朝露乃之は勇者である   作:バロックス(駄犬

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同じタイトルが多すぎる...変更して整理しようか迷っている今日この頃。第1章は今回で終了になります!のわゆ下巻とわすゆが届いた!一日でのわゆ終わったけどメンタルヤバすぎたw執筆意欲がごがが


第7話〜巫女と勇者たち⑥〜

 遠くから爆音が響いている。爆音は振動となり丘に佇んでいる乃之と桐香に伝わる。足元の震えは大きくなってくる感じからしてその音響は徐々に近づいてきていた。

大型のバーテックスがこちらに向かっているのだ、と乃之は理解することが出来る。

 

「なんで、なんでここに残ってるのよ・・・」

 

 後ろにいる桐香がこちらに聞いてくる。桐香には、勇者の静流と命の二人がバーテックスに向かっていくのに対して一人でこの場所に残っている乃之の事が気になって仕方なかった。

 

「敵が目の前まで来てるのに・・・どうして皆で戦いに行かないのよ」

 

 大型バーテックスの姿は桐香たちが居る場所から肉眼でとらえる事が出来ている。爆炎をまき散らしながらこちらに向かってきているし、それを迎撃しているであろう静流と命の姿も見えた。

 

 なのに乃之は動かない。表情を少し強張らせて、その場から動かない。緊張しているのか、突撃して戦うことに不安と恐怖を抱いているのか。

 

「だって・・・」

 

 桐香の問いに、乃之が答える。それは動作を伴うものであり、両手を翳した瞬間に光が顕現する。その時に乃之が手に現れたのは一本の槍だった。

 

「い、今の市橋さん・・・放っておけないから」

 

 

 

「放っておけない・・・って、どういうこと?」

 

桐香は乃之の言葉の意味を理解できないでいた。

 

「市橋さん・・・手、震えてた・・・」

 

思わず、あっ・・・と言葉を漏らす。確かに、大型バーテックス以前に桐香は星屑の姿が見えた瞬間に身震いした。それは確実に、恐怖からくる震えであった。恐らく乃之はその自分ですらあまり意識していなかったサインを見逃していなかったのだろう。

 

「か、関係ないでしょ・・・私はこの世界では実体のない精神体なんだし、アイツらに襲われることなんてないんだからさ!」

 

「でも、それは勇者が触った時の話だよ・・・もし、星屑とかバーテックスは市橋さんに触れられるかもしれない」

 

乃之が言う内容はあくまで憶測に過ぎない。だが、この場所に来た桐香でさえも先祖代々の能力とは違い勇者に知覚できるほどの姿で樹海に現れる事が出来ているのだ。例外中の例外。それならば、乃之が言う話も鵜呑みには出来ないのだ。

 

・・・だとしても、私は朝露さんに助けられる資格なんて持ってないッ

 

 勇者である彼女、いや・・・彼女達に対して、巫女である自分はなんと言っただろうか。

 

 

――――弱い。

 

 吐き捨てるようにそう言ったのだ。ましてや、自分と乃之を静流が比較した時も桐香は鼻で笑うように否定していた。ありえないだろう、と。冗談だろう?と。

 

 考え込む桐香をよそに、乃之がいる前方から飛び上がる白い影が見える。 静流達が戦っていた前線から漏れてきた星屑の一体だ。その出現に気付いた桐香が叫ぶ。

 

「乃之ッ!」

 

「・・・・ヒッ!!」

 

 白い星屑の姿を確認した乃之の顔が恐怖で染まる。だが恐怖の声を上げると同時に、彼女は既に武器である槍を構えて前に踏み込んでいた。向かっていた星屑の頭部目がけて思いっきり槍を突き出す。

 

「ぐ、ぐぅぅぅうぅ!!」

 

 星屑の額を確実に貫いた槍を気合の一声と共に押し込んで見せる。槍の刃が白い巨体から顔を見せて星屑は声も上げずに絶命ていたが乃之に突進してきた勢いは止まらない。慣性の法則に従い巨体が乃之と衝突し、その華奢な体を吹き飛ばす。

