彼・・・女・・・?UMAの一種ですか・・・?
ムー 政治部会
ㅤパーパルディア皇国と大日本帝国・ドイツ国。
ㅤこの両陣営どちらとも国交を有するムーでは今回の戦争ーーー通称、『大東洋戦争』においてどちらに観戦武官を派遣するかで会議が行われていた。
ㅤ負ける側に武官を派遣してしまうと、戦闘に巻き込まれ死亡する可能性が高くなる。
ㅤ優秀な武官の死亡は国家の損失である。派遣先は慎重に見極めなければならない。
ㅤ仮にムーが観戦武官を派遣したいと要請すればどちらも了承するはずだ。
ㅤ空軍参謀がマイラスを含む日本人・ドイツ人と接した者達からの報告と幹部たちからの意見をまとめた資料を提示しつつプレゼンをする。
ㅤその中にはこっそりと撮られた日本とドイツの戦闘艦の写真もあった。
「ーーー以上の報告から勘定するに大日本帝国及びドイツ国は高度な機械文明を有しており、我が国に匹敵する技術力があり部分的には我が国を上回る物さえあります。観戦武官はドイツと日本に派遣したいと思うがよろしいか。」
ㅤその後は少々問答をしつつ、ムーは日本とドイツに観戦武官を派遣する事を決定した。
ㅤムー空軍基地のアイナンク空港を飛び立って5日。
ㅤマイラスは祖国ムーから遠く離れた大東洋の文明圏外国、ドイツ国付近の上空を飛行していた。
ㅤそろそろこの旅客機『ラ・カオス』はドイツ国の領空に侵入する為、ここから先はドイツ空軍の護衛がつくらしい。
「どんな戦闘機が来るんだろう?」
ㅤドイツに渡った友人からドイツも飛行機械を有しているという話を聞いていたマイラスは興奮していたが、同じ技術士官のラッサンは冷めていた。
「どうせ大した事は無いだろうよ。・・・所詮はこんな、文明圏外のド田舎だ。」
「君もドイツの戦闘艦の写真は見ただろう?あれは少なくとも我が国に匹敵する技術が使われている。憶測だけで軽視しているとろくな事がないぞ。」
ㅤどうやらラッサンは派遣先がこんなところという事が気に入らないようだ。
「頼むからそういう態度を見せるのは私だけにしておいてくれよ・・・。」
ㅤマイラスがラッサンに釘を刺した瞬間、機内にいても分かるほどの轟音が何回か聞こえた。
「な、なんだ⁈」
ㅤ2人は条件反射的に窓の外を確認し、瞠目した。
「な、何だあれは!!プロペラが無いぞ⁈どうなっているんだ⁈」
ㅤラッサンは自分が理解できない目の前の飛行物体に恐れを抱く。
ㅤ2人を乗せた『ラ・カオス』はドイツ国防空軍のジェット戦闘機、Ta183に先導されつつ徐々に目的地に近づいていった。
ㅤドイツ国の首都、ベルリンのテーゲル空軍飛行場に降り立ったマイラス達はその異様な光景に終始瞠目していた。
ㅤコンクリートで整備された近代的な滑走路の脇には文明圏外国らしいワイバーン・・・ではなく、超技術の産物である先程のような、プロペラのない謎の飛行機とプロペラがついた単葉機がずらりと並べられている。
ㅤそのどれもが未だムーでは試作どころか設計すらできていないものである事は技術士官である彼らからすれば一目瞭然である。
ㅤしかも外に見える街では内燃機関を搭載した車が走り回っており、列強パーパルディア皇国と戦争中にもかかわらず市民達が恐怖に怯えている様子もない。
『本当にここは文明圏外国なのだろうか』
ㅤマイラス達に一抹の不安が湧き出した時、前から1人の男が歩いてきた。
「お待ちしておりました。ドイツ国外務省のメンデルと申します。
ㅤ本日より皆様のご案内を担当いたします。以後お見知り置きを。」
