キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 番外を除けば移行してから初めての投稿。
 お騒がせして申し訳ありませんでした。
 ではどうぞ。


二十八話 お着換え会

 

「いてっ」

 

 起きると首元に鈍い痛みが走った。

 肉食動物にでも噛まれたかのような感じの痛み方だったが触れた肩にはなんの傷も怪我も無かった。

 

「なんだろ、まぁいっか」

 

 昨晩は一人で寝たのでベッドには誰もいない。

 起き上がって部屋着に着替え、洗面所で顔を洗い歯を磨き台所に立つ。

 今日は休日でクラスの男女連中が来る日なので早めに朝食を済ませておもてなしの準備をしたかった。

 

「白米、味噌汁、煮物、浅漬け・・・・・・」

 

 献立を考えて調理にかかる。

 

 ご飯は昨晩セットした分が炊けているのを確認、味噌汁は片手鍋に湯を張って中の具材を一口大に切り分け投入、味噌を沪して完成。

 煮物は作り置きがあるのでそれを暖めなおして終わる。

 浅漬けも作り置きを取り出して盛り付け。

 うん、和食。

 

 ご飯も出来たのでエプロンを取ってシロを起こに行く。

 

 階段を上がって一番奥の部屋、物置としいて使っていたが今はシロの部屋になっている。

 扉を開けて少々狭い部屋の真ん中に布団を敷き、その中に白髪の少女がゆっくりとした呼吸で眠っていた。

 

「シロー。起きろー」

 

 近くによって肩を持ち、軽く揺すると瞼を震わして少し目を開けた。

 

「ん、ましゅたー・・・・・・」

「シロ、朝ご飯出来たぞ」

 

 上体を起こしてゆらゆらと体を揺らす。まだ寝ぼけているのかその眼は開いていない。

 すぐにこてん、と持たれかかってきて支えにしようとしてくるのを受け止める。

 

「はぁっ・・・・・・!」

 

 密着状態に気が付いたのかすぐさま体を離して立ち上がる。

 

「おはようござます、マスター!」

「ん、おはよ。ご飯できたから食べよ」

「はいっ!」

 

 やっと目が覚めたシロと一階に降りて朝食に手を付ける。

 

「「いただきます」」

 

 食べ始めて少ししたぐらいか、突然インターホンが鳴った。

 

「こんな早くに誰だ?」

「私が出ましょうか?」

「いや、俺が出るよ」

「わかりましたー」

 

 シロはそのままもむもむと食事に戻り、俺は扉の曇りガラスから誰かのシルエットが見える玄関に向かった。

 

「はーい、どちら様で・・・・・・」

「「突撃! 隣の朝ご飯!!」」

「いろいろはえーよ」

 

 何してるんだコイツら。

 それをやりたいなら夕飯時に来い。

 

「あ、村崎ぃ。オハヨー」

「おはよっ、村崎クン!」

「山田さん、山本さんおはよう」

 

 バカやってる男子の後ろに女子数人が顔を出したので挨拶しておく。

 というよりなんでこんなに早いの。

 

「ちょっと早く来過ぎじゃない?」

「いやー、シロさんのこと考えてたらこのぐらいじゃないと時間足りないかなーって」

「足りないって、まだ朝の八時半過ぎくらいだよ・・・・・・」

 

 女は支度に時間がかかると聞くが、この人達何時起きなんだろうか。

 おもてなしの準備しておいて良かったかもしれない。

 

「今飯食ってるから、リビングか俺の部屋でくつろいでてよ」

「「「「はーい」」」」

 

 クラスメイト合計六人。加藤と内藤、山田さん山本さん山谷さん山下さんの六名だ。

 男子人数が少ないな。と聞いたところ他の奴らは用事があるらしいので来れないから通話アプリにて審査などするらしい。

 それはさておき。

 

「あのー、どうしてそんなに見るんですか?」

「「「あ、お構いなくー」」」

「気にするわ」

 

 適当に部屋分でもしようかと考えてたら全員リビングのソファーなどに腰かけ俺とシロの朝食風景を眺め、ガン見している。

 

