てかもう五十話ですか。続きましたねぇ。
何もないですけど。
翌日になり、駅に集合との連絡を受け、荷物を持ち、姉に留守を任せてシロと家を出る。
あの堕姉、行くかどうか聞いてみたら「私が付いて行ったらみんな緊張させちゃって楽しめないと思うし、同年代だけの方が楽しいから二人だけで行ってきなさい」とかカッコいいこといいながら下着でだらけてるものだから締まらない。
多めに茹でておいた素麺を啜る楓に見送られながら、駅に向かって歩く二人。
二人で分担した荷物を担いで目的地に着くと、誘ってきた本人の加藤とその他藤、それと山田さん達が待っていた。
みんなそれぞれで鞄やリュック等を背負っており、何も言わないが満喫する気満々で頼もしかった。
「おっせぇよ村崎!」
「時間通りだ。お前らが早いんだよ」
ヤイヤイと騒ぎたい奴等をあしらって切符を買い、改札を抜けて電車を待つ。
シロは相変わらず改札を抜ける一連の流れに目を見張りながら、自分の番になるとぎちぎちに緊張しながらなんとか抜けてホームに進んでいた。
「あち⋯⋯」
何処で鳴いているのか分からないセミの鳴き声。
暑さに混じって飽和し、更に音量を上げている気がしてならない。
横を向けばみんな熱で項垂れて、ペットボトルを呷ったり手で扇いだりとつらそうだった。
ただ一人だけ、シロは得に変わらず平然としているが、まだ色白い頬を一筋の汗が伝う。
「シロ、飲み物飲む?」
「いただきます」
キャップを外して彼女に手渡し、シロはそれを控えめな量を飲む。ありがとうございます。と返してきた容器を受け取って、変わりに自分が被っていた帽子をシロに被せておく。
「わっ」
「暑いから被っとけ」
「ありがとうございます、トオル君」
「ん」
帽子のつばを摘まみながらシロはにかんだ。
今、
それが物凄く絵になっていて、見ているだけで心臓が高鳴る。
「こんな暑いのによくそんなに熱くなれるねぇ」
「ひゅー! めせつけてくれちゃってぇー!」
「うるせ」
やかましい加藤たちを気恥ずかしさいっぱいな心境であしらっていると、ようやく電車が到着したので全員で乗り込む。
中は冷房が効いてあり、猛暑の外に立っていたばかりだったので非常に心地良い。
加藤たちは我先にガラガラの車内に乗り込んで、抱えていた荷物を棚に上げて椅子にもたれ掛かった。透とシロはあまり大きいものもなかったので、全員を見ながら向かいの吊革に掴まる。
発車までの待ち時間、他愛もない話を広げつつ、車内にちらほらと人が入っていくのを見ながら一同は大人しく、しかしかし待ち遠しい気持ちで口角を上げながら口を閉じる。
アナウンスのあとドアが閉まり、車体を揺らして電車が走る。
「楽しみじゃねぇかよおい⋯⋯!」
「まだ発車したばっかだぞ」
早くも行き急ぎでウキウキしている加藤。
気持ちは分からなくもないが、今の内から消耗してしまうと到着してから勢いが落ちてしまいそうなので控えてほしい。
「でも、楽しみだな」
久々に見れば、何か感じるかな。とかそんなことを考えて、楽しみに燻られながら電車の揺れに身を任せる。
◇
乗り過ごすこと無く無事到着した海水浴場。
みんなで駅から飛び出して砂浜へ駆け出す。
「「「海だぁーーーーっ!!」」」
藤ズ、山ガールズは荷物の重さも感じさせない勢いで飛び出し、波打ち際まで走っていった。
「場所取りをしろお前ら」
「アイアイサー!」
騒がしいほどにはしゃいでいるが、それでも作業は滞りなく済ませて代わり番手で全員水着に着替え終わった。
「村崎お前なんでパーカー着てんだよ」
「日焼け対策」
「よわみそがァ!」
「うるせぇ脳筋ども」
トランクスのような海パンを履き、上裸で出てきた。藤ズの面々にいじられる。別に羽織ってもいいだろう。日焼け痛いんだから。
そんなことをやいやい言っていると、着替えに行った女子たちが戻ってきた。
「お待たせ野郎どもー」
「見惚れんなよお前ら」
「魅了して病院送りにしてやる」
「発言が過激になっていく」
様々な色の水着を着る山田さんたち。
夏の目映い日差しに照らされ、快晴の海辺で色取り取りの水着を身に纏う彼女たちは、いつもの彼女らよりも大人びて見えた。
「よっしゃあ遊ぶぞあんたたちィ!」
「「「オォォーーーッ!」」」
前言撤回。
彼女たちはいつも通りパワフルだった。
そのままの勢いを保ったまま、山田さんたちと加藤たちは全力疾走で海に次々と飛び込んでいき、水をかけ、追い掛け合いをしてはしゃいでいた。
「羨ましいほど元気だな」
「マスターはいかないんですか?」
「あぁシロおかえり。俺は別、に⋯⋯」
聞き慣れた優しい声音の元を辿って振り向き、そこにいたシロを見つめて固まった。
「どうかしましたか?」
屈んでこちらを覗き込む彼女は、布通しを繋ぐ結び目が格子状に編まれた純白のビキニで、豊満でいてよく絞まっている柔肌な体を包んている。
胸元にはロゴなのか空色の雷模様が小さく光り、腰にはゼブラカラーをした薄い生地のパレオが巻かれている。
髪は後ろで一つに纏めて下ろしてポニーテールにそれており、麦わら帽子を被っている。
「その水着⋯⋯」
「これですか? この前山田さんたちとお買い物に行ったときに選んでもらったんです!」
隣で嬉々として話す姿は太陽のように眩しく、夏の海を体現しているようだった。
俺の思考回路は一瞬で吹き飛び、知能指数なんぞ片手で数えられる程しかなくなってしまった。それほどシロの水着姿は魅力的で、妖艶で、妖しくも美しかった。
「トオル君、その、似合ってますか?」
そう言って彼女は上目遣いでちらちらと視線を逸らし、髪を弄りながら聞いてくる。
恥じらうその可愛らしい仕草も相まって、つい本心が漏れてしまった。
「⋯⋯綺麗だ」
「~~~っ! そう、ですか。えへへ⋯⋯」
思わず溢れてしまった本音に、シロは五秒と経たずに耳の先まで真っ赤になり、麦わら帽でにやける顔を隠す。
お互い居心地の悪い気恥ずかしさに黙り込んでしまい、パラソルの下、沈黙を夏の気温が焼いていく。
「お~い二人とも~、はやくこっち来いよー!」
「お、おぉ! すぐ行く! い、行こう、シロ」
「あ、は、はいっ!」
気を紛らわしたくて急ぎ気味にパラソルから抜け出し、海へ歩く。
水着、ずっと書きたかった。
もうちょっと続くんじゃ。
デハデハ。