〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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文はまだまだ拙いですが、これからもよろしくお願いします。

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第十三話 〖分からない…〗

Pastel❁Palettes。通称「パスパレ」

 

リーダー丸山 彩を筆頭に、ベース:白鷲 千聖、ドラム:大和麻弥、キーボード:若宮 イヴ、ギター:氷川 日菜の五人で形成されたアイドルバンド。

 

氷川 日菜以外は同じ事務所の所属で組まれている。

 

パスパレは最初のライブで機材のトラブルにより口パク&偽演奏だと言うことがバレてネットが炎上し、暫く活動自粛をしていた。

 

が、丸山 彩と白鷲 千聖が大雨の中でライブのチケットを配っていたことがネットで拡散され、一気に話題となった。

 

次のライブで生歌と生演奏を披露し、パスパレのファンが一気に増えた…か。

 

朧は、自室でパソコンを弄りながら、この間見たバンドを調べていた。

自分が今まで見た中では一番ガールズバンドっぽいバンドだ。

事務所に所属している中から選ばれ、そしてバンドを組むと言うのが社会的には一番安定した道筋であり、趣味とはまた違う"仕事"としてバンドをこなす為、他のバンドよりもレベルは高いと言える。

…やっぱり俺が思った通り、あのギターの子は天才だった。

パスパレのギター担当オーディションから選ばれた氷川 日菜という女の子は、受けた理由が"なんとなく"であり、しかも難なく合格した。

 

他にも、運動神経抜群、成績優秀、台本は一度読めば要らないなど、天才と言わしめる様な内容が書かれていた。

 

白鷲 千聖は昔からテレビで芸能人として活躍していた為、朧も名前は知っていた。

まさか、パスパレにベース担当として居るとは思わなかったが。

 

だけど、一番凄いと個人的に思うのは丸山 彩と言う子だ。

 

研究所で3年努力し、パスパレのボーカルに選ばれ、そして今はアイドルバンドとして全国に名を馳せる迄に成長した。

 

正直、丸山 彩には才能が無いと前の歌を聴いて思っていた。

しかし、あの子は誰よりも"アイドル"をしていた。

 

アイドルとは、確かに歌が下手な子やダンスが下手な子は沢山居て、その中で容姿で選ばれる子も少なくない。

 

けど、俺がアイドル以前に人間とって一番大切だと思うこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、"諦めない気持ち"だ。

丸山 彩は幾度となく壁にぶつかったに違いない。それでも3年間諦めずにパスパレというチャンスを掴み取った。

凡人で有りながら、自ら才能を作り出した……努力という才能を。

 

 

そう、才能はこの世に生を受けた時から持っている人の方が多い。

それを気が付こうが付かまいが、磨き続けた者のみが"才能がある"と世間から評価されるんだ。

 

この子はきっと、気付かない内に己の刃を磨いていたのだ。

 

 

 

…そして、その中に稀代の天才が居るという。末恐ろしいバンドだ。

 

 

 

ギシッと椅子に凭れかかる。

今自分が指導しているのは、Poppin'PartyとAfterglowの二つのバンド。

 

この二つのバンドと、残り三つのバンド。

 

パスパレ…ハロー、ハッピーワールド!…Roselia。

 

この5つのバンドは、ほぼ全員が知り合いで関わりがあると、蘭や戸山から聞いている。

 

「…どうにかしないと呑まれるな。これは…」

 

ポピパとアフグロは、ほかの三つのバンドと比べて個性が少ない。と言うよりかは、上位互換が他のバンドに存在する。

全てのバンドをリサーチして考えた結果、今教えている二つは、早い時期に存在感を無くしていくタイプだ。

 

…せめて卒業までに、ポピパとアフグロをちょっとでも全国に名前が知られるバンドにしたいのだが…。

 

「…あ〜……どうしよう。今更個性出せなんて言えねえし…。どうやって存在感をアピールしよう…。」

 

机に置かれたコーヒーを手に取り、眉間に皺を寄せて唸る朧。

ふと、何かを思い付いたかのように頭を上げる。

 

「…行くか、見学に!パスパレの事務所に頼んで、少し練習内容を見せてもらおう。何か分かるかも知れないしな!」

 

思い立ったがすぐ行動。

朧は急いで身支度を済ませると、パスパレの事務所の住所を調べタクシーを捕まえ、そしてパスパレの元へと向かった。

 

 

…が、そう簡単に行く訳もなく。

 

 

「す…すみません……いきなり練習を見せろと言われましても、上の方に話を通していただかないと…」

 

「練習ぐらいいいじゃないですか〜!お願いしますよ〜…!」

 

まるでお菓子を強請る5歳児の様に駄々をこねる朧。

かれこれ15分はずっとこうしている。

 

「で、ですから…何処の人かもわからないのに、いきなりパスパレの皆さんの元へ案内して何かあったらどうするんですか…!」

 

「何にもしないです!!神に誓います!!」

 

「誓われても無理なものは……」

 

「どうしたのかね?」

 

受付の人の背後から、この事務所の社長と思わしき人物が姿を現す。

多分誰かが連絡したのであろう。

そりゃそうだ。どっからどう見ても熱烈なファンか、それとも不審者にしか見えない。

 

「あ…社長!この人がパスパレの練習風景を見たいと…」

 

「ん〜…それは難しいなぁ…。すいませんがお帰り頂いて……」

 

社長が朧の顔を見た瞬間、凍り付いたかのように動かなくなった。

受付の人も、いきなり動かなくなった社長を見て困惑の色を浮かべる。

朧も、何事かと首を傾げる。

 

 

「も……もしかして…君は……し、篠崎 朧君…いや、さん…ですか?」

 

朧よりも年齢が上なのにも関わらずいきなり丁寧口調になる社長。

 