ㅤ黒くパリッとした民族衣装に身を包んだドイツ国の外交官の挨拶に対してマイラス達は返事をしつつ、この異常な文明圏外国の空軍基地を眺めていた。
「総統閣下、ムー国の技術士官の皆様が到着しました。」
「そうか。」
ㅤ夕方の総統官邸。
ㅤドイツ国の首都にしてこの世界でも一、二を争う大都会、ベルリンに建つこの建物の二階にある自らの私室で報告を受けたヒトラーは満足気に頷く。
「現在、外務省の担当者により一階のレセプションホールにて滞在期間の予定について説明しております。」
「列強、ムーの技術士官、か・・・。とても良いタイミングで来てくれたものだな。」
ㅤ復興が進み、活気に満ち溢れた首都ベルリンを窓から眺めつつヒトラーは語る。
ㅤその意を汲んだ秘書官はヒトラーに同意の言葉を送った。
ㅤベルリンの街は綺麗な夕焼け色に染まっていた・・・。
「これは・・・想像以上だな・・・。」
ㅤベルリンのとあるホテルにて、ムーの技術士官であるマイラスは同僚のラッサンと共にドイツの空軍基地で見かけた驚異の飛行機械について話し合っていた。
「プロペラが前後に2つついていたり、そもそもプロペラがなかったり・・・何が何やら。」
ㅤラッサンが首を振る。
ㅤマイラスもマイラスでドイツ軍の、特にプロペラのない航空機はどのようなエンジンを積んでいるのか、そしてそれはどのように設計されているのか皆目見当もつかなかった。
「・・・まぁ、それらがどのように戦闘をするかは明後日『戦車』と言う謎の兵器と共に演習で見せてくれると言うじゃないか。
ㅤそれに、明日は新造艦の竣工式に立ち会わせてくれるという。」
ㅤマイラスは眼を輝かせながら言う。
「そうだな。この国の総統閣下はなかなかに太っ腹なようだ。」
ㅤそして、2人は明日に備えてベッドに入った。
ㅤ翌日。
ㅤ綺麗に晴れたドイツ北部の造船所。
ㅤ雲ひとつない蒼空はこの日竣工するこの船を祝福しているかのようだ。
ㅤ奥にはドイツ海軍元帥のレーダー提督や国家啓蒙・宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルス、そしてドイツ国総統、アドルフ・ヒトラー、とドイツ国の要人が一堂に会していた。
「この船は我らがアーリア人の叡智と技術を結集・・・」
ㅤヒトラーの演説はマイクを通じて式典の会場に響き渡るが、マイラス達の耳にはそれは全く届いていなかった。
ㅤそう、彼らの目は目前の巨大『空母』に眼を奪われていたのである。
ㅤそれはドイツ国防海軍所属の中型空母、その名も『バロン・リヒトフォーフェン』。
ㅤ商船改造空母にして、ドイツ初の航空母艦である。
グラーフ・ツェッペリンだと思った?残念!オリジナル艦でした!
テーゲル飛行場は転移後に開設されました。ほら、こう・・・首都防空的な・・・ね?
決してベルリン付近の飛行場が見つからなかったからとかそういうことではないです。はい。
作中オリジナル兵器解説
・バロン・リヒトフォーフェン
1943年(中央歴1640年)就役。
ドイツ国防海軍の空母。地味に隼鷹並みの大きさである。
一刻も早く航空母艦を大量生産する為に日本の神戸港から帰国した客船シャルンホルストを改造して作られた。
ジェット機運用を想定し甲板は装甲に覆われている。
裏ではやれ上陸支援船にするだのやれ空軍が管理するだの一頓着あったらしい。
史実の日本海軍の神鷹とは異なりに格納庫は上下二層設置され、飛鷹型に匹敵する搭載数を誇る。
スペックはオリジナル兵器解説参照