キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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十四話 お花見

 今日は休みなのでシロと二人で花見に来ている。

 家の近所にある神社か広い公園に行くか迷ったけど今回は公園にした。

「いい天気ですね、トオル君!」

「そうだねぇ」

 今は外出中なのでシロは俺の呼び方を「マスター」から「トオル君」に変えている。そう言えばシロが学校に来たときこの子何気に俺の名称変えてたな。意図的にやってたのか無意識に切り替えたのか、どちらにせよ恐ろしくも凄いな。

 敷物を桜の木の下に広げて、二人でその上に座る。ここら辺の桜は少なく、離れたところに密集するように木が生えているので、大半の団体はそちらの方で楽しまれている。

「トオル君、あっちは花が多くてとても楽しそうです」

「じゃあこっちは景色が良くてきれいだよ」

「あ、ホントだ。きれい・・・・・・」

 見上げれば一面桜景色、それもいいが、少し離れて見れば様々な色が入り、まるで一級品の絵画のような美しい景色が広がっていた。単色より多色、いいものだ。

「さ、弁当食べよう」

「そうですね、そうしましょう!」

 家で二人で作った弁当箱の蓋を開ける。

 中はおおよそ朝方見たものばかり、と言ってしまっては風情も楽しみもあったものじゃ無いから口に出さずに飲み込んでおく。

「うん、美味い」

 我ながら良い出来だ。仕込みはちゃんと出来てるな。

 しかしこう、桜を眺めながらボーッとして飯を食うのもいいな。落ち着く。

 

 

「あー良い天気だなー。桜きれーだなー」

「ゲームしながら言うことではないと思いますが・・・・・・」

 俺は持ってきた某電気メーカーが作ったゲームハードを敷物に寝ころびながらプレイしている。

 携帯機でこの大画面でプレイできるのは素直に凄いと思う。まぁ、初期型は色々不具合とか設計的に大分無理してたらしいけど、改良型はそこらへん大分修正されてて遊びやすい。この日の下でもちゃんと画面の色がくっきりと見える発光は素晴らしい。さらにソフトは何かと良作も多いので大分遊んでいられるのがまた良い。

「あーP○Pさいこー」

「もー、トオル君!」

 ゆっさゆっさと体を揺すられる。シロ待って、そんなに大きく揺すられてたらさっき食べた分が出そうになるから待って話せない息が途切れて会話できないから待ってってねぇえああああああああああああああああああああ。

 

 

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

「う、うん、俺も悪か・・・うぇっぷ・・・・・・」

 なんとかリバースは回避できたがその代わりに喉を焼くような不快感はちゃんと出てきてしまった。

 お茶お茶、飲み物飲まねば。

「ん・・・・・・、ふぅー」

「大丈夫ですか?」

 水筒のお茶を差し出して上目使いに恐る恐る訊ねてくる。

「うん、もう大丈夫」

 真正面に正座で座るシロにカップを手渡して、息をつき、改めて桜を観る。

 やわらかい風に吹かれて花びらか舞い、ひらひらと靡かれて飛ぶ。桜舞う季節という言葉を絵にすれば、こんな情景が当てはまるのかな、なんて考えていたら、シロの頭に花びらが舞い降りた。

「シロ、動かないで」

「へ? あの、マスター?」

 わたわたと慌てるシロにどうしたのだろう、と思いながら花弁を取ってあげる。

「ま、まだ心の準備がですねあのえっと・・・・・・て、え?」

「え?」

 

 沈黙。

 

「あの、えっと・・・・・・」

「いや、花びらが付いてたから、取ろうと思って」

「花、びら」

「うん」

 

 またも沈黙。

 

「ごめんなさい勘違いでしたぁー・・・・・・」

「う、うん。気にしなくていいから、ほら元気だして、ね?」

 シロの言葉でこっちも意識してしまって気恥ずかしくなってきた。

 なんとか打開しなくては。

「な、なんかジュースでも買ってくる」

「は、はい」

 戦術的撤退。

 

 

 ◇

 

 

「はぁー・・・・・・」

 公園に設置されている自販機に行き、俺の分とシロの分の飲料を買う。

「俺は炭酸で、シロはどうしよう、果汁ジュースでいっか」

 赤いうさぎと青い戦車のイラストが入っているなんともスパークリングな炭酸飲料とにっこりした笑顔が印象的なオレンジジュースを買って戻ってきたら、シロがナンパされていた。

「あ、やばい。どっちに転んでも地獄だありゃ・・・・・・」

 

 

 ◆

 

 

 マスターがお飲み物を買いに行かれて、その間に上がっている動悸を抑える。

「はぁー・・・・・・。びっくりしたぁぁー・・・・・・」

 急に間近に寄られて驚いてしまった。

 何されるのかな。なんてちょっと期待したりしなかったり・・・・・・。

 そんなことを思っていたら、何やら派手目の衣装を着た二人の男性だ近づいてきた。

 

「ねー。君一人?」

「良かったら俺たちと一緒に飲まない?」

 なんなのだろうかこの人達は。

「あ、あの、どちら様ですか?」

「俺ら男何人かで飲んでたんだけどやっぱ女の子が居ないとむさ苦しくてさー」

「暇そうなら助けると思って一緒にお花見しない?」

 気さく、というよりどこか軽そうな言葉で誘ってくる。

 男の視線は舐めるような不快感があり、少し拒否感を覚えた。

「あの、ごめんなさい。私トオル君と来てて、あなた方とはいけません」

「そんなこと言わないでさぁ。ね、何にもしないって」

「そうそう、俺たちと遊んでる方が楽しいよ~」

 