 

 

「乃之ッ ねぇ! 大丈夫ッ!?」

 

「だ、大丈夫・・・・い、痛いけど」

 

 桐香の足元まで転がった乃之がゆっくりと体を起こす。樹海の土の上を転がったからか、勇者服にはもう泥が付着していた。

 

「市橋さんは、無事・・・」

 

「あなた・・・怖くないの?」

 

 桐香は乃之に触れる事が出来ても実際に動かしたりすることは出来ない。意味はないが、乃之の背に手を添えて身体を起こすよう手を動かした。

 

「・・・・」

 

 桐香の問いに暫く黙った後、言う。

 

「怖いよ・・・とても、怖い・・・でも」

 

 星屑に刺さっていた槍を引き抜いた乃之は身体の土を手で払った。そして、脅えながらも強い意志を感じさせるような口調と共に

立ち上がる。

 

「私は、勇者だから・・・」

 

――――乃之さんが一番強いと思ってるから

 

「放っておけない人がいる。その人が怖い思いをしている時に、私は逃げてちゃいけない・・・から」

 

「・・・ッッ!!」

 

 樹海化する前の静流が言っていたことを思い出す。勇者たちの中で一番強いのは朝露乃之だと。勇者とは勇気に溢れる行いを勇気を持って行う者のこと、それは力があるとは関係ない恐怖に屈することが無い心の強さなのだと、今の桐香には理解できる気がした。

 

 そう考えた時、朝露乃之の背がこれ以上ないくらいに大きく見えて思わず目を伏してしまうくらいに眩しく見えたのだ。

 

「あと、名前・・・」

 

「え?」

 

「呼んでくれて、ありがと・・・乃之って・・・」

 

 桐香は思い出す。星屑に攻撃される直前、咄嗟に乃之の名を口にしていたことを。

 

「・・・今まで私、学校で名前呼ばれたことなかったから、呼んでくれるの・・・嬉しかった」

 

「き、気が動転してただけだし!」

 

 そう言って、桐香は顔が熱くなるのを感じる。視線を送っている乃之に対して完全に目を逸らすほどに。

 

でもさ、と言って乃之は小さく笑みを浮かべて言うのだ。

 

「私達もお互いの事・・・知らなきゃいけないと思う。 巫女とか、勇者とか関係なしに・・・その」

 

 仲良くなりたい、と。

 

・・・貴方は恥ずかしいとも思わないのか。

 

 またしても、顔に熱を感じた桐香だったが小さくため息をつく。先ほどの発言がさぞ当然の事のように言うことができる。時間が掛かり、もたついてしまうことがあるが必ず実行し、言葉として、行動として表す。それが朝露乃之の強さなのかもしれない。

 

「なーんか、一人相撲してた気分だわ・・・ずっと」

 

 桐香は空を見上げる。樹海化しても空は存在している。雲も無くまるで夜のように暗闇となっているが。

乃之の雰囲気にほだされたというのか、勇者として巫女として否定されてきたころから胸に抱いたモヤモヤしたものはどこかに消えていく気がした。

 

・・・今の勇者たちに、巫女としての私が出来ることを探すんだ。

 

 彼女の、乃之のお蔭で巫女としての自分をすんなりと受け入れられる気がしたのだ。そして、同時に思う。今この樹海化してる世界に居る自分が出来る事を。

 

「ちょっと朝露さんッ!? あのクソデカブツが倒せないんだけどッ」

 

 突如としてこちらに飛び上がってくる人影がある。影は二つ、静流と命のものだった。

 

 

 

 

 乃之達がいる場所に集まった静流は実際の戦闘時の内容を報告していた。 

 

「あのバーテックス・・・周囲に爆弾のような、砲弾っぽいの撃ち込んでくるわよ。 近距離でも遠距離でもお構いなくだわ・・・命さんと話し合って、一時撤退するほどね」

 

 遠くに見える、ピンクの巨大な物体が空中を浮遊して前へと進んでいる。乃之達が遠くからでも感じていた爆音の正体はあのバーテックスによるものだったと理解した。

 

