時間と体力の限界をみながら書いてたらこんなにも間が。
死なない程度にこれからも書きますので、どうか。
体育館内。
授業間の休憩。
生徒たちはタオルで汗を拭いたり、給水所に走ったり水筒を煽ったりしている。
「それにしてもあの二人、凄いよなぁ」
「シロさんとクロさんだろ? モノスゲーよなー」
二人の男子が体育館の隅で談笑している。内容は今日の主役とも言える狩人二人のこと。
当の二人はと言うと。
「水のみたい」
「我慢してください。私も飲みたいんですから」
「他の人飲んでる」
「貰うわけにもいきません」
隅の方で喉を渇かしていた。
それを聞き付けた連中が、自分達のために持ってきたはずの飲料物を我先に渡しに行っていた。
「く、クロさん! 良かったらこれ飲んでください!」
「シロさん、嫌じゃなかったら私のやつ飲む?」
男女に囲まれてんやわんやになっている二人。申し訳無いとシロが断ろうとしている隣で遠慮など知らんと言わんばかりに受け取り勢い良く煽り飲むクロ。
「何してるんですか!?」
「え、くれるって言うから」
「貴女に遠慮というものはないのですか!」
「貰えるなら貰う」
「もう!」
うん、大変そうだ。
声もかけたいところだが中休みなのでそこまでの時間はない。今は遠目から眺めるぐらいでいいか。
「よーし、そろそろ再開するぞー」
チャイムがかかり、飯田先生が号令をかけて出てきた。
手には大型のメジャーがある。
「ある程度終わってきたので次は立ち幅跳びだ」
線に爪先を揃えて立ち、そこから一度でどこまで跳べるかを測るもの。
うちのクラスには運動部がそこそこに居るから結果も大したものになると予想する。
あとはハンター二人。
画面の向こうではたまに二段ジャンプもやってのけていたが、あれはシステムの関係でなってるだけであって、現実では恐らくあのようなことはないだろう。多分。
「取り敢えず私からいくよっ!」
そう言って前に出たのは山田さん。
一度シロの着せ替えをさせるために家に来た人だ。
元気が良くて人との交流が多い出来た人。
家に置いていった服は回収する気はあるのだろうか。
「位置について」
「何処までいけるかな~!」
基準の線に爪先を揃える。
大きく屈伸を繰り返し合わせて腕も前後に大きく振る。
そして彼女のタイミングで前方に飛び上がり、空中で体をくの字に折り曲げ足を前に向ける。着地して体を起こし、倒れないよう体を起こす。
「さぁ記録は!?」
記録係がメジャーを伸ばして彼女の踵から線までを計り、その記録を叫ぶ。
「195cm!」
「やったぁ!」
記録が出たところで山田さんは飛び上がり、女子グループの生徒のところに走ってハイタッチを交わしていた。
そのまま順番が回り彼の二人の出番だ。
「跳べーシロさーん」
「負けるなクロちゃーん」
男女それぞれの歓声が混じり良い具合に士気が上がる。皆楽しそうだ。俺は憂鬱だ。二人は闘志を再燃焼し出した。元気だ。
「いきますっ」
先攻はシロ。
線に爪先を揃え、勢いをつけて飛躍する。立っている体勢からと言うのによく跳ぶ。床を蹴り、着地した距離は山田さんより遠い。
「はっ、と。どうでした?」
足を床から離さないよう着地した体勢から上体だけ捻って振り向く。「やってやった」と言わんばかりの笑顔をしている。可愛らしい。
記録係がメジャーを伸ばして記録を言う。
「275cm!」
「やりました!」
興奮気味の歓声がどっと騰がる。
跳んだ本人はぴょんぴょん跳ねている。
まさにウサギのようだ。
一つ間を開けてクロが立ち上がり、線の前に立つ。静かな眼差しに野心を籠めている。何処かの傭兵のように「待たせたな」と聞こえてきそうだった。
「次、いくよ」
そう言ってクロは、若干深い屈伸運動を繰り返す。
バネのような延び縮みを繰り返し、その関節の往復は、爪先までも含まれていた。
段々と屈伸運動が加速し、胴体が次第に床と水平になりだす。
そして、付けるだけの勢いを付けて、ついにクロが跳んだ。
