鬼人達のドタバタ物語   作:ポストマン

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罪人達が導くは

~鴉天狗警察 本部~

 

「いきなり押し掛けて申し訳ありません鬼灯様」

「いえ、お役目ご苦労様です義経様。して、今日はいったいどのような?」

ここ閻魔庁に来られるとは、いったいどのような事があったのでしょうか?

「実は先日、大焼処にある伊邪那美殿にて器物損壊事件がありまして」

「器物損壊?」

「はい。破壊されたのは屋敷の入り口の柱、と言えばお分かりでしょうか?」

「柱、ということは」

「はい。柱に括られていた亡者が脱走しました。器物損壊のほうは我々が捜査しますが、亡者は鬼灯様に対処していただかなくてはなりませんので」

確かに、あの亡者達は私にすべての責任がありますからね。

「わかりました。亡者は私が何とかいたします。ちなみに、何人逃げたかわかりますか?」

「それでしたらわかります。一番外側の三人です」

外側の三人ですか…

位置から考えると、村長とその息子、それに…‼

「ど、どうかしましたか?」

「申し訳ありません、少し昔の事を思い出したたけです」

「そうですか。では、私はこれにて」

さて、それでは亡者狩りと参りますか。

「ん?そういえば確か今、焦熱地獄の辺りは…」

いけませんね、嫌な予感がしてきました。

 

 

 

~焦熱地獄~

 

「はい到着~、んじゃ二人とも衣装に着替えてね。終わったらすぐに撮影始めるから」

「わかりました」

「わかったにゃ~ん」

今日はここにドラマの撮影にやって来た。

まあこういう仕事はたまにあるからいいんだけど

「こっちの『獄卒・金盞花(キンセンカ)』の衣装が私ので、こっちの『獄卒・竜胆(リンドウ)』のがマキちゃんの衣装だね」

「ありがとうミキちゃん。じゃさっさと着替えちゃおっか」

そうして私達は楽屋代わりに建てられたテントに向かった。

まあ、ロケ朧車での着替えはダメって言われているからなんだけど。

「…これでいいかな?ミキちゃんは?」

「ちょっと待ってて。何か小物が多くて」

「じゃ、先に外行ってるね」

 

ガサガサッ ガツッ

 

「おまたせ、マキちゃん。あれ?マキちゃん?」

 

 

 

「あと一人、よりによってあいつですか」

何とかつかまえた村長親子を引摺りながら、最後の一人を探した。

「「グムー、ムグー!」」

しかしまあ、見苦しく抵抗しますね。

「ああ。その縄は黒縄地獄て使われている特別製です。多少擦れた位では切れませんよ」

そう言うと、親子はガックリとしてようやく大人しくなる。

「さて、あいつは何処に」

「あ、鬼灯様!」

後ろからの声に振り向くと、見知った二人が駆け寄ってきた。

「おやミキさん、マネージャーさん。どうしました?」

「ああすみません鬼灯様。実は、」

「マキちゃんが行方不明なんです!」

 

 

 

「ハア、ハア、ハア、ぜ、絶対逃げ切ってやる!」

ふと気が付くと、私はいつの間にかこの亡者に捕まって担がれていた。

しかもご丁寧にきっちり拘束されて。

「ンー、ンンー!」

「うるせぇ、黙れこの阿婆擦れが!」

「ンッ!」

いきなりの事に身をよじっていたからって、怖い顔で怒鳴らないで欲しい。

「へへっ、こいつさえいりゃあ、丁の奴も手は出せねぇ。いざとなりゃあ…」

さっきからイッた目で何かを呟くのやめてくれないかな!?

「もう少しだ、もう少しで俺は」

「終わりですよ。あなたは」

後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。

「ちっ、丁か!てめぇもう追い付きやがったか!」

「ええ。あなたで最後なんです。大人しく捕まって下さい」

そこには、金棒を突きつける鬼灯様がいた。

あれ?丁?

「それと、あなた達の解放した愚か者についても話していただきます」

「はっ、てめぇこそこいつが見えねえか!」

「ンンー!」

「ぐっ…」

鬼灯様は、私に突きつけられた刃物を見て、動きを止める。

「へっ、それでいいんだ。おら、その物騒な物を捨てな」

その言葉に、鬼灯様は金棒を投げ捨てた。

「言う通りにしましたよ。そろそろ彼女を離しなさい」

「誰が離すか!こいつにはまだまだ使い道があるからな!」

使い道ってなんなのよ!

