モンハンのゴア娘のフィギュアがリアル美少女になってた【完結】   作:屍モドキ

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 多い。
 色々考察とか予想とかしてくれている人がいてとても嬉しく思いました。
 さて事はどうなるでしょうか。

 それはそれとして時間かけた分設定とか忘れそうになりました。
 名前とか、描写とか。

 それはそれとしてどうぞ。



 追記:誤字修正しました。報告ありがとうございます。




8話 帰る場所

 ギルドの方々に黒式が話を着けてくれて同行の許可が降りたので、余計なことをしないように着いていった。

 結構怪訝そうな目で見られていたが、そんなものに構っていられないほどこっちも必死だったので割とすんなり話がついていた。

 

 目的地は禁足地。そこに謎のモンスターが現れ周辺の生物が暴れまわっているらしい。正にシャガルマガラが覚醒した時と同じような状況が生み出され今回黒式に指名で緊急クエストが発注されたとのことらしい。

 

「で、実際のとこどう対処するんだ?」

「分からない」

 

 竜車に引かれてガタゴト揺れる三人の周りには重苦しい空気が漂っていた。

 相手がただのモンスターでも、古龍でもない存在と対峙するとなりどう対処すれば最善かを黒式は悩んでいた。

 しかも隣に座る男の思い人となれば、いくら常に如何なる時も冷静さを欠かず狩猟に取り組んでいる自分としても引き金を引くのも躊躇われる。

 

「まずこれだけは言っておくけど、もしも話し合いも通じなくて理性がない状態だと分かったら躊躇わずに撃つよ」

「・・・・・・っ。分かった・・・・・・」

 

 頼む、どうか無事でいてくれ。

 切な願いが胸を駆け巡った。

 

 

 ◆

 

 

「ハァッ・・・・・・ハァッ・・・・・・」

 

 どこか分からない森の中。

 纏わりつくような、自分のものではない瘴気が漂う森の中を、ふらつく足で彷徨う。

 気を失ってからどれくらいの時間が経過したのか分からないが、あの時は夕暮れぐらいで今の空は日の光が見えないほど暗くなっているから、完全に夜のようだ。

 

「日を跨いだか、それとも二、三時間経ったくらいかな・・・・・・」

 

 滝のように流れる汗が落ちる口元をだらしなく拭う。

 そこで視界に映った妙な違和感に気が付いた。気が付いてしまった。

 

「・・・・・・っ。進んでる(・・・・)

 

 見れば夕暮れ前までは外殻がボロボロと剥がれ落ちて白金の鱗が見えていた程度だったが、それからさらに脱皮が進んでその鱗の本性が姿を現していた。

 幸いまだ右椀部までのようで、左手を見れば見慣れた黒い外装甲が展開していた。けれど妙に膨らんだ鎧に不安感を覚えてしまう。

 

「まだ、大丈夫」

 

 自分の素手よりも三倍は大きい節だった掌を見ながら握りしめる。

 もし今この場に彼が居れば、どれだけ安心できただろうか。

 

「寂しいなぁ・・・・・・」

 

 近くの樹木に寄りかかり、膝を曲げて腰を落とす。

 焦燥感に駆られたがむしゃらの飛行と、精神の消耗でかなりのエネルギーを消費していた。

 空っぽの胃に何か入れたいと思ったが、回りは知らない草木と切り立った岩盤が見えるのみで、生物が居ないように思われた。そして極めつけは空から絶え間なく、断続的に降り注ぐ大量の瓦礫。明らかに生物が居る様子は感じられない。

 

「お腹、空いた」

 

 ぐぎゅるるる、と少女の小さなお腹から空腹を訴える音が鳴る。

 虚ろな目は半ば閉じかけていて、何か欲しいと宙に手をかざすが当然何も掴むことはなかった。

 しかし代わりに、空腹により思考力の低下した頭が一つの刺激を察知した。

 

「・・・・・・?」

 

