キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 更新が遅れたのは別作品でショタをいじめてたからです。


五十二話 謎じゃない謎の刺客

 腹拵えがすんだ透たち。

 海ではしゃぐのも満足したので、催し物が行われていないか浜を歩いて回ることにした。

 

 荷物番はシロの腕ぐらいありそうな猟虫がしており、生半可な窃盗犯なら半殺しにするそうだ。頼もしい反面恐ろしい。

 

「チラシでみたけどなんかビーチバレーの大会やってるっぽいな」

「あれじゃないか?」

 

 見えてきたのは二人一組のペアが十数組集まっている会場とおぼしきところ。

 バレーコートが二面並んだ前の司会席で、スポーツウェアにキャップ、サングラスをかけた男性がマイクを握って人を集めていた。

 

『あと五分でエントリー終了とさせていただきます! ビーチバレー大会の出場を希望される方は此方までお越しくださーい!!』

 

 どうやらビーチバレーの催し物のようで、そろそろ申し込み期間が終了するとのこと。

 

 運動音痴が出たところで赤っ恥をかいて初戦敗退が目に見えているので、ここは大人しく観客に回って水着だらけのバレー大会を見物するとしよう。

 

「村崎、俺たちも出るぞ」

「正気か加藤」

 

 浜に腰を据えて眺めようとしていたのに、加藤に首根っこ捕まれて会場まで連れていかれる。

 シロも止めてくれたら良いものを、何をそんなにニコニコしながら着いてくる。助けて。俺を何処か遠い所へ連れていって。

 

「シロ」

「良い機会ですし、出ましょうトオル君!」

「あ、うん」

 

 どうやら救世主はいないようだ。

 

 

 結局、加藤の申し出により全員参加することになったのだが。

 

 加藤は山田と。内藤は山本、伊藤は山口、佐藤は山岡と出るらしく、俺はシロと組むことになっていた。

 

「なんでこの編成なんだよ」

「この方が嬉しいだろ?」

「それは、まぁ」

 

 ドヤ顔でサムズアップするな鬱陶しい。

 

 顔で喋っている加藤に嫌悪の視線を向けて睨んでいると、シロに手を引かれて夏の太陽にも負けないほどの眩しさを放つ笑顔で彼女に笑いかけられた。

 

「絶対勝ちましょうね、トオル君っ!」

「お、おう⋯⋯」

 

 不安しかない。

 だがそう言われてしまった以上、勝とうが負けようが尽力するしかなくなってしまった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 初戦は俺とシロ。相手は一般参加の二人組で見た感じ経験はなさそうだ。

 

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします~」

 

 ネット越しに挨拶を交わす。

 相手が先行を取り、軽いボールの軽いサーブが飛んできたので受けて球を宙に上げる。

 

「シロ」

「おまかせください!」

 

 助走をつけたシロが砂浜と言う事も思わせない程の跳躍を魅せて飛び上がり、プロのバレー選手も驚きそうなスパイクを決めて点を取ってきた。

 

 相手チームが唖然としている。

 そりゃそうだ。俺だってそうなる自信がある。

 

「やりましたっ」

「ないす」

 

 これまで散々みせられてきた超人的なアクション、今更驚きもしない。

 だが一般人にはこんなところにプロ顔負けの人材がいること自体予想してないことだったのだろう。司会も目を剥いて言葉を失っている。

 ただ、加藤達はしてやったりというか、当然と言わんばかりに見ていたので半分くらいこれが狙いだったんだろう。

 

 そのまま初戦は速効で片が付き、見事駒を勝ち進めた。

 

 

 

 

 加藤達も並々ならぬ十代のポテンシャルを活かして早々に勝ち上がっていく中、加藤と山田さんのチームが苦戦を強いられていた。

 

「くっ……!」

「なんなのあの人、強すぎる……」

 

 悔しさを噛み締めている二人の前に、ネット越しから飄々とした態度で対戦相手の片方がボールを弄っていた。

 

