〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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第一章
第一話 〖篠崎 朧という人間〗


 

俺が音楽を始めたのは、3歳の頃だった。

きっかけは単純で、お父さんが弾いていたピアノを聞いて自分も好奇心で始めてみた。

その結果、どうやら俺には音楽の才能があったみたいで、5歳になる頃には譜面を一度見るだけで弾ける様になるまでになった。

 

俗に言う天才というものだったらしい。

 

6歳で小学校のピアノコンクールで優勝し、

そして7歳を迎える頃には、ドラム、ギター、ピアノ、ベースをほぼ完璧にマスターしていた。

その他の楽器もある程度マスターしていた俺は、幼くして一つの壁にぶち当たっていた。

 

それは、《する事がなくなった》と言うこと。

 

なんでもかんでもマスターしてしまうが故に、する事がなくなってしまったのだ。

そしてモチベーションが無くなり、8歳の誕生日目前に音楽を辞めた。

 

…まぁ、他にも理由はあるのだが。

 

稀代の天才、篠崎 朧《しのざき おぼろ》はこうして人知れず姿を消したのであった。めでたしめでたし。

 

 

月日は流れ、今は俺は21歳。

学校教師とボーカルトレーナーをしながら生計を立てている。

 

え?音楽はやめたんじゃなかったのかって?

確かに音楽をする事は辞めたが、人に教えるという点に関して言えば、俺はとても好きなのでノーカウントだ。

 

そして、今日も教師として平凡な1日が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

「先生、またね〜!」

「お〜う。気を付けて帰れよ〜。」

 

俺が通う学校の名は、花咲川女子学園。まぁ読んで時の如く女子校である。

理由は特にない。女の子とお話したいとか、ちょっとモテてみたいとかそんな欲望とか全然ない。うん、多分。

 

ここで働いている理由は、母がここに少しパイプがあったので紹介してもらったら、割とすぐに受け入れて貰えた。

これに関しては運が良かったとしか言えない。

 

 

そして今はここの非常勤講師として、音楽を教えている。

決して濃密な日々ではないが、俺にとっては毎日が音楽をしている時より充実していると言う実感があった。

 

なんせ、時間があれば楽器に触れ、弾き、歌い、ひたすら学習していたので自由という時間が無かったのである。

 

今思えば、よくもまぁあれ程熱中出来ていたものだ。若いからなせる技なのか…。

 

「っと。今日はボーカルトレーニングがあるんだったな。早く帰らないと」

 

今日来る子は、バンドを組んでいてボーカル担当と聞いているので少し楽しみでもあった。

 

ボーカルを教えるにあたって、最初から基礎が出来ている人が来る事は少なく初心者の人が多い為、応用を教える事が少ないのである。

故に、今日はその子がどれ程の実力か楽しみにしていた。

 

 

自転車で片道15分。自宅の敷地に自転車を止めると、鍵を開けて家へ入る。

自宅は二階建てであり、一階は自分のプライベートルーム。

二階は完全防音のボーカルトレーニングルームになっている。

二階で2時間3000円と言う破格の値段でトレーニングを行い、それざ終われば一階の部屋で甘いものやお菓子を振る舞うことにしている。

 

その事があってか、割とトレーニングが人気であり、生活費に大きく足しになっている。

 

その子が来るまでに、ピアノとギターを準備しておく。

どうやらギターも弾けると言うことなので、教えて欲しいと言われた時の保険だ。

 

 

「よし、準備完了っと。あとは来るのを待つだけだな。あと20分ぐらいで来るから…。」

 

ちら、とギターを横目に見る。

 

「久々に弾いてみるか。」

 

かなり使い古されたギターを持ち、弦へ指を添える。

 

懐かしい感覚に、少し頬が緩んだ。

 

昔はこれをマスターするまで何度も何度も弾きまくって、指が血だらけになった記憶がある。

ビン、と軽く音を鳴らす。そして、記憶の中にある譜面を思い出しながら弾き始める。

 

今弾いている曲は、自分の中で一番記憶に残っている曲。題名は無い。

何故なら自分で作った曲だからである。

 

バラード調の曲であり、自分が音楽に飽きを感じた時に作った曲だ。

ギターの音に合わせながら、軽く歌詞を口ずさむ。

 

「儚く散った想いの欠片…それを今拾い集める。でもそれは…雲のように掴めない。当たり前だった。だってそれは自分が捨てた夢だったんだから…」

 

感傷に浸りながら、一つ一つの言葉を紡いでいく。

気が付いた時には、5分もギターを弾き歌っていた。

 

「おっとと、ダメだな。一回集中すると時間を忘れる悪い癖…まだ残ってたんだな。」

 

苦笑を浮かべながらギターを置き、その子が来るのを待った。

 

そして10分前キッカリにインターホンが鳴ると、朧は下へ降りて玄関の扉を開けた。

 

 

そこには、髪に一筋の赤いメッシュを入れており、ネックまであるグレーのニット服の上に黒のダブルライダースを着て、ギターを担いだ女の子が立っていた。

 

 

顔立ちは凛々しく、しかしどこか幼げがある様で…表現するなら、クールキュートという矛盾しているパワーワードが頭の中をよぎった。

 

その女の子の容姿に見惚れていることに気付くと、ハッと我に返る。

 

「い、いらっしゃい!ボーカルトレーナーの篠崎 朧です。宜しく。」

 

こちらが自己紹介を述べると、女の子も簡潔に自己紹介を述べた。

 

「美竹 蘭です。宜しくお願いします。」




初めての投稿です。
拙い文ではありますが、読んでもらえると嬉しいです。
最初の方は短めの話が続くと思います。

新作のバンドリ小説を書くなら、どの様なものが良いですか?

  • シリアス系
  • ほのぼの日常系
  • 恋愛系( 全員√ を書きます )
  • ハーレム系
  • 努力&覚醒系

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