明けましておめでとうございます。
持てる全ての祈祷力を注ぎ込んで引いたFGO福袋。物欲センサーが反応したのか、目当てのキャラを引くことはできませんでした。マーリン欲しかった・・・。
そんなわけで大空魔術編、スタートです。
『正座』
元々は神道での神、仏教で仏像を拝む場合や征夷大将軍にひれ伏す場合にのみとられた姿勢であった。日常生活においては武士はもちろん、女性も胡坐・立膝で座ることが普通だった。
それが庶民にも浸透したのは江戸時代、参勤交代にて全国から集まった大名達が全員市将軍に向かって正座をすることが決められ、そこから各大名の領地に広がった。この時期に、庶民の生活にも畳が使用されるようになったことも、正座の普及を後押しした。16世紀後半には、下級武士や農民まで浸透していたという。
現在は、胡坐で座ることはくだけた座り方だとされ、公式の場においては不適切であるとの認識が高い。高齢者や足に持病を抱えている者には配慮があるが、男女ともに正座が
改まった座り方だと周知されている。
科学世紀となってからは規模が縮小したとはいえ伝統的な日本の茶道、日本舞踏などの芸道や武道、神道では必須の作法であり、神事・仏事等に参列する際は正座をすることが常識である。
ここで逸話を紹介する。参勤交代で正座が広まった理由の一つに『徳川家光が小心者だった』という説がある。
言うまでもなく、参勤交代は地方で所領を構える大名に財政的な負担を強いることで謀反の芽を潰す目的の元、制定されたものだ。しかしながら江戸に赴いた家臣と顔を合わせる必要があり、その場で万が一のことが起こらないとも限らない。
そこで考え出したのが、参勤交代に赴いた家臣に正座を強いるやり方だ。正座を長時間した事がある人なら必ず共感するであろう症状、足のしびれ。立とうとしても力が入らずにもつれて転んでしまったり、つつかれただけで悶絶してしまった経験を持つ者は少なくないだろう。
それを利用し、謁見までの時間ずっと正座でいることを指示して顔合わせの際に立ち上がれない状況を作る・・・という何とも笑えてしまう逸話が存在している。
真実であるかどうかなど分からないし随分と滑稽な話であるが、仮に事実だったとしても私は家光公を小心者だとは思わない。戦国の世が終わって間もない時世、徳川に恨みを持つ者は数えるのが馬鹿らしくなるほどいただろう。命を狙われている立場・・・・・・常に警戒心を持つ心構えを誰が責められようか。
嘘か誠か、真相は時代の中に埋もれたエピソードは置いておいて、正座にはもう一つの側面が存在する。
それは・・・・・・
「・・・・・・あの」
「誰が口開いて良いっていったのかしら?」
「はい」
暑い夏の日差しが降り注ぐ京都。それを感じさせない空調の効いた図書館の一角に二人の少女が陣取っていた。
片方は仁王立ちする金髪の少女、マエリベリー・ハーンである。薄手のワンピースを身に纏った上で腕を組む体勢をしているため、去年よりさらに豊満になった胸部が惜しげもなく強調されている。美貌に関しても胸部以上に留まることを知らず、先日行われた大学主催のミスコンで満場一致の優勝に輝いたことは記憶に新しい。
最近は告白回数と同じくらい、スカウトの申し出があったと聞いている。私にはないのに。非公式のファンクラブもいくつか出来ているとの噂が耳に入ってきてる。私のはないのに。
そんな立っているだけで人が集まるレベル彼女なのだが、本日は何故か寄ってくる者はいない。それどころか、私たちの存在に気付いたものから逃げるように立ち去っていくのだ。
摩訶不思議な現象、オカルトだと考える人もいるだろう。しかしこの私、宇佐見蓮子の手にかかれば簡単に解決出来てしまう。その手掛かりは、今の私の状態に隠されている。
正座。
私が今とっている体勢である。日本最候補と言われる酉京都大学の伝統ある図書館で、私がとっている体勢である。
ちらっと顔を上げると笑顔のメリーと目が合った。あ、アカンやつやこれ。すぐに目を下ろし、姿勢を正す。プログラムされた温度管理による快適な空間にいるはずなのに、先ほどから冷や汗が止まらない。一瞬メリーの背後に毘沙門天のオーラが見えた気がするがきっと見間違いだろう。見間違いであってほしい、頼むから。
休日の昼下がり、なぜ私がこんな目に遭っているか。一言でいえば私の自業自得である。
学部の違う私たちだが、共通で受けている講義も存在する。その中の一つからレポート課題が出されたのだ。テーマ指定なし、文字数制限なしの完全自由という酉京都大学ならではの内容である。
提出締め切りまではまだだま余裕があるとはいえ、配点が結構大きい今回のレポート。テーマの選定段階からメリーの助けを借りようと思い相談、本日の朝10時に集合する約束を取り付けたのだ。
起きたら何故か12時だった。
初めに目に飛び込んできたスマホの時刻をまじまじと見つめる私。びっしりと連なる不在着信の表示が画面中央を占拠している。
心が無の状態になったまま電話をかけ直す。2コール目で繋がった相手からは一言、
「待ってるから来なさい」
と抑揚の感じないお声を頂いた。目覚ましの設定をかけ忘れていたと気づいたのは、それから10秒後のことだった。
かくして今の状況と相成った。全速力でアパートから集合場所に駆け付けた私の目に飛び込んできたのは、すっごくいい笑顔で手を振っているメリーの姿だった。
「蓮子~こっちこっち~」
全く感情が籠っていない声だった。電話口で聞いた時より数段ヤバさが増していた。振っている手が死神の手招きに見えてしまった。
メリーは到着した私の腕をガシッと掴んで図書館内に連行していく。計2時間30分の遅刻という区間新記録を打ち立てたことで、既に私の決定権および発言権はほぼ無くなっている。もしかすれば生存権も危ういかもしれない。
腕をしっかりと絡ませて歩いていることで周りから視線を集めているのだが、メリーから発せられるオーラを感じたのかサッと目を逸らして足早に去っていく。美人が怒ると怖いと言うが、奇しくも私は何度かその言葉を身をもって実感している。何故懲りないのだろうか。
そして現在、本当なら和気あいあいとレポートを進めていたであろう時間帯に、ひんやりとした床の上に座している。メリーは相変わらずの笑顔だ。怖くてまともに顔を見れない。もし今の状態のメリーに気軽に話しかけられる人物がいたなら、私はその人を勇者と呼ぼう。
「れーんこ、どうやったら貴方が呼び出した用事に2時間以上も遅刻することができるのかしら?メリーさんとっても不思議だなあー」
「・・・あの、この件に関しましては誠に「関しましては?」失礼しましたこの件に関しましても誠に申し訳ありませんと言う他なく心からの謝罪でしか誠意を示せない事は私の不徳を如実に表したものでありましてその・・・」
言葉選びをミスったら死ぬ。いつ切れるか分からない、というよりは既に切れているかもしれないメリーの堪忍袋に全神経を集中させて、この状況を乗り切る打開策を全力で模索していた。
季節は夏。彼岸の季節に咲いていた桜は散り、深緑の葉が京都の町を彩る。
東京での邂逅から4か月近くが経過した。八雲さんとの顔合わせを約束してくれた四季映姫さん。彼女からの連絡は、まだない。
閑話のキャラをちまちま追加していたら、予想以上に増えていました。ここまで来たら全キャラコンプリートを目指そうかなと考えている今日この頃です。