ごめんなさい。
遅くなりましたがどうぞ。
現在、俺はシロと一緒に古本屋に来ている。
何かと本が多く、小説や漫画、号数の古い雑誌やゲームの攻略本やそのゲームソフトなども置いてある全国チェーンの古本屋。流石と言うか、結構な品数があって感心する。
「トオル君、ここですか?」
「あ、あぁ、ここだよ」
「シロ、好きに本読んでいいよ。あと静かにね」
「ん、分かりました」
自分も漫画やゲーム関連のコーナーを眺めながら先日教室であったことを思い出す。
「ね、ねぇ」
「・・・・・・」
「ねぇ、てば」
「・・・・・・ふぁ」
「む、村崎、くん・・・・・・!」
「・・・・・・んー?」
ふやけているような微睡んだ意識に誰かが声をかけてきた。
女子と学校で話す機会なんて授業でもほとんどないというのに話しかけてくるものだから気が付かなかった。
数回の呼びかけのうち最後の名前を呼ばれたことによってやっと自分が呼ばれていたのだと気づく。
「ナンデショウカ」
「な、なんで、片言、なのかな」
「女子と話すことがないから」
机に突っ伏していた上体を起こしてぼやけていた頭を起こす。
見ればクラスでも大人しいほうのグループに属している女の子が立っていた。
目は前髪で隠れていて少しはねっ毛が目立つ。セミロングというのか、決して短くはないが好きで伸ばしているわけでもないのだろう。肩の下あたりまで伸びた髪はよく手入れされている訳でもなく、伸ばしているだけといった印象を受ける。
服装は学校指定の制服にカーディガンを羽織り袖から指がちょこんと見えている。
「えっと、あのね」
「どうしたの?」
もじもじとして言葉が見つからない様子の彼女は遂に言葉を切り出した。
「あのね、村崎君て、ゲーム、好きだよ、ね?」
「うん」
「それでね、このゲーム、私好きでね?」
「どれどれ」
向けられた小型電子端末の画面を見ると小型ゲーム機対応のゲームソフトの画像が表示されていた。
ピンク色の一頭身で、ゴーグルを被り、手袋とスニーカーを履いていて頭には斜めに生えたとんがりが特徴的な活発的なキャラクターがセンターでキックポーズをしているのがパッケージイラストのゲーム。
「これね」
「う、うん」
確かに持っている。
発売されて間もないこの作品は今のところゲーム界隈で結構な人気を博している。
自分ももうすぐ全クリにいきそうでこの週末にやり込み要素全て終わらそうとしていた。
「それでね、このゲームって二人でプレイできるからね、あのね」
「うん」
「その、村崎君と一緒に、プレイしたいなって・・・・・・」
少し間をおいて、彼女は言葉を並べた。
少し考えてそう言えば最近誰かとローカル通信でゲームしてないなと思う。
「わかった、良いよ」
「えっ、いいの!?」
間髪入れずに了承すると彼女は少し驚いて「ほ、本当に・・・・・・?」と言ってずずいと顔を近づけて確認を取ってきたので思わず仰け反ってうんと答える。
「やった・・・・・・じゃ、じゃあ今度の土曜日、村崎君の家、行っても、いいかな・・・・・・?」
「うん」
「あ、い、家分かんない・・・・・・」
あー、そういえば家に来たこと無かったな。
「じゃあお昼に古本屋集合で」
「わ、分かり、ました」
こんな流れでクラスの女子、島田さんが家に来ることになった。
ゲームに興味がある様子だったけどどれくらいあるのかな、それが分からないと何も言えないけどそれなりにあったら結構話しやすそうだから嬉しい。
階層は戻って古本屋。
ひよこのようについてきたシロは小説コーナーに入っていき、自分は適当に様々なジャンルの本や漫画、中古ゲームやその攻略本等を見て回っていた。
そうしていたら。
「あ」
「あ・・・・・・」
私服姿の島田さんがライトノベルのコーナーに居るのを見つけた。
パーカーにスキニーとシンプルなもので、背中にやけに大きなリュックを背負っていた。
「お、おお、おはよう村崎、くん」
「おはよう島田さん」
顔を真っ赤にしながら少し遅めの挨拶を口から出す彼女は文庫本を本棚に戻そうとしていたが中々入らずわたわたとしている。
「大丈夫?」
「う、うん、大丈夫、大丈夫だから」
もういいよ、と本を戻した島田さんは恥ずかしさか縮こまるようにしている。
ふと立って真正面から向き合うと、彼女の身長が自分より高いことに気が付いた。俺の身長が160センチメートル、彼女の目線が俺の頭頂部辺りにあるくらい。
「島田さん、おっきいね」