「え……あ、はい。そうですけど…。」

 

それを聞いた瞬間、社長の背筋が伸び、ネクタイを締め直し、まるで別人の様に化した。

 

「受付君。この方を丁重に案内して差し上げなさい。絶対に無礼な事はするな。」

 

はっ?と何を言っているか分からないような顔で社長を見上げる受付の男性。目上の接待でも無いのに、いきなりそんな事を言われても…と言うような表情をしている。

 

「…早くしなさい!!」

 

社長の怒号がフロアを巡る。

その気迫に思わず男性も"ひゃいっ!"と返事を返す事しか出来ず、渋々朧を案内する事になった。

 

「え……えと、なんかアリガトウゴザイマス…。」

 

自分でも何が起こっているか分からない朧は、キョトンとした表情のまま男性の後を付いて行った。

 

 

朧の姿が見えなくなったのを確認すると、社長はドサッと近くの椅子に腰掛ける。

 

尋常じゃない程の汗と息切れだ。

 

 

「しゃ、社長…大丈夫ですか…!」

 

女性社員がそれを見て、水とハンカチを手渡す。

 

「あ…あぁ、ありがとう…。まさか…ここであの人の"息子"と会うことになるなんてな…。」

 

「あの人…とは?」

 

「…あの人はな……───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訳も分からず案内され、今はパスパレが練習する部屋の前に立つ朧と男性。

 

「ここでパスパレの皆さんが練習していますので、少々お待ち下さい。」

 

コンコンとドアをノックすると、先に男性の方が入っていき確認を取る。

朧はここに来て少し緊張していた。

何話そう…特にアテもなく来ちまったけど……。

 

そんなこんなを考えている内に、男性からOKサインが出される。

 

朧は生唾を飲み込み、恐る恐る部屋の中へと入っていく。

 

 

 

「「「「「おはようございます!!」」」」」

 

ビクゥッ!!と身体が思わずビックリしてしまった。

 

めちゃくちゃ元気な挨拶だなおい…流石は事務所所属って事はある…。

 

などと思いながら五人の前に立つ。

 

 

「今日いきなりですが、見学する事になった篠崎 朧さんと言います。」

 

「えと〜…いきなり押し掛けてすいません…。今紹介して貰った通りなんですけど、篠崎 朧って言います。今日は宜しくお願いします。」

 

朧が小さく頭を下げると、五人は朧の3倍ほど深くお辞儀をして10倍大きな声で「よろしくお願いします!」と返してきた。

 

若いっていいなぁ…。

 

 

「それでは、僕はこれで。朧さん、くれぐれも何か起こさないで下さいね?」

 

「だから起こしませんって…!」

 

完全に不審者扱いされているとは、朧は気付いていなかった。

 

 

 

「えっと、朧さん…でしたよね?今日は何故練習を見にこられたんですか?」

 

長く淡い金髪で、顔立ちの整った白鷲 千聖が朧に質問を投げる。

 

「それは〜…ちょっと"個性"を見に来たと言うか〜…」

 

「個性…ですか?」

 

綺麗な銀髪を三つ編みにし、目は大きくまつ毛も長い元モデルの若宮 イヴは首を傾げる。

 

「そう。俺も音楽関係にちょっと携わってるんだけど、今少し作業が難航していてな…。」

 

「でも、どうして私達なんですか?個性豊かなバンドなら他にも…」

 

大和 麻弥がそう言うと、他のメンバーも軽く頷く。

 

「俺は君達が参考になるかと思って来たんだよ。君ら理解してないだけで個性有りまくりだぜ…?」

 

「そーかなー?」

 

居た。稀代の天才、氷川 日菜。君が一番個性あるんだけどね!!

 

「でもまぁ、そういう事なら別に大丈夫でしょ。私達は普段通り練習しよ?」

 

リーダーの丸山 彩がそう言うと、メンバーはいつも通り練習の準備に取り掛かる。

 

朧は後ろのソファーにちょこんと座ると、その光景を眺める。

 

 

 

…さて、聞かせてもらうか。【一番纏まりのない音】を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽器の準備をしている最中、一人だけずっと難しい顔をしている者が居た。

 

「…日菜さん、どうしたんですか?そんな顔をして。」

 

イヴが心配そうに日菜の顔を覗き込む。

 

「 へっ?あ〜、何でもないよ!ちょっと考え事してただけ…!」

 

日菜は明るい笑顔を浮かべると、慌ててイヴに上記を述べる。

 

「そうですか?じゃあ、今日も頑張りましょう!」

 

ぐっと両腕を前に出して気合を入れるイヴ。

他の皆も、いつも通り演奏の準備に取り掛かっている。

 

 

しかし、日菜は何故かモヤモヤしていた。

 

鼓動の音が早い。手が震える。何もしてないのに汗が滲む。

 

 

 

 

 

 

 

日菜は…──緊張していた。いつもはどんな舞台でも緊張しない日菜が、何故か一人の人間を相手に緊張していたのだ。

 

 

おかしい…。私が私じゃないみたい…。

 

日菜は、慣れない緊張に動揺していた。いつもよりギターが重く、集中出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜はこのモヤモヤを感じていながらもその理由が分からなかった。

 

しかし、日菜の細胞と無意識は理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分より上の次元の存在に、演奏を聞かせるというプレッシャーを。




Pastel❁Palettesのストーリー全部みたけど、好きになってしまった…。

尊い、彩が尊かった…。


次も頑張って書きます…_(:3 」∠)_

新作のバンドリ小説を書くなら、どの様なものが良いですか?

  • シリアス系
  • ほのぼの日常系
  • 恋愛系( 全員√ を書きます )
  • ハーレム系
  • 努力&覚醒系

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