目が覚めたらあべこべってた   作:紺南

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第11話

カーテン越しの朝日が眼に痛い。

白い天井に反射した光が直接目を抉っているようだった。

もちろんそんなのは気のせいだが。

 

目を覚まして、まずすることと言えばテレビを点けること。

ぼんやり働かない頭にニュースキャスターの言葉が右から左に流れていく。

やがてうっそり立ち上がって壁にかけてあるカレンダーの前へ。

 

「臭わせるだけ臭わせて、何が変わったかと言うと日付が一日経過しただけでしたとさ」

 

カレンダーを見ながらそんなことを言った。今日は昨日より一つ数字が増えている。

その数字を指でなぞった。もうじき7月か。

赤い大安の文字が憎らしい。こんな日には仏滅ぐらいが丁度いいだろう。

 

昨日のことを思い出す。これからほぼ毎日、会長と登下校することになった。そう言えば期限を決めてない。最長でも会長が高校を卒業するまでか。

迷惑をかける。朝はわざわざ俺の登校時間に合わせてくれるというのだから、もう足向けて眠れない。

昨日のことを思い出す。

 

「普段は何時ぐらいに登校してるんですか?」

 

「じつは、結構ギリギリなの。朝弱くてね」

 

そんな会話。

朝が弱い会長に早起きを強いている。

そこまで献身的になってくれるのだ。なんとか報いたい。

俺もギリギリの時間にしようか。その時はそう提案した。

 

「平気。いい加減治そうとも思ってたの。どうせ夜更かしが原因だから」

 

「低血圧だとどうしても朝弱いらしいですよ」

 

「そうなの? でも一度ぐらいチャレンジしてみるわ」

 

そんなわけで、会長に迷惑かけっぱなしな俺としては、その内お礼をするのは決定事項として、T字路で待ち合わせするか、会長が俺の家までやってくるかは結構重要な問題だったりした。

距離自体はそんなに変わりないが、少しでも楽をしてもらいたいので、T字路で待ち合わせを強く推した。しかし会長は家まで来ると言う。

これだけは譲るつもりはない。「とにかくT字路だ!」それでぶった切って、無理くりT字路待ち合わせにした。

 

待ち合わせに現れた会長は俺の姿を認めて酷く不満そうだった。

その内寝起きを拝みに家まで行ってやろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、学校に着いてみれば北村の姿はなかった。

いつも俺より早く来ているあいつがいない。つまりそういうことだ。

 

ホームルームの終わり際、担任がそれについて触れた。

 

「北村くんは入院することになりました」

 

クラスが騒めく。

 

「やっぱり盲腸ですか?」

 

「さあ」

 

クラスメイトの問いに白を切る担任。

クラスの会話に聞き耳を立てる。

しめしめ。しっかり根付いてやがるぜ。

 

「検査入院と言うのは聞いています。盲腸だったらそう言うでしょうし、違うんじゃないですか?」

 

「えぇ?」と困惑する声が漏れる。

盲腸じゃないならなんだと、好き好きに素人予想を連ね始める。

やかましくなったクラスを睨め付けて、担任は出席簿で教卓を叩いた。

 

「はい。他人の不幸を飯の種にしてる皆さんには、あとで宿題追加しておきますね」

 

「はぁ!?」

 

いつにない暴君ぶりを発揮した担任は、喧々囂々と文句の飛び交うクラスを一切無視して、

「それではチャイムが鳴るまで自習」と宣言し踵を返す。生徒たちは己の無力を悟り項垂れた。

 

机の中をごそごそ掻きまわしていた俺の耳に「ああ、そうだ」と担任の声が聞こえてきた。顔を上げると担任は俺の方を向いていた。

わかってるよねと言わんばかりに首を傾げて手招きしている。無表情だった。

 

「なんすか?」

 

「昨日の予告のあれです。廊下で話しましょうか」

 