「ふぇ!? えぇっと、村崎君、いい、いきなり、そんな、大胆ななに・・・・・・!?」
何故か急に慌てだして胸元を隠す島田さんの反応を見て、自分の言葉の綾に気が付き、自分も恥ずかしくなる。
「いや、その、身長がって意味合いで、別にヤマシイ気持ちはないから・・・・・・」
「あ、そうなん、だ」
「「・・・・・・・・・」」
気まずい。どうしてそんなセクハラ交じりのような言葉を吐いてしまったんだよ。そりゃ自分の背丈が平均より小さいからうらめしそうに見てて口に出しちゃって、たまたま主語が抜けただけでこんな感じになるなんて思ってなかったしそれより改めて見ると島田さんホントおっきいな、姉さんとまではいかないけど女性の平均身長は超えてるんじゃないだろうか。それに胸も結構・・・・・・待て待て俺はどこを見てるんだ馬鹿。
「あ、トオル君」
「うおあ!?」
「きゃあ!?」
後ろからシロに名前を呼ばれ、ふと我に返って驚く。
自分はただ声を掛けただけなのに、急に驚かれてきょとんとよくわからないという顔をするシロはとりあえず心配することにした。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、うん、全然大丈夫」
「私も、大丈夫、です・・・・・・」
ただ只管焦る二人とよく分かってない一人、傍から見れば騒ぐおかしな人達というわけで、周囲からの刺すような視線に耐え切れず三人で古本屋を後にした。
「あぁ、疲れた・・・・・・」
「う、うん・・・・・・」
「お二人とも本当にどうしたんですか?」
古本屋を出て近くの公園に来た。
日頃の運動不足が祟ってか、そんなに走ってもないというのに息切れしている。それは島田さんも同じのようで髪を乱して肩で息をする様は何とも言えなかった。唯一平然としているシロは流石と言うべきか、何事もないようにしていて不思議でならなかった。
公園のベンチに二人が腰掛け、シロが心配そうに覗き込んでいるという絵面になんとも不甲斐なさを感じる。
近くにあった自販機で飲み物を買いに行き、二人に配る。自分は缶コーヒー、シロには果実ジュース、島田さんにはカフェオレを渡して一息つく。
「はぁ・・・・・・」
「あ、ありがとう・・・・・・」
「ありがとうございます!」
「うん」
口を開けたスチール缶を傾け、速いペースで中の液体を飲み干す。シロも一気飲みに近いぐらいの勢いで飲み干し、公園の遊具で遊んでいた。ジャングルジムを駆け上がっててっぺんから飛び降り、滑り台に登ったり、次はブランコに手を出していた。
「し、シロさんだっけ、元気、だね」
「あぁ、うん、今日はいつもより元気な気がする」
「わーい!」
あぁブランコが360度回転し出した。いや危ないから。
「シロ、そろそろ帰るぞー」
「はーい!」
お昼は家にて。
買うのも面倒なので自宅で済ました。島田さんにも皿を出したら「いやいやいやいや、もう、申し訳ないから・・・・・・!」と全力拒否していたが、お腹が鳴って恥ずかしそうに食事に手を出していた。
ちなみに適当にパスタ茹でました。
「さて、腹も膨れたしゲームに手を出すか」
「や、やっとだね」
リビングのテレビに電源を入れてゲームハードを用意する。『マイティアクション』と書かれたゲームタイトル通りこのゲームは横スクロールのアクションゲーム。お菓子を食べてパワーアップする一頭身のキャラがハンマーを片手に出てくる敵をなぎ倒し、ステージのゴールであるリングドーナツをくぐり向ければクリアと言うゲームだ。
「さてと、二人プレイモードにして・・・・・・」
「ゲームコントローラー、持って、きた」
大きなカバンからシンプルなコントローラーを取り出し、ハードと通信させて2pコントローラーにしている。
ゲームカセットを刺し、起動させると大きく表示されたゲームタイトルの下に出るスタートを選択し、ゲームセレクト画面で協力プレイを選ぶ。
ゲームが始まってステージが表示され、自機のキャラを動かしているとこれまでの一人プレイと違っていたところを島田さんは見つけたようで、声を漏らした。
「あっ、キャラの色が違う」
「ホントだ。オレンジと、青緑?」
片方はオレンジ色のキャラで、もう片方は黄緑のような、明るい青緑のような、曖昧な色をしていた。
何故こんな色合いをしているのだろうか。
「ななんでも、色反転、したら、赤青になる、らしい、よ?」
「へぇー、何故にそうするのか知らないけども。それはちょっと面白いね」
「う、うん」