 それは極小さな刺激であったが、意識が覚醒するには十分な量であった。

 感じたのは自分のものではない瘴気。

 それはさっきまで嫌気がさすほど分かっていたが、問題はそこではなく瘴気のその量。

 

 さっきまでとは確実に、流れてくる瘴気の量が増している。

 

「近くに、いるの・・・・・・?」

 

 肌にピリピリと感じる、同胞であり、天敵である者の存在。

 目に憎悪と生存の炎が灯り、身体の奥底から、臭う瘴気を垂れ流す輩を屠らんとする力が湧いてくる。

 

「アイツを、アイツを殺せば、この(しがらみ)から抜け出せる・・・・・・ッ!!」

 

 メキメキと腰のあたりから左右非対称になってしまった(おぞ)ましい怪腕を生やし、死神のローブのような翼膜と、煌めく夜空のような翼膜を広げて思い切り地面を蹴って跳躍する。

 目指すのは切り立った岩山の頂点。

 真っ暗な瘴気を垂れ流す輩をこの手で消し去り、この苦痛から脱却するために。

 

「覚悟しなさい・・・・・・アンタを倒して、私が生き残る・・・・・・!!」

 

 人としてではなく、一匹の龍としての宿命に消えかかる命を燃やし、くすんだ視界の先で唯一黒い光を放っている存在を屠らんとするために、怒りに任せて飛ぶ。

 

 

 ◇

 

 

 ガタガタと木材と鉄材で出来た車輪で揺れていた竜車がやっと止まる。

 現代技術に慣れた体には中々に辛い時間だったが、これはこれで新鮮な体験だということにしておこう。

 

「ん、乗り換えだよ」

「乗り換え?」

 

 聞けば目的地は切り立った山脈の上のあたりらしい。

 それならこのまま荷車で行くのも酷なので飛行船に乗って進むようだ。

 目の前にはある程度の貨物を積めそうな飛行船が崖に作られた停船場所に停まっている。横のあたりがら空きなんですが大丈夫なんですかこれ。

 

「変に暴れたりしなければ、落ちることはない、よ」

「あ、やっぱ落ちるんだ」

「私高いとこ苦手なんだけど!?」

「それはごめんなさい」

 

 小林さんは悲鳴を上げながらもなんとか全員飛行船に乗り込んで出発した。

 

 俺と小林さんはもしものことがあったりしたらいけないと言われて甲板には出してもらえず奥の方へ引っ込み、黒式は外で監視をしているようだ。

 

「何かあるかー?」

「今のところは、何もない」

「そりゃ何よりで」

「それが問題」

「はぁ?」

 

 黒式は少し動揺したような素振りで上空の周囲を見回している。俺も甲板に顔を覗かせて辺りを見回すが本当に何もない。竜も鳥もモンスターも、生物の影がかけらも見当たらない。

 

「何か異常なのか?」

「異常、と言っていいのかな。アブナイ奴が出たら生き物は隠れる」

「なるほど」

「それにほら」

「なんだ?」

 

 あっち、と指を差された方を見ると、そこから空の色が変わっていた。

 円形に広がっている暗い紫色の空の中央は、山の頂点が埋まっていた。ゲームの設定を思い出してそんなことがあったと思う。古龍が出現するクエストには小型モンスター含めその他のモンスターが出ることがないとか、ゴア系のモンスターが活性化した時とか空があんなことになったと思う。

 もしかして。

 

「古龍かな」

「その通り。よく知ってたね」

「ゲームでそれとなく説明してるのみたから」

「なるほどね。っ――――隠れて」

「うおっ!?」

 

 黒式に無理やり甲板の下に頭を掴んで押し込まれて階段から足を外して下に転げ落ちてしまった。

 痛みが響く後頭部を抑えながら文句を言おうと上を見上げると緊迫した表情の黒式が飛行船の外の一点を見据えて睨んでいた。

 

「・・・・・・何か見つけたのか?」

「恐らく人じゃないモノ」

「なんだよそれ」

「君が言ってた娘、だと思うよ」

「なに!?」

 

