朝露乃之は勇者である   作:バロックス(駄犬

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若葉様で遊ぶ最後のお話。ちなみに今回活躍してくれるバーテックスさんは状態異常を振りまくウザさで有名なドルチェさん。


〜それいけ、くっころ若葉ちゃん②〜

「ぐっ・・くうっ・・・あぁ・・・」

 

 変わらぬ樹海の景色に溶け込むように、一人の少女の悶える声が聞こえる。それは乃木若葉の物だ。

 

「ほらほら、もうへばっちゃったのかなぁ~」

 

 赤嶺友奈はとても楽しそうにそう言う。若葉と赤嶺の対決が始まって、10分くらいが経っただろうか。

彼女は若葉に言った。若葉を、造反神側の勇者にすると。

 

―――メチャメチャにしてあげるからさ。

 

そう言って、生唾を呑み、若葉は覚悟する。どんな苦痛を伴う拷問も耐えてみせる、と。

 

たとえ顔を殴られ、骨を折られ、爪を剥がされようとも、信じている仲間の救援が来るまでどんな痛みを耐えてみせると誓ったのだが。

 

「それにしても、流石初代勇者様。 日頃から鍛錬しているだけあって、筋肉質だけどしなやかな身体・・・マッサージし甲斐があるね」

 

 赤嶺友奈の両の手が若葉の二の腕を掴む。骨を折り、痛める為ではなく、骨に纏わりつく筋肉をゆっくりと撫でまわすように揉む。

 

「く、こっ・・こんなもの・・・はぅ・・・」

 

・・・もしやとは思ったが、こちらの”友奈”もマッサージが得意とはッ

 

 若葉の仲間である結城友奈と高嶋友奈もマッサージが得意だった。その手技たるや、手に触れる郡千景や鷲尾須美を悉く骨抜きにしてしまう程である。姿や性格が似ているだけあって予測はしていたのだが。

 

「ずっと刀ばっかり振ってるからだろうね・・・ってことは、ここも」

 

「はぁっ・・・んん!!」

 

 肩甲骨の隙間、筋肉が薄い部分を摩るように掌を回し、段階を上げては親指をその隙間に滑り込ませる。赤嶺の指が若葉の皮膚から筋肉までにかけて溶かしていくようにすんなりと親指の第一関節が入り込んだ。

 

「ここをさぁ・・・ぐりぐり、と」

 

「・・・っ」

 

 肩甲骨の隙間に入り込んだ指はまるで蛇の如く若葉の筋肉を蹂躙していく。普通ならば筋肉により阻まれ、進むことを止める筈なのに、赤嶺の指は巧みに動き回る。

 

普段の鍛錬で肉体を鍛えていたことが災いした。良質で鍛え上げられている筋肉はマッサージの影響を受けやすいのだ。

 

「はぁっ・・はぁっ・・・」

 

「よっと」

 

 肩甲骨に入り込んでいた指は引き抜かれる。若葉の伸びていた背筋から緊張がなくなり、ぐったりと脱力した。もう、立つ余力もないためか、繋がれている触手に半分吊るされている状態である。

 

「”若葉ちゃん”って最初はお堅いイメージがあったけどさぁ・・・そうでもないんだねぇ」

 

「ど、どういう意味だ・・・あと、気安くその名を呼ぶんじゃあない!」

 

「この方が慣れてるから良いかなーって・・・こんなに蕩ける様な顔するなんて意外だったよ」

 

「なっ!! と、蕩けてなど・・・」

 

 顔が熱くなるのを感じながら、若葉は否定する。赤嶺はくすくすと笑いながら、今度は若葉の背後に回った。

 

「本当かなぁ、こことか責められると・・・」

 

 赤嶺の手が若葉の首筋に及んだ。手はゆっくりと下から這うように首筋をなぞり、指は若葉の耳にたどり着く。

 

「ひゃうっ・・・!」

 

「ふんふふーん、やっぱねー」

 

 2本ほどの指は若葉の耳の全体、裏側、骨を触れるか触れないかの接触具合でなぞっていく。それだけで、若葉の身体が小さく震えていた。

 

「耳・・・だいぶ弱いでしょ」

 

「・・・っ」

 

 事実を突かれ、若葉は息を呑む。若葉にとって耳は幼馴染の上里ひなたに日ごろから耳掃除をされている場所であり、若葉も体の力が全身から抜けるほど弱い所だと自覚はしていた。

 

・・・だが、それをよりにもよって敵に知られてしまうとはッ

 

「いっておくけど、こっからが本番だからね・・・」

 

「ふん、これくらいの事で私が屈すると思うか?」

 

