フェン王国 首都アマノキ
ㅤ列強パーパルディアの恐るべき監査軍を、ワイバーンロードを日本軍が迎撃し全滅させた。
ㅤ目の前で起こったこの衝撃的過ぎる出来事はフェン王国の首都にいたすべての国の武官を放心状態にさせるには充分であった。
「な、何だあの魔導船は・・・。」
「あの列強のワイバーンロードを叩き落とした・・・だと?」
「ええっと、あの船が所属する国は・・・。」
「『大日本帝国』だ。なんでも、その日本と『ドイツ国』と言う国と国交を結べばクイラの様になれるらしい。」
「ほ、本当か?」
ㅤその情報を聞いた者達の頭の中では巨大な魔導船を有し、鉄の馬で地を駆け回る5年前とは変わり果てた姿になったクイラ王国軍の記憶が反芻されていた。
ㅤもしかしたら、パーパルディアを遥かに凌ぐ力を日本とドイツは有しているのかもしれない。
ㅤしかも、軍祭に来ていたのならば同じ文明圏外国でありフェンと仲が良いと思われる。
ㅤフェンと仲良くなり、あの2国とも仲良くなればパーパルディアの属国化を防げるかもしれない。
ㅤそこまで考えた文明圏外諸国の武官たちは直ちに本国に報告を開始したのであった。
ㅤ『フェン沖海戦』の後、大日本帝国やドイツ国にやってくる船が増えた。
ㅤ国交締結を求めてぞろぞろとやってくる文明圏外の国々は偶に問題を起こしながらも無事に日独と国交を締結。
ㅤ日独製の兵器のお値段の高さに瞠目するのであった。
パーパルディア皇国 第3外務局
ㅤ局長カイオスは脳の血管が切れるのではないか、と思えるほど怒っていた。
ㅤその原因は、信じられない内容の皇国監査軍の戦果報告である。
ㅤまず始めに空襲をする為ワイバーンロード隊がフェン王国王都に向かった。
ㅤ敵巨大船とフェン王城に攻撃を加え、命中。これはいい。
ㅤだがその後、『敵が我が方に反撃』という魔信を最後にワイバーンロード隊から連絡が途絶したのだ。
ㅤその後、何度呼び掛けても反応がないためワイバーンロード隊は全滅したと判断された。
ㅤこれはガハラの風龍が参戦したと当初は考えられたが、それならば風龍が攻撃してきた、と報告するだろうということでその可能性は排除されそして最終的に『原因不明』という結論に至った。
ㅤこの時、既にカイオスは怒り心頭といった様子であったがまだ監査軍の悲劇は続く。
ㅤその後、東洋艦隊からフェン王国艦隊を殲滅したと言う報告が入った。
ㅤ・・・最も大きな問題はその次だ。
『皇国監査軍東洋艦隊、全滅』
ㅤ第3外務局に激震が走った。
ㅤなんと帰還者0、帰還した船0。何が起こったのかも不明、敵が何でどの様な戦い方をするのかと言うことも含め全てが不明である。
ㅤ現地で指揮をしていた提督の報告から魔導砲を搭載していると言うことだけが唯一判明している。しかし、その直前に『敵船はこちらより大きいにも関わらずマストがなく、戦列艦よりも速度が速い』と言う気が触れたとしか思えない報告をしているため情報の確度は怪しいものだが。
ㅤ・・・だが、皇国の名に泥を塗った敵がいるのは事実である。
ㅤ次は監査軍では無く正規の、最新鋭の、本物のパーパルディア皇国軍が動くに違いない。
ㅤいくら旧式とはいえ列強たる我が国の戦力を下すとなると文明圏内国の支援を受けているか、同じ列強である可能性も高いだろう。
ㅤ第3外務局は『敵』を知るために行動を開始した。
パーパルディア皇国 第3外務局 窓口
「申し訳ございませんが、本日課長と会うことはできません。」
ㅤ大日本帝国外務省の職員達は、約束した日にちに第3外務局課長と会う為に窓口に来ていたが、また足止めを食らっていた。
「何故ですか⁈2週間後と約束していたではないですか!」
ㅤ外務局窓口のライタは興奮してまくし立てる客人を珍しく思いながら機械的に対応する。
「少々込み入った事態が発生いたしまして。文明圏外の新興国と会談をしている場合ではないのです。
ㅤ予定は未定です。また、そうですね・・・1ヶ月以上後にご連絡ください。」
「な、何だt」
「わかりました。」
ㅤ食ってかかろうとした部下を制止しながら外務省の担当、守口はさっさと第3外務局を出た。
『・・・という事でパーパルディア皇国は我が国を攻撃したことを把握していない、又は攻撃をしたにも関わらず謝る気は無いと思われます。』
ㅤパーパルディア皇国皇都エストシラントから少し離れた場所にある小さな港。そこには大日本帝国外務省が運用している客船があった。
ㅤその中の一角、電信機が設置されている部屋で守口は本国外務省と電信をしていた。
『開戦時期は少なくとも来年1月以降。それまではそこに留まり交渉を続けよ。』
ㅤこの言葉を読み終え、『了解』と返すと守口は電信機の電源を切り、椅子の上で体を伸ばす。
「さて、と。今は確か9月の・・・29、30日ぐらいか。・・・まだ最低でも3ヶ月はこんな国に留まり続けなきゃならねぇのかよ・・・。」