 俺自身も甲板に顔を出してもう一度周囲を見ると、遠くの上空に、小さな飛行体があるのを見つけた。

 飛行物の一体も見えなかった静かな空で、おおよそあり得ないような唯一見えた一つの存在。

 目を凝らしてみると、それは人の形に似ていたが、決定的に違う点がいくつも現れていた。

 左右非対称な大きな翼、たなびく長い尻尾、そして頭部から生えている白金色の角。

 遠目から見てそれぐらいしか分からなかったが、それだけ特徴的な部分が見えれば確実にあの存在がレシカだと言うことが分かる。

 

「あの娘を追ってくれないか?」

「その必要はない」

「なんで!」

「行先は多分、同じだから」

 

 この飛行船が目指している目的地。

 

天空山(てんくうざん)か」

天空山(てんくうやま)だよ」

 

 細かすぎない?

 さっきまでの緊張感が途切れてすっかり気の抜けた感じになってしまった。

 

 

 

 天空山ベースキャンプ。

 

 簡易天幕と赤、青二種のアイテムボックスがそれぞれ一つずつ。飛行船から出た小型化船に乗り継いで、ベースキャンプにたどり着いた。目の前には岩と強靭な(つた)で構成されたなんとも不思議な場所。一応足場がしっかりと地面から生えている所もあるが、全体としては半分くらいではないだろうか。

 

「物騒な所だね・・・・・・」

「自然に殺されかねないですね」

 

 少しでも足を踏み外そうものなら雲より高い上空に投げ出されてオシマイだろう。

 そう思うと身震いしてしまい、足がすくんでしまう。下を見るな下を見るな。

 

「行先はその道の先じゃなくて、横の大門の向こう」

「こっちか」

 

 振り向くと岩で出来た門が開かれて、そこから溢れんばかりの瘴気が吹き流れてきていた。

 その先に道が続いており、この気が狂いそうな瘴気はそこから流れてきているようだ。

 

「この匂いは、ちょっとつらいな・・・・・・」

「慣れてないとキツイからね」

 

 黒い狩人の少女はマスクのようにマフラーを深く巻いて口元を隠し、携えてきた武器の最終チェックをしていた。弾が装填されているマガジンを詰めれるだけポーチに詰め込み、武器の装填部分にマガジンをセットしてリロードをした。

 

「これ以上入ると生き物として危ないから、流れてるコレが収まるまでは来ないでね」

「でも・・・・・・」

「でももだってもへったくれもないから」

 

 黒式は俺にびしっ、と指を突き立てて指摘をしてくる。

 

「私の目的はこの事態を引き起こしているモンスターの処理。君たちを含めたここら辺一帯の民間の命が最優先。これだけは譲れない」

「その危害を出しているのがもし、レシカだったら」

「迷わず撃つ」

「ッ・・・・・・」

 

 俯いて何も言えなくなる。

 もしもレシカがこの事態を引き起こしている要因だとすれば、俺はどうするだろうか。人の命を優先して彼女を殺すだろうか。それとも彼女を引き連れて何処までも逃げようと夢を見るだろうか。

 

「けど、これは予想だけど、今回の騒動の原因はカノジョじゃない」

「そ、そうなのか?」

 

 黒式は上を向いてこの空を見て。と指をさす。

 

「この暗雲が立ち込めているのを確認した時点で少しその可能性を見たけど、さっき飛行船でこの場所に飛んで行った女の子らしいものを見るに、原因は別だと思う」

「それってつまり・・・・・・!」

「お静かに」

 

 もしかして、と期待に胸を躍らせようとしたところで黒式に黙るように正されてしまう。 

 

「高望みは当てが外れた時の反動が大きいから、しないほうがいいよ」

「わ、わかった」

 

 黒式は振り向いて門へと向かう。

 彼女は一度振り返ってサムズアップをして一言良い放った。

 

「私に任せろ」

 

