キリンちゃんとイチャつくだけの話【完結】   作:屍モドキ

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 間に合わなかったぁ!!
 さらっと書いた即席話なのであしからず。
 
 ではどぞ(涙目)。


季節番外編 不思議なクリスマス

 冷たく乾いた冬の朝。

 まだ冷蔵庫のほうが暖かいともなるようなこの季節はベッドから出るのも億劫になる。

 

「ん、さむ・・・・・・」

 

 こんな日でも律義に仕事を果たす目覚まし時計を止めてもそもそとベッドから這い出る。

 いつもよりも言うことを聞かない体を起こして洗面所に向かうと、自分より早く起きていたらしいシロが丸まって転がっており、歯磨きの途中だったのか歯ブラシを咥えたまま寝ていた。

 

「シロ、起きろ」

「ふぁあ?」

 

 肩を揺すって起こしてやるとぴくっと跳ねてから目を開き、「おはおーごあいあう・・・・・・」ともごもご言いながら立ち上がり、歯磨きを再開した。俺も歯ブラシにクリームを付けて口に突っ込み、歯磨きをする。

 口を濯いで顔を洗い、ぱっちり目を覚ます。よし。

 

「マスター、おはようございます!」

「うん、おはよ」

 

 ようやくシロも本調子になったのか百点の笑顔でにこりと微笑んだ。

 

「ひっくしっ」

「大丈夫ですか?」

「うん、寒くて」

 

 鼻の下を擦って鼻をかむ。

 流石にここまで寒くなるとくしゃみの一つも出てしまうか。

 

「それにしてもシロは元気だね」

「このぐらいならまだ大丈夫ですよっ!」

「あぁー、そっか」

 

 ゲームでは氷海とかそんなステージでまわりが氷で出来ているようなところに行ったり、吹雪いている雪山に登って温かくなるドリンク飲んで平気で活動してるからか、ピンピンしている。

 それでも少し寒いのか肩とか鼻の先が赤くはなっていた。

 

「防寒具でも買いに行こうか」

「お買い物ですか? 分かりました!」

 

 今日は買い物にしよう。

 さっそく温まる朝食を済ませて家を出た。

 

 

 デパート。

 

 また来た大型小売店。

 階によって色々あり、大体はここに来れば揃うのでよく活用するところだ。まぁこんな人間は行くところは限られるので、大きいとはいえ数回行けば迷うことはない。

 

「おおきいー」

「はぐれるなよ」

「はいっ」

 

 衣類はこっちか。

 エレベーターに乗り込み衣服店のある階を押す。人は多いがこちらに来る人は見えなかったのでドアを閉めようと思ったら二人の男女が走ってきた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「お、おい!」

 

 その声に閉ボタンを押そうとしていた手を止めて入り口に向き直る。するとすぐエレベーター内に二人が走り込んできた。二人とも大分焦っていたのか肩で息をしている。

 男の人の方は一般的で黒い髪に黒い瞳をしていたが、女性の方はこの辺りでは珍しい白金色の長い髪をしていて、瞳の色は紅色だった。

 

「おぉ・・・・・・」

「透くん?」

「いや、なんでもない」

 

 少し見惚れてしまった。それほどに美しく、妖艶な雰囲気をしている風貌だった。

 目が合いそうになってすぐに視線を外して頭を振る。いかんいかん、今日はシロの服を買いに来ただけなんだ。

 

 一人でそんな自問自答をしていたらいつのまにか指定した。階に到着した。

 

「「じゃあ僕たちはここで」」

 

「「え?」」

 

 見事にダダ被り。

 男の人と一言一句全て被ってしまい、少し恥ずかしくなってしまった。しかも白金の女の人は後ろで吹き出していて余計に恥ずかしくなる。

 

「なんかもう、折角だし一緒に回ろうか?」

「いやそんな、悪いですよ」

「いいよいいよもう。その方が面白そうだからさ」

「わ、わかりました」

 

 そう言うことで二人の男女と一緒になり、シロを含め男女四人で回ることになった。

 

「貴女お名前は?」

「えっとシロと言います」

「シロちゃんね、わかったわ」

 

 後ろでは日本人離れした女の人がシロに色々聞いていて、こっちはこっちで男の人と話をしていた。

 

「君、名前は? 俺は村瀬」

「僕は村崎っていいます」

 

 二人と話をしながら店舗に向かう。

 

「ここに入ろう」

「はい」

「わかりましたっ」

 

 折角ならと男女で分かれて服を選ぶことになった。

 シロの服を買いに来ただけなのに、なんでこんなことになったんだろう。

 俺は村瀬さんと趣味や好きな色調などを話し合わせながらお互いに良さそうなものを選んでいた。どうしてもシンプルで無難なものを選んでしまうのは性格からだろうか。

 

