本当に成長しねぇなコイツ。
村崎家は一先ず置いといて、女子に拉致られたシロちゃんのお話。
村崎家の騒動も収まったころのシロ一行の様子。
某コーヒー専門店にて女子数名とシロが一つのテーブルを囲んで会話に花を咲かせていた。
「さてさて、買い物も一段落したし、そろそろやっておきますか」
「な、何をですか?」
「華の乙女! 彼氏持ち! 同棲! さすれば答えはただ一つ!」
「あの、皆さん?」
「近況報告発表~~~!!」
煩わしくない程度に騒ぐ団体。中々に器用である。
いつの間にかシロの左右に山本さんと山口さんが座って逃がさないと腕に巻き付き、向かい側に山田さんと山岡さんが陣取って
「さて、あのへたれこと村崎とは今どんな状況なの?」
「どんなと言われましても、特に変わったことはありませんよ?」
「嘘を着け! そのおっぱいでそんなことがあるはずなかろう! さぁ吐けい! さぁさぁ!」
「ぁひゃあ!? あ、ちょ、止めてくだひゃ、ぁんっ!」
事細かく聞き出してやろうと過度なスキンシップを交えてくる女子達は得も言えぬ不気味さがあった。
そして一部始終を眺めていた紳士の方々は鼻の下を伸ばしていた。
「は、は、んんっ⋯⋯」
「やりすぎちった★」
「まだまだ続くのよ」
解放されたシロは息が上がって衣類も乱れ、なんとも直視しづらい扇情的な雰囲気を醸し出していた。
一息ついて、シロが落ち着くのを見計らって女子達、もとい他人の色恋沙汰に植えた獣達はシロに同じ質問をした。今度はみな半目の奥で「次はもっとすごいことをするぞ」と訴えながら。
言外に伝わってくる獣の視線にシロは慄起きつつも、最近の二人での様子を思い出しながら答える。
「えぇ~~~っと⋯⋯⋯、いつも、は、トオル君が学校に行かれて帰ってくるまでは、お掃除したりお夕飯作ったりしたりしてますが」
「あぁぁぁぁ~~~~~、二人きりのときの話、聞かせて?」
「は、はい」
また左右から腕を掴まれてびくりと体を跳ねさせるシロだが、これ以上無駄なことを垂れ流してもまた同じ目に遭うと悟る。
「えと、えと、二人きりの時は、その……」
好奇の眼差しが怖い。
「い、一緒にお出かけしたり」
ただの買い出しだが。
「家ならよく、くっついてます」
ゲームに夢中なのを良いことに寄り添ったり。
「あ、あとは、たまに、ごくたまに……一緒に、寝たり」
添い寝はしょっちゅうやってます。
「このぐらいでしょうか……?」
シロの同棲生活のノロケを聞いていた女子達は腕を組みなにやら小声で話し合っている。
「なんか、前と変わらない?」
「村崎もあんまり動かない人間だし、外にでないことの方が多いのでは?」
「しかしそれでシロさんは楽しいのかね?」
「本人が満足してるならそれでも」
すぐにシロを抜いた輪は崩されてまたテーブルを囲む。
「ねぇシロさん。つかぬことをお聞きしますが、あの村崎と一緒にいてて楽しい?」
その問いに、シロはふむと考える。
「楽しいか、は別として、トオル君といて私は嬉しいです」
真正面からそんな事を言われてしまえば何も文句はなかった。女子達は感心したように言葉を受け止め、頷く。
しかし、と続けて呟いた言葉に、皆口を閉じた。
「でも、たまに、ごくたまにトオル君が怖いときがあるんです」
「お、なんだ? DVか?」
「村崎のやつ大人しそうにしてて実は女に手を上げるやつだった?」
「ちょっと電話してみるね!」
「安心してシロさん。私たちがあのクズを吊し上げておくから!」
「ちち、違います! 今のは言葉のあやで! 待ってください!」
慌てる少女の制止でそれぞれ透をフクロダタキにしようとしていた彼女達は一度止まり、シロの弁明に耳を傾ける。
「そこまでしてあのデクノボウを擁護する理由は何かな?」
「いえあの、別に暴力を振るわれたりしているわけではなくてですね……」
息を整え、家での様子を思い返し、少しの哀愁を含んだようにシロは話す。
「トオル君、よくげーむをするのですが」
「まぁ、そうだね」
「ときどき、本当にときどき、げーむに向いている目が怖いんです」