「顔真っ赤にして汗たらたらでよくそんな言葉が言えるよねー、ねぇそこのキミー!」

 

 赤嶺が手招きをして呼び出すのは若葉を縛っている植物型のバーテックスだ。うねうねと身をくねらせて赤嶺の前まで現れると赤嶺は指示を出す。

 

「ちょっと、”例のアレ”お願いできるかな?うん、思いっきり、どばーって」

 

・・・何をするつもりだ。

 

 話が済んだのか、バーテックスは蔦をまるで了承したように上下に振ると、その長い蔓を伸ばしてきた。先端が開き、花弁を若葉に向ける。

 

 

「むぐっ・・!?」

 

 花弁から噴き出した粉末が若葉の顔付近を包み込む。せき込む若葉はその際に粉末を吸い込んでしまった。やがて粉末を出し終えて役目を終えたそのバーテックスはその場から去っていく。

 

「それじゃーはじめよっか。これから若葉ちゃんには最高の耳かきをしてあげるよ」

 

 花粉を食らわないように隠れていた赤嶺がひょっこりと顔を出すと赤嶺の合図で若葉を縛っている触手の締め付けが緩んだ。

 

・・・チャンスはここしかない!

 

 拘束の緩み具合は全力の若葉なら腕に力を入れただけで振り解けそうなものだった。何を思って拘束を解く行為まで及んだのか理解は出来なかったが、若葉にとって逃げ出し、反撃をする絶好の好機である。

 

「・・・なっ」

 

 だが、いかに力を込めても若葉が触手を振り解くことは出来なかった。拘束は完全に緩んでいる。それどころか、完全に触手は若葉から外されたのに若葉は動くことが出来ずに地面に落下する。

 

・・・どうしたというのだ……ち、力が入らない……しかも……

 

 脱力感と同時に感じたのは自身の体温の上昇。心臓が脈打つたびにそれは加速し、若葉の行動の自由を奪っていた。

 

 

・・・逃げなくては……

 

 

 力を振り絞り、手と足を動かしてわずかずつ進んでいく。だが、そんな行動は傍から見ればカタツムリが歩いているが如き遅さだ。それを赤嶺友奈が黙って見ている訳がなく。

 

「ははっ、こっちこっち若葉ちゃん」

 

「かはっ・・・!!」

 

勇者装束の首根を掴まれ、強引に引き寄せられると若葉の後頭部を柔らかなクッションが包んだ。

 

・・・膝枕ッ!? 赤嶺友奈の!?

 

「いつもされてる膝枕の具合とはまた違うだろうけど・・・・それよりも、どう? 体が動かないし、凄い熱いでしょ?」

 

 若葉が言わずとも、それは自身の身体の心臓の鼓動と汗番だ顔を見れば分かる事だ。

 

 効果は十分、と赤嶺が頷く。

 

「・・・赤嶺、き、貴様・・一体、なにを・・した・・っ」

 

「さっきの子の煙を吸ったでしょ? アレ、簡単に言うと・・・ちょっとした毒だよ」

 

「なっ!?」

 

「大丈夫大丈夫、体には自由を奪うのとちょっと体が熱くなるだけのクリーンな毒だから」

 

と、若葉の視線は赤嶺の手だ。彼女が持つ小さく、細長い棒がある。その視線に気づいた赤嶺は小さく笑みを浮かべて言うのだ。

 

「これから若葉ちゃんに耳かきするよー」

 

若葉の顎を片手で支え、顔を動かないように固定する。若葉は何をされるかも全て分かっているから逃げ出したいのは山々だが、毒のせいで全く動くことが出来ない。

 

すると、赤嶺が若葉の耳元で囁いた。

 

「多分、これで最後だと思うから・・・覚悟しちゃっていいよ?」

 

「・・・っっ!!」

 

その直後、耳かき棒が若葉の耳の中へと刺しこまれる。刺しこまれると言っても、いきなり奥深くまでいく訳ではない。ゆっくりと、焦らすように、浅い部分から、しかも丹念に耳かき棒を動かしていく。

 

「んにゃっ!?」

 

・・・こ、コレは……マズイ……!!

