キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 お久しぶりです。

 喧嘩させるか甘やかすか悩んでました。

 めっちゃくちゃ悩んだ結果、脳みそを溶かしてきました。


五十九話 キリン娘の甘え方

 シロはよく俺に甘えてくる。

 

 とはいえべたべたとじゃれついてくるような積極的なものではなく。

 

 例えば俺がリビングでソファーに腰かけてゲームをしている時、本を片手に隣で読書に耽っていたり、自室のベッドでの転んでゲームをしていると頭の上のあたりに座ってきたり。

 

 ゆっくり近づいてきて、何も言わずに隣にただ座ってくるぐらいなのだが。

 

 

 そんな彼女が、今日は一定距離を開けて近づいてこない。

 

 ソファーに座れば向かい側に座る。

 自室にいても、本を借りに入ったりはするもののろくに目も会わせずに出ていく。

 

「なんだってんだ⋯⋯」

 

 正直なところ、あまり良い気分ではない。

 こうも露骨な避けられ方をされれば、流石に気が付く。

 

 常日頃彼女の体温が分かる距離で過ごしていたので、なんだか肌寒く変な身体の軽さがあってまったく落ち着かないのだ。

 

 

 

 先日の夏祭りで、シロに告白した。

 了承してもらったし、そのあとも何事もなくうちに帰ってきて普通に過ごしていた。

 

 が、その翌日から彼女はうってかわって距離を取るようになり、飯時くらいでしか面を会わせる事がない。声かけしようにも小走りに逃げ回るので、正直なところ傷ついている。

 

 ソファーの背もたれに体を預けてそんな事を思い耽っていると、後ろからなんとも熱い視線を感じる。

 

 振り向くと赤い瞳と目が合い、白い阿玉を引っ込める彼女がいた。

 

「シロ」

「い、いません」

 

 いないわけがない。

 

「こっちこい」

「⋯⋯」

「こっちに、こい」

「は、はい」

 

 諦めてすごすごと出てきたシロは何故か対面に回り、床に手をついて膝をおる。

 

 まさに下手人とお代官様のような構図だが、望んでいるのはそうではない。

 

「こっちこいこっち。横に座っていいから」

「あう、失礼します⋯⋯」

 

 そんなに近づきたくないか。

 尻込みしながら隣まできたシロはそのままソファーの空いているところに控えめに腰を落とす。

 

 が、人一人分は座れそうな距離を開けて座る。

 

「なんで近づかないんだ」

「それはその」

 

 手遊びをしながら下唇を噛み、彷徨う視線を合わせようともせずシロは答えようとしない。

 怒っているわけではない。ただ彼女の気持ちが知りたい。そしてもう少し近い距離感でシロと接していたい。

 

「マスター、もう少し、近くに行ってもいいですか?」

「あぁ」

 

 そういうとシロはからだ半個ぶん距離を寄せ、横目で伺うようにこちらを覗いてくる。

 

 その視線に何も言わず、呆れるような笑みを浮かべて自分ももう半分の距離を詰めてみると、シロは驚いて肩を跳ねさせ逃げようとしたので、彼女の腕を掴んで引き留めようとしてみたら思ったよりも強い力で引き摺られそうになった。

 

 ただ、腕を掴まれた時点でシロも立ち止まりこそしたものの、そのままの勢いを殺し切れず、更に透の加重によって姿勢を崩し、なんとか床への転倒は回避し、行先はソファーへ変更された。

 

 

「おぶっ」

「ひゅぇっ」

 

 咄嗟に透を抱える様にして倒れたシロ。

 重心をすくわれた透は成すすべなくシロの胸に飛び込み、シロは迫る彼の頭を抱えたまま後ろに向かって倒れる。

 

 

 顔全体で受ける柔和な感触は心地よく、ほのかに香る汗の匂いも媚薬のような柾が脳を溶かすように刺激していく。

 

 今すぐにでもこの甘い地獄を抜け出したい、が、脚を張ってみてもシロの胸に埋もれるだけで起き上がれない。腕で押そうにも片腕は脇が閉まって開かず、もう片方はシロの背の下に敷かれて抜け出せない。

 

 

 当のシロは気が動転しているのかがっちりと頭をホールドして離さず、それどころか締め付ける腕に力を入れてきて、柔らかい乳房も超えてあばらに鼻の頭がめり込むほどあらん限りの力を込められ、透は次第に意識が遠のき、やがてかくん、とその意識を夏の白昼夢へと葬られた。

 

 

「極楽浄土はここか⋯⋯」

「ますたぁぁああ!?」

 

 

 一色の消える束の間、透は静かに笑ていたという。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「ふぅ、死ぬかと思った」

「ごめんなさいぃぃ!!」

 

 鼻に丸めたティッシュペーパーを詰めた透が惚けた様子で呟くと隣で土下座するシロがあらん限りに謝る。

 

 

 少しだけ先端が赤く染まったティッシュを引っこ抜き、透は気を取り直して軽く背筋を正し、もう一度シロと向かい合う。

 

 肩肘は張らず、謎の自信のようなものを纏った透の存在は大きく、しかし威圧的な雰囲気は感じられず、シロは見透かされているようなむずがゆさにまた縮こまってしまう。

 

 

「シロ」

「は、はい」

 

 何を言われるのだろう。

 流石にお叱りだろうか。

 何故取り乱したのだろう。

 今更恥ずかしがるなんて。

 

 いろいろな思いが身体中を駆け巡り、シロは顔を上げられずにいた。

 

「⋯⋯ちょっと失礼」

 

 透は俯いて動かなくなったシロの手を取り、自分の後方へと引っ張る。

 

「ひゃあっ!?」

 

 素っ頓狂なこえを上げて今度はシロが透の胸の中に納まり、彼の細い上によってぎゅう、と愛情いっぱいに抱擁される。

 何が起きているのか理解の追い付かなくなったシロは目を点滅させながら声にならない奇声を彼の服に抑えられてくぐもらせ、起き上がろうと意識が働きかけるがからだは実にワガママで、離れたくないと駄々を捏ねるのか、あろうことか透の背中に手を回していた。

 

「ねぇ、シロ」

「ふぁい」

 

 早くなる鼓動はやかましく、耳を内側から突き破ってしまいそうなほどの騒音になっているのに彼の声だけははっきりと聴きとれることが嬉しくも恥ずかしくもあり、既に頭が働いていないことを示唆していた。

 かろうじて喋れる口はろれつが回っておらず、あうあうと訳の分からないことをのたまっている舌にもどかしさを感じていたが、彼の優しいい眼差しに見つめられていると全てがどうでもよくなってきた。

 

 

まひゅは(マスタ)ー⋯⋯」

「んー?」

 

 欠片だって余裕を持たせてくれない小悪で愛しい彼は、猫の喉を撫でるような声で呼びかけに答える。

 どこでここまでの差が開いたのだろう。考える暇もなく、ただ口が動くままにシロは思っていた感情のままに口を動かす。

 

まひゅは(マスタ)ー、らいひゅきれふ(だいすきです)⋯⋯」

「うん、俺も大好きだよ、シロ」

「きゅう⋯⋯」

 

 

 

 もう何も言えなくなったシロはそのまま透の無絵にぐりぐりと頭を押し付け、日が暮れ頭が冷めるまでそのまどろみのような時間を甘んじていた。

 

 

 




 完全にたらしになってる主人公。

 許して。


 ではでは。
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