そしてだ、だれか...神樹様の恵を..うどんを...く...れ
桐香ちゃん相手に静流ちゃんでは戦闘描写もないままあっけなくボコボコに.... はたしてこんな巫女が居ていいのか
昔、桐香は自身の祖母に巫女としてのお役目について聞いたことがある。それは『神樹様の神託による声を聞く』ものではなく、市橋家に代々と伝わっていた巫女としての役割というものだ。
まだ幼かった頃の桐香はその力の内容を聞いても自分が勇者になるものだと諦めておらず、
「そんなことより、私は勇者としてたくさん戦ってバーテックスを倒したい」
そう言っていた。だが彼女の祖母は少し笑って桐香の言葉を咎めた。
「この能力《ちから》は今日まで四国が生き延びてきたその一端を担っています。徐々に弱まって、歴代で数人くらいしかその力を使うことが出来ていませんが・・・・勇者だけが戦っているのではないのですよ、桐香・・・」
祖母は桐香の頭を優しく撫でながら彼女の身体を引き寄せる。膝の上に乗せられた桐香の前に見えた写真があった。代々、市橋の巫女としてお役目を成し遂げていた巫女の写真が写りだされていた。そこには巫女だけでなく、勇者や大赦職員との集合写真まであったのだ。
「”誰もが”、この国を生かす為に戦っている・・・そこに巫女とか勇者とか、関係ないのですよ」
「・・・・わからない」
「そうでしょうね」
だが、今度の祖母は特に桐香を咎める事もなく、こちらを見らこともなかった。そして勇者と巫女と大赦職員一同が集まってVサインをしている写真を見つめては言うのだ。
「でもきっと大丈夫、いつか分かる時がくるから」
そう言ってくれた祖母は二年後にこの世を去っている。だが、桐香はこの時も祖母の言葉の意味が分からないままであった。
●
「・・・チッ」
試合の合間に突如として呼び起こされた記憶に桐香は思わず舌打ちをした。忌々しそうに竹刀を振るって気を紛らわせては、目の前で無様に膝を着いた勇者である静流に視線を戻す。
「まだ続ける? ・・・・私の10戦10勝、たしか静流は剣道部にも入ってたんだっけ?」
「はぁ・・・はぁ、それが・・・なに?」
呼吸が乱れまくって完全にスタミナが切れている静流に対して桐香は肩がわずかに上下する程度だ。それくらいに技術にも体力にも差があるという事だろう。
「通りで・・・綺麗なスポーツ剣道なんてやってるから隙を突かれる。あんたらが戦う相手は人間じゃなくて、化け物なのにさ」
桐香はため息交じりに竹刀を杖にして地面に立たせた。実際に、試合をしてみた桐香が感じたことは、確かに静流の剣術の腕前はかなり高いものであった。踏み込みの強さも気合も充実している。
だが、それはスポーツ競技という枠の中に留まっている。 悪手や不意打ちなどには滅法弱く、それをフル活用した桐香の喧嘩剣道とではどちらに武があるのは明白だった。
「だいたい分かったわよ」
落胆するようにだがそれは元々分かっていたかのように、
「同じね。これまでに私が見てきた勇者候補生と一緒・・・全員----」
弱い、そう吐き捨てる。そんな桐香に静流も黙ってはおらず立ち上がった。
「そこまで言うほどかしらッ」
立ち上がるや否や、即座に桐香に竹刀で斬りかかる。だが竹刀は空を切り、代わりにカウンターの竹刀が静流の面に放たれた。身を捻って避ける事も敵わず、額の部分に直撃する。
「うわ、いたそ」
「・・・・・」
正座している乃之と命が思わず身を震わせるが、当の本人である静流は地面に倒れることなく一歩踏みとどまって見せた。
「不意打ちとは、成長したジャン」
「どうもどうも、学習能力は高いのよ私」
その割にカウンター直撃してんじゃん! と桐香は内心でツッコンだ。どこまでこの女はポジティブなのか。