廊下は教室とは違って静かだった。

ひんやりした空気が流れている。人っ子一人居ない。

窓から朝日が差して、床には窓枠の形の影が出来ていた。実に見事なコントラストだ。

他のクラスはまだホームルーム中なようで、微かに教師の声が聞こえてきた。

一番うるさいのはうちのクラスなようだ。

 

「昼と見せかけて、不意打ちで朝呼んでみましたが、ご気分如何ですか」

 

「先生と逢瀬を重ねられるなんて感無量です」

 

「ですか。じゃあ本題ですけども」

 

担任は無表情のまま話を進める。

 

「北村くんを保健室まで運んだそうですね。ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

「いえ」

 

向かい合う担任は俺より随分背が低い。

しかしその目の力強さにはちょっとドキッとする。

 

「伏見先生にも言われたと思います。北村くんのことは他言無用。覚えてる?」

 

「もちろん覚えてますよ。あいつのことは誰にも言ってません」

 

「なぜか盲腸説が根強いですが、これは?」

 

「知りません」

 

担任は眉をひそめた。

 

「別に怒ってるわけじゃないですよ。よくやったって背中を叩きに来たんです」

 

そう言うわりに無表情だ。これ叩かれたらかなり痛そう。小柄なくせしてどこからパワー出すつもりだ。助走で勢いでもつけるのか。

 

「叩かれたくないです」

 

「では頭を撫でましょうか」

 

「ぜひ」

 

「え、撫でられたいの?」

 

「はい」

 

中腰で撫でやすい体勢になる。

担任はおずおず頭を撫でてくれた。母性を感じる。

 

「セクハラになるから、これ以上は出来ませんよ」

 

「これ以上ってなんすか?」

 

「男から女にもセクハラは成立するんですよ。知ってます?」

 

「これ以上ってなんすか?」

 

ぴしゃりと頭を叩かれる。

 

「大人をからかうのもいい加減に」

 

そう言いながら、顔はやっぱり無表情だ。大人の余裕がある。

 

「私からも改めて釘を刺しておきます。どこまで知ってるか知りませんが、北村くんのことは口外しないでください」

 

言われるまでもなく誰にも言わない。

しかしこう何度も口止めされるのは面白くない。

 

「おれ、そんなに信用できませんか」

 

担任は数瞬じっと見てくる。

ふっとその口元が緩む。この人の笑顔は珍しい。写真を撮ってコレクションに加えたい。

ポケットまで伸びた衝動は、なんとかギリギリで抑え込めた。

 

担任は俺の右手を凝視しつつ、「いいえ」と首を振る。

 

「即行で盲腸説流布したあなたが、今更喋るとは思ってません」

 

「じゃあなんでわざわざ念押すんですか」

 

「言うことに意味があるからです」

 

「分かるかな」と担任は小首を傾げた。

 

「どれだけ分かり切った事でも、言葉にするのが大切なんです。分かりあってるなんて、胸の中に留めてる内は妄想でしかありませんから」

 

「だからあなたも大切なことは言葉にしなさい。自己満足しちゃダメですよ」

 

担任は自分の言ったことに自己満足して、得意そうに頷いている。

我ながら良いこと言ったと自画自賛してそう。聞く俺は大まじめに頷いた。

 

「じゃあ頭撫でてください」

 

「セクハラ」

 

出席簿で叩かれた。「君は仕方ないですね」と呆れられる。

大切なことは言葉にしろって言ったのあんたじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みになって自分の席でサンドイッチを頬張っていた。

包装にはミックスサンドと書かれている。コンビニで買ったものだが、たった三切れぽっち入ってるだけで300円近くする。

安い弁当なら買える金額だ。もし学校に電子レンジがあったのなら迷わず弁当を選んだだろう。

 

しかし値段に文句はありつつも、サンドイッチはうまい。

偶に食べたくなる。その偶にが今日だったのだが、これからは食べたくなったら自分で作ろう。それぐらいなら出来るはずだ。

 

