朝露乃之は勇者である   作:バロックス(駄犬

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忙しくて更新遅れんだぜ・・・。辛いぜ。
ゆゆゆいの秋イベントは最高でしたね。やっぱり友奈ちゃんのゴッドハンドにはだれも勝てなかったよ・・・


〜生きがい②〜

「うわぁ・・・」

 

 朝露乃之は数分ほど前とはまるで違う目に映る景色に感嘆の声を上げていた。

眼前に広がる景色、二度目の樹海化現象、世界が神樹の力によって世の理をも書き換える事で現実の乃之たちの世界を結界へと同化させる現象。そしてそれはバーテックスたちの襲来を告げる現象なのだ。

 

だが、そんなことより、目の前の変化している景色よりもかなり重大なことが事件が起きていた。それは事件と呼ぶに相応しいものなのか分からないが。

 

「それで? 言い訳を聞かせてもらおうかしら? 聞いたところで言い訳はいい訳なのだけれど。 私にとっては許されざることなのだけれど」

 

「ハッ! 最初から許す気がないってそう言えばいいじゃないのこのミカンメスゴリラ。いいわよ言い訳、してあげるわよ言い訳。 奪われた我が友を返してもらうためよ」

 

 途轍もなく気まずい雰囲気なのだと乃之は理解はしている。そしてなんかいつの間にかリーダーにさせられていた自分にとってこの状況は早めに終わらせておかないと今後の戦闘に支障が出るという事も理解はしているが。

 

「ゲームは期間を空けたらちゃんと返すって言っていた気がするのだけど・・・それよりも勝手に人の部屋に入って物色するなんてコソ泥以下のやり方よ」

 

「言っとくけど、勝手に人の私物を奪い取る行為って簡単に言えば窃盗よ。大体、部屋の鍵をかけ忘れる人もどうかと思うわよ。あまりに不用心じゃなくて?」

 

 桐香が額をぐりぐりと押しつけては問答を繰り返している。まさに終わらない連鎖、エンドレスワルツである。互いに実体を掴むことが出来ないからもどかしいものなのだが。

 

「と、とりあえず今は戦闘に、し、集中しよ?」

 

 乃之が諫めに入ろうとしたらしたらで、

 

「乃之は黙ってッ」

 

「乃之さんは黙っててッ」

 

 ほぼほぼノータイムで返答がきた。この時だけはタイミングぴったりだなぁ、と思った乃之である。きっと仲はいいに違いない。

 

 

 だが、敵はこちらの都合なんて気にも留めずやってくるのである。戦いは待ってはくれない。偵察に出ていた命がクロユリ一式の真っ黒なマフラーを揺らして乃之たちの場所まで戻ってきた。命の身体能力と勇者としての能力は偵察のほうがうってつけだという考えで乃之はあらかじめ偵察に出していたのである。

 

「どう? 敵はもう見えた?」

 

という乃之の問に命は頷いて指を2本だけ伸ばしてこちらに見せてきた。相変わらず口数が少ない、というより全くない情報伝達方法であるが、その2本の指を示した意味を乃之は悪い予感がしてならない。

 

「まさか?」

 

その場で一人、乃之は飛び上がった。勇者の身身体能力を持ってすれば数百メートルの高さまで飛び上がることなど造作もない。

 

「・・・ッッ」

 

やっぱり、と乃之が先ほどまで抱いていた悪い予感は的中した。

 

 

「大型バーテックスが・・・二体」

 

 

 

 

 

「前回と違って一体多い・・・向こうもいよいよ本腰って訳ね」

 

 遠くにいる二体の大型バーテックスを見据えて静流が呟く。一体のバーテックスは前回と同じくらいのサイズであった。青色の奇妙なボディに、左右に大きく膨らませた風船のような水球を浮かせている。

 

 比べてもう一体の方は小さめのサイズだった。尻尾にはハサミのような物が見られ、羽なのか盾なのかよく分からない板がふわふわと浮いている。

 

「な、なんて・・・」

 

 それは水球を持ったバーテックスを見て、静流が呟いたことだった。彼女はそのバーテックスを震えながら指差して叫ぶ。

 

「なんて卑猥な形なのッッ」

 

 その場にいた全員がずっこけた。

 

 

「静流・・・アンタねぇ」

 