 それだけ言い残して、彼女は門の奥へと進んで行った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 立ち込める暗雲、夜と言うには何故か明るくて、昼と言うには太陽の光が見えていない。そんな片道を歩きながら、黒式は考え事をしていた。

 

 さて、どうしたものか。

 細長い道を進みながら顎に手を置いて考え込む。

 優先順位はクエストの達成条件である古龍の討伐だが、それとは別で女の子の回収もある。

 

 今回、何が自分をそうさせたのか分からない。あのとき彼らが居て、彼が言う女の子の存在に興味が湧いたからだろうか。

 それとも自己満足なのだろうか。

 全くもって度し難い。

 

「まぁいっか」

 

 あの時気が乗ったから、と言うことにしておこう。

 自分は気分屋だから、いつだって。

 

 そうこうしていたらもうすぐ禁足地に着く頃だ。

 武器の調子は良いだろうか。

 体の動きは良いだろうか。

 頭の回転は良いだろうか。

 

「よし、行こう」

 

 痺れるほど緊張の空気が張り積めている場所に、足を踏み入れる。

 大きな円形の平地の中央に岩石が一つ突っ立っている。草木も生えていない更地に昼間っから日も照らず、うすら寒い雰囲気が出ているこの場には自分しかいないように見えたが、岩の影に漆黒の塊が見えた。

 

「コイツ、か」

 

『グルルル・・・・・・』

 

 黒い塊が唸った。

 

『ゴォアアアアアァァァァァ――――――――――――――――――ッッ!!!』

 

 黒い塊が吠えると、黒い塊の表面が蠢きだして、咆哮と共にガワが弾けて中に居た存在が顔を出した。

 

『オォォ・・・・・・!』

「目標確認」

 

 臨戦態勢。

 武器を抜いて銃口を標的、シャガルマガラに向けて引き金に指を添え、全身を程よく力ませて意識を切り替える。

 

 決戦の火蓋が切って落とされた。

 としたその時、

 

   

 

 

 

 

 

「ぐゥ・・・・・・アアアアアアァァァァァァ―――――――――――――――ッッッ!!!!」

 

 上空からナニカが急速に落下してきた。

 

「っ!?」

 

 上空からの急降下で天廻龍の喉元を怪腕で叩きつけるように押さえつけて、態勢を崩して転倒した天廻龍をぐるりと引きずるように地面にこすり付けて上へと投げ飛ばす。

 白金の龍は上空で体勢を立て直し、空中でぴたりと止まって自分を投げ飛ばした者へ向けて空に響き渡るほどの咆哮を上げた。

 

『ガァァァアアアアアアァァァァァァ――――――――――――――――ッッッ!!!』

 

 天廻龍は吠えたあと着地して奇襲をかけた者、レシカと対峙する。不意打ちを受けて怒り心頭といった具合でレシカを睨み、少女も背後からずるりと二本の異なる剣を持ち出した。

 片方は鉈のような形状の黒と紫色の片手剣で、もう片方は黒に金色が混じった両刃の片手直剣。

 

「・・・・・・・・・」 

 

 人と古龍ではない。

 目の前には異形の人形の龍と、六足の古の龍が対立していた。

 続け様に女レシカが躯のような手に黒い炎を灯して投げつける。天廻龍の手前で炎は相殺されて、お返しとばかりにブレスが飛んできた。レシカは回避もせずこれを薙ぎ払うように弾いて黒炎を手に灯し、今度は投げずに握り込むと、炎は形を変えて鉈のような形の刃幅の厚い片刃の片手剣を作り出した。

 

「ハァッ!」

 

 怪腕と同時に地面を駆けだして滅茶苦茶な加速をするレシカは降りてきた天廻龍に向かって鉈を振り下ろす。

 しかし寸前で食い止められ、前足で弾かれた。

 

「チッ」

 

 すぐさま飛び退いて距離を離し、両手の剣を手放してまた新たな武器を今度は地面から引きずり出した。

 

「傘、いや日傘?」

 

