〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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第三十話 〖 忍び寄る憎悪 〗

 朧のレッスンを終えたリサは、家に帰ってからもひたすら出された課題を練習した。

 たった一時間。だが、確実に何段も階段を登った実感がリサにはあった。

 

 今までは動画でや本だけで見て練習していたものが、朧の指導により更に具体性を増して演奏の技術を底上げしている。その高揚感に、次の練習日が待ちきれんとばかりに頬を緩めた午後0時だった。

 

 

 そして迎えた練習日。結局指導を受けるか受けないかで曇った心(リサ以外)のまま集まった。

 

「 …今日も練習を始めるわよ 」

 

 友希那が先陣を切って言葉を発すれば、各々返事をして準備に取り掛かる。

 

 ただ一人、異様に元気なリサに友希那は疑問符を浮かべるも、今は練習だと質問はせずに其の儘開始された。

 

「 いい?Future World Fes の予選… 今の状態ではとてもじゃないけれど突破は出来ない。一層厳しくいくから 」

 

 無意識に焦燥する友希那に掛ける言葉が見つからないメンバーは、首を縦に振る事しか出来ずに楽器を構える。

 

 …もう失態を晒す訳にはいかない。あの日、最下位になったのはただの練習不足。今まで雰囲気が柔らかくなっていたせいで、昔あった緊張の音色が無くなっていたんだわ。それなら、昔のようにより厳しく、馴れ合いを無くすしかない。…篠崎 朧 、私は貴方を…私の音楽で否定する!

 

 友希那が3.2.1と合図を掛け、一斉に音を奏でる。その一音目にして、全員が違和感を覚えた。

 いつもと演奏が全く違う。まるで川の流れに身を任せるが如く、自然とリズムが頭に刻まれていく。誰かに演奏を操作されている様な、そんな感覚。

 

 Roseliaに今迄無かったビートが全員の鼓動の速度を上げ、無意識に頬が綻んだ。

 

 あぁ、なんて弾きやすいリズムだろう。これならば、その音に身を任せて自由に弾くことが出来る!

 

 そう思った全員は、各々に自分の音色を付け足していく。曲の雰囲気は崩さず、尚且つ今迄以上に鮮明で荒々しく…青い薔薇は、更に美しく咲き誇った。

 

 気付けば演奏は終わり、その音の余韻に口を半分開けたような状態で皆は放心状態。1番先に我に返ったのはあこだった。

 

「 す、凄い凄い!! 今までで一番かっこよかったぁ!! 」

 

「 私も…こんなにピアノが弾きやすかったのは始めてです… 」

 

 その理由は、大体検討がついていた。土台がしっかりとビートを刻んだ故に、出来なかった事が出来るようになった。

 それだけで?と思うだろうが、それがベースと言うものなのだ。

 

「 …リサ、貴女に一体何があったの? 」

 

「 今井さんのベースがいつも以上に聞こえて、思わずそれに乗っかってしまいました… 」

 

 たった数日で進化を遂げたリサに、メンバーは喜びと言うより困惑を隠せない表情を浮かべている。

 リサはメンバーの中で最も初心者に近い。しかし先程弾いていたベースは数年単位で練習を重ねた者の音色だった。

 

「 …アタシ、朧さんに指導を受けてきたの 」

 

 その言葉に驚愕の意を見せるメンバー。その中でも一際驚いていたのは友希那だ。

 

「 …なんでそんな事を 」

 

「 アタシは、Roseliaがこのままで良いとは思わない…だから変わろうって思った。私一人でも変われば、皆が変わるキッカケになるんじゃないかって。それに、もう足を引っ張るのは嫌だから…友希那の隣に、自信を持って立ちたいから 」

 

 友希那は静かにリサの話を聞く。他のメンバーはそれを聞いて小さな笑みを零した。

 

「 …あこも迷ってました。このままじゃカッコイイRoseliaじゃ無くなるかもって。でも、今日の演奏を聞いてRoseliaはもっともーーっとカッコよくなれるって分かりました!だから、指導を受けてもいいと思います…!」

 

「 私も… あこちゃんと同じ気持ちです 」

 

「 今井さんがここまで変われるなら、相当な腕の持ち主に違いありません。湊さん、どうか懸命な判断をお願いします 」

 

「 友希那…過去の事は分かってる。けど、私達が先に進む為には嫌な事も受け入れていこ …?」

 

 薄く目を閉じた友希那は小さく呼吸をし、そっと頭を上げて目の前のリサへ視線を向けた。

 

「 そう…だったら貴女達で勝手にして。私は…私の力であの男に勝つ。Roseliaは活動休止よ 」

 