「てめぇは其処で黙ってみてるんだな!てめぇの母親が死んだ時みてえによ!」

 

「!?」

その言葉に、私の中で封じ込めてきた記憶が蘇ってくる。

まだ幼かった私を養うために、仕方なく身体を売っていた母。

そして、そんな母を犯しながら殺したこの男…

「キサマアッ!」

「ひっ!?そ、そんな声出しても無駄だ!こいつが」

「マキちゃん!」

横からかけられた声に、あいつの意識がそれた。

「ンン!」

そしてその隙に、マキさんが背中に蹴りを入れる。

「グアッ!くそっ、この阿婆擦れが!」

「…そこまでです」

マキさんが背中を蹴って気を反らせた事で、ようやく捕まえる事が出来た。

「やめろ、離せ、離しやがれ!」

「マキちゃん!大丈夫!?」

「ンンン、ンンン!」

隣から聞こえた声に、少しだけ冷静さが戻ってくる。

「貴様にあの場所は温かったようですね」

「くそっ、あと少しだったのによ!またか、また俺を殺すのか!」

「ええ、殺します。斬った刺したは当たり前、焼いて潰して煮て揚げて、食わせて沈めて腐らせて。私の気がすむまで永遠に殺し続けます」

 

 

 

「私の気がすむまで永遠に殺し続けます」

物凄い殺気に、私達さえも動きが固まる。

向けられた本人は、すでに気絶して縛られている。

「さてマキさん、今日は本当に申し訳ありませんでした」

「えっ?」

「えっと、なんで鬼灯様が謝るんですか?マキちゃんが拐われたのは別に鬼灯様のせいじゃ」

「いえ、今回の事は確かに私の不手際によるものなのです」

「不手際って、亡者は地獄の管轄ですよね?なら、別に鬼灯様だけのせいじゃないじゃないですか」

ひょっとして管理責任ってやつのことかな?

「そうではないのです。あの亡者達に関しては地獄に関係しない存在なのです。私に全責任があるのです」

「そうなんですか?」

「ええ。そうなのです」

それだけ言うと、鬼灯様は口を閉ざす。

…うう、またしても沈黙が…

「じゃ、じゃあ私は他の皆に見つかったことを報告してきますね。鬼灯様、マキちゃんのことお願いしますね!」

「ちょ、ミキちゃん?!」

「じゃね~」

ほんとに帰っちゃったよ!

「では、私たちも帰りましょうか。送ります」

「あ、ありがとうございます」

 

帰り道。沈黙に耐えられなくなった私は、鬼灯様にあのことを聞いてみた。

「あの、鬼灯様。あの亡者、鬼灯様のことを丁って…」

「ああ、簡単なことです。あいつは私が人間だったころを知っていたのです」

「あの時の、ですか」

「そうです。特にあの男は私の母を殺した男であり、私が手にかけた最初の相手でもあります」

そう言われて、私は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った。

「ごめんなさい鬼灯様。聞いてはいけない事を」

「いえ、マキさんには以前恥ずかしいことを聞いていただきましたから。今更ですよ」

「そうですか」

「ええ、だから気にすることはありません」

鬼灯様…

「しかし本当、あなたに怪我がなくてよかったです」

そういいながらわずかに微笑む鬼灯様、ほんの少しだけ可愛く見えたのだった。

 

 

 

「ふう…」

大浴場の湯船につかりながら、今日の出来事を思い返す。

今日の誘拐騒ぎはおかしい所がいくつかあった。

あいつが持っていたナイフ、拘束に使われていたロープ、さらには脱走経路…

あのまま走って行けば、確かに焦熱地獄から脱走されていただろう。

「手に入らないもの、手に入らない情報。さらには見え隠れする黒幕らしき存在…」

「お、なんだ?今日の話か?」

「烏頭さん、それに蓬さん。いったいいつの間に?」

「いやいつの間にじゃないよ。鬼灯が考え事で俺たちに気づかなかっただけだよ」

「おやそうでしたか」

いけませんね、考えることに集中しすぎてましたか。

「すみません。それで、お二人はもう今日の話をご存知なのですか」

「まあある程度は聞いているよ。何でも誘拐されたピーチ・マキを助けたんだって?」

「んで、彼女の恋人になったって?」

「はあ…、そんなことあるわけないじゃないですか」

「またまたぁ、実は気になってるんだろ?」

「ありません」

まったくこいつは。

蓬さんも隣で呆れているじゃないですか。

「本当にか?付き合うことは絶対に無いと言えるか?」

「ええ、絶対に付き合うことは……」

絶対に……?

「もういいだろ烏頭。そろそろあがろうぜ」

「なんだよ、しゃーねーな。んじゃ、俺たちはそろそろ行くぜ」

「私はもう少しゆっくりしていきます」

なぜ、私は即断できなかったのか?

いつしか私は、その事に思考を巡らせていた。

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