もそもそと食べ進め、時折牛乳でのどを潤す。

二切れ目を半分も食べた所で腹は満たされてきた。

世界が引っくり返ってからと言うものの、俺の食欲は日に日に減衰している。

以前と同じ量は受けつけない。今日は他に108円で買ったコッペパンもあるのだが、そちらに手を付けることはなさそうだ。もし手を付けたのならゲロる。何の意味もない。こちとら鵜じゃないんだから。

 

無人の北村席を見つめながら食べ進めていた。

一度手で口を抑えながら小さくゲップをする。

さあ、後一切れ。牛乳を吸いながらすでに何らかの訓練になりかけているのに気づいた。たぶん過食の訓練。もしくは細身に栄養は何処まで蓄えられるかの人体実験かもしれない。どっちにせよ良いものじゃない。

 

何となくサンドイッチに手が伸びず、ただ睨んで数分。

唐突に辺りの空気が変わった。話し声や足音などのざわめきが大きくなったような気がする。

その雰囲気は教室の外から漂ってきた。段々と近づいてくる。

 

扉が開く。

茶色い髪が目に映った。

 

「やっほ」

 

制服を着崩して、Yシャツのボタンは第二ボタンまで開けているらしい。

それを隠すように緩くネクタイをしていた。スカートの丈は短め。

自信に満ち満ちた瞳はまっすぐ俺を貫いている。主張の激しそうな顔だ。そいつは不敵に弧を描く笑顔はそのままで近づいてきた。

 

「こんにちは」

 

第一声は誰に言ったのか分からなかったが、今度は俺の目を見つめながら言って来た。俺に用があるらしい。

こいつの登場で周囲の空気は明らかに変わった。

主に俺に対する目が変わった。怨恨すら感じられるのはなぜなのか。

 

「その節はどうも」

 

「ん? どの節?」

 

「北村を運んだ節」

 

茶髪はニコッと笑う。

 

「大したことじゃないよ。調子悪い人がいたんだから、助けようとはするよ」

 

「必要なかったけどね」と同意を求めるように笑いかけてきた。

底なしに明るい奴だ。こいつの周りだけキラキラ輝いているように見える。

生徒会とか言う縁の下にいる身分では、ごてごてのイルミネーションで着飾っているようにすら見える。こんなのが何し来た。

 

「それよりここいいかな?」

 

今は亡き北村の席を指さしている。

「北村の席」と答えると「ならいいね」と座り込んだ。

背もたれに腕を置いて頬杖をかいている。もちろん、その視線は後に座っている俺に向いていた。

見つめられながら食事をすることの居心地の悪さと来たらない。

真正面からだけではなく背中にも無数の視線が突き刺さっていた。

視線に攻撃力があったら死んでる。この実感は生徒会に当選して以来久しぶりだった。

 

背後の視線に慄いている間、じっと人を観察するように見つめていた茶髪は、サンドイッチを指さして「食べないの?」と聞いてくる。

 

「食べる」

 

「じゃあ早く食べないと。しけるよ」

 

「はあ」

 

まあ言ってることはわかるけどさ。

食事はもっと落ち着いて取るもんだろ。見世物みたいなこんな状況で喉を通るとは思えない。ただでさえ腹はくちい。

 

サンドイッチを見て茶髪を見つめる。奴は小首を傾げた。無言のまま時は過ぎ、視線が強くなるばかりの時間が流れた。

一向に用件を言おうとしない茶髪にしびれを切らして、俺の方から聞いてみる。

 

「なんか用?」

 

「んー? んふふ。何だと思う?」

 

知らねえよ。問うならもっと情報をくれ。クイズ番組だって問題を告げてから答えを聞く。

とは言っても、いくら待っても状況は動かない。出題者である茶髪はこの状況を楽しんでいるように見える。

仕方ないので、こいつの言動を思い出しそれだと思える答えを導き出す。

「それだ!」と思える答えが一つだけあった。「馬鹿言え」と頭の片隅で異論が上がる。

本当に馬鹿げた答えだった。しかし他に考えられるものもない。

 

