もうリメイクなんて関係ない位変わりました。
七月二十日。学園都市では夏休みが始まった。一部生徒を除き、能力開発から解き放たれる期間だ。ジリジリと肌を焼く太陽にも負けず、学生は街へと繰り出す。
科学の都市――学園都市に似つかわしくない修道服をきた真っ白な少女が街を歩いていた。太陽の光を浴びてキラキラ輝く銀髪は、普段身につけているベールが無いため風に煽られすれ違う人の目線を集める。
本人はきょろきょろあたりの建物を見渡しているため、そんな視線には気づいていない。
「誰か見てる?」
だがそんな目線とは違う何かを感じた。
これまで自分を追って来た魔術師と同じ様な、こちらの様子を一挙手一投足を伺っている目線。息をするのも苦しくなる。
今朝会った少年によって、彼女が身に纏う修道服は『歩く協会』から『
出来れば敵対せずに何とかしたい。魔力を感じないため、魔術師ではない。となればこの街の人間という事になる。
「そっちから路地に入ってくれて助かった。俺が声を掛けるのはあんまりよろしくないからな」
「やっぱりこの街の人なんだ」
「あぁ。ようこそ科学の総本山、学園都市へ。歓迎するよ
迎えたのは木原分数。科学の民でありながら魔術を知る、科学側からの使者だ。
◆
「あなたが私を学園都市に導いてくれたって事でいいのかな?」
「その認識でいいさ。あと名前で呼んでくれて構わないよ」
「分かったんだよ、ぶそく。学園都市としては魔術世界の一角を担うイギリス清教と事を構えるのは不味いんじゃないのかな?」
二人の姿を見るのは、この街を漂う
小さい身体にどこまで入るのか挑戦中というほど、バクバクと食べ続けている。ある程度までの食料の備蓄はあるが、この勢いで食べ続けると底をつくだろう。
「そこは別に気にしなくていいさ。今のオマエは学園都市が正式に招いたゲストさ。その行為自体を非難する声があったりもするが。まぁそんな状況でも、オマエに手を出したら世界的に叩かれるのはあっちのほうさ」
「随分と大きく出るんだね」
「大事な場面だからな。勝負をする時はリスクなんか気にしないもんさ」
インデックスの食べっぷりに、見ているだけでお腹が満たされる。水を飲むだけの木原は飾らぬいつも通りの態度を貫く。
アレイスターを通して魔術世界の情勢についての知識も、インデックスについての知識もある程度は持っているつもりだ。
「でだ。お客さんにはそんなぼろぼろな服を着てもらうってのは如何なものだと思うわけだ」
「たしかにそうだね……」
インデックスが着ている歩く協会――今となってはだった物と付くが、は安全ピンによって何とか服としての体裁を保てている。そんな服装をさせるのは悪い。
仮に歩く協会を縫直した所で、それはただの修道服でしかない。歩く協会は布地の織り方、糸の縫い方、刺繍の飾り方、あらゆる要素が計算され作られる事で法王級の強度を持つ。
今の現状では、魔力の残滓によって見つけられる為だけの発信機でしか無い。
「だから服買いに行こうぜ」
「ねぇ本当に普通にしてていいの?」
「おう。目的はデパートで服を買うことだけど、何か気になるものがあったら何でも言いな」
「色んなものがあって、目移りしちゃうんだよ!」
大衆向けの店が多いセブンスミストまでの道中でさえ、外の人間であるインデックスには全てが物珍しい。
無機質なビルが立ち並ぶ様。何も看板を出さない物もあれば、看板を出しお店が入っているビルもある。露天で商売している人もいる。
「この街って学生以外にも人がいるの?」
「大人が排除されるような子供の国って訳でもないしな。7割が学生ってことは、残りの3割は大人って感じだ」
「大人の人も超能力を開発してるってこと?」
「いんや。超能力開発ってのは学生くらいの脳じゃなきゃ出来ないんだ。原理は難しいから説明は省くけど。街にいる大人は研究者だったり、企業を経営したり、そんな人達に飯を作ったりしてる。学園都市を運営しているのは大人だしな」
勿論、今は夏休み。制服姿や私服姿の学生が殆どだ。インデックスのシスター姿は確かに目を引くが、学園都市の学生は何かの実験の最中と思って気にも止めない。
「例えばビルの場所やお店の配置。それにも人の視線の動かし方や、心の様子によってどこに注目するか、とか色んなものを調べるための実験的意味合いが含まれてる」
「能力開発だけじゃないんだね」
「んな事してるなんて外の人は思わないよな」
「うん。耳にするのは超能力者が居るってことだけ。徹底した情報管理だね」
「ここの超能力開発以外の技術は外の何世代も先を行ってるから、変に外に流出したらパニックになるし」