 真っ黒でひらひらした意匠が目に付くファンシーなようで落ち着いている貴族が持っているような黒い傘を取り出したレシカは、柄と帆を張っている骨組みの根元を掴んで以前使用した時と同じように上下反転させながら持ち替えて、日傘はモーニングスターへと形を変えた。

 

「ァアッ!!」

 

 腰を落として槌の先を地面に無造作に落として、両手で掴んだまま走り出し、天廻龍の目の前でガコン! と一度跳ねさせて顔を上げて避けようとしていた天廻龍の横顔に槌を重い重低音を響かせて当てた。

 

『グギッ!!』

「ウー・・・・・・グゥー!!」

『ギャアァァ!!!』

 

 下からの突き上げで上を向いた龍の顔面に振り下ろしによる追撃で地面に槌ごと叩きつける。そのまま頭の上に槌を乗せて身動きを許さなかったが、剛腕で無理矢理退けられた。

 そして立ち上がった瞬間に剛腕の平手が飛んできて追撃を受ける。その追撃を日傘で受けて、押し込まれるような攻撃をパリィで弾く。

 

「出る幕無さ過ぎ・・・・・・」 

 

 そう思うほど、人間離れした二体の戦闘は一線を画すものだった。

 せっかく最高の状態で持ってきたライトが無駄になってしまう。撃たないと。

 

「えい」

 

 三連した破裂音と共に貫通弾を発射する。

 発射された弾丸はレシカの横を通って天廻龍の左翼腕に着弾した。

 

『ギャァッ!!』

「ウ?」

 

 何故か人の言葉を発さないレシカは一度此方へ振り向き、一度警戒したが敵意を向けられていないことを知ると天廻龍へと意識を戻してまた両手に剣を持ち、顔に黒炎が上がったかと思うと両手足に装備された装備品と似通った仮面を身に着けた。

 

「ウゥゥ・・・・・・!」

「共闘オッケーでいいのかな」

 

 少女の隣に並び立ち、リロードをして装填し直して、少女が天廻龍に向けるほどの殺気はないがそれに負けないと思うぐらいの冷徹さで挑む。

 

『ガァァァアアアアアアアアァァァァァァァァァ――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!』

 

 本日何度目かの咆哮。

 所謂本気の本気で天廻龍は挑んで来るようで、咆哮と後から地面に黒炎の自動起爆地雷が無作為にあちこちで爆破し始めた。

 

『ウガァァァッッ!!!』

 

 レシカも吠えると右腕から二の腕まで剥げて下から剥き出しになっていた白金色の外殻の面積が少し増えた。それは腕だけに収まらず足にも来ていて怪腕のほうも付け根付近まで剥げていて、左右で大きさが違ていた怪腕は少しづつその大きさに誤差が無くなっていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

 目は血走っていて見えているのは天廻龍が大半で自分は見られていないだろう。

 できるだけ攻撃は与えるがそれでもこの二体の間にとってはフォローになるのが関の山か。

 タゲ維持大事。

 

「オアァァ!!」

 

 レシカが飛んで斬りかかる。

 ガードされようとしたところを狙撃して防ごうとした腕を弾き飛ばし、斬撃をクリーンヒットさせる。

 

『アァッ!』

「うお」

 

 邪魔をされた天廻龍が私に向かってブレスを吐いたがそれを難なく回避して見せる。

 続け様に撃ってその後ろのおみ足に弾痕を食い込ませて距離を置く。

 撃たれた龍は踏ん張る力の四分の一か六分の一を失って一瞬の隙を晒した。そこに逃さないとばかりにレシカが直剣で突きを繰り出し、肩に当たった切先を怪腕で踏ん張りながら食い込ませて下に斬り裂く。

 

『ギッ!』

 

 レシカは間髪入れずに怪腕で張り手を入れようとしたがそれを寸のところで防がれて、重量の差で押し負けていた。空中で翼膜を使って落下の速度を落として着地しようとしたレシカに今度は天廻龍が追撃を与えてレシカが吹き飛ばされ、地面にかなりの勢いで転がっていった。

