〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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これも神の悪戯か。はたまた悪魔のお手伝いなのか。

何にせよありがとうございます!
めちゃくちゃ励みになっているので、これからも篠崎 朧とこの作品をよろしくお願いします。

感想&評価、お待ちしております( ´△`)







第十一話 〖最高の演奏だったよ〗

「さ、俺も市ヶ谷に認めて貰ったし…本格的に練習するか!」

 

コクリとPoppin'Partyの全員が頷く。

 

 

一時はどうなると思ったが、全員が同じ気持ちになってくれて良かった…。

 

俺のせいでバンド辞めるとか決められたら、死ぬしかなかった。マジで…。

 

 

過ぎたことは良しとして、ここからはボイストレーナー、及びバンドのコーチとしてしっかりと教えていこう。

 

 

「じゃあ、一人づつ課題を言っていくぞ。まず、戸山。楽しく弾くのはバッチリだが、その気持ちにまだ技量が伴ってない。歌もあるから大変だと思うが、次はしっかり自分の音を聞いてみろ。」

 

「分かりました!」

 

「次は牛込。とても安定した演奏だ。けど、少し音が引っ込み思案だぞ。もっと自分を前に出しても大丈夫だ。それでやっと音がみんなに届くから、騙されたと思ってやってみろ。」

 

「はいっ…!」

 

 

「山吹は、一番みんなの音をよく聞けている。リズムの取り方も申し分ない。が、その分音が単調になってるぞ。真面目過ぎってところかな?次は少し遊んでみるといい。」

 

「わ、分かりました。」

 

「おたえ。いい腕をしている。流石6年やってるだけあるな。微妙な音のズレは自分でも気づいているだろうから、そこだけ気を付ければ大丈夫だ。」

 

「はい!って、なんで私だけ名前呼びなんですか?」

 

「その方が呼びやすいからだ。次、市ヶ谷。」

「は、はいっ。」

 

 

「…自分が思うように、楽しくやれ!以上!」

 

「え…そ、それだけですか?」

 

「それが一番難しいんだぞ?」

 

 

ニコリと市ヶ谷に笑みを向けた後、五人の方へと身体を向ける。

 

 

「今言ったことは市ヶ谷以外、正直難しくない事だ。けれど、その基本がどれだけ重要かってことは、次の演奏で分かる。もう一度言うが、俺の言ったことを騙されたと思って実行してみろ。」

 

 

掛け声は俺がやってやろう。と五人に告げると、朧は手拍子の準備をする。

 

 

 

 

…楽しく…──自分の音を聞いて…──もっと自分を前に…──同じ所はミスせずに…──単調にならずに…──

 

 

それぞれの思惑が飛び交う中、3回目の演奏が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

…ここだな。

 

 

「1.2. 1.2.3.4!」

 

 

数字に合わせ手拍子を鳴らし合図を送る。

 

 

それと同時に五人も息を合わせ楽器を構え、最後のタイミングで演奏が始まる。

 

 

 

「(…!す、凄い…!最初より音がちゃんと纏まって聞こえる…!)」

 

 

出だしの音から全く違うものになっている事に五人は気付く。

 

 

香澄の歌は楽しさが少し抑えられた反面、ちゃんと音に集中出来ているので、音程のブレがだいぶ改善されている。

 

りみのベースも、自分の音を聞いて欲しいと言わんばかりに強調してくるが、それがかえっていい効果を生み出しており、リズムに乗せて身体を動かしたくなる程だ。

 

沙綾のドラムは真面目から一転、少しアレンジを加えつつのお洒落かつ大胆な演奏になっている。

 

おたえは先程ミスした所を完璧に改善し、他の音に消えないようにギターを奏でている。

これも流石の一言に尽きる。

 

 

そして、有咲。

見違えた。最初演奏した時の100倍はいい音を奏でている。

これはお世辞ではなく本音だ。

こんな音を出せるなら、最初から出せよと言いたいところだか、俺の責任が10割なのでそこは口が裂けても言わない。

 

 

五人とも、いい顔をしている。

香澄の言っていた、キラキラって言うのはこういう事なんだなと、朧も納得させられた。

 

 

Poppin'Partyの一人一人が、自分の音と向き合い、そしてメンバーと心を通わせる事によって生まれるその音は、この五人の他には誰にも出せない音だ。

 

 

妬けるぜちくしょう。俺もこんなメンバーに出会って見たかったぜ…。

 