「その前に、弱いってさっきアナタ言ったわけだけど・・・ドヤ顔で言ったわけだけど」
「ドヤ顔は余計として・・・たしかに言ったわ」
うーん、そうねぇ・・・と静流は唸った勝負中なのに腕を組み始めた。
「やっぱりアナタダメ女よ! 今この四国でもっとも冴えない女ねッ 今この場で私が一番弱い人間が誰か当ててやるわよ10秒も待たないわゲームのコンティニュー画面みたいな数字なんて私見たくないもの、指で刺してやるわ!さんハイ!」
意気揚々と静流が指差すのは目の前にいる桐香だった。
「へぇ・・・私に一発も入れられない人が何を言ってんだか」
笑って吐き捨てる。事実、試合が始まってから静流は桐香に対して竹刀を一発どころか掠らせることすらできていない。実力の差は歴然であり、負け惜しみとも取れる言動ではある。
「近接タイプのアナタがここで私に勝てない時点で他の二人なんてたかが知れた強さだわ。命さんならいざ知らず、乃之さんとかにすら勝てないと?」
「私へのさり気無い呼び捨てが今三人の中で立場が低いと完全に理解したわ。そんなことよりも、よ」
内心ショックなのを隠しながら静流は目先の桐香に視線を落とさず言う。
「わたし、この中で一番・・・乃之さんが強いと思ってるから」
「へ?」
とキョトンとした声を上げたのは桐香ではなく、本人である朝露乃之であった。
●
「訳わからんことを・・・木の棒で押したら倒れそうだし、敵が来たら真っ直ぐに逃げ出しそうじゃない」
そうね、と静流は桐香の言葉に頷く。確かに朝露乃之はこの勇者の中では一番の非力であり、いつもどこか脅えていて、人との付き合いが苦手そうで戦いになったらすぐに撤退を決め込みそうな少女だ。
「でもアナタ、知らないでしょ。この子、他の誰よりも優しい子なのよ」
それは最初の体力作りのランニングが終わった後、授業の休み時間に乃之が疲れ切っていた自分にクエン酸などのサプリなど持って来てくれたのだ。わざわざボトルで、一番上の3年の教室からだ。
静流だけにではない、勉強がなかなか進んでいないらしい命の面倒を見ていたのを寮に戻ってからは付きっきりで教えていたのを静流は目撃している。自分の勉強もあるというのに。
また訓練後は一番疲れている身の癖に地面を這いながらスポーツドリンクやタオルをこちらに渡しにきていた時は流石にそろそろ休めと思ったが。
「体力も低いし、力もないし、臆病に見られてしまうかもしれない・・・けど、こうした仲間を思いやる行動を自分から行えるっていうのは中々出来ないことだわ・・・・そしてそれは彼女の強さと言える」
静流自身も勇者と言うお役目を与えられて、自分の事しか見えていなかった。自分の事は自分で決めて動くことが出来るし、周りの他の勇者たちの事なんて何一つ考えていなかったからだ。
「んで? 関係ないと思うんだけど・・・敵を倒すのに優しさがいるの?」
桐香はただ冷静に切って捨てる。だが、表情は少しだけ歪んでいたのを静流は見逃さない。
「まだ分からない? 勇者ってのは、勇気ある行いをする勇気に溢れた者のことよ。 人の為に、勇気ある行動を進んでやっていた乃之さんが一番勇者として相応しいと思うのは当然じゃないかしら?」
少なくとも自分はそう思っている、と静流は断言できる。三年という上級者だからと言ってまったく見ず知らず、赤の他人に対して時間をかけたが理解をしようとしてくれた。
この際だから、と静流は続けた。
「言ってやるワケだけどアンタ、少しでも私たちの事を知ろうと、勇者の事を理解してあげようと努力したことがあったのかしら?」
●
「りか・・・い?」
静流の言葉を聞いて、考える。理解するというその意味を。
・・・理解をする? 誰を?