「まぁ分かるよ、俺も昔はそうだったから・・・・・・」

 

 なんかしみじみと言われるとちょっと複雑な気持ちになる。

 そう言いいながら村瀬さんも服を選び、レジに持って行った。

 

「二人はまだですかね?」

「女の買い物は長いって言うからな・・・・・・」

「そ、そうなんですか」

 

 遠い目をしてそんなことを言った彼はどこかさとりを開いたような雰囲気だった。何があったと言うのですか。

 こちらが早すぎたせいか、ちょっと長く感じてしまう。

 

「見に行くか」

「いいんですか?」

「少し覗きに行くだけだし大丈夫だろ」

「はぁ」

 

 と言うわけで女性陣の方に顔を出しに行くことになった。

 行ってみるときゃいきゃいと黄色い声が聞こえてくる。

 

「シロちゃん、今度はこれ着てみて!」

「こ、これですか?」

「絶対見合うわ!」

「は、はい~」

 

 

 そこにはシロにあれこれと着せ替えをさせている女の人の姿があった。整った顔立ちは崩れてちょっと目が三白眼気味になっており、心なしか息が荒い。額を伝う汗が危険な雰囲気に拍車をかけてしまっていた。

 

「ど、どうですか?」

「うん、最高よ・・・・・・」

 

 試着室から出てきたシロが身に着けていたのは腰を絞った膝丈ほどの黒いスカ―トに縦縞のベージュに近い白

のセーター。上にカーディガンを羽織っており頭にはベレー帽を被っている。靴はブラウンのブーツを履いており、冬のファッションの代名詞とも言えるような恰好だった。

 

「なんか凄いことになってんな」

「はい・・・・・・」

 

 まさに女の空間とでも言う空気で、自分たちが声を掛けれるようなものではなかった。

 暫くして何着か選び、満足顔でくる女性と少し恥ずかしそうにしているシロが家を出た時と同じ格好で戻ってきた。

 

「これ買うわ!」

「大丈夫かよそんなに持たせて」

「心配ないわよ、アナタが出すんだから」

「はぁ!?」

「えっ?」

 

 女の人のまさかの一言に村瀬さんだけでなく俺達も驚いて思わず声が漏れてしまう。

 どうしてそんなことになってしまうんですか。

 

「そんな悪いですよ! 流石にウチの分はこっちで払いますから!」

「い、いいんだ村崎君・・・・・・、ここは格好つけさせてくれ・・・・・・」

「そんな震えながら言っても寂しいだけですって・・・・・・」

 

 二人で出す出さないとの論争をしている横で面白そうにしている女の人とあわあわとしているシロが止めるか止めないかで数分使い、結局割り勘で払うことにした。(こっちのほうが払う額が多かったため)

 

 四人で店を出て、時間が良いのでフードコートに行くことにした。

 

「まったく、お前はすぐにそうやって・・・・・・」

「いいじゃない、可愛い子には良いモノ着せろって言うでしょ」

「旅をさせろだ。しかもあんなに高い値段の物を」

「結局割り勘だったじゃない」

「お前なぁ!」

「ま、まぁまぁ、こっちは服も買ってもらえたので気にしてませんから・・・・・・」

「そうですよ、えっと、ありがとうございますっ!」

 

 お互い膨れながら喧嘩しようとする男女を宥めながら飲食店に入っていく。

 ここでも何を頼むかで言い合いになりそうなところを引き留めて、丁度いい値段のものを頼んで事なきを得た。安いの頼もうとしたら「もっと食わないのか? 出すぞ?」と言ってきたので断ったら余計に払う払うと言って聞かないので、中間下あたりの値段のもので許しを得た。

 

「ごちそうさん」

「ご馳走さま」

「お粗末様でした」

「ごちそうさまでしたっ」

 

 皆それぞれの言葉で締めくくり、勘定を払って店を出る。

 

 

「じゃあ、僕たちはもう帰りますね」

「もう帰るのか?」

「はい」

 

 早くない? と言う村瀬さんに流石にこれ以上一緒にいると金銭面的に危険な香りがするので長居は無用だと思う。隣の女性がすごい豪胆なのでさっきのお店でも出す出さないで色々言っていた。

 

「目的の物は買って用も終わったので、もう帰ります」

「そっかー、俺らも用事終わったし、帰るか」

「あ、その前に」

 

 村瀬さんはちょっと来いよ。と俺たちを引き連れてデザートショップまで連れて行った。

 

「冬、クリスマスケーキ買ってやろう」

「だから悪いですって!」

「ええい素直に奢られろい!」

 

 もう自棄になってきているのか半ば強引に数個のカットされたショートケーキを箱詰めにして、二箱買った村瀬さんは片方をこちらに手渡してきた。

 

