キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 体育教師と聞いてどんな人物像浮かべるのでしょうか?


三十五話 朝から居たから注目される

 家を出て鍵を掛ける。ガチリ、と重なる金属音を響かせて樹脂と金属で出来た扉が閉まった。

 

「忘れ物は?」

「ありません」

 

 振り向くとそこにはいつもはいない少女の姿。普段着の防具やら私服やらではなく以前女子団体がやって来た時に置いていかれたセーラー服を着用している。

 

「じゃあ行くか」

「はいっ!」

 

 白髪の少女と並んで歩く。

 制服姿でシロと並ぶというアブノーマルな状況に改めて考え直して焦った。横を向けば戸惑いつつも嬉しそうな顔をして浮かべるシロがいる。

 

「……」

 

 一緒に買い物に行ったことはある。シロが訳あって学校に来たこともあった。しかしこうして二人並んで登校することは無かった。お陰でさっきから無言になっている。

 

「トオル君」

「ど、どした?」

 

 振り向くと不安そうな顔を浮かべる彼女が居た。

 

「本当に、私が行ってもいいのですか? 学校へ……」

「あぁ、それか。いいんだよ。むしろ歓迎されてると思う」

 

 やはり若干の不安があるのかそんなことを聞いてきた。

 自分としては別に大丈夫だとは思う。

 昨日の会話をみれば多分大丈夫だろう。

 

 昨日、飯田先生の呼び出されて向かった職員室での会話を思い出す。

 

 

 ◇

 

 

「用ってなんですか」

「そう早まらんでもいいじゃないか」

「まぁ、はい」

 

 からからと笑う先生の太い肩が揺れる。見ているだけで暑苦しい。どこかのテニス選手かよ。

 

「お前彼女居たよな」

「なんですか唐突に」

 

 腕を組んで楽しそうに聞いてくる先生とは真逆に俺は鬱陶しい気持ちをチラチラと出しながら答える。

 

「あの娘、あの白い女の子だよ、お前の彼女じゃないのか?」

 

 何が嬉しいのか楽しそうに話す教師を覚めた目で眺める。

 

「あの運動神経は視ていて光るものがあったんだ」

「はぁ」

 

 先程とはうってかわって考えに耽っていた飯田先生は俺に向き直って背もたれに預けていた状態を起こして肘を曲げた膝に当てた前傾姿勢になって俺を見上げながら言う。

 

「次の体育って体力テストだったろ」

「そうですね」

「そこでお前の彼女の身体能力を測ってみたいんだよ」

「はぁ……はい?」

 

 思わずすっとんきょうな声が漏れた。

 職員室内もざわつきが見える。少し遠いところでは飯田先生の性格を知っているのか、諦めてため息をついている先生の方がいた。

 

「な、いいだろ?」

「いや、先生何を言ってるんですか」

「教職員の特権だ」

「職権乱用も甚だしい!」

 

 

 ◆

 

 

 うん、不安しかない。

 どうしたもんか、今すぐシロを家に帰そうか。

 それも何だかなぁ・・・・・・ええいもうどうにでもなれ。

 悩みを全力投球でどこかへ投げ飛ばして何も問題ないことにする。

 

「よし、着いた」

「おぉ」

 

 二人で校門を潜る。

 すると当然ではあるが登校してきた生徒たちの注目が全方位から刺さって仕方無い。

 早いとこ先生に報告して教室に入ろう。 

 

「トオル君……」

「シロ?」

 

 突然シロが身を縮こませて制服の袖を摘まんできた。

 見られるるとは慣れてないのか、好奇心の目に晒されて不安そうにするシロ。

 

 このまま道の真ん中で立ち止まるのもいただけない。何か元気付けて上げられないか、そんなことを考えて取った行動は手を繋ぐ事だった。

 

「シロ、早く教室に行こう」

「……はい!」

 

 上手くいった。シロがいつもの朗らかな笑顔を取り戻して内心ほっとする。

 気を取り直して職員室へ向かう。出切るだけ目立たないように。

 