ミスディレクションや視線誘導。深層心理への働きかけなど、小さな町位なら簡単に支配下に出来てしまう力がある。だからこそ情報を外に漏らさなければ、人も外へは漏らさない。
絶対に無いとは言い張れないが。
「あれ食べてみたいかも」
「了解」
露天で売っているケバブ――新開発のシステムでお肉を美味しく調理! と大きなのぼりで宣伝するのは大きな効果があった。
買い食いの露天は、並ぶ客の長さと早く商品を渡す両方の反対の要素が大切となる。人気があると思わせる列の長さと、不満を感じさせない商品が手に入るまでの時間。
そのどちらにも能力開発で培った知識を利用している。
「超能力と魔術の違いってあるだろ?」
「そこまで知ってるんだね。うん、端的に言えば才能があるかないかだね」
「あぁ。ここでは才能を持っている奴に電極やら薬やらを使うことで、才能を表に人工的に出してるわけだ」
だからこそ科学と呼ばれている。
才能持つモノを才能有るモノへ。
「と言っても全員が全員、超能力に目覚めるかと言われたら否だ」
「とうまがいってたんだよ『半分くらいは脳の血管が千切れるまで気張ってようやくスプーンが曲がる程度』なんだって」
「その通りだ。流石は完全記憶能力だ」
科学の超能力について話し終えるのと同時にケバブを食べ終える。木原はポケットからハンカチを取り出し、インデックスの口元を拭う。
「ちょっと締まらなかったけどな」
「むぅ」
「歳相応で似合ってたぞ。リラックスの証拠として受け取っておくよ」
◆
「こんなに買ってもらっちゃっていいの?」
「似合ってたから買ったんだ。それに多く買っても困ることは無いさ」
一先ずは、今インデックスを狙う二人組の撃退が出来るまでの期間インデックスを学園都市で保護する事、をインデックスは了承した。
今は今朝上条の家に忘れて来たベールを取りに行く最中だ。学生寮が多くなり、商業ビルが少なくなる。また、風の流れを考慮しながら設置される風力発電プロペラも、生活の邪魔となる為少なくなっている。
「なぁインデックス」
「なに?」
「何でこんなに人が誰一人として居ないんだ?」
買い物をして夕日が差す時間になったからと言って、今日は夏休み初日。学生が誰もいないなんてことはあり得ない。
「もしかして、人払いの魔術……?」
「流石です、インデックス」
それは気配もなく顕れた。
瞬きの一瞬。そんな刹那とも言える時間に彼女は二人の目の前に顕れた。
「コイツがオマエを探してる奴か?」
「うん」
「ほぉ」
インデックスを背中に隠し前に出る。その態度は普段と変わらず、平常心。全てを見透かしているような目は未知との遭遇によって心なしか輝いている。
女性はTシャツを胸より下、へそが見える辺りで巻いている。下は片脚だけを大胆に切ったジーンズ。
そして常軌を逸する日本刀。
「その娘をこちらに渡してください」
「こちらのゲストを『はいどうぞ』って簡単に渡すわけがないだろ」
魔術への対抗策は幾つか練っている。アレイスターから聞いた話で想定出来、対処出来るものには限るという制約が付くが。
「幻術とか使ってくるか?」
仮に姿を現しただけで何かをしてくる場合、彼はもう対処出来ない。能力を使い、この場を完全に混沌に落とす事でしか乗り越える事は出来ない。
その様な行動を木原は対処とは呼ばない。ただの力技でしかない。
「ううん。この人は使わないよ。使うのはもう一人かも」
「となると上条の方か」
インデックスと接触をしたのは木原を除いて上条だけ。ましてやベールが部屋においてあるとなれば、魔術について知られたと思うことだろう。
今朝から今迄に上条と木原について調べてからの接触。この短時間で可能だったということは、学園都市内に関係者がいる事は木原には分かった。
「だとしたらどうしますか?」
女性は刀に手を当てる。
「物騒だな」
「最終警告です。インデックスをこちらに渡してください。手荒な真似はしたくありません」
「心の余裕持って行動しな。余裕のなさは視野狭窄を招くぞ?」
携帯を取り出しインデックスに投げ渡す。
「先ずは上条と合流するのを優先しろ! その地図通り行けば着く!」
「ぶそくはどうするんだよ!?」
「まぁ何とかなるさ」
インデックスは
感想、評価、誤字報告ありがとうございます!
リメイク前の作品も誤字報告してくれる方がいて、本当感謝です。
これからもよろしくお願いします。
3期始まりましたし、派生作品も制作決定しましたしどんどん盛り上がっていきたいですね。