「だって見なさいよあの嫌らしい形をッ バーテックスも人類に勝てないからってついに精神攻撃を仕掛けてきたのよッ バーテックスに司法が通じるなら私はセクハラで訴えてやるわ・・・どう見たってあれキン――――」

 

 次の瞬間、いわせねぇよ、と言わんばかりに敵のバーテックスが攻撃を仕掛けてきた。水球を持ったバーテックスが一直線に水を発射してきたのだ。

 

「なんの光ッ!?」

 

「ただの水ッ!!」

 

 静流のボケに瞬時に桐香はツッコみをいれる。こんな状況でも一番にボケて、ツッコめるのは彼女達くらいだろうか。

一同はまるでビームのように発射された水を飛んで避ける。通り過ぎた水は近くの巨木に大きな穴を穿った。勇者の身体でも果たして無事で済むかどうか分からない。

 

「羽持ちが何してくるか分からない・・・けれど」

 

 水を躱して地面に着地する乃之は意を決して皆に敵を倒すための指示を出す。

 

「命ちゃんはもう一体の羽持ちを警戒しつつ、遠距離で援護。 静流ちゃんと私で大きいの仕留めるよ!」

 

「・・・・」

 

命、了承のサムズアップ。

 

「やったらーいッ!」

 

謎の男気を見せる静流。それぞれが役割を理解してバーテックスに向かっていく。

 

 

 

 

「・・・・参る」

 

 

 命は羽持ちのバーテックスを警戒しつつ、敵が攻撃を仕掛けてくるギリギリのラインで配置についた。恐らく敵が攻撃を仕掛けて来ても命にとっては余裕で躱す事がが出来る安全圏というものだ。

 

 

「水の攻撃に気を付けてッ」

 

 前方から乃之の警戒を促す声が聞こえる。前衛として正面の敵を見るだけでなく、後衛の事まで気にかけなければならないのだからリーダーというのは大変だな、と命は思う。だが、そんな乃之に命は高い信頼を寄せていた。だからその指示に反発することなく従い、全うする。

 

 

――――それが即ち、忍の道。

 

 

 

 

 命が大型の周りをまるで高速で飛び回り、矢を射かける。 走りながら、空中で敵の攻撃を回避しながら、その最中に放たれる弓矢は瞬時に10を超える。命は一度に2~3本の矢を放つことが出た。大きな隙も、誤差もなく複数の弓を撃つことは漫画とか映画の中の話だと思っていたが。

 

 常人では成すことは出来ない神技。普段からの鍛錬と、勇者としての強化された力が合わされば不可能な事はない。

 

「・・・・ッッ!!」

 

 だが、それはダメージに繋がっているかと思えば、それは皆無だった。水球のバーテックスは先ほどとは違い、一直線の水を吐き出すのではなく、小さく細かい水球を命の放った矢に向けて発射していた。

 

 放たれた水球は命の矢を包みこ、勢いを失った矢はやがて地面へと落ちていく。

 

「遠距離攻撃が効いていない!?」

 

 その光景を目の当たりにして静流は思う。厄介な相手だな、と。だが、眼を疑うような出来事が起きる。それは遠距離による攻撃を仕掛けていた命が自分たちよりも前へと駆け出していたことだった。

 

 

「命ちゃん、戻って!」

 

 乃之の制止も聞かず、命は大型の側面へ飛び込む。その手には既に弓矢ではなく、短刀が握られていた。弓矢がダメなら、近接攻撃で直接という判断だろう。

 

だが、その攻撃をまるで予測していたのかのように、待っていたかのように動きを見せていなかった羽根持ちのバーテックスが動き出す。 その後ろで浮いていた羽の一枚が命の繰り出される斬撃の直前、水球持ちのバーテックスの合間に滑り込んでいた。

 

 

「・・・・ッ」

 

 命の斬撃はその盾の役割をした羽に弾かれる。神の武器を持ってしても傷一つすらつかない敵の羽・・・いや、あれは盾なのだろう、と命は理解する。だが、そんな理解を進める間にもバーテックスの攻撃は続く。

 

 今度は水球持ちのバーテックスが小さい水球を多く飛ばしてきた。それは命を狙って放たれたものだけではなく、近くにいた乃之達をも巻き込んでいくものだった。

 

「あのバーテックス・・・見境なしにッ」

 

 そして、攻撃はそれだけではなかった。もう一体のバーテックスが盾を数枚その場に動かすと水球の動きに合わせて水球を反射させていたのだ。乃之は理解する。あの盾は大型を守る盾でもあり、攻撃の際には最大の連携を見せるものなのだと。