そんなことを話しながら島田さんとゲームを進めていく。アイテムを拾い、敵を倒し、ゴールを目指す。
「アイテム取れるよ」
「あ、ホントだ」
「こ、ここに隠し通路、が・・・・・・」
「あぁ、そこだったのか」
「あ、あのアイテム、取れ、ない・・・・・・」
「ちょっと失礼」
「わ、私を投げた!?」
なんだかんだ話していたら島田さんとすっかり意気投合し、もう既にやり込み要素も終わりラスボスを超えた裏ボス戦まできていた。ナメクジの伯爵のような怪物、通常のラスボスだったそいつがパワーアップし、キャラクターモデルのバージョンアップだけでなく攻撃モーションにも追加があり、なかなか手強くなっていた。
初手回避に専念してモーションや一連の動作を確認し、ダメージを喰らわないようにしていたら、ボスが突然画面の中央で丸まって溜め行動に出た。
「まさか」
「そ、そんな」
次の瞬間ボスが画面いっぱいに膨れ上がり、俺達二人は一撃死でやられてしまった。
「はは、流石裏ボス・・・・・・」
「き、鬼畜・・・・・・」
「もう一回」
「う、うん」
「・・・・・・・・・」
その後数回のコンテニューを繰り返し、やっと行動パターンの暗記をしてボスを撃破した。
「いやーなんとかなった」
「て、手強かった、ね」
完全クリアを果たしたゲームをハードから抜き取りだしていたジュースで口を潤す。さっきまで集中していたので口の中が渇いてしょうがない。
明色の液体を流し込み、コップの中を空にしていたら島田さんが大きなバッグの中から色々なゲームソフトのパッケージを取り出した。
「次は、これ、し、したいな」
「うん、いいよ」
それから日が暮れるまでゲーム三昧で遊びつくした。オンラインとかなら島田さんも饒舌のようで、チャット越しで会話して実際の口話は少なかった。
「はー、楽しかった」
「わた、私も、楽しかった、よ」
ずっと座っていて凝り固まった背中を反らしてぱき、こき、と音を鳴らすと幾分か身体が軽くなる。
途中モンハンを出してきて二人でやっていたのだが、島田さんが思っていたより強くて何個がクリアしたあたりからタイムアタックになっていた。
時計を見れば短針が真下を向いていた。そろそろ帰る時間になったのだろう、島田さんもリュックに持ってきていたゲームなどをしまって帰り支度をしていた。
「じゃ、じゃあ、私帰る、ね」
「あぁ、送るよ」
「あ、ありがとう」
立ち上がって玄関まで向かう。
出先までついてきたシロに「留守番よろしく」と伝えて島田さんと外に出て彼女の帰路に着く。
お互い口下手で並んで歩くもの話すこともなく、夕暮れに照らされた二人が押し黙っていると言うのも気まずい。
「ね、ねぇ。村崎君」
「なに?」
島田さんが話を切り出した。
「あの、家に居たお、女の子、し、シロさんだっけ」
「あぁ、うん。シロがどうかした?」
えっとね、と言葉を濁す島田さんは何処となく話辛そうだった。
ゲームをしていた時は気分が上がっていたからか少し口数が増えていたが、今は落ち着いていていつものテンションに戻っていた。
「し、シロさんに、凄く、好かれてるんだ、ね」
「あぁー、うん」
初めて会った日からずっと一緒に居たわけだし、なんならそれよりも前から面識こそ無いが認識はしていたようで、よく知った間柄と言うものだろう。
「アイツの素性とかほとんど知らないし分からないことも多いんだけども、それでも慕ってくれてる、とは思う」
「・・・・・・そうなんだ、仲、良いんだね」
何処か寂しそうな顔をした島田さんはすぐに取り持って立ち止まる。
「じゃあ、い、家までもう近いし、ここまで、で、いいよ」
「そっか、分かった」
「送ってくれて、ありが、と」
「うん」
「じゃあ、また、学校でね」
「ん、じゃあね」
おずおずと小走りで目の前の信号を渡って小さくなっていく島田さんをしばらく眺め、近くの自販機でコーヒーを買い、飲みながら家に帰った。
◇
今日、マスターの家にマスターのクラスメイトの島田さんと言う人が来た。
背丈は私より大きく黒く長い髪で大きな眼鏡を掛けていて、ちょっと気が弱そうな雰囲気をしていた。胸は私より大きく、以前見たマスターのお姉さんと同じかまだ小さいかぐらいで、化粧っ気は無く香水の匂いもしなかった。大きなリュックサックを背負っていて時折中から様々な物を出していて主と楽しそうにゲームについて話していた。
主が島田さんと楽しそうに話していた。
最初はちょっと距離を離していたが、その距離感も時間が経つにつれてもどかしくなり終盤になるとなんだか恨めしく思ってしまっていた。