「このままじゃ、時間が・・・」

 

 桐香の視線を向ける先は周囲の樹海の樹木。この樹木は見た目こそ木の形をしているが作り変えられた現実世界の物質なのだ。だからこの場所でのダメージは現実世界に戻った際に事故や災害などの形に置き換えられて返ってくる。

 

「正面から斬りかかろうにも残った星屑が邪魔するようにバーテックスに張り付いて攻撃できないし。命さんの弓も体に一本だけ当たっただけじゃ対してダメージにはならなかったわ」

 

 星屑たちの戦いは単調に動き回るという出現時の特性から迎撃する分には苦労はしない相手であったが、時間をかける事によって相手も学習し、連携することを覚え始めた。その例として今の大型を守る星屑の群れからは連携と言う動きが見られる。厄介な相手になったものである。

 

「・・・・」

 

 乃之は真っ直ぐに敵を見つめる。視線の先には大型バーテックス。今でも進行を続けており、下腹部から伸びた尻尾のようなものから砲弾のような物体を複数射出していた。辺り一面に爆炎が吹き上がる。

 

「・・・ん?」

 

 何かに気付いたように、乃之がさらにバーテックスを観察した。ポイントは敵が爆発物を射出する過程だ。

敵が砲弾を射出する直前、異様に腹部が輝いてうっすらと丸型の物体が見えて、それが尻尾へと移動しているのが見えた。そして数秒後、同じく砲弾が射出される。

 

 敵の砲弾を打ち出す瞬間には必ず腹部が光り出す事、そして砲弾を射出する場所はたった一つ。その過程から見出される作戦が、乃之にはあった。

 

「あら、朝露さんいい作戦が?」

 

「うん、ちょっとみんな・・・」

 

 

 

 

手招きするように、全員を集めた乃之が自分が先ほど思い浮かんだ作戦を一同に伝える。すると一瞬の静寂のあと、桐香が口をあんぐりと開いて

 

「マジでやんの!?」

 

「く、クレイジーだわ」

 

と静流。

 

「・・・・」

 

命に関しては無言だが、体がカクついていた。

 

 

 

 

それぞれが配置につく。静流と命が前に出て、乃之が二人の姿を捉えられる後ろの位置で待機。対するバーテックスは先ほどまでと変わらず周囲に星屑を旋回させるように纏わせて前進中だ。

 

 

「ええい、こうなりゃやったもん勝ちよ! 作戦開始ィィィィ!!」

 

 若干ヤケクソ気味に静流が跳ぶ。それに続いて命も駆け出した。前に飛び出した二人は大型バーテックスに照準を合わせておらず、大型バーテックスが牽制用に射出した砲弾のようなものを躱していくと真っ先に周囲の星屑へと攻撃を仕掛ける。

 

「参る」

 

 その一言は静流ではなく、命が発した言葉だった。自身の武器である弓矢をしまい、身を低くして静流を凌駕するスピードで星屑に肉薄。だが、丸腰ではない。今の命の手には握られている武器があった。

 

 

「刀・・・?」

 

 

 否、それは刀というにはあまりにも短い。長さ的には脇差よりあるかないか。さながらその身なりからして忍者刀の類。

その後の命の動きは常人では理解できない物だった。

 

 

 飛び上がって狙いを定めた星屑に最初の一撃をお見舞いした後、その星屑の死体を踏み台にして次の星屑の元へ飛び移っていく。その飛び移り方も尋常ではないスピードだ。勇者としての動体視力が無ければ捉えきれないほどのスピードであった。瞬く間に周囲にいた星屑たちは命によって殲滅されていく。

 

「なんてことッ! 遠距離だけでなく近距離もイケる口だったなんて・・・このままでは近接タイプの私の価値が下がりっぱなしだわ!!」

 

 武功を上げる命の動きがいい意味で働いたか、負けじと静流も続いて見せた。命が一体のバーテックスを仕留めるのにかかる手数が3撃なのに対して、静流は一刀のもとに星屑たちを切り裂いていく。

 

