キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 山田さんたちは山でチーム『山ガール』。
 村崎と藤のみんなでチーム『パープル』。

 加藤と山田がこの二つのパイプで、双方の話し合いの報告をしあっている。


五十一話 生脚魅惑の彼女とBBQ

 それなりに人気の多い海辺。どこまでも遠い海の彼方は青空と雲が浮かび、太陽は近くで鬱陶しいほど熱い視線を送ってくる。

 その太陽の直下で、加藤たちはボートやら浮き輪やら水鉄砲等を握りしめて、真っ青な海に飛び込んでいく。

 

「ひゃっほーう!!」

 

 勢いよく飛び込み水飛沫が高く上がる。その飛沫を加藤の真後ろにいた他の藤と山田さんたちが均等に濡れ、その様子を更に後ろにいた透とシロが呆けた。

 

「このバ加藤! てめぇ加減しろや!」

「いいだろがどうせ濡れるんだから!」

「ぎゃはははははははは!!」

 

 実に楽しそうで何より。

 はしゃいでいる奴等を一頻り眺めたあと、浜を濡らす波打ち際まで歩いて爪先、踵、踝、と少しずつ体を水温に鳴らして海に浸かる。

 

 振り向くと乾いた浜で立ち尽くし、陽射しで反射する彼方の水平線をほうと見つめるシロがいた。

 

「シロ?」

 

 呼び掛けても此方を向かず、ずっと遠くを見ている。

 

「凄い、綺麗です。マスター」

 

 シロが指差した景色は広大で、壮大で、暑く、蒼く、眩いほど光輝いていた。

 

「この海を越えれば、私のいたところにも行けますかね」

「どうだろう」

 

 遠い海の向こうに何があるのか。そんなものとっくの昔に授業で習った。

 けれど目の前の光景に先は見えず、そこで終わっているのかそれとも続いているのかわからない。だからこそ見てみたい。知りたい。

 そんな確かめたいと言う思いがシロから自分のなかに伝わってくる気がした。

 

「村崎ー! 早く来いーー! およぐぞぉー!」

「およげんぞー」

 

 加藤に急かされる。

 シロに手を差し伸べると彼女は優しく手を握り、俺はシロを連れて加藤たちの元に、波を足で蹴りながら進んでいく。

 

「行こう?」

「はい!」

 

 透の手を取り、爪先からすい、と波へ入水する。足が濡れる一瞬、大事なものを汚すような背徳感を感じたが、それも引っ括めて芸術的と感じてしまう。

 しかしすぐに足は浜の底につき、両足とも脛まで浸かってしまった。

 

「温かい、けど下は冷たい……」

 

 足で感じる水温をふいと蹴って感じ、シロはどこへうつろうと変わらない、海に畏怖と懐かしさを感じた。

 

 そしてシロは郷愁の想いを振り払い、透の手をとって目の前の海へ向かって突き進み、腰まで浸ったところで手を引いて一緒に海水へと飛び込んだ。

 少し大きな水飛沫が上がり、不意に手を引かれて心の準備も出来ないまま海のなかに引き込まれた透は目にも鼻にも海水を入れて悶える。

 

 シロは波の流れに身を任せて漂う。たっぷりと潜水で流れ泳ぎ、全身で海の冷たさと輝きを身に受ける。さながら人形のようにも見える姿は、見るもの全てを釘付けにしていった。

 

「ぷはっ、……気持ちいぃーーーっ!」

 

 あっという間に沖まで泳いで顔をだし、生き生きとした笑顔で髪をかきあげる。その仕草からやっぱりあの娘はアウトドア派で、ああして外で遊ぶのが好きなんだなと濡れた体を起こして想い耽っていた透。

 

 そんな透に向かって加藤が水鉄砲の引き金を引き、顔の真正面から海水を浴びてびたびたと滴を落として固まる。

 

「……」

「あたりー」

 

 透は何も言わずに両手で海水を汲み、包み込んだ海水を少しだけ開いた孔へ集束させて即席水鉄砲で反撃を始める。

 

「くらえ!」

「やったな村崎! いくぞお前ら!」

「「「アイサー!!」」」

 

 何故か始まった村崎対藤ズの水掛けあい。そこへ集まる女子たちやシロも加勢して、片手銃程度だった水鉄砲は次第に大型の両手銃のものや何処から持ってきたのか肩紐で吊るすようなものまで出てきた。

 

「お前それどっから持ってきた!」

「こんなこともあろうかと海外から仕入れてきた!」

「バカだろ!」

 

 電動のガトリングによる連続射撃を即席水鉄砲二連装で迎え撃ちながら、とことん気が済むまで遊び倒した。

 元気のある学生と言えど動けば腹が減る。日に照らされてあつくなる体に、かけた水が干上がっては濡らし干上がっては濡らしを繰り返せばみなくたくたになっていた。

 