「腹減ってんの?」

 

「え?」

 

サンドイッチを差し出す。

 

「どうぞ」

 

「あ、どうも」

 

茶髪は素直に受け取った。

はむと頬張る。レタスを噛みちぎるシャキッと言う音が聞えた。

茶髪が口を動かすたび、シャキシャキと小気味のいい音がする。

ハムとレタスのコンビはサンドイッチにおいては王道だ。

俺が一番好きな具でもある。さらばハムレタス。

 

あっという間に全て食べきった茶髪は、唇に着いた汁を舌でペロッと舐めとった。

その仕草が妙に艶やかだった。

 

「もういいか?」

 

「ん、なにが?」

 

「用件」

 

「……あー」

 

困惑した表情は、すぐに納得の色に染まる。

髪を撫でつつ、言葉を探すように視線は斜め上に向けられた。

ふわっと香水だか何だかの人工系の香りが漂ってきた。

 

「ひょっとして私が食べ物ねだりに来たと思ってる?」

 

「違うのか」

 

「違うよ。私お弁当あるもん」

 

じゃあなんでサンドイッチ食べた。

返せよハムレタス。

 

「ん。返してほしそうな顔。でももう食べちゃったからなあ」

 

うーんと考えていた茶髪は何かを思いついて、にやっと挑発的に笑った。

 

「あ、でもまだ口の中に少しは残ってるかも」

 

言いながら身を寄せてくる。

言動から不穏な空気を感じた。接近されただけ身を引いた。

 

「む」

 

それが茶髪の癇に障ったらしい。

意地でも近づこうと椅子に膝立ちになって身を乗り出してきた。

俺は尻を浮かべて逃げの準備体勢になる。

 

俺の制服を掴もうと用意された手。

もしそれが少しでも伸びてこようものなら俺は駆けだしていただろう。

しかし茶髪はじっと俺の様子を観察して、結局椅子に座り込んだ。

目を閉じ、人差し指は虚空に円を描いている。

 

奇怪な行動の連続に、俺はもはやへっぴり腰になっていた。

近づくべきではない人種と言うものがこの世界にはいるだろう。

目の前のこいつがそうだ。

 

「押してダメなら引いてみろ、かな?」

 

呟く声。

引くというなら止めはしない。ぜひとも引いてくれ。

その間に俺は逃げるから。

 

「七瀬はさあ」

 

変わらない輝く笑顔。しかし俺の目には人の皮を被っている様に見えてきた。

あの笑顔の下には見るも恐ろしい化け物がいるに違いない。

 

「好きな人っているのかな?」

 

「話題の切り替わりが突飛すぎて着いていけない。続きはまた機会を改めて、この場はお引き取りをお願いしたい」

 

「私は今彼氏いないなんだけどねえ」

 

こいつは人の話を聞かない奴なんだろうか。

彼氏がいない発言で周囲のひそひそ声が勢いを増した。

誰か立候補してやれよ。こいつ引き取って下さい。

 

「もうすぐ夏じゃん。だから早いところ彼氏作っておきたくてね。一緒に海行ったりお祭り行ったり、夏ってイベント盛りだくさんでしょ? 楽しまなきゃ損だよね」

 

「否定はしない」

 

「ありがと。で、今私好きな人いないんだけど。もう時間ないし、少しでも気になる人いたら声かけちゃうよね。『私とかどうですか?』って」

 

「好きじゃないのに声かけるのか?」

 

「好きになるのに、いつどこでどうして、なんて理屈は必要ないんだって。ただ側にいる。それだけで好きになることもあるかもしれない。だからとりあえず付き合ってみて様子を見る。それも立派な恋人関係だと思うなあ」

 