 もともと星屑の数も多くはなかった。大型でなく星屑の殲滅に念頭を置いた二人の連撃によって大型の周りにいた50以上の星屑がその数を10と切った時、活路が開ける。星屑が激減したことで、大型の守備が手薄になったのだ。

 

「今よッ この憎たらしい爆弾魔、さっさとやっちゃいなさい! 朝露さんッ」

 

 静流の視線が後方に居る乃之に送られる。好機と感じた乃之が槍を構えると槍の先端が変形し始めた。刃はさらに細く、尖り、装飾は柄の部分に移動して翼のように広がって見せた。

 

 

 乃之が見つけた活路はここにあった。敵の大型バーテックスは必ず攻撃するときに腹部を発光させ、球体状の何かを作り出す。恐らくこれが爆弾の正体なのだ。それが下腹部へと移動し、尻尾の射出口から撃ち込んできているのだ。そしてその出口は一つしかない。ならば、その射出の直前に射出口を塞いでしまったらどうなるのだろうか。

 

 あれほど爆発を起こすほどの威力を有した物質を密閉した相手の体内の中で爆発させれば、恐らくは一撃とはいかないにしても大きなダメージを与えられるはずだ。

その為に、周囲の星屑を限りなく撃退する必要があった。目的の射出口付近を星屑に漂われてしまっては命中率が低下してしまう。 命の弓による射撃も考えたが、威力も星屑を倒す程度しかなく、矢が本体に届くことなく邪魔される確率が高い。

 

 

 だから、最後の射出口を塞ぐ役目は乃之自らが行う。その刺突に特化させた槍を相手の射出口目がけて突撃するのだ。そのための下準備は危険ながらも静流と命がやってくれたのだ。

 

・・・え、あれ。

 

 前に出ようと、脚を動かそうと必死に力を込めるが動かない。脚だけでない、腕も頭も体の至る場所が動作を行えなくなっていた。

乃之は前を見る。目の前には浮遊している巨大なバーテックス、その射出口は乃之へと向けられていた。その砲弾の威力は知っており、それがこちらに向けられている、食らってしまったらどうなるのか、そう考えただけで乃之は蛇に睨まれたカエルの如く動けなくなってしまったのだ。

 

 

「あ、あ・・・」

 

 敵のバーテックスの腹部が光り始めた。砲撃の合図、もう数十秒としない内に攻撃が開始される。それを分かっていても、乃之の身体が動くことは無かった。

 

・・・う、動いて、動いて動いて動いて!!

 

 膨張していく敵の腹部と輝きが一層強くなるごとに焦りだけが募る。乃之はいつのまにか呼吸も出来ない状態になっていた。恐怖による筋肉の硬直とプレッシャーが乃之を過呼吸直前まで追い込む。

 

 意気地なしだな、ビビりだな、と乃之は自分で思う。自らが立案した作戦で勇者たちを動かして、二人はその役目を果たしたのに自分だけが恐怖して動けないでいるのはまったくお笑いだ。情けなさ過ぎて、本当に自分が勇者なのかと疑ってしまうくらいだ。

 

 

・・・し、死ぬ! このままじゃ、みんな!

 

 遠くで静流が何かを叫んでいる、ような気がするくらいに乃之の意識が酸欠による影響で朦朧としていた。乃之は思う、ごめんなさい、と。このままでは役目も果たせないで世界が終わってしまう事に謝罪をする。何もかも諦めようとすると自然と力が抜ける気がした。だがそれは問題の解決になっておらず、このまま腕を下せば乃之の意識は完全に刈り取られるだろう。

 

だが、それを許さない声があった。

 

 

「乃之! しっかりしなさいッ!!」

 

 耳元の声で乃之が意識を取り戻すとそこには桐香の姿があった。

 

「さっきまでの勢いはどうしたのよッ勇者ッ!」

 

下がっていた乃之の手に桐香の手が添えられた。一本の槍を二人で持つように添えられる手。精神体の桐香がいくら力を込めても物体を動かすことは出来ないはずなのに、乃之が力を込めると自分の力とは思えないくらいに槍は軽々と持ち上がった。

 

