モンハンのゴア娘のフィギュアがリアル美少女になってた【完結】 作:屍モドキ
その日、何事もなくただ漠然と生きてきた俺の人生はガラリと色を変えた。
いい色かなんてそんなのは知らない。
ただモノクロの世界しかなかった時代に初めてカラーテレビが登場したときのような衝撃が俺の身体中を駆け巡った。
その娘は真っ黒な少女だった。
美しい流れるような黒髪、憂いに満ちた紅い釣り目、病的なまでに色白な肌、折れてしまいそうなほど華奢でか細い腕、ゴシック&ロリータが入った貴婦人のようなドレス同じくに、真っ黒な日傘を慎ましやかに持ちながらただじっと俺のほうを見ている。
「あら、こんなこともあるのね・・・・・・」
何か呟いたぞ。ゴスロリがなんかそれっぽいこと呟きながら俺を見ている。
いやホントに俺か? もしかしたら俺の後ろになにか凄いものとか珍しいものでもあるんじゃないか?
そうに違いない、そうじゃなければこんなにもこの少女が穴が開きそうなほどこんな平凡な俺を凝視するはずがない。
よし、帰ろう。
いいもの見たなー、とか思いながらやっと首が動いたのでそっと帰路につこうと思って踵を返すと。
ガシィッ! と。
何か妙な肌触りのするものに腕を掴まれた。
「待ちなさい」
そう言われれば仕方ない。
恐る恐る振り返ると、先ほどゴスロリ衣装を着ていた少女のスカート部分が変形、と言うかもはや原型も留めず全く別の物体になっていた。
見たところ怪物の腕か、奇怪な形をしている。太く、それに見合ったサイズで細長く、付け根から手の側面まで翼膜のようなものがちらちらと見える。
指は四本で、五本目は翼と一体になっていると思われる。
そんな怪奇な剛腕を腰から生やした少女が俺を見つめながら口端を引き裂くように吊り上がった笑顔を向けてきた。
正直悪寒が走った。
なんだコレ、俺食われるの? もしくは殺されるの? あ、でもこんなキレイな女の子に殺られるなら本望かなーなんて。
「言ってる場合じゃねぇぇぇええええええ!!!!」
全力疾走! 今逃げなきゃ俺は死ぬ! 後先のことなんて考えてらんねぇよ!!
「うわぁぁぁああああああ!!!!」
「私の言うことが聞けないのかしらァーッ!?」
「知らねぇよアンタなんかよぉぉおお!!」
「なら教えてあげるわァァァアアアア!!!!」
何故だか俺の足音以外聞こえない。
多分あれ飛んでる。
飛翔してる。どういう原理かは知らないが彼女? は浮遊だか飛行たかして俺を追いかけているものだと仮定しておこう。
さっきちらっと後ろみたらあの怪腕で飛んでた。
飛行するためのツールのサイズが分かった、ならそれが扱い辛いところに逃げ込むだけだ!
「だったらこっち!」
「なァッ!?」
細い路地に逃げ込み、あの剛腕では出入りはおろか移動もままならないだろう。
やったぜ。
「ほほう、考えたわね」
「ーっ! ーっ!」
あの女の視界から外れたと思われるところで小さな遮蔽物の陰に隠れ、諦めてくれるかそのまま遠ざかってくれることを祈る。
「邪魔の物があって入れないなら無くせばいい話でしょう?」
少女のスカートから変異した剛腕が少女が一撫でした途端に黒い霧のようになって拡散し消えた。
獰猛に、しかし上品な笑みを絶やさず少女はゆっくりと路地に入っていった。
「隠れても無駄よォ?」
カチューシャの中央で交差するように添えられていた角が隆起し、紫色の燐光を灯す。
剛腕が変異した霧が辺りに散布され、やがて男のいるところまで霧が漂ってきた。
「そこね?」
「ッ!?」
何か言っている。もしかして気付かれた? まさか、視界からは逃れたはず、なのにどうしてこうも速く見つかったのか?
考えている時間はない。
物音を立てず慎重にその場から離れる。
現状が全く分かんないし追われてる理由も分からない。
けど捕まったら確実に命が危なそうな気がする。
「何処へ行っても無駄」
ロングブーツの形状が変化し、禍々しい甲冑のようになり、二の腕まである手袋も怪物の腕のような見た目になり、その掌は元の手より三倍ほどにもなっている。
「私にはアナタの居場所がしっかり見えているのよ?」
全身の衣服や鎧に走っている紫色の装飾が薄っすら光り、持っていた傘を上下逆さまにに持つと、傘の帆が柄だったところに移動して傘はモーニングハンマーのような形状に変わった。
「あまりおいたが過ぎるなら・・・・・・」
ハンマーを振りかざし、アスファルトにぶつける。
アスファルトは砕けて破片が飛び散る。
「アナタにもこんなことしちゃうかも・・・・・・フフッ」
物陰から彼女の行動を覗いていたが、ヤバイ匂いしかしない。
しかしあの恰好及びあの見た目、モンハンのゴア・マガラに似てる気がする。
そういや以前ホビーショップであんな恰好をした美少女フィギュアを買ったような・・・・・・。
あ、買ったわ。
ちょっと気になってレジに置いたら一万と少しと言われて泣く泣く買ったわ。
ギミックはある程度遊んでパッケージイラストのポーズと同じポーズで飾ってたわ。
もしかしてアレがあの娘!?
なわけないだろ。
そんなメルヘンやSFじゃねぇんだからそんなことあるはずない。
前言撤回さっきの変態シーン見てそんな考え吹き飛びました。
どうしよう、素直に出たほうがいい気がしてきた。
けどそのままぷちっと殺られそうだしなぁ・・・・・・。
どうする、俺。
素直に出ていくのか、それとも逃げるのか・・・・・・。
「見ィ~~つけたァ~~・・・・・・」
「!?」
ぬるりと顔を覗かせて、笑みを浮かべながらこちらに視線んを向ける少女。
やっべぇ。見つかった。死ぬ。
殺される! と思った俺は顔を伏せ蹲る。
「え、ちょ、そんなに怯えなくてもいいのに・・・・・・」
「へ・・・・・・?」
少女は少し引き気味に俺のことを見ている。
なんでそんな目で見てるんだ、こちとら生死の境目で反復横跳びしてたと言うのに。
「ちょっとアナタを驚かせようとしただけなのに・・・・・・」
「ごめん、現状がまったく理解できてないんだけど」
その後、しっかりと説明を受けたが漠然としか分からなかった。
「つまり、気が付いたら自我持ってて動けるしちょっとしたサプライズ的な好奇心と悪戯心で俺を驚かそうとそたら思いのほか俺がビビるから調子に乗ってそのまま続行してたと」
「なに、そのすっごい説明口長なの」
うん、全く分からん。
ジャガーみたいなセリフが出てしまったが本当に理解できないんだもの。
「まずフィギュアが人になるってどういうことだってばよ」
「そんなこと言われても私だって知らないわよ」
そらそうだ。聞いた限りじゃあ気が付いたら動けたと言っているのだからそんなこと彼女が知るはずもない。
「じゃあ、俺もう帰っていい?」
「なら私も着いていくわ」
「なんでさ」
「アナタは私のご主人様と言える人だもの」
「えぇ・・・・・・」
しかし考えてみればそうなのか?
俺が購入したフィギュアが動き出したのなら俺が主と言っても過言ではない・・・・・・。
ダメだ、わけがわからないよ。
「もう好きにしてくれ、腹減って仕方ねぇんだよ・・・・・・」
「ちゃんと着いていくわ。ご主人様♪」
かくして、俺の妙な日々が始まった。