「お前ら飯食ってきたの?」

「食ったぞ」

「携帯食料」

「パン食べたよー」

「おにぎりにしたー」

「え、みんな食べてきたの?」

「コンビニで適当に食べたよ」

「うん、山谷さんちょっと待ってて」

 

 どうやら一人を除いて食べてきたようだ。

 俺は立ち上がっておにぎりを作りお椀に入れてお茶漬けの素と鮭フレークをかけてお湯を注いだ鮭おにぎり茶漬けを作って山谷さんに渡した。 

 

「どーぞ」

「え、いいの?」

「空腹のまんまじゃ辛いでしょ」

「あ、ありがと」

 

 山谷さんはまず一口すすり、目の色を変えた。

 

「あ、美味しい!」

 

 そのままあっと言う間にお茶漬けを食べ終えた。

 

「ごちそう様!」

「俺まだだから洗い場に置いといて」

「うん」

 

 さて人も来てるのでとっとと食べ終えよう。

 シロもあらかた食べ終えているので早足に箸を進める。

 

 食べ終えて食器を洗い、お茶とお菓子を用意して振る舞う頃には九時半になっていた。

 

「お待たせ、コレ食べてみてよ」

 

 トレイに紅茶を乗せたものを俺が、クッキーを乗せたものをシロに運んでもらい、今日来た皆に出す。

 

「どうぞっ」

「シロさんどうもー」

「いただきますー」

「わ、これも美味しい」

「至福・・・・・・」

 

 どうやら女子には受けが良かったようなので一安心である。

 

「村崎お前ホント料理スキル高いよな」

「なんだコレ、下手な喫茶店よりウメェ・・・・・・」

「そりゃどーも」

 

 なんだその反応、口からビーム出すか、はだけそうな勢いの内藤を放置して本題に入る。

 

「で、皆さんうちに何か用で?」

「シロさんに会いに来たのが本音だけど、元気そうだから何よりだわー」

「そだねー」

「いやしかし可愛いのぉー」

「うぁうあう」

 

 女子団体にシロがもみくちゃにされている。

 

「で、それだけで来たっていうなら昼からでも良かったんじゃないの? まさかあのネタやるためだけに朝からスタンバってたとかないよな?」

「それはないって」

「その俺らこいつらに起こされてきたもん」

「そうなのか」

 

 では女性陣の方、と思ってそちらを見ると、持ってきたらしいカバンやに持ちをがさごそとあさっていて中から様々な衣装を取り出していた。

 メイド、ゴスロリ、チャイナドレス、水着や執事服など和洋折衷何でもあった。 いやありすぎだろう。

 後半のなんだよ。コスプレじゃないか。

 

「こんなのどうかな~?」

「アタシ小道具持ってきたよ」

「ミキ準備良い~!」

「本格派に仕上げるのも良いかと」

「何してんだお前ら」

 

 女子で固まって衣装の見せあいをしてきゃいきゃい騒いでいる。

 男子はそれを遠い目で眺めているだけで何も言わず、俺も介入の余地すら無かった。

 シロはは何が何だか分からないと言った様子で俺たちを見たり女子をみたりと交互に見ていたが突然女子連中に身柄を掴まれ、そのまま別室に連行されていった。

 

「あ、ちょ、助けてトオルくん~~~!!!」

「合掌」

「「合掌」」

 

 何もできない俺たちはただ手を合わせて無事を祈るほか無かった。

 すまんシロ、ああなった女子に手出しは出来ないんだよ・・・・・・。

 

 

 別室。

 

 シロは現在隣の部屋にて女子四人に脱がされ撫でまわされ着せられて、目を回していた。

 

「シロさんやっぱり可愛いなぁー」

「お肌すべすべ~」

「ぷにぷにしているのに無駄な脂肪が少ない・・・・・・!」

「ほほう、Cは堅いですぜ」

「ひゃっ・・・・・・ダメですぅ・・・・・・!」

 

 四方八方、腕やら脚やらお腹やら、果ては胸も好き放題に触られて、ヘンな気分になってきたのも気に留めずやおにやいのと一つ目の衣装に袖を通して男子たちの前に出た。

 

