〖音楽を辞めた少年は、少女達と共に夢を視る〗   作:Y×2

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感想、評価などを戴ければ幸いです。


第四話 〖75点〗

「私達の歌…?」

 

 

篠崎 朧はいきなりの提案に少し眉を顰めた。

 

 

「はい。Afterglowのみんなで作った曲です。聞いてもらえないでしょうか。」

 

 

美竹 蘭の真剣な眼差しを、朧はじっと見つめ返す。

 

 

目は揺らがない。どうやら本気のようだな。

 

 

ふっと視線を落とすと、再び蘭を見つめてこちらも質問を返す。

 

「聞くのはいいけど、俺に聞いてもらってどうしたいんだ?」

 

「それは……っ。」

 

蘭は視線を逸らす。どうしたいかなんて心の中では決まっているのに、いざ言おうとすると照れくさくて中々言葉が出てこないのだ。

 

「…言わなきゃ分かんないぞ。特にないならボイトレを続けるけど。」

 

朧はそう告げると、ピアノに手を添えてボイトレを続行しようと思った時、蘭が静かに口を開いた。

 

「み…みんなの為に、私はもっと成長したいと思ったからです。」

 

…思った通りの答えだ。この子は人一倍素直になれない子だと、一目見た時から分かっていた。

その分、裏でとても頑張るタイプでもある。

いわるゆツンデレというやt…

 

「先生、失礼な事考えてませんよね?」

 

「え"ッ!?ん、んなわけ無いだろ!?」

 

「その割には声が上ずってますけど。」

 

 

じとり、と目を細めてこちらを見てくる。やめて。その視線凄い傷付くから…。

 

「と、とにかくだ!それをなんで俺なんだ?たまたま見つけたボイトレコーチに聞かせても、いい返事が貰えるとは限らないぞ?」

 

「…私、先生の歌を聞きました。」

 

「…はぇ?」

 

 

思わず言葉になってない曖昧な音を口から無意識に放っていた。

 

 

「き……聞いたって…どこで?」

 

「私がここに来た時、先生の歌声が聞こえてきたので…。」

 

…流石に聞き耳を立ててただなんて言えないよね。

 

「ま……マジかぁ〜…!!そんな大声で歌ってなかったのに…!」

 

朧は顔を真っ赤にして頭を抱える。

まさかあんな臭い歌詞の歌を聞かれてただなんて…。俺もうお婿に行けねぇ…。

 

「それを聞いて私は思ったんです。この人しか居ないって。」

 

「何がだよ…。自分の玩具にするのはこの人が一番ってか?」

 

「違いますよ!どうしてそうなったんですか!」

 

「あんな中二病こじらせた様な歌聞かれちゃもう生きてけない…。」

 

「どんだけ自己評価低いんですか…。私は少なくとも目標にしたいと思いました。」

 

「中二病をか?」

 

「歌の技術です!!」

 

この人想像以上に面倒くさいと思いながらも、蘭は言葉を続けた。

 

「とにかく私達の歌を聞いて下さい。で、先生が思った事を私に言ってほしいんです。お願いします。」

 

 

蘭は浅く頭を下げると、ギターの弦に指を添える。

 

「…分かったよ。じゃあ好きなタイミングで。」

 

「はい。では聞いて下さい。Scarlet Sky。」

 

すぅ、と息を吸い呼吸を整えギターを弾き、歌い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

朧はその曲を真剣な表情で聞いていた。

とてもいい曲だ。

本当に高校生が作った曲とは思えないほど完成されている。

 

が、一番凄いのは蘭の表現力だ。

歌を聞いているだけで、夕焼けの空を5人で仲良く見つめている風景が自然と見えてくる…。

5人で笑い、5人で泣き、5人で喜び、5人で喧嘩し……そんな当たり前の日常が、ふと突然無くなったら。

そんなことを考えれば、誰でも怖くなる。

 

5人で居たいから、自分は変わったんだ。

それを訴えかけて来ている。

 

 

「…どうでしたか?」

 

歌い終わった蘭は、少し心配そうに朧を見つめる。

 

「…100点満点なら、75点、と言ったところだ。」

 

「そうですか…。」

 

思っていたよりも低かった。けれど、この人の評価は間違ってはいない。

 

所々ミスしたし、音程も少しブレていた。妥当だろう。

 

「何をしょんぼりしてるんだ?100点満点中、"表現力"だけで75点だぞ?」

 

「…え?」

 

「歌唱力も含めたら、145点ぐらいだ。つまり、俺の予想を遥かに超えてきたんだよ、蘭は。」

 

にこり、と微笑みを浮かべる朧。

 

「所々ミスしたのは気づいた。けど、蘭は何よりも大切な事を思って歌っていた。それを俺は感じたんだ。」

 

蘭は困惑していた。これは喜んでいいのか、まだまだだと自分に言い聞かせるのか、と。

 

「蘭、喜べ!褒められたら喜ぶべきだ。俺の予想を超えたんだ!自分を誇れ!」

 

先程よりも大きく笑みを浮かべると、ポンと蘭の肩に手を置く。

 

 

「…今まで頑張ってた事、全部俺に伝わったぞ。」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、蘭は自然と涙を流していた。

悲しい訳ではない。嬉しいという感情と安堵の感情が織り交ざった様な、そんな温かい気持ちだった。

 

 

「よ…よかったです…。」

 

蘭は袖で涙を拭い、小さく笑みを零した。

 

 

「…さ、ここまで歌えるなら次のステップへいこうか。お望み通り、今までより更にその先へ案内してやる。」

 

朧は自分でそう言いながら、一番自分が楽しんでいると感じていた。

この子を磨ける喜び。そして、その先の未来像を考えると、朧は頬が緩みっぱなしであった。




今回ちょっと長めです。

誤字脱字報告があれば宜しくお願いします!

新作のバンドリ小説を書くなら、どの様なものが良いですか?

  • シリアス系
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