―――勇者をだ。
自問自答。だが、その問いを自身に行ったと同時に蘇るのは愛媛でのあの勇者候補生たちの言葉。
『いい加減、無駄な努力はやめたら?』
訓練ですれ違い様に何度も聞かされた陰口。
『どうせ落ちぶれた家系の巫女なんだから』
数少ない巫女の装束を泥で汚され。時にはハサミか何かで切り刻まれた。
『生まれた家を呪え』
あまり良く理解もしてなかった家柄の事まで言われた。
『巫女なんて神様の声を聞く装置なんだし』
「――――ッッ!!」
ふざけるな、と心で言葉を浮かべた時には竹刀を握る力を強めて静流目がけて振り下ろしていた。
「分かるもんかッ アンタたちにッ!!」
少し大げさに振り上げていた為か、その一撃は簡単に静流に受け止められる。鍔つり合いのようにはいかず、上から押し込むように竹刀に体重をかける。
「自分の力がたいして役にも立たないかもしれないッ」
「くっ・・・」
「勇者になることも否定されて、巫女としても否定してくる・・・私の生き方も存在理由も否定してくる、そんな勇者の事なんて知りたいと思うかッ」
激昂とともに静流が受けている竹刀が徐々に押され始めた。 だが、静流の顔がその緊迫した場面にも関わらず一瞬戸惑いの表情を浮かべる。
「あなた・・・涙」
「え・・・?」
泣いている事に気づいてなかったのかその事実に思わず籠っていた力が抜ける。その隙を突かれたか一気に静流に竹刀を押し返されて弾かれた。
「どうして・・・」
「余程、嫌なことがあったんでしょうね。 まぁ、無理に聞かないけど・・・」
静流は流れるように竹刀を構え直した。決めたのである、ここで終わらせるしかないと、禍根を断ち切るしかないと。
桐香を縛り続けている呪いにも等しいその鎖はこの時、彼女を打ちのめすという形でしか解放する方法はない、そう思ったのだ。
「何もかもここに置いていきなさいッ」
正攻法の正面からの突進。何度も桐香に仕掛けては見破られ、返されていた技だがそれでもなお自身の意地を通さんが為に静流はこのスタイルを選ぶ。これが琴吹静流という証の戦い方が、市橋桐香を打ち下すという事実に意味が生まれるのだ。
まる
・・・正面、反応が遅い!これなら――――
一本を取れる、そう確信した静流に違和感があった。 それは思わず繰り出そうとした突進を止めてしまうほど。
静流たちを包んでいる空気が一変した。空の雲は流れる事を止め、風によって舞い上がった土煙すらも、周囲の木々の揺れる音すらも聞こえない。
目前の桐香も竹刀を構えたままの姿で凍りついたように停止していた。
「あ、あれ・・・これって」
「・・・・くる」
異変に気付いた乃之と命が立ち上がる。だが長い間正座していた為か乃之だけ前のめりに倒れ込んだ。
「なにしてるの朝露さん・・・」
「し、しびれた・・・」
まったく、と呆れたようにため息を出して静流はこの状況を分析する。
これは自分たちが勇者としての授業を受けていたころに聞いた事があった現象だ。
「―――ちょっと、空気の読めない奴らよね・・・こんな時に」
突如として三人のスマホが耳障りな警報音を鳴らし始めた。すぐにスマホを取り出して画面を確認すると視認できるほどに映し出された文字を読み上げる。
「樹海化・・・警報ね」
樹海化―――それは、四国内部にバーテックスが侵入した際に起こる現象。
四国の結界を破り、神樹破壊を目的とするバーテックスを勇者が迎え撃つための神樹による防御結界。
神樹による世界の再構築が始まった。急激に世界の景色は作り変えられ始め、周辺の木々が、遠くに見える家屋や建造物が巨大な蔓に覆われていく。そうして樹海化により四国と言う国は完全に別世界の物質となるのだ。
「乱入クエストとはやってくれるじゃないバーテックス!」
「そろそろゲームから離れようよ、琴吹さん」
――――四国の命運をかけた初陣が今始まる。
多分、友奈ちゃん達みたいな超絶いい子達だけじゃなくて地方になればこんな感じの腐った奴らも居たと思うんだ。
乃木若葉小説下巻とわすゆ予約なう。届くのが待ち遠しいぜ。
次回からようやく出てくるバーテックス、一応この時代でも星屑相手なら問題なく対処は出来ますが大型には苦戦する設定。