 

 程なくして職員室で飯田先生にシロを紹介した。

 先生は朝からひと汗かいていて額に滴が見えた。元気すぎやしませんか。

 

 そんなこともあってやっと教室に入る。

 ここまででかなりの生徒の注目を浴びてしまった。視線に敏感なのか、最初はまだ平静を保っていたシロが次第に俯いてびくびくしながら腕にしがみつくので逐一宥めながら教室に向かっていた。

 

「おぉむらさ、き・・・・・・」 

「えっと、おほよう、加藤」

 

 賑わっていた教室がしんと静まり返る。

 扉附近にいた生徒から始まり、近くに居た生徒がその異変に気が付いて此方を見たため固まる。その連鎖が連なってクラス全体が静かになり、椅子の軋む音すら聞こえなくなった。

 

「お、お前ら?」

「「「」」」

 

 藤ズも動かない。

 女子も男子もこちらを見ているようでどこか遠いところを見ているようだ。

 

「し、しし、シロさんっ!!?」

「きゃあ!?」

 

 一人声を荒げて正気に戻り、シロを見て驚く。

 それを皮切りにクラスメイト達が意識を取り戻していき、シロを見てまた驚く。

 まるでコントだな。

 

「どうしてシロさん学校にいんの?」

「それは訳合って」

「しかもセーラー服! 黒の!」

「この前女子が家に来た時においてったもので」

「可愛いが可愛い着て可愛さがけた違いに可愛くなって可愛い!」

「結局なんなんだ」

 

 十人十色の感想を述べて興奮しているクラスメイトを見て呆気に取られる二人。

 シロは早速女子に持っていかれてやんややんやと騒いでいる。

 俺も男子に囲まれてしまい、いつぞやの質問攻めにあった。

 

「なんでまたシロさんが学校に来たんだよ」

「しかも朝から二人並んでくるとか」

「当てつけか、俺らへの当てつけなのか」

「うるせぇ喋らせろ」

「竜巻旋風脚」

「なんだ今の」

 

 事の顛末を簡潔に説明するとその殆どが渋い顔をして納得して頷いていた。

 

「あの筋肉教師か・・・・・・」

「そう」

「シロさんと体育か」

「恐らく女子に入るだろうけどな」

「だがそうだとしても!」

「力説をするな」

 

 拳を握り締めて苦虫でも噛み締めたようにまさかの涙を流している内藤を一蹴して話に戻る。

 

「それで、体育までとその後はどうするんだ?」

「特別許可証貰ったから教室で」

「ほほう」

 

 なんだかんだで鐘が鳴り、生徒は席に着き、シロも女子生徒が忙しなく持ってきた椅子に着いている。と言うより俺の横に居る。さっきまで向こうに居たのに。

 

「お前らおはよう」

「先生おはようございまーす」

 

 教壇に立つ先生に誰かが返し、点呼を取ろうとした先生が教室を見回したところで目の色を変えて二度見し、シロを凝視する。

 

「き、君は・・・・・・!?」

「えっと、シロです」

「村崎の彼女でーす」

「超可愛い娘でーす」

「それと強いでーす」

 

 ざっくりし過ぎる説明をされて若干焦るシロ。

 そんな説明で数人があ、そういえばみたいな顔をして思い出し、何とも言えない顔をする

 

「村崎、許可は?」

「ちゃんと取ってます」

 

 そう言って先生にシロの入場許可証をみせると渋々了承してくれて、SHR後に詳しいことを説明して頭を抱えて「飯田先生のところ行ってくる・・・・・・」と言っていた。大丈夫だろうか。

 

 本日は午前中の授業を使って体力テストを行うので女子は早々に更衣室へ向かい、男子も教室で着替え始めた。

 

 




 ステンバーイステンベーイ。
 モブの性格なんて適当で良いやと思ってたけどなんか拗らせてきたから凝ろうかなんて考えている。
 いつゴア娘書くんだ。

 次回、体操着!

 では。

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