「じゃじゃーん! まずはメイド服シロさん!!」

「・・・・・・ッ!!」

「良いぞォ!!」

「おぉ」

 

 よくあるイメージ通りのメイド姿、黒いシャツに真っ白なフリルのついたエプロン。袖は短いが手首に袖口が別で付いている。

 スカートの下からガーターベルトが見え隠れしていて、その舌はすぐに二―ソックスになっている。

 所謂コスプレってやつなのだが素材がいいのか安っぽい感じはなく、すごく似合っていた。

 

「どうですか?」

「あ、あぁ、うん。似合ってる、と思う」

「ありがとうございます!」

 

 花のような笑顔に見惚れてあまり良い言葉が見当たらない。

 

「なんだこれ甘いな」

「紅茶がストレートで良かった」

「あたしコーヒー欲しい」

「シロさんちょっとご主人様って言ってみて」

 

 山田さんがアブナイ注文をしたので止めようかとしたらそれにシロが答えてしまった。

 

「ご、ご主人様?」

「あーいいね。うん最高。もうちょっと上目遣いで、うんうん。」

 

 顎を下げ、上目遣いになるようにして、ちょっと肩を落として手を体の前と胸の上に添えてもう一度。

 

「ご主人様・・・・・・」

 

 照れが混じりながら頬を少し赤らめ、気持ち八の字に眉を傾けてのそのセリフの破壊力とは凄まじいものだった。

 

「オールイェイ」

「パーフェクト」

「エクストリーム」

「議論の余地がない」

「もうこれ優勝でいいんじゃないかな?」

「初手圧勝過ぎ」

「惚れそう、惚れたわ」

「う、うぅっ・・・・・・可愛すぎ・・・・・・!」

「大丈夫か、って言いたいけど俺もこれは慣れてないわ・・・・・・」

 

 俺も含めて七人全滅。

 再起するまでに時間がかかり、皆を扇いだり安静にさせたりと本当のメイドみたいなことをシロがしていた。

 

 

 

「さ、さて気を取り直して二着目いこー!」

「「「おぉー!!」」」

 

 盛り上がる女子。

 沈黙して固唾をのむ男子。

 

 あれ以上の刺激を与えていいものか。

 メイド服着させてご主人様と言わせてあの惨事さったというのにさっきちらと見えた服を着せたら多分生きている自信がない。

 それは他の二人も同じなようで、俺は無言で立ち上がって救急箱と出血用のテッシュを持ってきた。

 

 

 二着目、ゴスロリ。

 

 先ほどのメイド服とは似ているようで違うもの。

 っさきほどはメイド、従者としての服だったが今回はゴスロリ仕様なのでお嬢様やお姫様といったメルヘンチックな印象があるがどこかダークな雰囲気があり、まさに孤高、高根の花、ミステリアスなオーラが醸し出されていた。

 シロの白髪と相まって黒いドレスがより際立って見えた。

 

「そうそうもっと憂いのある目で、あぁーーいいっすわー」

「そんなに良いものなんですか?」

「無論」

「愚問」

「答え無用」

「感無量」

「元気だな・・・・・・」

 

 

 三着目、チャイナドレス。

 

「シロさんって可愛いのに運動も出来るとか何それ最強じゃん、ムテキじゃん、ジーニアスじゃん」

「よ、よくわかりません~~!」

 

 スリットの開いたチャイナドレスに身を包んだシロ。

 横はかなり上の、あばら横腹あたりまで切り込みが入っており、紐で順々に広がっていくように締められていているが腰のあたりで蝶結びになっているがあれは服のものか下着の物か・・・・・・。

 背中も同様に大きく開いていてそこも紐が通されている。

 色合いは白に青の縁取りがされていて波の波紋が描かれていた。

 

「片足立ちで上げた脚は曲げてそのまま、うんうん、おぉー体のラインが健康的で良、いやホントに良い」

「んん~~~」

「見え、ない」

「だがそれでいい」

「いやそれがいい」

「チラリズムを楽しもうじゃないか」

「ある意味凄くね」

「何がさ」

 

 

 四着目、水着。

 

「ちょっと待ってシロさん、あたし鼻血出てきた」

「うぇえ!? だ、大丈夫ですか!?」

「うん全然オッケー」

 

 大丈夫なのだろうか・・・・・・。

 淡い水色のビキニに半透明の白いパレオを巻き、前開きのパーカーから覗く肌色はかなり目の保養、いや毒か?