 

 その威力は一発一発は大した攻撃ではない。だが、効果は驚異的な物だ。

 

「・・・・ッッ」

 

 驚異的な身体能力で水球の反射を躱していた命の足に一発の水球が当たる。痛みが無かったが、その瞬間に体の反応が大きく鈍る。まるでガムのように水球は張り付き、水の重みで動きが鈍っていたのだ。

 

 その効果に気付いた時には既に遅く、移動速度を失った命の腕と胴に一つずつ水球がまとわりつく。水球三つほどで命の動きは完全に停止してしまった。

 

「ちょっと! アレヤバくないッ!? って乃之さん! 貴女まで突っ込んでどうするのぉー!?」

 

 静流が止める前に、乃之が槍のブースター機能を展開して命の元へ飛んでいた。敵が全く動けないこの時が一番の攻撃のポイント。自分がバーテックスだったらそうする、と乃之は考えていた。だからこそ、バーテックスの動きが分かる。そしてそれは確実に命を殺すものだ。

 

 

 水球を持つバーテックスが動けないでいる命に照準を合わせて力を溜めている。予想通り最初に見せてきたあの水のビームだ。この距離で撃たれたらひとたまりもない。

 

間に合えッ、と心の中で叫ぶ。乃之にとって仲間が居なくなること、大切な人が居なくなることは自分が死ぬより辛いことなのだ。

 

――――乃之の両親が死んでしまった日からそれは変わらない。

 

 

 

 

 命は死を確信していた。多分、この攻撃を食らったら確実に死ぬだろう、と。水球により動きを封じられ、逃げ場もなく、抵抗する術もなく。目の前のバーテックスが力を溜めている姿を黙って見ている事しかできなかった。

 

「・・・・あ」

 

―――確実に迫ってきている死。

 

 その事実に命は恐怖する。今までよりも必死になって体を動かして逃げようとするが、水球がそれを許さない。

 

ダメだ、と命は肩を落とす。このまま死ぬ事、御役目も自身に課せられた使命も果たせない出来損ないのまま死んでいくことは許されないというのに。

 

だが生を諦めていたその時である。

 

「命ちゃぁあああんッッ!!」

 

 自分の名を呼ぶ声が聞こえて、それとほぼ同時にバーテックスが水を発射していた。凄まじい水圧を持つ水が命に直撃する直前、飛び込んでくる影がある。

 

命は目を瞑っていた為分からなかったが、誰かに凄い勢いで引っ張られ、凄まじい水の衝撃を感じ、吹き飛ばされる。

 

どのくらい飛ばされたか分からないほどの浮遊感。地面にそのまま2人とも激突し、数メートル転がった先で停止する。

 

「い、いきて・・・る?」

 

 身を起こして目を明ける命のすぐ側には息を絶え絶えにした乃之が居た。

 

「乃之さん! 無茶し過ぎよ!やばい落ち方したわよ!? アタマアタマ!ヘッドよヘッド!」

 

 静流が乃之に駆け寄り、身を起こさせる。乃之は頭を手で押さえていた。敵が放った水が命に直撃する前に乃之は寸でのところで救出することはできた。しかし、完全に躱すことは出来ずに吹き飛ばされた結果、乃之は頭を地面に打ち付けていた。

 

「言い方、他にない・・?」

 

と、いつものように言うが乃之の口調が途切れ途切れだ。 体も左右に揺れているし、眼も虚ろだ。

 

「ああ、もう・・・脳震盪起こしてるわね。これじゃあ・・・」

 

 死ぬことがないとしてもこの戦いには復帰するのも時間が掛かる。そう判断した静流は辺りを見渡して叫んだ。

 

「ちょっとゴリラ巫女! その辺にいるでしょ!?」

 

「誰がゴリラ巫女だ!ちゃんといるわよここにッ!」

 

樹木の陰に身を隠していた桐香が姿を現した。

 

「乃之さの事を見てて・・・多分実体がなくても、アナタが側にいるだけで乃之さんもちょっとは落ち着くから」

 

「まるで私が精神安定剤みたいな言い方ね・・・でも今は仕方ないわ」

 

そう言いつつ、桐香が座り込んで乃之の背中を摩る。効果はないが、少しだけ乃之の顔色が良くなっている。静流の言うこともあながち間違いではなかった。

 