「ッ……!」
前方に鋭く、しかし上昇気味に跳ねたクロは、粘る足を爪先まで意識を巡らせ、縮ませる筋肉に集中して跳ぶ。
足が床から離陸し、浅い弧を描いて前へ跳び、今度は引き伸ばした足を前に出す。
この時、胸と足がくっつきそうなほど足を前に向け、着地と同時に上手く踵を付けて尻餅などつくこともなくするりと、吸い付くように着地した。
「っ、ふぅーっ」
集中で使い終わった息を吐き出し記録係に測ってもらっている。
表示された記録にまず係の人間が驚き、次にその内容を知った人間が驚愕した。
「さ、316cm……!」
「おおぉぉぉ!!」
シロの時よりも大きい歓声。
残りの項目も半分を切ったところでこの盛り上がり。まだまだ楽しめるといったぐらいだろうか。個人的には辛さが出てきた。
てか3mて跳びすぎやしないか。
「ある意味、裏技」
「心を読んで答えるな」
人外化が進んでる気がするぞこの褐色娘。
次の種目は握力。
画面の中では自分の体躯より大きい武器を巧みに操ることもある狩人。そんな二人の握力ともなればリンゴを潰すのも容易いのではないだろうか。因みにリンゴは握力60kg以上なら砕けれるらしい。
「俺の右手が疼くぜ……」
「早くしろ内藤」
中二病発症させている内藤。相変わらずだ。
「セェイッ!」
怒り肩になりながら内藤が測定器のグリップを握る。
真っ赤になりながら握り、金属部品が僅かに軋む。
数秒そのままで、記録が出たことを伝えるアラームが鳴り、やっと力を抜いた内藤がぶはぁっ、と息を再開する。
「結果は」
「31kg」
うん。まぁまぁじゃないのか。
そりゃ平均までは達してないとはいえ、それなりに出やすい数値なんだからそんな虚しい顔をしなくてもいいと思う。
測定器に数があったのでこの項目もスムーズに済まされていく。
ただ測るだけ、大半の人間からすればそんなものでしかない体力テストもあの二人にすれば大事な事のようで。
そうこうしていたら離れたところで二人が握力を測っていた。
「えいっ」
「むんっ」
可愛らしい掛け声で握力計の、上下に別れたグリップを片手でを握り締めている。
数秒経って記録が表示され、ぱっと脱力する二人。無呼吸で力んでいたため顔が赤くなっているようだ。
「シロさん75kg! クロさん53kg!」
結果を聞いて勝利の笑みを浮かべるシロ。
反対に悔しそうに眉を潜めるクロ。
「ま、まだもう片方あるから……」
「平均を上げないと勝てませんよ」
なんでフラグを建てるのか。
そして案の定フラグ回収するクロだった。
続いて上体起こし。
「じゃあ二人組作ってー」
物凄くナチュラルに呪いの呪文を唱える教師。
しかし加藤と組んだ透は難を逃れる。
良かった。
狩人二人はそのままペアかと思いもしたが、それぞれ別の女子生徒と組んだ様子。
「シロさんすっごい肌キレー」
「クロさん体引き締まってるけど柔かぁい」
二人のペアになった女子生徒がここぞとばかりに二人の肌を撫で回していた。
「く、くすぐったいですよ~」
「んう、変な気分……」
ちょっと肌色成分の強いキャッキャッうふふな情景にその場の誰もが生唾を飲んだ。
それを見かねた先生が咳払いをし、正気に戻った生徒が腕を組んだりして準備をする。
「それじゃあ一人目。よーい、どん」
ペアの片方が一斉に腹筋運動を始める。
肩甲骨を床に、胸の前で交差させた腕が膝に当たるまでが一回としてその前後運動を時間まで繰り返す。
跳ねる必要も無ければ大きな運動をするわけでもないが、上体を腰回りの筋肉だけで持ち上げると言うのは割りと苦しかったりする。
「ふっ、ふっ、ふっ!」
「おおぉぉぉぉ!!」
皆が額に汗を流しそれぞれのペースで腹筋運動を繰り返す。三十秒という時間のなかで、どれだけの回数腹筋が出来るかという内容に回数を比べるために躍起になる人間が多い。
もちろん数が多い方が健康的な証拠であるし、そもそも運動部である彼ら彼女らにとってこれもある意味勝負事のようなものなのだろう。