ㅤ守口は1つ大きなため息をついてから客船の自室へ戻っていった。
ㅤパーパルディア皇国の知らないところで状況は着々と悪い方向へ向かっていた。
フェン王国 王都アマノキ 天ノ樹城
「よし、漸く、日本を戦争に巻き込む事が出来そうだな・・・!」
ㅤフェン王国王城、天ノ樹城にて剣王シハンはガッツポーズをしながら喜んでいた。
ㅤその理由は本日、大日本帝国・ドイツ国とフェン王国間で結んだ条約にある。
ㅤこの条約では日舞、独舞間での国交締結に加え不可侵条約と『国内に2つドイツ軍用飛行場を建設すること』、『国内に日独海軍が使用できる軍港の建設を許可すること』が含まれていた。
ㅤ・・・それ即ち、まだ明言はしていないが『パーパルディア皇国との戦争の中継拠点としてフェン王国を使う』という事であろう。
ㅤ少し前の日本海軍襲撃事件以降予想以上に日舞関係は冷え込んでいた為日本を戦争に巻き込むのは不可能と判断していたフェン王国側からすれば正に天から垂らされた蜘蛛の糸であった。
「これで何とか勝ち目が見えてきたな・・・。」
ㅤシハンは安堵のため息をついてから座布団に座り込んだ。
フェン王国との条約締結の少し前
ドイツ国 総統大本営
「では、これより会議を始めます。」
ㅤヒトラーの補佐役であるアルフレート・ヨードル上級大将の号令を受けてヒトラーや数多の重鎮たちを集めた会議が開始された。
「先ず始めに、国防軍防諜部からの『日本の動向』を説明させていただきます。」
「『日本国内では民間人の間でパーパルディア憎しの声が高まっており政府も軍部に尻を叩かれる形でその声に応えようとしている。
ㅤ既に一部の艦隊、陸軍部隊に動きがあり、最早日波関係は修復不能な状態にまでなっていると思われる。
ㅤまた、開戦時期は諸々の準備を含めて少なくとも来年1月以降と予測される』
との事です。」
ㅤヨードル上級大将の音読を聞いたヒトラーは少しだけ悩み、一言だけ発した。
「不味いな・・・。」
ㅤ彼の言葉に多くの者が頷く。
ㅤしかし、その『不味さ』は列強との戦闘について・・・ではなく、パーパルディア戦後についての不味さである。
(このままでは日本は『列強を打ち破れる力を持つ驚異の新興国』として見られるだろう。・・・だが、我が国はその座に着けるのか?)
ㅤ今の所、ドイツ軍はロウリア戦でも日本軍の補佐に当たっていた為影が薄い。
ㅤそんな状況でこのパーパルディア戦に参戦しない、となれば世界はドイツを『日本と協力すればロウリアに勝てる』程度の国と判断するかもしれない。
ㅤ・・・下手をすれば日本の保護国、最悪傀儡国と見られるかもしれない。
ㅤそれは不味い。非常に不味い。
「・・・このままでは、日本ばかりが国際的な影響力を持ち、我が国は取り残されてしまうだろう。
ㅤそれを防ぐためにも我が国は近いうちに始まると思われる日波戦争に参加しようと思うが、異議はあるか?」
ㅤヒトラーが会議に参加した全員に問いかけると、皆一様に肯定の意を示した。
ドイツ国防軍空軍総司令部
「むぅ・・・これはどうするべき、か。」
ㅤドイツ国防空軍総司令官、ヘルマン・ゲーリングの副官、ボーデンシャッツはとても困っていた。
ㅤ彼がとても困っている理由、それは『航空機の輸送方法』である。
ㅤ陸続きであった対仏戦や対ソ戦。海峡を挟んでいるとはいえ極めて距離が近く占領地から出撃し攻撃して帰ってこれたバトル・オブ・ブリテン。
ㅤこれまでドイツ軍が経験した戦争では全て『海を越えて』航空機を輸送する必要が全くなかった。
ㅤしかし、今度参戦が決定したパーパルディア皇国戦では少なくとも1000㎞以上離れたパーパルディア皇国本土まで向かわなければならないのだ。
ㅤ・・・最新鋭のジェット戦闘機、Ta183やレシプロ機であるDo335ならば一応行って帰ってくることはできるが、それは飽くまで『往復が出来るだけ』であり戦闘行動は計算に入れていない。
ㅤだがドイツ海軍では現状航空母艦みたいな豪華なものは少なくとも来年の夏以降まで手に入らないし、輸送船も陸軍二個師団を輸送するので精一杯だ。
ㅤ・・・要するに、航空機を遠く離れたパーパルディアまで輸送することができないのである。
「参ったな・・・。」
ㅤこの後、ボーデンシャッツはフェン王国に前線基地を建設をすることを思いつきヒトラーに提案。
ㅤこの飛行場の管理権を争い空海軍でまた一頓着があったがそれはまた別の話。
パーパルディアの属国化を免れても日本とドイツの属国になる模様。
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作中用語補足 新世界各国の略称
クイラ王国→杭
クワ・トイネ公国→鍬
フェン王国→舞
パーパルディア皇国→波
アルタラス王国→亜