「・・・さて、じゃあ命?今から人類の存亡をかけた戦いをたった二人でする訳だからヨロシク・・・ちゃんと付いてきなさいな」

 

「ちょっと、無茶し過ぎよあなた達! たった二人で、しかも二体も大型がいるのよ!?」

 

「乃之さんが身体張ってくれたんだもの。今度は私たちが身を張る番よ・・・異議はないわね命」

 

「・・・・」

 

あと、と静流は桐香を見据えていう。

 

「ちゃんと二人で帰ってくるから、見事敵をデストロイしてきた時は渡していたゲームを返しなさい」

 

「か、勝手に決めないでよ!あ、コラ! 勝手に行くなぁー!」

 

と、桐香が反論する間もなく、静流と桐香が跳ぶ。高速で跳躍を繰り返す二人の姿は瞬く間に見えなくなっていった。

 

「・・・ちゃんと帰ってきなさいよね」

 

 見送った二人を見て、桐香は自身の拳を強く握った。

 

 

 

 

 

 

「さて、本当はビンタの一発でもかましてやりたいところなのだけれど・・・」

 

「・・・・」

 

 跳躍を続けながら、静流は命に目をやる。視線を落としていたのが分かった。気落ちはしているらしい。

 

「ま、勝手に自分で突っ込んでしまうという前科は私もやったわけだから強くは言わないわ」

 

敵の距離が近くなってきたところで、近くの樹木に二人は着地した。

 

「だから今から説教なんてしないし、特にビンタとかかまそうとか考えてない・・・・けれどね」

 

一息ついて、彼女は言う。

 

「私たちは仲間よ。互いに足りない所はカバーしなきゃならない・・・アンタの攻撃力の低さは知ってるし、そこは近接特化の私で帳尻を合わせるから・・・無理に突っ込んで行ったって怪我するだけよ」

 

 静流は続ける。

 

「もっと私たちを頼りなさいよ。乃之さんも、それを言いたかったはずだし・・・」

 

「すまない」

 

 短く、だがはっきりとした口調で返答してきた命に、静流が一瞬気を取られた。

 

「焦っていた・・・技が通じない事と・・・役目が果たせないことを・・・」

 

 珍しく、一言以上の台詞を言うのはそれなりに彼女自身も気にしていたのだろう。自分のせいで、仲間が傷ついた。その事実は精神にかなり負担になっていたに違いない。

 

「私には、果たさなきゃならない御役目があって・・・」

 

「御役目・・・・?」

 

 それは、この御役目のことだろうか、と思って静流が問おうとした時だ。背後から違和感を感じて、その質問を中断する。バーテックスが二体、二人の前に迫って来ていた。

 

「事情があるのね・・・命。 でも、それも含めて相談していくのが仲間ってもんよ。三人寄らば、文殊の知恵ってね」

 

 命の背中を気合を入れる意味でバシンッと叩くと命の身体が跳ねた。余程痛かったのだろうか、座り込んで背中を押さえている。

 

「ちゃんと、帰って乃之さんに謝りましょう。 私も、一緒に謝ってあげるから」

 

「・・・・」

 

 小さく、頷いたのを見て静流が微笑んだ。だが、すぐに戦話立つ戦士の顔つきになり、持っていた鞘から刀を抜き放つ。

 

「作戦がまったく無いって訳じゃないのよ。ただちょっとお互いに、火傷することは考えて欲しいかなって」

 

「・・・?」

 

 意味が分からない、と言った表情の命の前で熱気を感じる。それは間違いなく、静流から発せられていた物だった。

 

 その熱気は徐々に高まり、やがて刀身が発火する。

 

「今回の相手は、どちらかというと私が向いてるわ。ちゃんとサポート頼むわよ愛しの後輩」

 

 灼熱の剣を持った静流が敵目がけて、飛ぶ。比喩ではなく、燃えながら突っ込んでいく様はさながら大気圏で燃え尽きようとしてる流星のようだった。

 

 

 

「紅葉の勇者の炎を・・・その身を持って味わいなさいッッ」

 

 




この三人の勇者、いろいろと問題を抱えています。個人の問題を仲間と解決するか、っちゃんと向き合って解決するのか、そういう点では少し『のわゆ』の影響を受けてしまっているかもしれません。

静流ちゃんの最後の機能は刀に備えられた能力であり、三ノ輪銀の斧が燃える、みたいなイメージを持ってもらえればと思います。
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