「飯だ飯だ! 飯にしよう!」

 

 加藤の合図で全員一旦海から抜け出し、自分達の荷物を置いていた場所まで戻ってくる。遊び道具をほぼほぼ片して、今度はクーラーボックスとバーベキューセットを取りだし、内藤が慣れた手つきであっという間に組み立て、火を起こす。

 

「手慣れてるな」

「野営は得意なんだ」

「野営て」

 

 内藤に「あとは任せたぞ料理長!」と現場を任された透。

 金網が暖まってきたところで保冷剤に囲まれた肉野菜その他を連ねて刺した金串を網の上に、綺麗に並べる。

 すぐに聞こえる肉が焼け、油が弾ける音。遊んだあとの空きっ腹にはそれだけでも涎が滴りそうなほどのご馳走に思える。だがまだ早い。火が通るのを待たなければ美味い肉も野菜も中途半端に不味くなる。

 ごくりと生唾を呑み、串を裏返してやると網目に沿っていい塩梅の焼き色を着けた肉野菜が、煙にのって香ばしい匂いを醸し出していた。

 

「我慢ならねぇ!」

「早まるな、まだだ!」

 

 伊藤が手をつけようとしたがそれを内藤が止め、加藤と内藤が抑えに入る。

 

 もう食べる、まだ早い、食わせろ、まだだと後ろで騒いでいる火の元の前で汗を滴ながら焼き加減を視る透の横に、シロが顔を覗かせて肉をみていた。

 

「どうかした?」

「もうそろそろよろしいかと思いますが、まだ焼きますか?」

「そう? じゃあ一回取ろう」

 

 そうして第一陣の肉を金網から持ち上げ、夏の熱波に負けない陽炎を揺らす肉たちを取り皿に添えて振る舞う。

 

「焼けたぞー」

「「「いただきまーす!!」」」

 

 焼けたばかりの串焼きを、みんな大口を開いてかぶりつく。様式美のようにあち、あち、と舌の上で小躍りさせ、口いっぱいに頬張った後、咀嚼に忙しくしばし黙り込む。やがてごぐん、と飲み込んで息継ぎをする。

 

「う、めぇぇええええ!!」

「肉うめー!」

「流石板長だ!」

「おいひー!」

「まだあるっぽいから落ち着いて食えお前ら」

 

 そう言いながら第二陣の串を焼き始める。

 焼ける肉の匂いはどうしてこれほどにも食欲をそそるのか。鼻の奥を流れ、喉をこれ見よがしに撫でておいて満たされもしない空気だけが腹に居座ってしまうのだから、そこを埋めようと肉を入れずにはいられない。気を抜けば串をひっくり返すが止まってそのまま自分の口に運びかねない。なんと魅惑的なことだろう。

 

「トオル君トオル君」

「ん、なに⋯⋯むぐっ」

 

 横からシロに声を掛けられたと思ったら口に串焼きをずぽっと突っ込まれ、1ブロックが口に入ったかと思えばつっかえることなく串が引き抜かれ、口の中に残った肉ブロックを咀嚼する。

 

「急になにを」

「えへへ、なんだかお腹が空いていそうだったので。美味しいですか?」

「そりゃまあ、何倍も⋯⋯」

 

 シロの微笑む姿に思わず目を奪われる。釣られて手が止まり、最初から高火力で焼いていた肉から香ばしさを通り越して、喉の奥に圧し掛かる苦い焦げた匂いが上がり始めていた。

 

「あぁっ! 焦げてます、焦げてます!」

「え? うぉあああ!!」

 

 急いで取り出したものの、一部分が焦げてしまった串焼き。

 食べられないこともないが、あまり口に合うはずもない。しょうがないから焦げた部分は取り出して責任をもって処分しようと箸で摘まみだそうとしたら、加藤と山田さんに肩を編まれて止められる。

 

「二人とも、どうした?」

「それをこっちに渡せ」

「いやでも焦げてるし」

「それでいいの。いや、それがいいの」

 

 そう言った二人は焦げ肉をもって肉食獣の群れに運び込み、みんなして無言で焦げ肉を突いている光景はともすればお通夜のようにも思えた。なんで海水浴場で黙って焦げ肉食ってんだお前ら。

 

「あぁっ、甘いところに苦みがっ」

「夏場に見せ付けやがって⋯⋯にげっ」

「舌の根も渇かないうちにまぁいちゃいちゃと⋯⋯にっが」

「なんでそれを食うんだ」

「「「お前のせいだ」」」

「ひどいな」

 

 そう言いつつも皿の上から肉は消えてしまい、加藤山田らは速く焼けと急かしてくるので急いで次の肉を焼き始める。

 

 まだ日は高い。

 この後は何をしよう。

 




 もうすこし海水浴の話書きます。
 あと一話ぐらい。

 ではでは。
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