キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 主人公の姉 村崎 楓。
 何でもできるが外弁慶。
 主人公より頭一つ分ほど背が高い。
 黒髪ロン毛。



四十五話 姉リターン

 著しい酷暑にアスファルトが焼かれ、人間と虫以外に生き物と言える物は日の下には出ていない。

 盛るセミはうるさく鳴き続け、四六時中つがいを求めてその縮れたような頭に響く鳴き声を発し続けている。人も人で汗を流しながら出歩く姿は同情も超えた境地に達しそうだった。

 

「もう、少し⋯⋯もう少し⋯⋯」

 

 額から垂れる汗が顎に溜まって鬱陶しい。それを拭ってはまた溜まり、滴る。

 転がすというより最早引き摺っているキャリーバッグがまるで枷のような気さえする。

 

 着飾った服も髪型もこの熱で溶けそうだった。

 

「タクシー、使えばよかった⋯⋯」

 

 一人孤独に愚痴るのは村崎 (かえで)

 村崎 透の姉にして文武両道、容姿端麗、絶滅したと言われる大和撫子な性格と完璧とも言える存在。

 

 その実態は外弁慶のブラコンで弟に限定してコミュ障を拗らせたヘタレだった。

 

「帰ったら、透君といちゃいちゃするぅ⋯⋯!」

 

 訂正、末期だった。

 

 

 村崎宅。

 

 

「つ、着いたぁぁぁ~~~~!!」

 

 玄関前で座り込もうとしたが、熱された足場に膝が当たりそうになったところですぐさま立ち上がり、スカートの裾を払ってインターホンを押す。

 電子音のチャイムが鳴るが、家の中から誰かが出てくるような様子は微塵も感じなかった。

 

 透君寝てるのかな?

 うぅむ。

 

 自分の家とは言っても人がいるのに勝手に上がるのもなんだか気が引けるが、この荷物がある以上は入る他ないだろう。

 

 ポケットから鍵を出し、錠を開けて家に入る。

 

「ただいまー」

 

 声をかけてみるが、それに返す返事はなかった。

 

 寝てるのかな、と思いながら廊下を進むと今の方から微かに聞こえる人の話し声。

 

 なんだ起きているのかと居間に入って見ると、そこには実の弟と見知らぬ褐色の少女がソファーの上で何やらいかがわしいことをしていた。

 

 

 

 ◇

 

 

「何してるの透君⋯⋯」

「姉さん、これには訳が」

 

 姉に見られた。

 なんてことだ。

 よりによってクロに絡まれているところを見られた。

 

 姉さんにはシロのことしか話していない。

 無論シロの詳細とか明確な関係など言えようはずもない。

 一体どんな言い訳をすればいいのか。

 

「(ご主人、この人誰?)」

「(俺の姉さん)」

「(ほほう)」

 

 

「私とは! 最近全然スキンシップなんて無かったのに!」

「は」

「昔は『お姉ちゃん!』とか言ってくれて私の後ろについてきてはよくハグも添い寝もしてお風呂だって一緒に入ってくれたのに!」

「ヤメロ姉さん!」

 

 何をトチ狂ってしまったか、なぶるように人の幼き恥ずかしい過去を惜しげもなく晒してきやがったぞこの身内。

 

「そりゃあちょっと前は拗れて気まずかったけど、それでも透君が可愛いのは昔からだし今でも大好きだし少し大きくなってて大人びてきてカッコよくなって声とか低くなっても透君は透君な訳でたとえ昔より笑わなくなっちゃったとしても私はそんな透君が大好きなんだよ!」

「うるせぇええええ!!!」

 

 長い。長すぎる。

 よくもまぁそんな歯の浮くような台詞がツラツラ出てくると感心するほどには長い。

 

「姉さん、落ち着いて」

「でもね!」

「落ち着いて」

「私は透君が!」

「話を聞いて姉さん」

「大好きなの!」

「落ち着けって言ってんだよ!」

 

 どれだけ動揺しているんだ。

 

「それでも、透君がやることは尊重してあげよう、て思ってたんだよ」

「姉さん?」

 

 捲し立てるような勢いが途端に無くなり、楓はかくんと頭を垂らして顔を伏せる。

 

「でもね、でもね? もし透君が浮気しちゃうなら、それなら私も手を出してもいいんじないかなって……」

「それはいけない。いや、そもそもこの子とは」

 

 何やら様子がおかしい。

 そう思ったよりも先に楓はゆらりと前に進んだかと思うと、そよ風のように透に近づいて彼の体を掬い上げるように抱えてソファーに優しく投げる。

 

 その上に覆い被さり真正面から透を見つめた。

 その目は血走り、目の前の透を見ているようで、それより先を見ているようでもあった。

 

「ご主人!」

「アナタは邪魔よ」

 

 楓をはね除けようと多少乱暴に走りよってきたクロを、楓は四つん這いのまま足を払い、背に倒れてきたクロをそのままソファーの背待たれの裏に落とした。

 

「ぐえっ」

「クロ!」

 

 伊達に武術を習っていなかったのは知っていたが、感情が乱れていようとも、人を投げる術は劣らないらしい。

 

 というよりどうやって投げた今。

 

「クロ、大丈夫か!?」

「無事平気。けどご主人がキケーン」

 

 彼女の呑気な声をきき、目の前に視線を移すと、貞子もびっくりしそうなほどにホラーテイスト強めになった姉がいた。

 

 垂れる前髪と長髪で顔全体に影が射し、見開かれた瞳は暗がりに相まって瞳孔の際限が消えたように思う。掛かる髪に目もくれず、この距離でも聞き取りづらい声で何やらブツブツと呟いている。それが余計に怖い。

 

「姉さん、しっかりして。ねぇ、怖いよ姉さん」

「透君の、初めては、私が⋯⋯」

「助けてクロ!」

「合点承知」

 

 さっき落とされた隙に絡み付けたらしい縄をクロが引っ張ると、透に被さっていた楓が、透の上に股がるように状態を反らす。

 

「こんなもの!」

「残念。まだあるんだ」

 

 まだ抵抗しようと縄脱けを試みた瞬間、クロが追加で縄を掛け、趣味か技か、キレイな亀甲縛りになっていた。

 何故だ。

 

「な、何これ!?」

「縄掛け技術の応用編。凄いでしょ」

 

 謎の披露に困惑したが、無事無力化された姉はそれでも足掻いていた。

 

「透君は、私がぁ~⋯⋯!」

「色々アウトだよ姉さん」

 

 

「透く~~~ん!」

 

 

 

 

 その頃のシロ一行。

 

「あのお店入ろー!」

「イェー!」

「あわわわわ」

 

 慣れない同性同士との買い物、基より透以外との外出にまだ慣れず、半ば山田達に振り回されるようにウィンドウショッピングに興じるシロ。

 

 皆々手には衣類やらドリンクやらを持ち、買い物を楽しんでいた。

 

「んんっ?」

 

 瞬間、何かを感じたシロが神妙な顔を浮かべて立ち止まった。

 

「どうしたのシロさん?」

「いえ、何か悪寒がして」

「えー? 気のせいでしょ」

「ほら行こー!」

「は、はい」

 

  




 これが書きたかった。
 内容殆ど書き直したらしい。
 
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