 

「こしょこしょこしょ・・・っと」

 

 耳かき棒の先端の部分が若葉の内壁を軽く、小刻みにひっかく。

 

「うあぁ、うあぁぁっ、ふぐっ・・・」

 

 赤嶺の動作一つ一つ、若葉の弱い個所を的確に責めていた。だが、若葉も黙ってやられている訳にはいかない。身を焼くような快感に負けないよう、勇者装束の一部を口に含んで声を押し殺す。

 

・・・わ、私は絶対に屈しないっ

 

「若葉ちゃーん、我慢しても無駄だよ」

 

「ふー、ふー、・・・んぐっ!?」

 

 息継ぎの間、若葉の背筋が震える。耳たぶを軽く引っ張られ、露わになった耳の窪み部分を耳かき棒が走った。小さく、引っ掻くような動きは若葉の思考を徐々に狂わせていく。

 

「や、やめ・・やめろ・・・っ・・・あか、みね・・んあっ」

 

「あんま動かないでー、怪我しちゃうかもよ」

 

こちらの意見など聞く耳持たないといった感じで赤嶺の耳かきは続行される。耳かきだけでなく、時には耳周りのツボも刺激されて若葉の口元から力が抜けるのは時間の問題だった。

 

 

 

 

 

――――数分が経過する。

 

 

「・・・ふあ」

 

 執拗な責めによって若葉の顎は動かなくなっていた。

 

「いい顔になったねー、若葉ちゃん、今どんな顔してるか見てみよっか」

 

 赤嶺から手鏡を差し出され、その目の前にいる少女を見て若葉は目を疑った。

 

 

・・・これが、わたしなの、か。

 

 

 目を疑う。そこには髪は乱れ、惚けた顔でだらしなく口元から涎を垂らす乃木若葉の姿がそこにあったのだから。

 

「普段勇者達を取りまとめているリーダーも、これじゃあ形無しだねぇ」

 

 

・・・く、屈辱だ。こんなの……

 

 若葉は涙を浮かべる。それはここまで良いようにされて何も抗えないでいる自分がいるのと、実際に赤嶺の耳かきに自身が感じてしまっている事だ。散々と赤嶺友奈の責めに耐えられると豪語したのに、蓋を開けてみれば自分はまったく歯が立たなかった。

 

 

・・・しかも私はこの耳かきに....

 

期待をしてしまっている。

思考はどんどんと赤嶺友奈の色に染まりつつあり、彼女の耳かき行為がまだ若葉が到達したことが無い世界へ連れて行ってくれることを望んでいるのだ。

 

「いいんだよ若葉ちゃん」

 

 まるで心の中を見透かすように赤嶺が顔を覗かせる。

 

「いーっぱい、向こうの世界で頑張ってたからね・・・戦って、戦って、疲れてたもんね。私のモノになっちゃえば・・・今まで守ってきたものを捨てちゃえば、楽になれるよ・・・それとも」

 

 卑しい笑みを浮かべて赤嶺が耳元に顔を近づける。次の瞬間、若葉の耳に向かって彼女の息が吹きかけられた。

 

「ふにゃあああん!!」

 

・・・こんなの……私は知らない! 今まで、ひなたにされてても……

 

 幼馴染の耳かきの途中、たまに悪戯で同じように息を吹きかけられたことがあったが、今のような感じ方は無かった。こそばゆい程度であり、今のように声を上げて乱れてしまうような事は一度も無かったのだ。

 

 

「まだまだあるよ? 若葉ちゃんの知らない”気持ちイイこと”がさ」

 

 数度息が吹きかけられる。浅い部分、深い部分、どちらも強すぎず弱すぎずリズミカルに。その絶妙さは若葉の脳を揺さぶるには十分だった。

 

「ひゃ、ひゃめろ・・・あきゃみねぇ・・しょ、しょれはもう、らめっだ・・・っ」

 

 自分でも何を言っているか分からない。若葉の頭の中はぐちゃぐちゃだった。

 

「かわいいね若葉ちゃんは・・・今は口もまともに聞けないだろうからさ・・・私に従って、こっち側の勇者になるんだったら頷いてくれればいいよ。もちろん、今までの仲間は捨ててね」

 

・・・友奈、千景、球子、杏……。

 

 ぼやけた頭の中で思い浮かべるのは旧世紀の、元の時代でともにバーテックスと戦っている仲間たち。そして、巫女として常に若葉の帰りを待っている愛しい幼馴染。

 

・・・ひな、た……!

