キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 一月一話は流石に少なすぎやしませんか?

 他にも手ぇ着けてるんで勘弁してくだせぇ。

 うるせぇ書くんだよ!

 ひぃ!


四十二話 夏の日照りの合間の蚊

「暑いでずぅ~・・・・・・」

「うん、夏だからね・・・・・・」

 

 買い物の道中、両手に荷物を持ち、灼熱の日差しに焼かれながら帰路を進んでいた。

 電車を降りた時点で社内と外の温度差に絶望し、帰ることを諦めたりもしたが、シロの「頑張ってみましょう!」の一言でなんとか歩いている現状。後悔はない。だが幾分辛い。

 

 歩くこと数分、目の前からクラスの女子生徒複数名がそれぞれ帽子やらフードやらを被っているのを見た。向こうもこちらに気付いたようで、隣のシロを見るとあっと言ったような顔をして小走りに近づいてきた。

 

「こんちわ~シロさん!」

「こんにちわ皆さん」

「よー村崎、相変わらずほっそいねぇーアンタ」

「うっさい」

 

 山田さん筆頭に山村さんと山岡さんが間に挟まり囲むように絡んでくる女子数名。

 暑いのに引っ付くな蒸し暑い。

 

 山田さんは俺をシロから話すように引っ付いているので、女子同士の会話はあまり聞こえない。

 

 そんな時、一人の女子が会話を遮って、ふと声を漏らしていた。

 

「あれ、シロさん?」

「なんでしょう?」

 

 気になって首を向けようとするが、山田さんの腕に押さえ込まれてよく見えない。

 それなのに向こうは何も言わず、静かにしているのが余計に気になる。

 

「これって⋯⋯」

「やっぱそうなのかな⋯⋯」

「あ、あの、私の身体に何かついてますか?」

 

 額がくっつきそうなほど間近に寄られて若干仰け反りながら見られている理由をシロは女子達に尋ねるが、そんなこと耳に入っていない様子の彼女達は俺を掴んでいた山田さんを引っ張っていって、背を向けて何か話し込んでいた。

 

「(ねぇ、あたしヤバイのみつけた)」

「(なになに?)」

「(シロさんの⋯⋯見てみ)」

「(おけ)」

 

 手短に話し終えた彼女達は、ものすごく神妙と言うか、真面目と言うか、真顔に近い言い表しがたい表情で振り向いてシロの身体を手取り足取りと言った様子でマジマジ見ていた。

 

「おぉ、ホントだ⋯⋯」

 

 何か見つけたのか感心したような感想を零した山田さんは、次はこちらににやにやした顔をしながら横腹を小突いてきた。

 

「村崎ぃ~、アンタ見かけよりガツガツしてんのねぇ~」

「はぁ? 何のことを言って⋯⋯」

「いっていって! 大事にしなよ~」

「あ、ちょ⋯⋯なんなんだ」

 

 そう言って彼女達はそそくさと通り過ぎていった。

 その帰り際になんだか楽しそうに見られていたのがちょっとイラッと来たが、これも暑さのせいだろう。

 

 

「ちょっと休憩しよう」

「は、はいぃ~」

 

 咄嗟に提案して近くにあったコンビニに流れる様に入る。

 生モノこそあるが事前に氷詰めにしてあるのでまだ大丈夫だろう。

 店内は強めに冷房が掛けられていたが、熱気にやられそうだったのでこのぐらいでもちょうど丁度いいくらいに感じる。顎まで滴っていた汗を軽く拭って飲料水のコーナーまで歩いて回る。

 

「いらっしゃ⋯⋯イラッシャイマセー」

 

 入店音に気付いて出てきた店員さんがこちらを見て一瞬言葉を詰まらすが、すぐに言い直した。

 だが、どこか片言と言うか、なんだかぎこちない言い方に引っ掛かったが、そんな疑問など夏の暑さに焼かれてしまった。

 

「なんなんだ⋯⋯?」

 