 

「グィッ」

「女の子!」

 

 軋む体で起き上がろうとした少女に天廻龍はこちらに見向きもせず、一直線に少女に向かってブレスを吐き、それと同時に迫って上からその巨体を使って抑え込む。

 

「フ、ぐゥ・・・・・・!!」

『アァァァ・・・・・・!!』

 

 瞬時に起き上がったレシカは上から被さるようにして押さえつけようとする天廻龍の腕をなんとか支えて跳ね退けようとしていたが、無理に起き上がった体勢に加えて先のダメージで力めないでいた。

 

「っ!」

 

 阻止させようとしてその後ろ脚に貫通弾を撃ち込む。しかしレシカを剛腕で抱えてバックステップをされてしまい、弾丸は空を横切り、レシカは空中に投げ出されたと思えば着地する前に剛腕含めた四つ足で、加速を加えたプレスを喰らわされてしまった。

 

「ガハァッ!?」

「――――ッ!」

 

 傍から見てもかなりの大ダメージ。

 あの小さな体であの攻撃を喰らえば、大方一撃死、良くて瀕死、いや最悪か。

 地面が揺れるほどの攻撃で少女をめり込まし、したり顔で振り向く天廻龍。

 

「・・・・・・っ」

『グォォ・・・・・・』

 

 倒す気でいたが、先ほどの戦闘を見せられてはやる気が失せてきている。

 明らかに同じ生物とは何かが違う。何かがおかしい。

 それは体の構造とか身体能力とかそんな次元ではない。

 

 ゆっくりとした足取りに少しずつ恐怖心が募ってゆく。

 

 黒い霧が口から漏れて、全身の甲殻やら鱗の間から黒い鱗粉が溢れている。

 それを見て口元を抑え、マフラーを押し当てて早まる呼吸を無理して鎮めようとする。

 

「く・・・・・・」

 

 銃口を向ける。

 しかしそれだけ。

 引き金が引けない。

 突破口が見えない。

 どの選択肢を取ってもバッドエンドしか見えない。

 

「万事休すかな・・・・・・」

 

 諦めようとしたその時。

 

 

 

 

 

 

「アァァァァァァ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 のそりと起き上がったレシカが黒炎で鉈を生成し、遮二無二に天廻龍へと投擲した。

 

『ガァ!?』

 

 鉈は龍の背部に刺さり、龍が鉈を退けようとするが関節が回らず取れそうになかった。

 あらぬ方向へ曲がっている手足がごきん、ぱきん、と不快音を発しながら元に戻り、攻撃を喰らって砕けて消滅してしまった鎧をまた装備して、真っ黒な瞳と虚ろな瞳を天廻龍ただ一体に向けている。

 ぞるっ、と怪腕を生やして両手を地面につけてビタンと尻尾を地面に叩きつけて唸らせる。

 左右非対称の角はもはや違うのは色のみで、大きさも形状もほとんど同じと言うところまで成長、あるいは侵食していた。

 その姿勢はもはやヒトと呼べるものではなく、文字通り人の皮を被った化け物であった。

 

「アァァァ――――――――――――――ッッ!!!!」

 

 六足で跳躍し、天廻龍の虚を突いて、肩甲骨から生えている剛腕の片方の翼膜を噛み千切った。

 生々しい音。

 飛び散る血潮。

 思わぬ身体的損傷で白金の龍が苦痛の悲鳴を上げてもがく。

 その抵抗に負けじと喰らい付くレシカ。背に刺さった鉈を無理矢理引き抜いて今度は剛腕を根元から斬り落とした。

 

『ギアァァァァァァ!!!!』

 

 あまりの苦痛に天廻龍が絶叫しながら野垂れ苦しんでいる。

 地べたを這いずり、出血を堪えようとするが興奮によって血流が上昇し、さらに出血を促してしまっていた。

 

