〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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シリアス展開が少し多いですが、ご了承ください。













第三十一話 〖 何故? 〗

 Roselia活動休止と告げられてから一週間。湊 友希那は学校に一度も来ていない。 連絡しても返事は無く、先生に尋ねても私用だと言われそれ以上は何も分からずじまいだ。

 

 リサは家が隣の為、直接家族に聞きに行っても詳細は知らず、友希那の父親も心配をしていた。何処かは分からないが、とある場所で泊まり込みの練習だとだけ聞いたらしい。強く止めたが聞く耳を持たずに行ってしまったと…

 

 友希那を除いた四人は、いつも反省会をするファミレスに集まった。理由は言わずもがなRoseliaの事と友希那の事だ。

 

「 現状考えられるのは、友希那さんは一人で練習をしているか、それとも別の誰かと練習しているか… ですね 」

 

「 えっ、じゃあもうRoseliaを捨てちゃったの…!? 」

 

「 いいえ、そうと決まった訳じゃ無いわ宇田川さん。湊さんは活動休止とは言ったけれど、解散とは言っていない。つまり、まだ多少なり未練があるのでしょう 」

 

「 未練…でも、Roseliaを活動休止にする程まで朧先生に対する憎悪があるんでしょ? そんなの、アタシ達でどうやって解決すれば… 」

 

「 …今井さんが指導を受けた朧さんに、一度みんなで会いに行きませんか?」

 

 唐突に燐子が提案した内容に、面々は少し驚いた。元々燐子は男の人が苦手な傾向にある為だ。

 

「 ですが、会った所で何も解決はしないのでは… 」

 

「 …音でなら、分かり合えるかも…知れないです。私達四人が指導を受けて、Roseliaはまだ進化出来るんだと……そう伝える事が出来れば 」

 

 過去にも解散になりそうな時があった。その時も、自分達はここまで楽しんで演奏を出来ていると認識できた。

 音でなら分かり合える。もう一度Roseliaとして出発するなら、それしか無いと考えた燐子の決意。皆はその目を見て、覚悟を受け取った。

 

「 …もう何も出来ないのは嫌。だから、あこも練習を受けるよ!それで友希那さんに伝えるの!Roseliaは誰にも負けない、超超カッコイイバンドだって!」

 

「 そうね…何もしないよりかは良いかも知れないわ。湊さんには一度、目を覚まして貰わないと 」

 

「 みんな…うぅ、ありがとう……!」

 

 また泣き出したリサに、皆は笑顔を浮かべながら慰めた。

 

 昔の様にバラバラになりそうでも、みんなが居ればまた繋がれる。きっと友希那は自棄になってしまっているんだ。それなら、友希那はRoseliaに必要なんだって伝える。誰の指導を受けても、色褪せないアタシ達の音色で目を覚まさせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間前 某所

 

 

「 さて、此処に集まって貰った理由は…史上最高のバンドを作る為です。全国から選りすぐった貴女達なら、ガールズバンドはおろか普通のバンドとしても最高峰の実力よ 」

 

「…確かアンタRoseliaの湊 友希那だろ?こんな話に乗っかるなんて暇だったのか?」

 

 茶髪をセミロング程に伸ばし、耳にピアスを幾つも付け黒い瞳をしたドラム担当が友希那につっかかるが、友希那は見向きもせずに言葉だけを返す。

 

「 貴女よりかは忙しいわ。でも、今回は自分に利益があるから乗っただけ 」

 

「 ほーん…まぁどうでもいいけど。私はすげぇバンドが組めりゃそれでいいんだ。足引っ張る奴は私の音で呑む。それだけだ 」

 

「 すぐ人に突っかかるのやめなさいな…言葉遣いもはしたないですし… 」

 

 その空気を断ち切ったのは、ゴシック調の服を着た女性。言葉遣いも丁寧であり、いい家の育ちだと分かる。

 

「 うっせ〜 、これが私なんだよ。文句あるか? 」

 

「 …はいはい 」

 

 どうやらドラムとギターは知り合いの様だ。残りのピアノ、ベースの二人は各々椅子に腰掛けて話を聞いている。…いや、ベースの人は携帯を弄っている。

 

「 態度、言葉遣い…それを咎めたりはしません。ただ貴女達に望むのは今までの音楽を覆す力です。これから対バンのスケジュールを配ります。各自 目を通しておいてください。私達のバンドの名前は… U・F・D 。Undefeatedの略で、分かりやすく ″ 不敗 ″ と言う意味です 」

 

「 不敗かぁ…ははっ!良いじゃねぇの〜…確かに何処にも負ける気がしねぇし 」

 

「 少し安直過ぎる気もしますが、私は何でも構いませんわ。私の音を世界に知らしめることが出来ればそれで 」

 

「 …練習とか面倒だけど、お金貰えるからやる。それだけ 」

 

 ポチポチ携帯を弄っていた暗いグレー髪のロングヘアーなベース担当が適当な意気込みを語ると、すぐ携帯へと視線を戻した。

 

「 わ、私は…頑張ります……!!」

 

 ピアノ担当はおどおどとした様子で大きく頭を下げた。すると鍵盤に頭を打ち″ぴゃあ!″と間抜けな声を出して頭を抑える。

 

「 それじゃ、改めてメンバーを紹介しておきましょう 」

 

 

 

 Vo . 湊 友希那 。155cm。羽丘女子学園2年。低音から高音まで幅広く扱えて、孤高の歌姫の異名を持つ。実は猫が好き。

 過去にも様々なスカウトを受けるが全て断り、Roseliaのボーカルとして活動。

 灰色のロングヘアーに黄色の瞳の美少女。

 今はRoseliaを活動休止にするという条件で加入。

 