 二人分の清涼飲料水を買って店を出る。出てすぐにボトルキャップをぱき、と開けて液体を流し飲む。シロも同じように飲み下していたが、口を放してもにもにと液体を咥内で転がして、飲み込んだ彼女の顔はあまり晴れたものではなく、中途半端と言うか微妙な顔をしていた。

 

「どうかしたの?」

「あ、いえ、なんとなくぬるいと言うか、思っていたよりは冷たくないのかなーと感じただけですから」

 

 「トオル君が買ってくれたのですからありがたく頂きます!」と言ったシロはまたそのまま一気に残りを飲み干した。炭酸飲料ではないとはいえ、500mlはあったはず、それを一気はちょっとまずくはないだろうか。

 

「ぷはぁ!」

「大丈夫? それ」

「やっぱり足りません!」

「暑いよね⋯⋯」

 

 暑さに項垂れそうになっていた俺とシロだったが、シロが何かを思いついたようにどこからともなく久々に見た気がするハート型のポーチから半透明の水色をした液体が入った瓶を取り出して煽っていた。

 

「シロ、それは?」

「あ、クーラードリンクです」

「へぇ」

 

 一口飲んだシロがさっきまでのだらけ具合が瞬く間に解消されて、涼しげな顔をしていた。

 

「それやっぱり効くの?」

「すごく効きますよ」

 

 飲んでみますか? と聞かれて興味本位で手を出してみる。受け取った瓶は分厚いのに氷でも持っているかのような冷たさが手の皮を刺す。蓋を開けるとドライアイスのように冷気が溢れ、下に流れていった。

 

「凄そうだね・・・・・・」

「飲んでみますか?」

「いいの?」

「どうぞ!」

 

 そうにこやかに言われて手渡された瓶詰の液体を眺める。氷をそのままの温度で液体に戻したのかというほどの冷たさと霜を瓶の口から出している目の前の物体。瓶を持つ手はじんわりと冷たく、張り付いて刺すような痛みが染みてきた。ふとシロの方を見ると、さっきまで濡れたように掻いていた汗がピタリと止まっていた。

 

「⋯⋯いただきます」

 

 一言こと呟いて、そろそろ痛みが大きくなってきていた便を握る手を口に近づけ、液体を口に含む。一先ず味わうとかは抜きにして、何も考えずに飲み込んだ。

 

「んむっ!?」

 

 突如として頭に響く金属音と痛みだす頭の内側。吐き出そうとしても飲み込んだ液体は熱された体内を冷やしながら胃に乗り、袋の中に流れ込んだ。冷たいを通り越して冷気を放つ液体は身体を真から冷やすどころか、体内から凍傷にさせるような勢いで身体から熱を奪っていった。

 

「んんんんんん~~~~~~~~っっっ!!??」

「と、トオルくぅーーん!!?」

 

 その場で腹と頭を抑えて蹲り、真夏の道路にのた打ち回る男子学生の図。傍から見れば変人か狂人だろうが、そんなことを気にしていられるほどの余裕など凍って砕けた。

 

 痛い。とにかく頭が痛い。

 アイスクリーム頭痛とかいう、あの独特な痛みがずっと頭の中で居座っている。なんなら小躍り踊っているくらいには長くいる。痛いうえ殺意が湧いてくる。

 

「はぁっ⋯⋯あ、あぁ⋯⋯!」

「トオル君、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」

 

 ゆっくり、本当にゆっくりと締め付けるような痛みが退いていくが、それでも残留する痛覚が反響して余波を与えてくる。

 

 しばらく動けないままでいると、誰かが声をかけてきた。

 

「お、村崎。何してんだ?」

 

 コンビニ袋を片手にアイスを舐めていた加藤だった。

 加藤はこちらに寄ると蹲る俺に手を添えて何が起こっているのかシロに訊ねた。

 