「んん・・・・・・」
ソファーのひじ掛けに両腕を置いてその上に顔を顎を置く。
彼が表情を人に分かりやすく見せるなんてことはほとんどなく、いつもは眠そうな顔や疲れているような顔しか見せず、楽しそうにしている時は決まってゲームをしていて良いことがあった時だ。
それ以外は構ってくれている時だろうか。
いつもが光が薄れた真顔なだけに表情が現れた時の変わりようは顕著だ。
「それでも、あんなに楽しそうなのは、ちょっと・・・・・・」
羨ましく思ってしまう自分がなんだか嫌になる。
自分の方が近くに居るのに。
自分の方が長く居るのに。
自分の方が分かってるはずなのに。
そんな卑しい考えがずっと胸のあたりでぐるぐると渦巻いてしまっていた。
もやもやと暗い思考に陥っていた時に、主が帰ってきたようだ。
「ただいまー」
出迎えに行きたいが、先ほどの考えが身体に巻き付いて離れない。
手足が重くなり、喉がつっかえ、動くことも儘ならない。
「シロー? あ、いた」
リビングに入ってきた彼がこちらの存在に気が付いて、今までずっと消していた部屋の電気にスイッチを着けた。急に眩しくなり少し目を細めてから、慣れたころに強張る眉間の力を抜く。
それでも体が動こうとしなかった。
「寝てるの?」
すぐ横まで来た彼が私の体を揺らし、意識の有無の確認を取っていたところで起き上がり、マスターにしがみつく様にして彼の細い体に腕を回した。
「お、おい、シロ?」
「・・・・・・マスター」
活力が湧かない、元気なんて枯れてしまったかのような体を震わし、主にしがみつく。
「マスター、今日ご自宅に招いたあの人は、マスターのご友人ですか?」
「あぁ島田さんのこと? まぁそうなのかな、うん、友達」
「そう、ですか」
何がしたいのか自分でも分からない。
しかしこうしていないと、離れてしまいそうで、何処かへ往ってしまいそうで、怖くて仕方なかった。
しばしそうしていたら、主も私の背中に腕を伸ばして抱き締めた。
「ひゅっ!?」
「なんて声を出すんだ」
暗い感情になっていただけに虚をつかれてしまい自分でも恥ずかしく思えるほど変な声が出てしまった。
それにともなって体が反れ、上を向くと主の顔が間近にあってさらに驚いてしまう。
「ひゃ、ち、近いです・・・・・・!」
「そりゃくっ付いてんだから近いだろうよ」
「そ、そうでした」
どきどきと胸を叩く心臓がうるさくて、一人で変な汗をかいていると主もそうなのかあまりこちらを直視しないでいた。
「マスター」
「なに?」
押し黙ってしまう不安感が薄れ、元気が次第に戻ってきた。
「今日、あの人が、島田さんがマスターと仲良くしてるのを見ていて、ちょっともやもやしてました」
「うーん、ゲームで語れるいい人なんだけどね」
共通の趣味を持つのは良いことだ。それは大いに賛成だけど、それでも譲れない場所があった。
「私はマスターが好きです」
「お、おう」
「だからって他の人と会わないでくださいとは言えません」
「うん」
しかし、それでも、だからと言って。
膨れっ面を下げて半目で睨む。
「他の女の人とあまり仲良くしているのを見ているのは気分が良くないです」
ここは、譲れないのだ。
言葉を言い終わるとともに抱き締める腕に力を入れてより強く抱きしめる。
そのまま持ち上げてくるりと反転し、彼をソファーに押し倒す。
「うぉっふ」
「わふっ」
倒れたことによって体勢がずれて彼の胸辺りに顔があたる。そんなのお構いなしにと顔を埋める。
「今日は満足するまで離しませんっ」
「勘弁して・・・・・・」
赤くなっても離しませんから!
その後一緒にお風呂に入ろうとしたが「それだけは本当に勘弁して」と悲願されたので混浴は控えたが、就寝時はしっかりと添い寝させてもらい、朝まで離れることはなかった。
シロちゃんがちょっと嫉妬しちゃうようなお話が書きてぇなぁと思って書いてました。
なんかこう、置いてけぼり喰らった感じでいじけてるのはよくあったのでイメージこそすれど心的ダメージあったりなかったり。
それはさておき、やりたい番外と言うか、装備紹介してぇなということでいまだ残ってるキリンXとキリンXRの紹介番外で次を潰そうかなと。
あとはこの小説ページの整理しようかと。本編と番外で。
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誤字脱字等ありましたらご報告願います。
では