《リメイク》とある科学の確率操作   作:々々

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改変だけなので更新は結構早いです。
流れとか台詞とかは大きく変わるので、リメイク前なんてあってないようなものです。





とある木原の交流関係

 夏休み前の休日。風紀委員の支部の活動は本部の仕事を優先するため休み――という体裁で支部の活動をサボっていた。

 そろそろ()()()の中枢を担う者達が活動を始める。能動的ではなく受動的に行動させることになるが、そんな違いはプランには関係ない。過程ではなく、結果が大切なのだ。

 

「こちら木原何か用か?」

 

 高校2年生の分数としてではなく、木原としての科学者として行動する為の自己暗示を含めた言葉で、掛かってきた電話を出る。

 木原としての性質は捨てたと自分では言っているのに、この様に意識の切り替えに用いている自分に嫌気が差す。

 

『確率操作、そろそろ幻想御手(レベルアッパー)の使用数が目標数に達する。そちらは手筈通り頼む』

 

 電話の向こうの相手は(ちまた)を騒がせる幻想御手の首謀者であり、木原はその手伝いをした協力者であった。

 風紀委員としての身分を知っている相手は、こんな事に協力していいのかと思いもした。だが、木原によって安全性が高められた幻想御手は障害の残らない一時的な意識不明、及びその際に病院に運ばれるように仕組まれている。

 なによりこれは、将来的な計画の中で大きな役割を担うモノを作るために必要になる。その為には能力を使った事による得られる感覚が何よりの重要であった。

 

「分かりました。監視の目をそちらに向けさせる為に、大立ち回りを依頼する事になりますが大丈夫ですか?」

 

『その位十分承知だ』

 

「なら後は何も言いません。頑張ってください」

 

 避暑のために貸し切りの室内プールで一連のやり取りを終えた木原は脇のテーブルに置いた飲み物を飲み干す。

 

「へぇ。十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人なんて言葉もあるけど、言葉通りになったわね」

 

「うるせ」

 

 空になったコップを声を掛けてきた女性に投げるが、能力によって防がれてしまう。予めそうなる事を分かっていたため、悔しがる事なく木原は携帯を弄り始めた。

 

「あの時の狂犬みたいな木原はどこに行ったのやら、今なんて只の学園都市の犬じゃない」

 

「学園都市の最たる例(暗部)にそう言われる筋合いは無いんだけどね」

 

「随分言うじゃない? ()る気?」

 

「数多の野郎と同じ台詞になって癪だが、誰が麦野の能力開発をしたと思ってる? そんなに自壊も辞さないハチャメチャな能力なんざ、演算一つ狂わせるだけで死ぬぞ?」

 

 舌打ちを残し、麦野はラッシュガードを脱ぎ捨てプールに飛び込んだ。防水携帯のため真正面から水飛沫を受けながらも、携帯をいじり続ける。

 

「結局麦野も木原も子供なわけ」

 

「やっぱりぶそくだ」

 

「滝壺さんの言う事は超本当だったんですね」

 

 麦野に続いてフレンダ、滝壺、絹旗もプールサイドにやって来る。店員に持って越させた水を飲み、そろそろ帰るかと呟く。

 

「私たちが来たからって帰るつもり?」

 

「元々アイテムの名前を騙って借りてたんだ、本人たちが登場したら居なくなるのが筋だろ?」

 

「結局それを知っててあえて言ってるんだけど」

 

「媚を売るなら相手くらいちゃんとした奴にしろよ。俺なんぞに売ったところで見返りなんか無いぞ」

 

 自慢の脚線美を見せつけるようなビキニを着たフレンダは木原の座るビーチチェアに共に腰を掛ける。顔を顰めて離れようとする木原を掴み、あまりない谷間に腕をくっつける。

 

「んで、何が欲しいんだ?」

 

「そんな風に折れるんなら、結局最初から素直になるのがおすすめってこと」

 

「何様のつもりだ?」

 

「誰もが羨むフレンダ様って訳」

 

「フレンダは超ビッチだったんですね」

 

「大丈夫だよ、ふれんだ。私はそんなふれんだを遠くから見守ってるから」

 

 何だかんだ面倒臭がって逃げるのを諦めている内にフレンダだけでなく、他の二人にも囲まれてしまっていた。

 アイテムは美女揃いだ、大抵の表の男は簡単に落ちてしまうだろう。だが一度裏に堕ちた者は恐怖し、裏にどっぷりと浸かっていた木原にとっては良く絡んでくる子供に過ぎなかった。