と、心の中で厨二臭いことを思いながらも、朧は終始笑顔で演奏を聴いていた。

 

 

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎると言うが、本当にあっという間だった。

 

気づいた時には演奏が終わっており、朧も、五人のメンバーもキョトンとした顔をしていた。

 

 

「もう…終わったの?」

 

りみが最初に口を開く。他の四人も同じような事を思っていたであろう反応を見せた。

 

 

「…凄い。今までで一番キラキラしてたよ!私達!」

 

香澄が嬉しそうに両腕を上げ、有咲へと抱き着く。

 

「ちょ、香澄……!は、恥ずかしいからやめろって…!」

 

 

と言いつつ、満更でもない顔をしている有咲を見て、他のメンバーはニヤニヤとその光景を見つめていた。

 

「ちょ…お前らニヤニヤするな!てか香澄早く離れろって!!」

 

 

やっと香澄が離れたかと思うと、次は朧が有咲の前に立つ。

 

「な、なんですか…。」

 

 

流石に身構える有咲であったが、朧がとった行動は誰も予想が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ぽふ、と大きな手を有咲の頭に乗せ、そして

 

 

 

 

 

「キラキラしてたぞ。最高の演奏だった。」

 

 

小さく微笑みそう述べると、スッとすぐに手を引く。

 

…ずっと触れられるのは流石に嫌だろうからな。

 

 

 

 

 

ボフンッ、という擬音が有咲の頭の上に見えたかと思うと、パタリとソファーに倒れて有咲は目を回してしまった。

 

「あ、有咲!?」

 

香澄が慌てて有咲に近付き肩を揺らす。

 

「えっ!?ちょ、市ヶ谷!?そんなに嫌だったの!?」

 

わたわたと慌てている朧を他所目に、香澄と有咲を省いた三人はヒソヒソ話をしていた。

 

 

アレはずるいだの、先生って無自覚たらしだの、そりゃそうなるわだの、意味不明な事を言ってないで助けて…!!

 

 

と、朧は涙目になりながら有咲が起きるまで待っていた。

 

 

 

因みに、有咲が起きた瞬間にめちゃくちゃ土下座した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの演奏。聞こえましたか、湊さん。」

 

「えぇ、聞こえたわ。Poppin'Partyのみんなも利用していたのね。けれど…いつもとは全然違う気がしたけれど。」

 

「なんか、すっごい楽しそうでしたね〜!あこ、思わず身体がノッちゃいましたよ!」

 

「私も…なんだか温かい気持ちになりました…。」

 

「練習し始めて1時間ちょっとなのに、最初と違って音変わったね〜…。ね?友希那。」

 

別室で練習していたRoseliaは、たまたま聞こえていた演奏に耳を傾けていた。

 

五人は疑問だった。最初の方はボロボロだった音が、今は完全に修復されていた事。しかも、僅かな時間で。

 

 

「…誰かが指導している、としか思えないわね。」

 

「じゃあ、あこ達も教えて貰いましょうよ!今ならまだ居ると思いますよ!」

 

「ダメよ。他人の手を借りては、Roseliaの音じゃ無くなるもの。それに、仮に教える人がいたとしても今行っても迷惑なだけだわ。私達は、私達の練習をしっかりすればいい。」

 

「う〜…分かりました。」

 

しょんぼりと肩を落とすあこを、側に居た燐子が慰める。

 

「(私達の練習は確かに質が高いとは思ってるけど、最近伸び代が少なくなって来ているのが何となく分かる。友希那…。)」

 

今井 リサは、何となく嫌な雰囲気がしていた。

 

昔もこんな事があった。お互いの意見が食い違って、一時期みんなで演奏出来なかったこと。

 

その時は友希那が本音を言ってくれたから、また音を取り戻すことが出来たけれど…正直、私達はまだ高校生。

 

自分達でやるには限界があると、リサは薄々気づいていた。

 

 

〖 FUTURE WORLD FES.〗

 

それが今の私達の目標。

 

 

…今のままで本当にいいのか。

リサの考える事など、誰も知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、友希那と朧の間に、大きな因縁がある事も…誰も知らない。




最近長文になってきましたが気にしないでください。

更新頻度は1〜3日を目安にしてます。
適当な時に適当に読んでくれると嬉しいです。

新作のバンドリ小説を書くなら、どの様なものが良いですか?

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  • 恋愛系( 全員√ を書きます )
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