 想像より遥か斜めの答えに、全員は騒然とする。

 

「 ちょ、ちょっと待ってよ友希那!確かにあの人がお父さんの仇だって知ってる…けど、何も活動休止なんて!」

 

「 貴女達には分からないのよ。私にとって父の音楽は生き甲斐の一つだった。それを奪ったあの男に教えを乞うなんて、死んでも出来ないわ 」

 

「 そんな… 」

 

 突然の言葉にあっけらかんとするリサ。あこに至っては泣き出してしまう始末だ。一体何をそこまで憎むのか…確かに自分達では分からない。だが今の友希那がしている事は

 

「 今の湊さんがしていることは、ただ音楽を私的に利用しているだけです!そんな事をして、一体その先に何があるというのですか…!」

 

「 それは後から考えれば良いわ。今はあの男を… 」

 

「 あの男あの男って…友希那さんは…っ…Roseliaの方が大切じゃ無いんですか…!」

 

 嗚咽を漏らしながら訴えかけるあこに、冷たい支線を送りながら言葉を発する。

 

「 Roseliaは大切よ…でも、指導を受けたRoseliaは最早Roseliaでは無くなってしまう。私達の音色は、私達で作り上げるものよ 」

 

 そう言って視線を逸らす友希那。自分の言葉は届かないと、再び泣き出してしまうあこを燐子が慰める。

 

「 …アタシがした事、迷惑だった ? 」

 

 リサは消えそうな声色でそう呟きながら友希那を見つめた。その頬には、一筋の涙を流して。

 

「 アタシ…少しでも友希那の力になろうって思って…。でも、それが迷惑だったなら謝るから。だから活動休止なんて言うの止めよ ? 」

 

 必死に笑顔を浮かべるが、声が震えて上手く伝える事が出来ない。友希那はそれを見ても何も答えることが出来ず、ただ視線を伏せるだけであった。

 それを見兼ねた紗夜が、ギターケースを担ぎドアに手をかけたのを見て、燐子は慌てた様にその背中へ声を掛けた。

 

「 ひ、氷川さん!どこに行くんですか…? 」

 

「 …今の湊さんについて行く理由がありません。活動休止と言うのなら、私は勝手にします 」

 

 それだけ言い残すと足早にその場から去ってしまった。

 

「 紗夜… 」

 

「 …今日の練習は止めにしましょう。それから、この先に入っていた予定も全部取り消す 」

 

 残ったメンバーにそう述べると友希那も部屋から去ってしまい、残された三人は何をすればいいか分からずただ機材を片付けることしか出来なかった。

 

「 これからどうなるの…ねえ、友希那。やっぱりアタシじゃ止められないの …? 」

 

 また一筋、涙が頬を撫でた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友希那は帰路を辿る中で考えていた。何故皆が執拗にあの男の指導を受けたがるのか。

 確かにリサのベースは確実に技術が増していた。だが、それが果たしてRoseliaの音と言えるのか。今までの苦労も、そんな人に頼らずとも乗り越えて来られた。

 指導を受けるのは楽な道。楽をして頂点には立てない、絶対にRoseliaの…Roseliaだけの音色で頂点を獲る。そしてあの男は不必要だと突き付けて父さんの仇を取るのよ…!

 

 改めてそう心に違った友希那の前に、突然人影が現れた。

 

「 湊 友希那さんですか? 」

 

 目の前に居たのは少し長身の女性。見た感じではどうやらマネージャーの様だ。またスカウトかと思いつつ、そうだと返事をする。

 

「 私は○○プロデュースの者です。風の噂ですが、貴女には憎む相手がいるとお聞きしたのですが 」

 

「 …! 」

 

 何故その事を…と目を見開く友希那に、その女性は更に畳み掛ける。

 

「 もしもその相手を完膚無きまでに倒せると言ったら、貴女はどうしますか? 」

 

 何を言っているのか分からない。いきなり目の前に現れたと思えば自分の秘密を知っていると言わんばかりに。でも、それが本当の事なら…

 

「 篠崎 朧…ご存知ですよね? 私も少し因縁がありまして…良ければ共にあの男を倒しませんか?」

 

 その名を聞いて確信に変わった。いや、名前だけでは無い…その女性の目に宿る憎しみは、自分と同じものだ。それならば…

 

「 …話を聞こうかしら 」

 

 

 誰も知らない所で、朧を倒す為の″ 最強バンド ″ が結成されようとしていた。




現れた女性は一体誰なのか。その憎悪はなんなのか…Roselia編、さらに加速します。

読んで頂きありがとうございます!

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