 実際何人か鼻血を出してティッシュのお世話になっている。

 

「マジか・・・・・・」

「俺死んでもいいわ」 

「プール、いや海のほうが良いの・・・・・・?」

「これを似合うというのか服が合っているというのか、素材の違いって凄い・・・・・・」

「鼻から愛が溢れてきた」

「栓して安静にしてて」

 

 

 五着目。

 

 六着目。

 

 七着目。

 

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 

 

 

 

 興奮なのかまた別の何かなのか、数名鼻から愛が溢れて鑑賞会は一時中断され合間で昼食をはさみながら昼から鑑賞会が再開され、また女子が部屋から出て行った。

 暫くして扉が開かれ、先ほどは和気あいあいとしていた女子も何故か顔を伏せている。

 みんな目線を合わせようとはせず、笑顔も消え去り悟りを開きかけているようにも見えた。

 

「シロさん入っていいよ」

「は、はいっ」

 

 どうしたのだろうと思いながらも次の衣装に着替えたシロを見ると、だいたい察しがついてしまった。

 

 セーラー服。

 黒に近い濃紺色の、ミニスカートのセーラー服とは。

 自分たちの学校の女子生徒用の制服であるが、それをシロに着せたようだ。

 

「トオル君、どうですか?」

 

 着慣れないからなのか、はたまた免疫がないからか、素の状態で恥じらいながら遠慮がちに聞いていた。

 

「うん、すごく、似合ってる。かわいい」

「うぅ~、ちょっと恥ずかしいです・・・・・・」

 

 会話が続かない。

 いい言葉が出てこない。 

 本当に可憐で清楚といった印象を受け、なびくスカートに目が食いつき、ふわっとした彼女が制服と言うメリハリのある服を着ることであどけなさと大人びた感じが混ざり合い、不思議な何かを感じた。

 

「満点」

「満点」

「満点」

「満点」

「満点」

 

 こいつらはもう手遅れだと悟ったと同時に、シロと言う存在をより強く感じ取った。

 

 

 

「あ、シロさん。ちょっといいかな」

「はい、なんでしょうか山谷さん」

「出来れば今日の夜に・・・・・・ゴニョゴニョ」

「えぇ? や、やってみます・・・・・・!」

 

 

 その夜。

 

 風呂から上がってのんびり自室でくつろいでいると、ドアをノックする音が響いた。

 

「あの、マスター」

「んー? なんだシロー」

「入ってもいいですか?」

 

 なんだろう、声が若干高いような気がする。

 緊張でもしているのだろうか。

 何かの用事のようだし拒む理由もないので中に入れる。

 

「いいぞー」

「し、失礼します・・・・・・」

「どうしたんだよ、こんな、夜更け、に・・・・・・」

「えへへ、似合ってますか・・・・・・?」

 

 照れながら軽く握った手をまっげて猫のように顔の近くに持っていきにゃー、と恥ずかしそうに鳴くシロ。

 それだけならまだ可愛いで許せるのだが、問題はその格好にあった。

 

 猫耳のカチューシャに白スク、ニーソとなっている。

 

 マニアックすぎじゃないか!?

 

「なんだその恰好!?」

「実は今日皆さんから衣装の類を貰ってしまって、山谷さんから今日この恰好でマスターの部屋にいってみて、と言われたので恥ずかしいとは思いながらも、試してみましたっ!」

「いいから着替えてこい!!」

 

 腰に腕を添えてガッツポーズをするがそれで揺れ動く大福に目が釘付けになりそうになりながら、しっかり着替えさせて寝るように促した。

 最後の最後まで休ませてくれない一日だった。




 もっと書きたかったけどこれ以上はまた長くなりそうだったので区切りました。

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