付き合ってみてそれで好きになる、と言うのはわからないでもない言い分だった。

そう言う話は聞いたことがある。実体験は探せばいくらでも見つかるだろう。

ただ、こいつの場合は言い方が引っかかった。

 

「でも、側にいて好きになったことはないんだろ」

 

「ん? んふふ。なんで?」

 

笑顔はそのまま。でも口調に棘が生えた。

 

「勘」

 

「んふふふ」

 

笑顔なのに妙なプレッシャーを感じる。

笑ってるのに笑ってない。能面のような笑顔。

 

「――――よくわかったね」

 

太陽のような笑顔に険が生まれた。口調にも同じように。

転がせば涼やかな音色を奏でていたボールに不協和音が混じったようだった。

 

こっちが素なのか。普段は猫を被っているのか。

まだその判断はつかない。ただ綺麗なだけじゃないのは間違いなさそうだが。

 

「ねえ。放課後空いてる?」

 

さっきまでと微妙に違う声音で、茶髪は尋ねてくる。

空いているはずなんかない。

 

「生徒会がある」

 

「じゃあ明日の昼休み。どこかでご飯食べようよ」

 

「断る」

 

「んー」

 

茶髪は人差し指を顎に当てる。おどけるような調子で言った。

 

「私、いま他に気になる人いないんだよねえ。いたなら諦めても良かったんだけど。……ねえ?」

 

なにが「ねえ?」なのか。完全に脅す時の常套句じゃねえか。

ニヤッと嗜虐的な笑みを浮かべて、ひっそり声を落して囁いてくる。

 

「ストーカーになっちゃうかも。そしたら面倒じゃない? 毎回毎回こんな感じだよ」

 

顎でしゃくられ周囲を見ると、男の嫉妬の視線がかなりの数ある。

こいつに付き纏われるたび、男の顰蹙を買うことになるのか。

そんなことが続けば心象悪化は免れない。本格的にいじめられるかも。そうなったらそうなったでやりようはあるだろうけど。

 

「連絡先よこせ」

 

「話早くて助かるなあ」

 

アカウントを交換する。

 

「それじゃあ後はこれで連絡しよっか」

 

茶髪は携帯を弄りながら鼻唄でも歌いそうな上機嫌になった。

俺も登録する。えっと……。

 

「お前名前は?」

 

「……あれ、ご存じない?」

 

「水戸黄門で登録しとくわ」

 

「ちょっとやめて」

 

真顔だった。

今日初めて面皮剥がれたな。

 

「私は菊池由香。1年E組。以後よろしくね」

 

き、く、ち、ゆ、か、と。

これで苗字が水戸だったら面白かったのに。

 

「俺の名前は知ってるんだっけ?」

 

「七瀬でしょ。知らない方が珍しいよ」

 

いつの間にか有名人になってしまったなあ。

悪名ばかりが広がっていく。実際は人畜無害なのに。

 

「じゃあ、菊池。用件は終わりだな」

 

「本題はこっちでするからね」

 

丁度そのタイミングで携帯が震えた。

菊池からだった。

 

『私たち付き合わない?』

 

なんか段階一気にすっ飛ばしてきたな。

だけど、どうしようが言うことは一緒だ。返信してもいいが、大事なことは言葉で伝えよう。

 

「お断り」

 

「そ。それじゃあまた明日のお昼にでも」

 

「ばいばい」と手を振って菊池は教室を出て行った。

菊池がいなくなって一瞬静かになったクラスは、一気にひそひそ声が加速する。大体が俺を見ながら内緒話をしていた。

 

あいつは自分の人気を理解しつつ、それを無視できる胆力があるのだろうが、それに巻き込まれる方にしてみればたまったもんじゃない。

心の準備も出来ていない。こっちのことも少しは考えてほしい。

 

携帯にメッセージを書きこむ。

 

『やっぱりお断り』

 

既読はすぐについた。

返信はなかった。

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