キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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六十一話 夢現

 アカム系統の複合装備。

 腰の外套は分厚く、アカムの頭部を模した小型の盾が左腕に添えられている。全体を覆う装甲は細身ながらゴツく、一見すれば性別すら判別出来ないような代物だった。

 クロは冷たい声音で透に告げる。

 

「お別れの時間だ、ご主人」

 

 キリン双剣を取り出して構えるシロだが、双剣と言えど重たいようで肩に相当な力が籠っている。対して涼しい顔でボウガンを担いでいるクロはシロを連れ戻すべく、ポーチを探ってなにかを取り出した。

 

「私は、ここに残ります。弱くなっても……」

「ここにお前の居場所なんて無い。住む世界が何もかも違う」

 

 食い下がるシロの言葉を全て否定し、片手でボウガンを構え、シロに向けて迷わず銃口を向ける。

 

「端から素直に来てもらえるなんて思ってないし」

「そっちがその気なら!」

 

 直ぐ様戦闘態勢にも入ったシロは低く屈み、前屈みになりながらクロに向けて短剣による突きを繰り出す。

 それをクロは腕による添えられている盾で弾き、シロのもう片方の剣の縦斬りを身を引いて躱し、ボウガンのトリガーを弾いた。

 

「くぅっ!」

「ツブテ弾だから死にはしないよ。痛いけど」

 

 小石の弾丸は確かにシロの体を貫通したり出血させたりせず、被弾箇所が擦れている程度だが、あの勢いで、しかもこの距離からの被弾は相当に堪えたはずだ。

 

「ま、待ってくれクロ!」

「邪魔、ご主人」

 

 クロはマガジンを交換して再び銃口を此方に向ける。

 

「さっきはただの威しだったけど、今度は実弾だ。避けないと死ぬよ」

「……ッ」

 

 撃たれたところを抑えて踞るシロを背に、透は動けずにいた。

 

 避けたらシロが連れていかれる。

 避けなくても間違いなく自分が死ぬ。

 

 死ぬぐらいなら、そうは言っても怖い。足が震えて止まってくれない。立ち向かったところで殺されないにしても、一秒と待たずに無力化されるのが目に見えている。

 

「退かないのは胆力か、無知か……」

「う……!」

 

 呆れたように、クロはボウガンの弦を引いて射撃可状態にして、引き金を引いた。

 

 

「マスター!」

 

 しかし、飛び起きたシロによって透は突き飛ばされ、発射された弾が当たる事はなかった。横から押し倒された透はすぐに起き上がり、被弾したであろうシロに這いよって安否を確かめる。

 

「シロ!」

「う、ぐ……ふぅっ……」

 

 撃たれた箇所を抑えて悶絶している彼女を抱いてクロを睨む。

 

「クロお前、流石に度が過ぎるぞ!」

「手段を選ぶ暇が無いんだ、これくらいは許して。それに……」

 

 クロは透の腕のなかで呻き声を上げているシロを指差す。

 ふと視線を落とすと、さっきまで苦しそうにしたいたシロは脱力して目を閉じており、いつの間にか眠っていた。

 

「さっき撃ったのは対人用に薄めた捕獲用麻酔弾。死んでないから安心して」

 

 急に動かなくなったのでもしかしたらと焦ったが、寝ているだけと聞いて気を落ち着かせる。だがそれだけでは終われないのが今の現状。クロは再度リロードし、ボウガンを構えなおす。

 

「さぁ、シロを渡してもらおうか」

「嫌だ」

「頑なだね」

 

 そう言いながらクロは構えを解かないままポーチから何かが入った小瓶を取り出した。中には肥えた真っ白いとかげのようなものが蠢いており、時折止まっては舌をチロチロと出している。

 不思議なのがそのとかげに瞳はなく、輪郭は朧気で光がとかげの形をしているようにも思えた。

 

 それの蓋を指で弾き、中のものを透へ向けて放り投げた。

 

「!?」

 

 するととかげは大口を開けて透を頭から飲み込んだ。

 

 

 かと思われたが、とかげは一瞬にして形を元の大きさに戻して小瓶に収まっており、何事もなかったかのようになっているが、透は目を開いて気絶しており、意識が朦朧としていた。

 

 

「それは『ギンコ』。人の記憶を食べる蟲。白いのとの記憶は全部無くしてもらう。聞こえてないだろうけど」

 

 倒れたままの透をソファーに運び、クロはシロを担いで大きな布を取り出した。

 

「これで二人、後はお友達の人達か……」

 

 誰も聞くものは居ない空間に独り言を呟き、クロは布の中の暗闇に消えていった。

 

 

 




 もうイチャイチャは殆ど無いかも知れないけど許してください。
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