「よくわかんない。めっちゃ集中してるってこと?」
「いえそうではなく……」
「なんというか、げーむの画面ではなくて、それよりずっと向こう側を覗いているような、底のない穴が開いているような目をしてるんです」
何処と無く要領を得ない説明に頭を悩ませる。
あの村崎がゲームに夢中なのはよくあることだ。学校の休み時間でも時折携帯ゲーム機を取り出しては一人で遊んでいることも珍しくはない。
だが、それほどまで没頭している姿は見たことがない。
「そんなとき、シロさんはどうしてるの?」
「様子を見計らって飛び付きます」
「まぁ大胆」
あまりに予想の斜め上を往く発言に真剣な空気が流れていった。
「因みに、何で飛び付くの?」
「そうでもしないと意識がげーむに流れて気がついてもらえないので」
「あいつが深刻だった」
女子達は深刻な相談かと思って聞いていれば、ただの惚気だったことに落胆しつつ、内心ほっとしていた。
「ま、本人が幸せそうならそれでいいじゃん?」
「幸せ! 幸せ……」
「なんだよー自分で言っておいて恥ずかしがってんのー? 可愛いなぁシロさんはぁ~~!」
「うあぅ……」
山崎と山本に挟まれ崩れ解れと揉まれるシロ。
自分で言ったことに改めて思い返して頬が赤くなるが、それが今一番幸せなんだと噛み締めると、今の気恥ずかしさもなんだか心地好く感じる。
「それじゃあそんな可愛いシロさんは、あのデクノボウともっと遊ばなきゃねー」
「そんな、今でも充分に……」
言いかけた言葉を山田に口を指で押さえられて塞がれる。
「ダメダメダメダメダメダメ。そんなんじゃダメなんだよシロさん。仮にシロさんが良かったとしてもただまったりと二人で過ごしているのを見てるだけじゃ満足できないの。わかるかな? もっと色濃く楽しい思い出とか激しいイベントとか起きて貰わないとツマンナイでしょ? ねぇ」
「え、えっと、それは」
突然捲し立てるような言い分に戸惑うが、それでも山田の弁論は止まらない。
「今まで学校、村崎ん家、体力テストなり色々縁あってシロさんと遊んだり関わったりしてきたけど、なんか足りないのよ!」
「何か、とは」
シロの指摘に山田が目を光らせる。
それをみてシロは「あ、しまった」と何かを悟った。
「もっと! 私はもっと二人がくっついているところを見てみたいの! もっとあまあまでイチャイチャしてるところを見せやがれくださいお願いします全力でさせる!!」
燃え盛る野次馬根性を燃え上がらせて山田はシロに詰め寄る。一体何を目指しているのか分からない。よくもそんなにつらつらと言葉が出てくると思うし、何が嬉しくて他人の恋路に助力しようと奮闘するのか。これがお節介というものか。
これ以上拒んだところで相手は退こうとしないし、恐らく言いくるめられてまた弄られるだけだと諦めたシロは、恥ずかしさを噛み締めつつ、目の前の女子陣にお願いした。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……もっとトオル君と仲良くしたいです! だから皆さん、お力添えをお願いします!」
耳まで赤くした顔を隠しもせず、シロは深々と頭を下げる。
山本達は微笑み、シロの頭に手を置いて承諾した。
「任せなさい! 私たちにかかればあの朴念仁で唐変木で木偶の棒で女心のおの字だって知らないような村崎なんて一瞬で落とさせてやんよ!」
「それはちょっと言い過ぎかと⋯⋯」
「構わない! こんな可愛いシロさんと一緒の家に居ておきながら全然濡れた話も聞かないんだからむしろそのぐらいやっちゃった方が良いのよ! もっと!」
いつになくやる気に満ちた女子達を前に、シロは成す術もなくされるがまま、着せ替え人形にされたりオモチャにされたりと本当にこれが協力してもらっているのかとあとで不安になってきたのだった。
なんかまたやっつけになっちゃったけどまぁいいか。
あと二話ぐらいで姉回済ませて夏休み編にちゃんと入る、と思います。
誤字脱字あればご報告ください。
感想評価あればお願いします。
では。