旧ロウリア王国北部
ロウリア帝国帝都ジン・ハーク
ㅤ戦争の前まではロデニウス最強と名高かったものの敗戦により解体された哀れな国、ロウリア王国。
ㅤそんなかつての王国の名を引き継ぐこの帝国の帝都たるジン・ハーク中央付近に位置する皇帝の間にてロウリア王改めロウリア皇帝ハーク・ロウリア34世は椅子に座り、日本から輸入した書物を読みふけっていた。
(・・・まさか、余がまだこの世にとどまることができるとはな。)
ㅤ彼が再び皇帝として返り咲いた理由は、数日前に開かれた講和会議にあった。
ㅤロウリア王国降伏後、クワ・トイネ公国公都クワトイネで行われた講和会議においてロウリア王国は日独杭鍬4カ国で分割されることとなり、日本はジン・ハークやルーマを含む北部4分の1を手に入れた。
ㅤそこで日本はここにロウリア帝国と言う国を建国し、丁度捕虜として日本国内に拘置されていた彼を皇帝として据えたのである。
(・・・くそっ!命があるとはいえ、なんたる侮辱・・・!)
ㅤ彼は窓から見えるかつては自らのものだった王城・・・もとい、日本ロウリア総督府を見つめる。
ㅤ現状、あくまで『ロウリア国民により統治されるロウリア国民のための国』という肩書きだが実際に政権を握っているのは日本から派遣されてきたロウリア総督と呼ばれる者だ。
ㅤさらには二度と日本に対抗することができないように軍備にも制限がかけられている。
「なんということか・・・。」
ㅤかつてはロデニウスを統べんと兵を挙げ、実際にその力を伴っていた文明圏外の大国、ロウリア王国は日独らにより完全に分割されて主権国家としての地位を失った。
ㅤ・・・だが、深い悲しみに囚われている彼とは裏腹に笑いが止まらない者も居るのである。
クイラ王国 王都ダグドーバ
ㅤかつては不毛な大地と変な黒くドロドロした水に溢れており弱貧国とされていた国、クイラ王国。
ㅤそんな国の首都たるダグドーバはかつては弱貧国の名に恥じない簡素な街だったが、日独との交流を通じて立派な大都市へと変貌していた。
ㅤ街を貫く幹線道路。区画整備された街並み。
ㅤ恐らくロデニウスにおいてこの街に匹敵するのはクワ・トイネ公国の公都クワトイネだけであろう。
ㅤ見事弱貧国という汚名を返上したクイラ王国の国王、バラルカ・クイラは笑いが止まらなかった。
「対日、対独貿易は大幅な黒字。しかも日独のインフラとやらにより国内の生活水準は上がり放題。しかも悲願の豊かな大地も今回の戦争で見事手に入れることができた事により食料輸入は大幅に減った。
ㅤかつてない好景気・・・。それが、私の代で実現できたのか。」
ㅤと、言いながら彼は王国の新しい版図を眺める。
ㅤ彼の治めるクイラ王国はロデニウス南部の資源地帯と、ロウリア南部の穀倉地帯を含む大国へと変貌していた。
ㅤロウリアの食糧倉庫を併合したことで食料自給率も飛躍的に上がり、それでいて工業化に必要な資源は自国で山のように取れる。
ㅤこれで笑いが止まるわけがなかった。
「ふふふふふ。日本にドイツ様様だな。」
ㅤ軍事面も抜かりなく強化されており、現在は1号戦車の国産化を目指している。
だが、ゆくゆくは駆逐艦なる小型装甲艦や飛行機械も輸入する予定だ。
「我が国の未来は明るい・・・!」
ㅤ彼は、自らの代にこれだけ国が発展することを喜ばしく思い王国の未来に想いを馳せる。
ㅤ彼の妄想の中では強国としてロデニウスに君臨するクイラ王国があった。
クワ・トイネ公国 公都クワトイネ
クワ・トイネ公国の首相であるカナタは今、山のような業務に忙殺されていた。
彼の横に控える秘書の顔も疲労からか若干白っぽくなっている。
しかし、後から後から舞い込んでくる仕事のせいで全く休息が取れない。
かつてはロデニウスに残った3国内でロウリア以下クイラ以上とされていた国、クワ・トイネ公国。
その国土の土地柄、食糧には全く困らないため政情が安定していたこの国で、なにやら不穏な出来事が頻発していた。
「首相、ヤビヒ焼き討ち事件の詳細報告書が完成しました。」
「読め。」
「はっ!えー、5日前に締結された講和条約の内容を不服として民衆が暴徒化しヤビヒのリンスイ外務卿の邸宅や交番などが焼き討ちにされました。
リンスイ外務卿は無事でしたが邸宅に勤務していた奉公人及び交番に勤務していた警官合わせて23人が死亡しました。」
「む、むぅ・・・。」
5日前に締結された講和条約。これは言うまでもなくロデニウス戦争の講和条約のことだが、その内容が公国では大問題となった。
その内容は
『南部の2分の1はクイラ王国領とし、北側4分の1が日本領、さらに中央の4分の1がドイツ領となり、余ったギム周辺のちょこっとした平野はクワ・トイネ公国領。』
ㅤざっくらばんに説明すればこんな感じだろうか。
ㅤ大量に都市を落とし、敵軍を粉砕したクイラ王国に対して、日独軍に嫌味を言うとか肉壁となるくらいしか活躍できなかったクワ・トイネ公国に少しでも土地をくれたのが温情と見るべきだが、民衆はそんなことは知らない。
「又、戦闘に備え日独から小銃や弾薬を買い込んだ為に貿易の赤字が膨らみ、しかもそこで重要輸出相手国であったクイラ王国が食料自給率を大幅アップさせた為輸出が激減。さらにはロウリアから賠償金ももぎ取れなかった為に経済が大幅に悪化しています。
ㅤその為、国民生活も困窮気味であることが今回の暴動の発生に拍車をかけたと考えられています。」
ㅤこめかみを抑えつつ少し休憩を入れるカナタ。
ㅤ・・・まだまだ安寧の日々は手に入れられそうになかった。
作中登場国家解説
・ロウリア帝国
かつてのロウリア王国の北部4分の1を領土とする日本の傀儡帝国。
君主はハーク・ロウリア34世。
その立ち位置は蒙古国や満州国に近い。
・ロウリア鉄衛団
かつてのロウリア王国中部の4分の1を領土とするドイツの傀儡国。
最も占領統治が厳しいことで知られる。
・旧ロウリア王国南部
かつてのロウリア王国2分の1でリパなど大都市や穀倉地帯を有する。
現在はクイラ王国に併合されている。
・クワ・トイネ公国占領地域
面積は微々たる物。1番この国が不利益を被った。