 Ba . 社 楓叶( やしろ ふうか)。身長159cm。 仲町谷高校2年。 ベースを始めたのは高校一年の頃。しかし、その腕前は音楽の女神に好かれており一流。偶にプロのバンドのアシストとして入る事もある。口癖は眠い。

 暗い灰色の髪を腰まで伸ばし(散髪が面倒)、暗いオレンジ色の瞳を持つ。

 年俸 ○○○万円と言う事で加入。

 

 Gu . 岡神坂 樺恋 ( おかかみざか かれん ) . 163cm。名門私立 秀院学園3年。幼少の頃から音楽の英才教育を施された秀才。数多の楽器を使いこなす姿に学園のファンもかなり多く、コンクールで何度も優勝を飾っている。実は甘い物が苦手。

 金色のクルクルツインテールに、碧色の瞳を持ったお嬢様。

 更なる技術を求め加入。

 

 Dr . 竜倉 神音 ( たつくら かぐね ) 171cm 。雨城山高校3年。樺恋とは幼稚園からの腐れ縁であり、ドラムも樺恋の影響で幼稚園から始めた。

 その腕前は疑う余地なく一流だが、バンドを組んだ事は無く今回が初めて。見た目は怖いが肉より野菜が好きでパンダが好き。

 樺恋が加入するとの事で、気分で加入。

 

 Pi . YORU ( 夜美 響奏 )(やび きょうか) 。156cm。私立 郷浜西高校一年。

 ネット上で ″ ヨル ″ と源氏名を使い活動する女の子。

 その日の気分で曲を奏でる即興ピアノが人気であり、登録者数は20万人を超えている。引っ込み思案で、黒髪を肩まで伸ばし茶色の瞳、少し厚めの眼鏡をかけている。メガネを外すと凄く美人 。家では犬を三匹飼っている。

 最近伸び悩む登録者数の為に、知名度を更に上げようと加入。

 

 マネージャー 華山 朱里( はなやま あかり ) 167cm ○○事務所のマネージャーをしてる。

 有名な短期音大の卒業生。過去には様々なコンクールで金賞を取っていた天才だが、ある事をきっかけに音楽を破棄。異様な程に朧を敵視している。

 黒髪を背中の真ん中辺りまで伸ばし、黒色の瞳、常にスーツを着用している。

 趣味は無く、バンドに力を入れている。

 

 

 

「 …さて、自己紹介を終えたところで、練習スケジュールも配っておくわ。練習は朝7時から夜の8時まで。途中に休憩を挟むけれど、余り自由な時間は無いと思って 」

 

「 え〜…凄く嫌なんですけど 」

 

「 お金が要らないなら練習しなくていいわよ、楓叶 」

 

「 …やりま〜す 」

 

「 今日はこれで終わりにするから、明日に備えて早く寝なさい。以上 」

 

 それだけ告げると、朱里はさっさと消えてしまった。

 

 残された四人に沈黙が広がる。全員が初対面、何を話せば良いか分からない。

 しかし、最初に話を切り出したのはお嬢様 樺恋だった。

 

「 マネージャーさんもああ言っていたことですし、今日は休みましょう。各々の実力は明日になれば嫌でも分かるでしょうし…どうか私を落胆させないで下さいね 」

 

「 あ、ちょっと待てよ樺恋〜!」

 

 上記のセリフを吐き捨てる様に述べた樺恋は割り当てられた部屋へと向かっていった。その背を追うように神音も廊下へと消えていく。

 

 友希那も部屋へ向かおうとしたその時、声を掛けたのは楓叶であった。

 

「 ゆきっちゃんの歌聞いたけどさ〜、なんかぬる〜いよね。私、今みんなと音楽してるんだ!みたいな歌声。アレじゃここでやってけないよ〜 」

 

「 その呼び方やめて。それと、貴女こそろくに練習しないで寛いでいる様だけれど…精々足をすくわれない様に気を付けなさい 」

 

 ぴり、と走る緊張感。戸惑う事しか出来ない響奏。少しして、友希那は踵を返し改めて部屋へと向かった。

 

 …私は何に怒っているのだろう。ぬるい歌声と言われて…?それもあるけれど、一番はRoseliaを否定されたから?…確かにRoseliaで歌っている時は楽しかった。でも、仲良くなり過ぎて緊張感が無くなったから、Roseliaは成長出来ない…そう、その筈なのに…何故。

 

 胸のわだかまりに眉を顰め、終わることの無い思考を巡らせながら顔合わせは終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Roseliaのメンバーは、朧宅へと向かっていた。リサはどんな人か知っているが、他のメンバーは初対面。少し緊張の色が見える。

 

「 みんな顔が強ばってるよ〜?そんなに怖い人じゃないから大丈夫大丈夫!」

 

 凝り固まった空気を解そうとリサはみんなに話しかけ続けた。その甲斐あってか、朧の家に着く頃には随分と雰囲気が柔らかくなった。

 

「 今日行く事は連絡しておいたから、安心してね?ちゃんとOKだって返事貰ったから!」

 

 そしてインターホンを押せば、少しの間を経て扉が開かれる。

 

「 初めまして、俺が篠崎 朧です。今日よろしくお願いしましゅ… 」

 

 …噛んだ。言わずとも心の中で満場一致する。

 

 実は朧、大人数の異性を相手する事に慣れていなかったのだ。盛大にスタートダッシュをミスった朧は、ただただ赤面する他無かった。




もう少しだけシリアスにお付き合い下さいませ…これからが本番です。

読んで頂きありがとうございます!

新作のバンドリ小説を書くなら、どの様なものが良いですか?

  • シリアス系
  • ほのぼの日常系
  • 恋愛系( 全員√ を書きます )
  • ハーレム系
  • 努力&覚醒系

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