 そこに畳みかけるようにレシカは直剣も生成して跳躍する。

 そこからは目で追うのもやっとな、急速度な速さによって繰り出される野蛮な斬撃で少女が龍をいたぶっていった。全身に深い傷を作り、尾を跳ねて、爪を折って、角を砕く。

 

 レシカが地面に止まった時、反する龍は満身創痍で虫の息であった。

 

「オォォ・・・・・・!」

「な、なに?」

 

 少女は両手に持っていた剣の、鉈の切先と直剣の柄頭をぶつける。すると二振りの剣はぎぎぎ、と金属の軋む音を出しながらその形を変えて、上には二本の下には一本の弦で支えているという特異な形状の弓になった。

 角の生えた髑髏のような、ゴアシリーズにもシャガルシリーズにも似ていて、それでいてどちらでもないようなデザインの弓は彼女専用の大きさのようで、その体躯にぴったりだった。

 

 少女が弦に手を置くと、黒炎が一つ彼女の手元に灯り、弦をゆっくりと弾いていくとそのまま火の灯を残したまま矢のように火が伸びて、黒く燃え滾る矢が生まれた。

 ギリギリと形が朧げな矢をくべて張る弦を、その節だった手で引っ張る。

 

「ハァッ!!」

 

 限界まで張った弦を離す。

 炎の矢はその朧げな見た目に反して弦のしなりに応じた瞬間的な速さで天廻龍の喉元に刺さり、そこから黒炎が広がって往き、全身が黒い炎で包まれた。

 

『アァァァァァァ―――――――――――――・・・・・・・・・』

 

 天廻龍の断末魔はだんだんと小さくなっていき、持ち上げていた首は力なく倒れ伏して、完全に命を奪い取ったからか全身を包んでいた炎が消え去って息のなくなった龍が姿を出した。

 元凶が命を失ったということで不快感を覚える暗雲が晴れて空に青空が戻り、数時間ぶりに見る日差しが目を差す。

 

「・・・・・・・・・」

「ひゅーっ、ひゅーっ・・・・・・」

 

 終始やることなかった。 

 格好つけて来たのにこの体たらくは流石に恥ずかしい。

 自分の羞恥心は置いておいて、まずは目の前の少女の対処が先だ。

 敵か味方か、それとも救助対象か。

 少女がふら、と振り向き、無気力ながらも少しの警戒心を乗せた視線を向けてきた。

 

「貴女は、何者・・・・・・?」

「私はー、うん、ただのハンターだよ」

 

 先ほどまでの戦闘で自分の中の自尊心とかそんなものが崩れて、格好つける気持ちもなくなっていた。

 トリガーのロックをして暴発防止措置を取って納め、せめて回復でもさしてあげようと近くに行くと、レシカは体を抱えて膝をついた。

 

「うぐッ!?」

「!?」

 

 突然少女が短い悲鳴を上げて仰け反り、両手の剣を落として膝を折り、岩肌に手を付いて嗚咽を吐く。息の仕方を忘れたかのように呼吸が不安定になり、這い蹲ってもがき苦しみ怪腕が途切れて消滅し、黒髪と白金の髪が入り混じった生身の少女が投げ出された。

 

「カハァっ、ゲホ、ゲホ・・・・・・!」

 

 血反吐を吐く勢いで咳き込み、咽る。

 そして全身に少しずつ起こっていた脱皮が、ここにきて急激に進んだ。

 バキバキと音を立てて、全身からボロボロと外殻が剥がれ落ちて漆黒から白金へと色を変えて、真っ黒に染まっていた瞳は純白に戻り、黒髪は全て白金色に染まった。

 

「ハーッ・・・・・・ハーッ・・・・・・」

 

 咳も嗚咽も収まった彼女は荒い呼吸で立ち上がった。

 その目には戦闘時の錯乱状態に似た発狂の三白眼でなく、理性の見える瞳が見えた。

 

 この娘をどうしようかと考えていたら、一本道から二人の男女が小走りで来ているのが見えた。

 

「おーい」

「終わったかな」

 