 額に手を当てため息を漏らす。

 

「んな風に心配しなくたって、俺は麦野を殺したりはしないさ。俺が最後まで面倒を見てやれなかったってのも負い目としてあるからな」

 

「随分と麦野には超優しいんですね」

 

「まぁ、暗部と決別しない限りは、最終的にどうするかは分からないけどな」

 

 三人に囲まれ面倒になった木原は能力を使いこの場から離脱した。

 ちょうどその時を見計らって、プールから上がってきた麦野は髪をかき上げ皆のもとに歩いて来る。

 

「……あのバカ何か言ってた?」

 

「『アイツは俺の大切な人だ。一生大事にする』って言ってたわけ」

 

「はぁ?」

 

 どうも二人の間に何かしらの甘い話があると信じて疑わないフレンダの戯言に、髪をかき上げた手を額に当てため息を漏らす。その姿はさっきまでいた木原と同じであったが、そこを指摘すると極太の原子崩し(メルトダウナー)が照れ隠しとして飛んでくる為、全員が声に出さないように努める。

 

「やっぱり最近の木原はつまらないわね、昔なら引っ付きに来たフレンダの上半身と下半身とが泣き別れてたわ」

 

「え?」

 

「そんな事も知らずにやってたんですか。超馬鹿ですね」

 

 恐怖で体を震えさせるフレンダを尻目に、話に加わっていない滝壺はプールで力を抜いてプカプカと浮かんでいる。

 フレンダが木原と会ったのは、木原が『木原を辞めた』と自称してからだ。

 

 木原特有の『実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す』方法に無駄を感じ、実験体を浪費する実験を止め、別の方向へとシフトさせた分数は木原一族から除名された。

 などと虚実入り乱れた事を言う前の木原は、木原の中の木原。『確率』と『境界』を司っていた彼は、邪魔者ならば善悪構わず殺し、世界は自分の為だけに廻っていると真顔で謳っていた。

 

「今となってはそんな面影消してるつもりだけど。張り合いがなくて、こっちまで調子がおかしくなる」

 

 丸くなったように見える木原。だが麦野はその裏に隠されている、昔よりも濃い闇があると考えている。

 

 

 

 

 

 

「そんな姿でここを訪れるなんて中々ユーモアが効いているじゃないか」

 

 木原が海パンに薄手のパーカーのまま離脱した先は、学園都市第七学区に存在する窓のないビル。

 部屋の中心でビーカーの中に逆さに浮かぶ、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』を前に普段と変わらない表情を浮かべる。

 男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる声で木原に話しかける。

 

「そろそろプランが本格的に動き出すと思って、何となく声を掛けようと思ってさ。自分は動かないけど、学園都市の中を結構引っ掻き回すんでしょ?」

 

 『人間』が静かに首を縦に振る。

 

「俺は俺で()()を制御できるように一人でやってるさ。もしプランの邪魔になるようなら言ってくれ」

 

「君のそれは、最初は私のプランとは大きく道を(たが)えているが最終的には交わり合う。君がイレギュラーな事だと考えた所で、それもプランの内になる」

 

「それなら重畳、いや僥倖か。16年間科学ばっかの知識を詰め込みまくったせいで、随分と考え方が凝り固まったから()()なんて物を学ぶのは楽しみなのさ。随分前に習ったのは魔術以前の話だったからね」

 

「それは良い」

 

 互いに口元だけを歪ませ、笑みを作る。

 

「ミサカネットワークにおける演算を確認する第一実験もそろそろ結果が出る。そのついでに良く分からないモノも出てくるそうだが、対処はどうするつもりだ?」

 

「本来ならば超電磁砲(レールガン)を宛てがって、今の実力を見ようと思ったのだが、止めた。君の能力がどれくらいのものか見せてくれ」

 

「分かったよ」

 

 これで幻想御手から始まり、禁書目録(インデックス)と邂逅する事が許可された。これでまた目的に近づけることだろう。

 

「次に用事がある際は私から連絡する。それまでは待つのが良いだろう。これから私への客は増えるだろうから」

 

「了解。ソレじゃまたな協力者(隣人)

 

「あぁ、私の協力者(対岸の人)

 

 (しか)して魔術と科学が交差し、複雑に絡み合う話に一石を投じるべく自らも死地へと足を運んでいく。




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