「シロさん。村崎のやつどうしたの?」

「それが、私がクーラードリンクを飲ませてしまって、頭痛を起こしてしまいました⋯⋯」

「なにそれ、どれだけ効き目強いのそれ」

「加藤ぉ~⋯⋯だずげでぇ⋯⋯」

 

 息がしづらいので鼻声混じりになってしまっている。そんな俺を見てため息を一つついた加藤は俺を支えるように担いで立たせてくれる。

 

「それじゃ外暑いし、ひとまず俺んちに寄るぞ」

「おぉ⋯⋯」

「シロさん。悪いけど荷物持っててくれない? 俺こいつ運ぶからさ」

「わかりました!」

 

 

 

 そんなこんなで友人、加藤宅へお邪魔することになった。

 

 

 

 

 加藤宅。

 

 荷物の中で危なそうなものは冷蔵庫に避難させてもらい、後は邪魔にならないところにおかしてもらった。俺とシロは居間に通されて出されたお茶に手をつける。

 

「で、結局何がどうなってたわけ」

「さっき話した通りだよ。シロにもらった飲み物の効き目が強すぎて悶絶してた」

「改めて聞いてもわけわからん」

「俺も」

「ごめんなさい⋯⋯」

 

 落ち込むシロを撫でてやって慰める。

 誰かが悪いわけでもないのでそこまで落ち込まなくてもいいだろうに、律儀と言うかなんと言うか。

 

 少し経って、あれだけ痛かった頭痛もやっと引いてきたのでそろそろお暇しようかと思ったとき、加藤がシロの事を凝視しているのに気がついた。

 

「あの、どうかしましたか?」

「あ、あぁ、ごめんよシロさん。ちょっと気になってさ」

「?」

「全然なんもないですよ! うん!」

 

 物凄く不自然に話を切り上げると加藤は俺の首に腕を回し、耳元に小声でちょっと来いと言いながら部屋の隅につれていかれる。

 

「おい、あれはちょっと大胆じゃないか?」

「何が」

「惚けんなよこら、あれは流石に目につきやすいわ!」

「だから何が」

「あくまでシラを切るか⋯⋯まぁいいさ。ほどほどにな」

 

 やたらと嬉しそうにしている加藤に肩をバシバシ叩かれて加藤宅を後にした。

 

 帰り道。寄り道が多かった気がするが、自宅までもう少しというぐらいまで進んだ。

 そこまで歩いていて、頭の片隅で考え事をする。

 

 今日逢った人のほとんどが、シロを見て呆けていることが多かった気がする。何かあるのは確定だと思うが、誰に聞いてもはぐらかされて教えてはくれなかった。

 

 家に着き、荷物を持ち替えたりともたつきながら扉を開けて、家に入る。

 

「ただいま」

「帰れました~」

 

 直ぐ様エアコンを掛けて、荷解きをしながら冷気を浴びる。

 早急に生物を冷蔵庫に搬入させて、次に野菜など大丈夫なもの、麺や調味料など常温で置くものを定位置に置いてやっと終わる。

 

 一段落着いたので、何か飲み物を淹れて休もうとコップにアイスココアとアイスコーヒーを淹れて、先に休ませていたリビングに居るシロの方を振り向くと、何やら首もとや背中に腕を回してかきむしっていた。

 

「シロ、どうした」

「あ、マスター、体が、かゆくってぇ⋯⋯!」

 

 半泣きで掻き回しているので持っていたコップをテーブルに降ろして、食い止めるように宥める。

 

「多分蚊に噛まれたんだろう。あんまり掻いたら余計に酷くなるから止めな」

「でも、でも、ますたぁ~~⋯⋯!」

「薬取ってくるから我慢して」

「わかりました⋯⋯」

 

 何処に置いたか忘れかけていた救急箱を探して、痒み止めの塗り薬を持ってくると、掻きたい欲求を寸のところで我慢していたのか、餌付けで待てを強要されて理性が崩れかけている飼い犬のように身を低くして座り込んでいた。

 

「そんなに痒い?」

「痒いですぅううう!」

「あ、うん」

 