「負けらんねぇ!」
「これなら一番も目じゃねぇ!」
「俺たちの戦いはこれからだ!」
なんでフラグを張るんだよ。
シロとクロは後半にやるようで、二人ともペアの女子の足をがっしりと支えている。
クロは相変わらずの無表情だが、シロは控えめながらも「が、がんばってくださいっ」と小さな応援をしていた。
「ひゅんっ」
「えっ」
それを耳にした同じペアの女子生徒とその周辺で計測していた生徒が、糸の切れた人形のようにパタンと倒れたかと思うと、再び目を開き、先程とは明らかに違う、加速したペースで再開した。
「シロさんの、応援は、これ以上ない、ドーピングぅぅぅ!!!」
違法じゃねぇか。
狂気的な闘志で腹筋運動をする女子生徒。時間までペースは落ちることなく、自己ベストを出したよう。
「次ー、もう片方準備~」
いそいそと足を持っていた片方が寝そべり膝をたてる。その膝をさっきまで計測していた片方が支える。
狩人二人も膝をたてて横になり、シロは胸の前で腕を組み、クロは後頭部で腕組みをした。
「よーい、始め」
先生の合図で後半戦が始まる。
前半のペア達と変わらない勢いで腹筋運動を繰り返す後半の人たち。
「シロさんの、エールが、俺達を、支える!」
何か言ってる。
当のシロは気恥ずかしさで目を伏せながら腹筋運動をしている。
「そんな、ペースで、私に、勝てるか、な」
「なんの!」
挑発するクロ。それに真正面から乗っかりつつ、食らいつくシロ。
運動部員達と変わらないペースで上体を起こす二人。
しかしこれまでとは違い、超人的な速さが出ているわけじゃない。
他と変わらない。いや遅い訳じゃない。ペース的には運動部員とほぼ同じくらいだ。
「あと二十秒!」
残り時間を知らされ、焦りが見え出す。一部の生徒はペースが落ちてきた。それでも体力を振り絞り、痛みが走り出す腹筋にむち打ち体を起こす。
狩人二人はまだ余裕がある様子。まだペースも落ちていない。
「うあぅ、キツい……!」
「弱音、かな……!?」
「何も、言って、ません!」
伝う汗に気もくれず、只管に腕を組み、体を起こす。
最初は余裕のあった息も切れてきだした。
浅い呼吸を繰り返し、胸が若干上下する。それでも止まることはない。
「あと十秒!」
ラストスパート、最後の追い込みまで来た。
体力を切らす者、最後にペースを上げる者、多種多様に変えて残り時間が過ぎるのを待つ。
「うぅぅ!」
「ま、け、な、い」
どちらも譲らず、これまでどっちもリードすることはなかった。
そしてそのままタイムアップ。
笛が鳴り、みんな床に寝そべったりして乱れた呼吸を整えている。
シロ、クロ、両方32回。平均よりは高い。と言うほどだろうか。しかし問題はそこではない。
「シロさん動ける?」
「はぁー……、はぁー……、な、なんとか……」
「クロさん平気ー?」
「もう、まん、たい……」
くて、と脱力しきって倒れたままの、真珠のように、病的でないぐらいの適度に白いシロと、日焼けという焼けた色ではない、しっとりとした浅黒い褐色のクロ。
長い前髪やらが汗で濡れ、今までで大分汗を吸ったのか体操着がボディラインに沿うように張り付いている。乱れた呼吸で無防備な胸が上下に動き、可愛らしい主張をする膨らみが揺れる。
「「「おぉぉ……」」」
誰もが見惚れる。
扇情的とも言い難いが、邪な目で見てしまうのも致し方無いほど魅力的な二人に言葉が出ない。
「ふ、二人とも! 汗拭いて!」
「ふぁ、はいぃ」
「んぅー、うん」
山田さんが持ってきたハンドタオルを受け取りびしょ濡れになった体を拭く。それでやっと正気に戻った皆は次の種目の準備にかかった。
残る種目はあと二つ。
結果はどうなるのだろうか。
中編と言った感じですかね。
次回後編、最後の勝負!
勝つのはどっちか!
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では。