「どうして、ここに・・・」

 

「固まってる乃之を見てたら居てもたってもいられなくなって・・・ってそんな事はいいわよ!」

 

そう言う桐香は続ける。

 

「失敗した時の事なんか考えないで、進もう。私も隣にいるからさ」

 

 添えられた手に握られたような気がした。実際に触れられている訳じゃないのに、ただそれだけで乃之の不安が消し飛んでいき、全身の硬直がなくなっていくのを感じる。

 

「・・・・ッッ」

 

腕が動く、脚も動く、心も熱く、けど頭は冷静に。自分でも分からないくらいの力が湧いてくる。勇気が湧いてくる。

 

「行くぞ! 勇者は気合と根性だ!」

 

 桐香の言葉に強く頷いて見せた乃之が槍先を大型に向けて照準を合わせる。槍の柄に展開していた装飾が光と空気圧をもった何かが噴出される。それは次第に大きくなり、乃之と桐香の身体を物ともせず、まるでロケットのように斜め上へとバーテックス目がけて飛んだ。

 

時速100キロ以上出ているであろうスピードで飛んでいる。乃之はさながら人間ミサイルだ。

 

「だあああああああああッ!!」

 

 気合と共に乃之と槍は減速することなく大型バーテックスの尻尾の穴に突き刺さる。爆発物である光る球体は既に下腹部へと移動を開始していた。乃之は突き刺していた槍をさらに奥に突き刺して槍をさらに変形させる。

 

 槍の先端の刃が真っ二つに割れたのだ。 折れたとか、そういうトラブルではなく中心から分かれるように刃が移動する。その刃が移動するにしたがってバーテックスに刺しこまれていた肉部分がさらに広がった。 刃の根元には筒状の管が現れている。その管が光り出したのを見て乃之は槍を放置して射出口を蹴り桐香と同時に後方へ跳ぶ。

 

 それと同時に穴付近に爆発が起きた。それに続くように射出されかけていたバーテックスの光る物体にも衝撃が伝わり腹部付近で巨大な爆発が起こる。閃光と衝撃が重なり、あまりの衝撃に勇者達が吹き飛ばされる。

 

「あ、あれ・・・は」

 

 吹き飛ばされる直前、粉々になったバーテックスの身体から巨大なダイスのような物体が現れた。それが光となって消えていったのが乃之が最後に見えた光景だった。

 

 

 

 

 バーテックスの掃討が終わると樹海化が解け元の世界へと戻る。勇者や巫女の桐香も一緒になって現実世界へと帰還した。皆、最後の爆発で顔も体もボロボロだった。

 

「あぁ! 私のプレイスキルが磨かれていくのを感じるッ!」

 

 戦闘後だというのに五月蠅い声を上げるのは全身煤まみれの静流だ。命はある程度は平気なのか平然と立っており、乃之と桐香に関しては地面に大の字で倒れていた。帰還した場所が草の上だったこともあってか自然に体を預けることが出来た。

 

 既に大赦の職員と連絡は取っている。回収されるのも時間の問題だろう。

 

「だから私は今なら市橋さんに勝てる気がするのよ。 さぁやるわよレッツバトルッ」

 

と、静流が構える。 完全に格闘技のそれだ。竹刀が手元にないから格闘戦に切り替えたのだろうか。

 

「いや、もうやらなくてもいい・・・その必要もないから」

 

「ワッツッ!?」

 

「私の中で、もう十分納得できる気がしたから。 自分が巫女であることを、三人が勇者であるってことを」

 

その時の桐香の表情は曇る事を知らないように、まるで憑き物が落ちたような顔であった。静流は面白くない、と言った顔で。

 

「何一人でハッピーエンド迎えて闇落ち回避しようとしてんのよ。許さないわよ」

 

と桐香に指さして言い放つ。

 

「と言うことは、私の華麗なる勝利でいいのね!? 愛媛のゴリラ巫女であるアナタがこの私に屈したと、もう二度と敵わないことを認めるってことでいいのね!?」

 