 今にも幹部に手をかけそうになっているシロの手を掴んで軽く強引に引き剥がし、腫れてあろうところを確認すると、首筋に小さな膨らみがあるのが見えた。それも胴に近い首もと。

 

「首筋か、なんかキスマークみたいな⋯⋯キスマーク?」

 

 そういや今日の帰りがけに会う人は皆、シロに視線を向けては何かを悟ったように気を逸らしたり茶化してきたりと様々ではあるが辺な気を使っていた気がする。

 

 絡んでにやにやとしていた山田さんたち。一瞬固まっていたコンビニの店員さん。加藤。

 

「なるほど、つまり、これを勘違いして」

「マスター?」

 

 エアコンの風に当たって冷えていた頭が沸騰してくる。気づかなかったことによる羞恥心と、からかわれていたと言う事実に対する怒りが混ざってどうしたものかと震えてくる。

 

「あの、マスター。塗って、くれないのですか⋯⋯?」

 

 お預け状態で耐久させられていたシロが泣く寸前まできているので、今は痒み止めを塗ることを有線放送する。

 

「ちょっと染みるだろうけど、我慢してね」

「はいっ⋯⋯」

 

 薬液を少し染み出させて幹部に当てる。火照った体、しかも首筋と敏感なところに当てられたシロはぴくっと背筋を跳ねさせた。

 

「ひんっ」

 

 ハッカのような清涼感が漂うその液体は、使い心地は独特だが、効果は確かにあるものだ。

 薬用液特有の滑りのある液体なので、塗るときは若干の気持ち悪さが伴う。シロもそれを感じているのか、眉を寄せて唇を噛んでいた。

 

「ん、んぅ、あっ⋯⋯」

 

 だからといって声を漏らすのはやめてほしい。

 早急に塗り終わって患部から容器を離す。

 

「はい、終わり。他に痒いところない?」

「実は腰の辺りも痒くって、そこもお願いできますか?」

「ん、わかった」

 

 そう言うと彼女は後ろを向いて服をたくしあげ、更に履いているスカートを少しだけ下ろしたのだった。

 

「ふぅっ」

「ではお願いします」

「ま、任されました」

 

 血色のよい色白できめ細やかな柔肌。少し浮き出た背骨や骨盤で陰りが見えるのが、より生々しさを醸し出す。

 いかん、見とれている場合ではない。

 邪なことを考える気持ちを抑えて、真面目な気持ちで再度目を向けると、腰部右側に赤く膨らんだ凸を見つける。

 

「これか」

 

 さっさと薬を塗って休もう。

 でないと頭が煮えそうだ。

 

 また容器の先端に薬液を染みださせ、ぺとりと湿った音を静かに立てて当ててやる。

 

「んんっ」

「」

 

 無心だ、無心を貫け。

 シロの声に反応するな、良いとか思うな、静まれ俺の邪心。

 外面なんとか平静を保つ。これまで大胆な接触とかはそれなりにあったのだ。タカが嬌声程度なら我慢も簡単だろう。耐えて見せろ俺の息子。

 

「ひぅっ!」

 

 無理そうです。

 存外慣れていないようだった。

 

 俺は崩れかけている理性が崩れ切ってしまう前にこの生殺しのような作業に終止符を打ち、とっとと塗り薬を片付けに走った。

 

 戻ってみると、痒み止めの効果が出て来たのか、息をついて涼しそうにしているシロの姿があった。

 

「どう、落ち着いた?」

「はい~、はしたないところをお見せしました」

「いやいいんだ」

 

 危なかった。

 

 一波乱の末に啜ったコーヒーは、煮えた頭を冷やすには少し温かった。




 と言うわけで蚊です。
 大分前に頂いた案を今回やっと採用させていただきました。
 この場を借りて感謝申し上げます。
 ありがとうございます。

 番外何を書こうか悩んでますが、まぁ同じようなおいおいおい。

 ご感想等ありましたらお気軽に投稿ください。


 では。
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