 そういえば雲が晴れたら来ていいとか言ったな。

 目の前の少女の介抱をしてやりたいがあの人たちも気が気でないだろう。

 目の前に目的の少女が居るのだから。

 

「ッ、レシカ!」

 

 真司が女の子、レシカの存在に気がつく。

 色も形も変わってしまい、種族すらも変わってしまった彼女に、真司は迷わず彼女の名前を呼び、レシカの元に向かう。

 

「あはは、こんなになっちゃった・・・・・・」

 

 泣きそうになるのを必死に堪えて浮かべた笑顔。

 目尻には涙が浮かんでいて、声は上擦てしまっている。

 どれだけ取り繕うとしても今のこの状況で気丈に振る舞おうとするには、今の彼女には重すぎた。

 

「レシカ・・・・・・」

「来ないでっ!」

「おわっ!?」

 

 慌てて駆け寄って手を伸ばした途端、レシカが日に照らされて淡く煌めく怪腕を展開して自分を守るように、もしくはまわりを寄せ付けないようにして怪腕で壁を作った。

 

「私、前とこんなに変わっちゃった。もう戻れないの、だからもう傍に居たくないの・・・・・・!」

「レシカ、それは」

「やめてよ、来ないでよ、近寄らないで!」

 

 労わりも労いも悲哀も慈愛も同情すらも受け付けようとしないレシカに、真司はただ見つめているだけだったが、怪腕で己を守るようにうずくまる少女にゆっくり、歩み寄った。

 

「来ないでよ、なんで来るのよ!?」

「・・・・・・・・・」

「やだ、やだよ、また怪我させちゃうじゃん・・・・・・!」

「・・・・・・」

 

 慌てふためき睨むことも蔑むことも出来ず、謝意と自責の念で板挟みになっているレシカの心境に土足で踏み上がるが如きの所要で一歩、また一歩と近づいていき、二人の距離は両腕を伸ばしたほどの距離まで近づいた。

 

「来ないでって、言ってるのよ!!」

「・・・・・・」

 

 気の迷ったレシカは美しい剣を取り出して真司に向ける。

 しかし真司は歩みを止めることなく進み、剣を振ることも逃げ出すことも出来ないレシカの目の前まで来てしまった。

 

「くっ・・・・・・ふうッ・・・・・・うぅ・・・・・・!」

「レシカ」

 

 優しく少女の名前をもう一度呼び、両手を広げて怪腕を退け線の細い少女の体を抱きしめる。

 身動ぎするが先の戦闘により体力の消耗も激しくそんな力は残っていなかったようで、真司の力にも負けるぐらいだった。次第になけなしの抵抗も弱まっていき、手に持っていた剣もするりと抜け落ちて地面に転がって消えた。

 

「うぐぅ、シンジぃ・・・・・・」

「・・・・・・・・・あぁ」

 

 様々な感情が溢れて極まったレシカは遂に両の目から涙を流し、真司の背中に手を回してひし、と掴み肩口に顔を押し当てて声を上げて泣き出した。 

 真司は何か言うわけでもなく、やっと見つけた彼女を抱き締めて自分も涙を流していた。

 

 気が落ち着くまで二人で泣いて暫く。

 

「おかえり、レシカ」

「うん、ただいま・・・・・・」

 

 涙ゆえか、日の光が眩しかった。

 

 




 多かった・・・・・・。
 戦闘シーンは悩んだ結果引き伸ばしました。
 正直そこまで必要かと言われたら答えづらいのですが、古龍って強いしぶとい意味不明で通ってると思ったので、少し長く書きました。しかし個人的には今回はあっさり逝ったなぁと思ってます。
 仕方ないですよ尺的に。
 なのでこの回のシャガルはMH4の村のストーリーボスぐらいの強さだと思ってもらえれば有難いです。

 はてさて、ごたごたした話は置いておいて。

 次回エピローグ。
 ここまで読んでくれた人にはホントに感謝します。
 
 誤字脱字等ありましたらご報告願います。


 
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