「確かに強かった。けど所詮は一般人」

 

 鋭いサーブが狙い済ましたかのように加藤の腕に直撃し、対戦相手のコートに戻る。

 相方がそれを打ち上げ、同じタイミングで跳んだその選手が太陽の逆光を浴びながらコートラインギリギリのスパイクを叩き込む。

 

 二人が反応するよりも速く、豪速球は砂浜を跳ねてギャラリーのところまで軽々と飛んでいった。

 

『チーム『黒猫』の勝利!』

 

 チーム黒猫を名乗るペアの片方。太陽光を受けて青みがかった黒髪はラフなショートヘアに切り揃えられている。艶やかな褐色は夏の砂浜の白さに対比するようで目立ち、周囲の目線を奪い取る。

 

 チューブトップのような黒い水着は交差した紐で結ばれており、派手な動きをしても隠された秘部が見えてしまう心配はなさそうだ。

 下はローレグのパンツで、小振りながら美しい臀部のラインが隠れることなく目に写る。

 

 しかし、その女性的なプロポーションを全て蔑ろにしているのが、目元を隠すためにしているわけの分からないマスクだった。

 

 サングラスなんて優しいものではない。

 

 目元と鼻を覆う、黒色にマグマのような赤いラインが入ったそれは顔面積の半分をしめており、鋭く開いた覗き穴からは瞳が見えない。

 覗き穴のすぐに上の額部分からは左右から二本の角飾りが伸びており、さながら『鬼』のようでもあった。

 

 

 あれ、アカムRのガンナーヘッドだよな。

 

 MHXにて登場するアカムトルムのR装備。そのガンナータイプの頭部装備をした褐色の女。

 既視感しかなくて頭が痛くなってきた。

 

「あの、トオル君。あの人ってもしかしなくても……」

「シロ。突っ込んじゃいけない事というものも世の中存在する」

 

 見ない、聞かない、知らない。を通して関わらないように目線を反らしていたら、向こうの褐色女が背中向きから体を反らしてえげつないシャフ度をしながら絡んできた。

 

「ヤァ、ご主人」

「もう向こうから来ちゃった」

 

 唯一隠れていない口元すらいつものポーカーフェイスで微動だにしていない。

 嬉しいのか嬉しくないのか分からないが、チームメイトの女の人とハイタッチはしているので一応コミュニケーションは取れているらしい。若しくはあの女の人の対応力が高いのか。後者だな。

 

 試合を終わらせたクロがそのままこちらに向かってきた。

 

「いつぶりだったかなご主人」

「外でその呼び方は⋯⋯いやなんでもない」

 

 グラビアポーズをしながら自然体を装ってくることに一体どれだけの自信が溢れかえっているのか分からないが、少なくとも失敗していない確信があるのだろう。

 てか話しながら腕に絡んでくる。シロの目がどんどん人から狩人の目に変わっていってるからもう勘弁して。

 

「ねぇ白いの」

「取り合えずマスターから離れてください」

「シロ、呼び方」

 

 言葉に粗が出てきたシロの口を後ろから塞いで引き寄せる。

 犬猿の仲もよろしいが公共の場なので勘弁してください。

 

「別に今日は取り合いなんてしないよ」

「じゃあ何ですか」

 

 明らかな嫌悪感を視線にのせてクロを睨んでいるが、当人は仮面で顔が見えないので視線が合ってるのか合ってないのか分からない。

 

「今日は、遊ぼう。白いの。お前なら楽しめそうだからさ」

「⋯⋯試合ですしやりますよ」

 

 クロの仮面の下の口元が、ようやくにやりと笑みを浮かべた。

 逆にシロはへの字口を吊り下げて、鋭い視線をクロに送って睨む。

 

 ローカルの大会じゃ絶対に流れないような雰囲気が、二人を中心に巻き起こる。

 

 なんか既視感。

  




 次回、何度目かしれない白黒の争い。

 感想、評価、誤字脱字ありましたら作者までご報告ください。

 ではでは。

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