ゴリラ巫女と言う単語が出た瞬間、桐香の動きが止まる。だが顔は何故か笑っており、

 

「うん、やっぱ無理だわ。 静流に言われるのはどうしても我慢できないわ」

 

 額に筋を浮かべて静流に向けて構える。

 

「全員叩きのめしてやるから覚悟しなさい」

 

「や、やめようよ・・・お役目終わって皆疲れてるんだから・・・」

 

「乃之ッ、疲れなんて関係ないわよ。勇者は気合と根性だから」

 

「凄いスパルタモードに入ってる・・・・ひえ」

 

 

だいたい、と桐香は続ける。

 

「静流は突っ込みすぎてるし、乃之はもっと自信持って堂々として指示出さないと、命に関しては戦闘中はコミュニケーションが大事なんだから言葉でしゃべる!それが出来ない限り、勇者としてあなた達はまだまだだわ!よって!」

 

大きく息を吸い、続けた。

 

「これから先のトレーニング、衣食住とかの管理は私がやるっ! 手始めに静流、アナタのゲーム機は睡眠の妨げになるからこれが終わったら没収するわよ」

 

「なんだとッ! ふざけるなよこのゴリラッ!」

 

キャラ崩壊を起こすくらいの声色で静流が叫んだ。

 

 

「いやならこの勝負に勝ちなさい。 ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん、よ」

 

「さり気無く、私たちのこと名前で呼んでくれてるんだ・・・」

 

桐香の言葉に乃之が小さく笑みを浮かべて言うと、桐香は顔を真っ赤にして乃之に相対する。天地魔闘の構えだ。

 

「・・・・最初は乃之、あなたよ」

 

「ヒッ・・・む、むぅりぃいい」

 

「二対一ならどうよ。みかんゴリラ巫女のあなたでも流石に勇者二人は勝てないでしょ」

 

「私は一向に構わないわッ かかってきなさいッ」

 

 どこかの中国拳法の達人よろしく、桐香は二人に対して駆け出した。巫女とはなんなのか。と、その一方で命は小さくため息をついて近くの岩場に腰を落ち着かせた。あわよくば、自分は巻き込まれたくないな、と心の中で想いながら。

 

 

――――こうして、初めての御役目を終えた勇者たち。最初は打ち解けれなかった者たちもこの戦いを通して更なる結束を見せる事だろう。

 

 

――――だが、戦いはまだ始まったばかりだった。彼女たちはまだ知らない・・・この先に待ち受ける大きな試練を。

 

 

――――何百年も続いているバーテックスとの戦い、その真の意味と勇者達の結末を。

 

 




今回でそれぞれの戦闘スタイルが各手当したわけどす。
わすゆに習って静流が近、乃之が中、命が遠と分けようと思いましたが被りもあまり良くないので一味工夫してみました。

乃之は槍を使った園子みたいな中距離みたいな立ち位置ですが槍の変形によって中、遠まで対応が可能です。でも攻撃特化のスペックなので園子みたいに階段とか傘になるとか防御面の機能はないです。槍の変形機構としてはブースターによる一点集中突破突き。イメージはシンフォギアでいう響のガングニールとか、リリカルなのはのエクセリオンバスターとか、最後の爆発ギミックとかはファフナーのルガーランスを参照。

命は完全に忍者というイメージで。弓だけ使わせようかと思ってましたが設定したのが忍者なので弓を使いますが須美のような一点に止まり射かけるのではなく、機敏に動きながら射撃をするという変態スペック。 書いてる中で意識したのはロードオブザ・リングのエルフのレゴラスですかね、一度に3発斉射とか、近接では剣をつかって対処する。今回は忍者刀まで出しましたが他にもあります。忍者らしい武器なのでそこまで変なのはでませんが、あとは命の火力は多分勇者たちの中で1番低いです。

静流のことも語りたいですが長々となってしまうので今回はここまでで、次の2章は日常パート多めで結束を深めるためにアレコレ行動し始める巫女と勇者とか、それぞれの勇者の秘密とかにも迫ろうと思ってます。では、また次回。意外に作品を読んでくれている人が多くて感謝。
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