「うん、そうかも」

 

口を滑らした。男同士でキスをして照れてるだなんて変な奴だと思われたと思った。しかし、高橋は違った。

 

「お前、もしかしてそっち系?」

「え、ああ」

「そっか、これまで辛かったことはあったか」

「うん」

「そっか。これからは相談しろよ。友達だろ?」

「ありがとう」

 

高橋は、受け入れてくれた。もう一人の僕を。僕は、いや、私は嬉しかった。こんなに嬉しかったことはなかった。それから僕と私の生活は、変わって言った。スカートを履いた。気になっている人の話しで男子を挙げた。

私は、つまらない人生を送っていた。男の子という自分の性別に囚われて。でも、変われた。高橋のおかげで、つまらない男の子から楽しい女の子になれたのだ。これからだってどうなるかわからない。でも、高橋の優しさを救いにして生きて生きたいと思う。

僕の中のリトルではないハーフな私が言った。

「私は、楽しい女の子として自由に生きたい」と。




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