 イラッ。

 

 我慢だ。以前外出した時も極力スキルの使用などは禁じられた。そう簡単に攻撃はしない。

 

 

 けど準備はする。

 

 闘魂2。攻撃力大。見切り3。弱特。抜刀会心。超会心。匠2。

 武器は拳双剣。

 思いつく限りの火力スキルを発動できるようにする。

 会心200%の火力で超会心も合わさって初発に限定すればかなりのダメージが期待できそうだ。

「ですから、トオル君と・・・・・・」

 

 

 

 

 

「ウチのシロになにか用ですか?」

 

 

 

 

 

 マスターが現れた。

 少し距離遠いところから声をかけ、その手には二本の飲料物が握られていた。

 良かった。なんて思っていたらあろうことか見知らぬ男たちはマスターに突っかかっていった。

 

「彼氏クン? ちょっとあの子貸してくれない?」

「大丈夫、何もしないからさ」

マスターはこちらと男たちを交互に見て、戸惑った顔をしていたが私の手元を見て少し慌てていた。

 

「じゃあ、コレを見てから再度決めてください」

 マスターは私のところに小走りにきて小声で説明する。

「シロ、俺がこの缶ジュース放り投げるから、殴って潰して」

「え、でも、いいんですか?」

「大丈夫、それであの人達もビビッて逃げるよ」

「ん~・・・・・・。やってみます」

「よし決まり」

 何か決まってしまった。

 けど、やったらすっきりしそう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そんなこんなでシロの一発芸()をやることになった。

 ちょっとトイレで着替えてきてもらい、ハンターの武具を装備している。

 見た目はいつもの俺が組んだオリジナルキリン装備。

 スキルはわからない。だが火力全振りなのは帰ってきてシロの手を見て一目瞭然だった。

 あんな殺傷のオーラを纏った手は今まで見たことがない。ていうかこの人達はソレに気づかなかったのだろうか。そうだとしたら呆れる。

 

「なに、コスプレ?」

「踊りとかするの?」

 男共はそれぞれの感想を述べているが、不安でしかたない。

「じゃあ、シロ。いくぞー」

「はいっ!準備OKです!」

 そういってシロはスッ、と構えた。

 目付きは真剣そのもので、一切の表情は覗えない。

 

「そーれ」

 

 俺はぽーんと弧を描くようにアルミ缶を投げ、シロはアルミ缶げ目の前に来たその一瞬。

 

 

 パァァァンッ!!!

 

 

 凄まじい破裂音と共に、未開封の缶ジュースは潰れて、中の炭酸飲料は弾け飛んだ。

 売り文句が『シュワッと弾ける!』だったが正にその通りだな。なんて思って男共を見たら顔を青くして震えていた。

「なんだこれ・・・・・・」

「ヤベェ・・・・・・」

 それと対照的にシロは先ほどまでの真剣モードから切り替えていつもの物腰柔らかな感じになっていた。

「マスター!上手くいきましたー!」

「うん、お疲れ」

 俺のもとまで小走りできて嬉しそうに跳ねるシロの頭を撫でながら褒めてやる。

 予想していたがここまで威力のあるものなのか・・・・・・。

 もはや原型を留めていない円盤状のジュース缶だったものを見ながらそう思う。

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 

 男たちは一目散に逃げ出して、俺とシロの二人に戻る。

 あたりは缶ジュースの中身で濡れてしまい、汚してしまった罪悪感が沸いてくる。

 シロはまた着替えてきて防具から普段着に戻っている。

「シロ、ごめん。一人にさしちゃって」

「そんな、大丈夫ですよ!」

「でもスキル使おうとしてたじゃん」

「う、それは、その・・・・・・」

 アレは間違いなく殺せるだけの威力を持っていた。もしあのまま介入せずに放っておいたら傷害沙汰になっていたかもしれない。

 が、当の本人は何処吹く風と言わんばかりに、美味しそうに果汁ジュースを飲んでいる。

「ん、ん、ん・・・・・・ぷはぁ」

「そうしてたら可愛いよな」

「えぇっ!? あの、えっと、その・・・・・・」

「受けは弱いんだよなぁ」

「うぅ・・・・・・」

 まぁそこも可愛いのだけれども。

 

 さて、そろそろ片付けするか。

「シロ、そろそろ帰るから、片付け手伝って」

「あ、は、はい!」

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

 

 大してそんなに物を持ってきていなかったので、片付けはすぐに終わり、俺とシロは帰路についていた。

 帰り道、大した会話はなく、無言で歩いているともう家に着いた。

「ただいま。と言っても誰もいないけど・・・・・・」

 先に入って上がろうとしてシロに引き止められる。

「シロ?」

「マスターは、後から入ってください」

「え、何、なにすんの?」

「いいからっ!」

「ア、ハイ」

 そう言いながらシロは先に家の中に入り、こちらに振り向き、なにやら自信ありげな顔で待機していた。

「どうぞ!」

 程無くしてシロが一声。

「た、ただいま?」

 

 シロは元気で明るい笑顔で、

 

「おかえりなさいませ、マスターっ!」

 

 

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