 

できない、と若葉は心の中で否定する。自分を信じ、互いに背中を合わせて戦ってきた大切な仲間たちを若葉は裏切る事は出来ない。これまで培ってきた絆と思い出が若葉の意識をギリギリまで繋ぎ止めていた。

 

「まだかーな?・・・れろっ」

 

「ひっ・・・・」

 

 耳の裏に、にゅるんとした感触が走る。 赤嶺の舌が若葉の耳の外側をつつーっと、なぞった。全身を電気が走ったような感覚、同時に若葉の頭の中で何かが弾け飛んだ。

 

・・・あれ、私……なに、を…

 

 大切な友たちの顔が、思い出せない。自分は何か大きな役割を担っていたはずなのに。

 

 

・・・だれ、だろう……。

 

 笑顔でいつも自分を迎えてくれていた幼馴染の顔も若葉はもう思い出すことは出来なかった。

 

 だが、その中でも若葉は思う。

 

・・・すまない、みん、な……私は、もう……。

 

 自分はもう誰に謝っているのか分からない。だが、こんな状態になり、これからする自分の行動は謝らずにはいられないのだ。罪悪感と快楽が混ざり合い、勇者乃木若葉の精神は崩壊していく。

 

 

―――若葉は小さく、頷いた。

 

 それは、服従の証。この世界で敵対する造反神の手先になること。これまでの仲間たちを全て裏切るということ。そして、赤嶺友奈の手に堕ちるという事。

 

「ふふ・・・じゃあ約束通り、だね」

 

 無邪気な笑みと共に、若葉の耳へ再び耳かき棒が迫る。若葉にはもう抵抗する気力はとうに消えうせ、ただただ与えられるであろう快楽に身を任せる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そして赤嶺友奈は言うのだ。『これは我慢できるかな若葉ちゃん”』そうしてこれまでの34倍のスピードで動く耳かき棒に耐えられずにご先祖様は――――――――」

 

「ああっ! 凄いよ小学生の私ッ! こんな創作のアイディアが小さい頃の自分のゆめから生み出されてくるなんて・・・ッ  メモメモ」

 

「ビュオオオオオオオオオオ!!」

 

「ビュオオオオオオオオオオ!!」

 

 二人の乃木園子が目に生えたての椎茸を宿らせてメモ用紙にひたすらペンを走らせる。鼻息を荒くしながら物凄いスピードで舞うメモ帳の片紙。

その舞散る用紙に埋もれるように鼻血を垂らす一人の少女がいた。伊予島杏である。

 

 

「あ、ああっ、園子先生、園子ちゃん、流石すぎます・・・! 私、今は時が見える!」

 

「うおーい杏! 戻ってこ―い! お前が今行こうとしてるのは多分行っちゃいけない所だッ タマが連れ戻してやるから待ってろー!」

 

「ちょっと土井さん、連れ戻すって・・・どうするの?」

 

「止めるなよ千景! タマもこれから頭を打って杏と同じところに行く! そしたら杏も連れ戻せるだろ!?」

 

「・・・いいわ、止めないからさっさと逝ってきなさい」

 

「ぐんちゃーん! 字が違うよ字が! それ死んじゃうほうの字だって!!」

 

「・・・・」

 

乃木若葉は思う。この神樹が作り出した世界に来てから皆おかしくなっているな、と。

 

「ああ! イイッ! くっころ若葉ちゃん最高ッ!!」

 

 嬉々とした表情で園子の小説を聞きながら常軌を逸したスピードでパソコン画面にタイピングしていく上里ひなたは今日もフルスロットルだ。

 

「いやーまさかあの植物バーテックスを見て創作意欲がガンガン湧いてくるとは思いもよらなかったよー」

 

「そうだねー、これなら勇者部の皆にも応用が利くかもしれないから色んな人で試そうよ! 次はにぼっしーとゆーゆで!」

 

「なら私はミノさんとわっしーで試すよ!」

 

 二人の乃木の子孫たちは今日も常識のメーターを振り切っている。どうやら今度は同僚達をも自身の小説の中で陵辱するらしい。

 

「あれ、ご先祖様、どうして生太刀なんて構えて・・って」

 

「いやははは、般若のようなお顔は、わかちゃんには似合わないかなーって・・・」

 

「そーのーこー! 今日と言う今日は許さんぞ! 明日の朝まで正座だァ!!」

 

「ひいーーーーーーん!」

 

「ひいーーーーーーん!」

 

 

 乃木園子のメモ帳はこの後、怒りの若葉によって殆ど没収されたのだった。これ以降、若葉が植物型のバーテックスを見て真っ先に自ら討伐するようになったのは言うまでもない。

 




僅か2時間半て作ってしまったお話。タイトル通りあんまくっころ出来なかった.,..悔しい。

というか最後のオチだけだとただの「園子の夢」になるじゃねーかと執筆終盤で気付いた。

絢爛大輪祭、始まりましたね、20連して土井珠子、迎え入れました。 メブが欲しかった...

こっちの短編はほのぼのイチャイチャなんでもござれな展開になりそう。思いついたらまた書く予定です。
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