「ほれ、早めのメリークリスマス」

「・・・・・・ありがとうございます」

 

 こんなに良い笑顔で言われてしまえばもう返す言葉も見つからなかった。

 店を出て、最後に一言お礼を言おうとして、村瀬さんではなく女の人がこちらに向き直っていた。

 

「あの、ありが―――」

「ありがとうね」

「いえ、お礼を言うのはこっちで・・・・・・」

 

 女の人はいいえ、と否定をして、再度俺たちに向き直った。

 

「本当はあの娘にもお礼を言いたいのだけれど、いないのなら仕方ないわね」

「あのこ?」

 

 いいのよ。と言ったその顔は嬉しそうでもあり、悲しそうでもあった。この人と接点はない。しかし何処か見た雰囲気の誰かと会ったような気がしてならない。

 

「おーい、行くぞー」

「分かったわよー」

 

 村瀬さんに呼ばれた女性はそちらの方へと走っていった。

 

「またね、二人とも!」

 

 一度振り返って手を振る。

 さっきとは打って変わって気持ちいいくらいの笑顔で女性は去っていった。

 しかし違う点が一つだけ。

 

 額に黒い角が二本生えていた。

 

「えぇ!?」

「やっぱり」

 

 まさかの出来事に驚愕する自分と、やはりと疑問が確信に変わっているシロ。

 シロ知ってたの?

 

「なんか雰囲気が似ているなーと思っていたのですが、当たってました」

「マジか・・・・・・」

 

 でも、と付け加えてシロは笑みを作って二人が消えていった方角を見る。

 

「とても優しくて、暖かいヒトでしたよ」

「・・・・・・そっか、なら良かった」

 

 モンスターだろうが狩人だろうが一緒に過ごせる大事な相手だというならそれでいい。

 それは俺もよく分かるから。

 

 気づけば手をつないで帰っていることに気付き、顔から火が出そうなほど熱くなってしまい、やはりスキンシップは慣れないな、としみじみと感じて家に帰る。

 

 夕飯後、頂いたケーキの箱を開けて二人でケーキを食べる。

 

「甘いです!」

「うん」

 

 目を輝かせてイチゴのショートケーキを頬張るシロ。

 向こうの世界でもあまり甘いものは無かったのか、それともこういった製菓は無かったのか、人一倍美味しそうに食べる姿にはこちらも食欲がそそられる。

 

「どれ・・・・・・お、うまい」

「~♪」

 

 二人で舌包みを打ち、四つあったケーキは瞬く間に片付いた。

 食後のコーヒーでも淹れようと思って立ち上がろうとしたらシロが袖を掴んで「待ってください」と言ってきた。

 

「なんだ?」

「じっとしててくださいね」

 

 なんだろうと立とうとした足を下ろして座り、シロの方を見るとずずいと顔を近づけてくるシロ。

 逃げようとしたら顔を掴まれ、逃げようとも出来なくなってしまい、必死の抵抗も虚しくから回る。

 

「な、なにする気だよ・・・・・・」

「れろっ」

「ひぃっ!?」

 

 じっと目を閉じて待っていたら頬を細い舌でぺろん、と舐められた。

 

「な、なんだ!?」

「えっと、クリームが付いていたので」

「クリーム・・・・・・」

 

 口元を拭うとまだ少しだけ残っていたクリームが付いていた。

 な、なんだよ・・・・・・。驚かせてからに・・・・・・。

 

 緊張の糸が切れて背もたれに体重をかける。

 誰がこんなことをシロに吹き込んだんだよ・・・・・・。

 

「シロ、それ誰から聞いたんだ?」

 

 加藤あたりなら今度あったときにでも締め上げよう。山田さんあたりならそういった知識は謹んでもらうように言えば聞いてくれるだろうか、わからん。

 

「実は、今日あったあの人に教えてもらいました」

「今日って、あの人たち?」

「はい」

「そっか・・・・・・」

 

 何してくれてんだよあの人らはぁ! どうしようもないやるせなさが込み上げてくる。

 そういえば男の人には名前聞いていたけど、女の人の名前は聞いてなかったな。

 

「なぁシロ、女の人の名前は何て言ってた?」

「えっとですね」

 

 シロがその名前を出す。

 

 

 

 

「『黒姫レシカ』と名乗っていました」

 

 

 

 




 もっと早く執筆していれば・・・・・・。
 計画性がないのがバレる。(今更)

 さらっと適当に書いたのでいまいちな出来だとは思います。
 今度ちゃんとクロスオーバーは書くので許してください。

 メリクリということでこんな感じにはなりました。
 6時間はまだまだフリーな作者です。
 では。


 追記:誤字修正しました。

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