終わりの始まり
ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城御前会議
ㅤロデニウス大陸の西半分を占め、人口3800万人に達する大国、ロウリア王国。
ㅤこの国の首都である三重壁に囲まれた荘厳な都市、ジン・ハークにある美しい城の中でこの国の命運を決めた重要な会議が行われようとしていた。
「これより会議を始めます。」
ㅤ宰相マオスが号令をかけ、王のお言葉を拝聴する。
ㅤ多くの者が王のもったいなきお言葉に恐縮する中、王により会議が次の段階に進められた。
ㅤマオスが会議の進行計画に則り今回の作戦運営責任者の将軍パタジンに対して話しかける。
「まず・・・ロデニウス大陸の統一は目前です。ただ、クワ・トイネ公国とクイラ王国には深い絆があります。同盟を結んでいると言っても差し支えないほどに。
ㅤしかも、それに加えてクワ・トイネ公国と安全保障条約を結んでいる日本やドイツも参戦してくるでしょう。
つまり・・・我が国がクワ・トイネ公国に戦争を仕掛けると、合計4カ国を敵に回すことになります。
・・・将軍は、4国を相手にしても、勝てる見込みはあると思いますか?」
ㅤ会議室が極度の緊張に包まれる。
ㅤ隣に座るものの呼吸、頬を伝う汗の音。それら全てが聞こえるようだ。
ㅤ今まで、ロウリア王国は数多くの侵略戦争を起こしその度に勝利し、併吞してきた。
ㅤだが、その中でも決して二国以上を一度に敵に回したことはない。二国以上を敵に回すと数の暴力で押し切られるかもしれないからである。
ㅤだが、今回は二国どころかその2倍の4カ国を相手にすることとなる。
ㅤ1に対して4という数はあまりにも、多い。
ㅤ周りが緊張を持って将軍パタジンを見つめると、パタジンは自信に満ちた口調で応える。
「一国は農民の集まり、もう一国は不毛の貧国。
ㅤ後の2つは農民の集まりに安全を保障してもらうワイバーンを知らぬ蛮族。農民と貧民は亜人比率が高く、結束は弱いでしょう。
ㅤ敵が4カ国だろうが質ににおいても数においても我が国の優位は揺るぎない。宰相、安心召されよ。」
「わかりました。」
ㅤマオスが返事をしてから座る。
ㅤその後、黒いローブに身を包んだ奇怪な男に邪魔をされながらも会議は無事に進んだ。
「今宵は我が人生最高の日だ!!クワ・トイネ公国以下四カ国への宣戦布告を許可する!」
「ははーーっ!!」
ㅤこの場において、誰一人として祖国の勝利を疑っていなかった。皆が皆、残った4国を制圧しロデニウスを統一したロウリアを夢想する。
ㅤだが、彼らは致命的な間違いを犯していた。
ㅤ彼らは、
クワ・トイネ公国
ロウリア王国との国境付近の街 ギム
「ふぁぁぁぁぁーーー・・・・。」
ㅤ大きな大きな欠伸をしながらいつも通りの見張り台に登る一人の男。
ㅤクワ・トイネ公国西部方面騎士団の制服に身を包んだこの男、ボウゴは自らの得物を持ちつつ見張所に立っていた。
「眠い・・・まだ朝の・・・何時だ?」
ㅤ太陽の方を見ながらぶつくさ文句を垂れる。
ㅤ冬とはいえ未だ太陽も上りきらない時刻に起きて見張りをしなければならないというのもなかなか辛いものである。
「くっそーギリンエの奴、俺の横でグースカいびきかきやがって・・・。」
ㅤ眠い目をこすりつつ、日本から輸入されてきたという双眼鏡を覗いて索敵を開始する。
そこには、いつもと変わらない平原がーーー
「ッ⁈」
ㅤそんな根拠のない想いは粉々に打ち砕かれる。
ㅤ蠢く人、人、人。その誰もがロウリア軍の軍装を身につけている。
ㅤ先程までの眠気は吹き飛び、一気に目が冴えていくのを感じる。
「ろ、ろ、ろ、ロウリア軍だぁぁぁぁぁ!!!!」
ㅤ大慌てで見張り台に据え付けられている鐘を鳴らしつつ、魔信で騎士団司令部に通報する。
「こちら第二見張り塔!前方の平原にロウリア軍を多数確認!総兵力はーー・・・おおよそ3万!」
ㅤこの情報は瞬く間に公都クワ・トイネにも伝えられるのであった。
ㅤ太陽がようやく空に顔を出し、外が明るくなってくる。
ㅤ鳥の囀りと風の音が聞こえ、1日の始まりを告げる。
ㅤここは、クワ・トイネ公国大日本帝国大使館。
ㅤ日本大使である森近は朝っぱらから何やら嫌な予感に苛まれていた。
(なんだろうか、この予感は・・・。この独特の悪寒。これはまるで、独逸のポーランド侵攻の日の様な・・・なんとも言えない嫌な予感がする。)
ㅤ森近は窓から何と無く国境の方ーーーーギム、と呼ばれている街がある方を見つめるのであった。
本格的な戦闘は多分次次回くらいになると思います。
もうしばらくお待ち下さい。