そのため今回は独自解釈のオンパレード。
その分書いててとても楽しかった。
*タグに『独自解釈』追加しました
「お前の体が代替技術の最先端だってことは知ってても、耳に大穴が空くのは気色わりぃ」
海の家の自室で両耳をナイフでくり貫かれた木原に、特に心配する様子もなく言葉を投げかける。これまで数回木原の腕を飛ばしている垣根にとっては見慣れた光景だったが、治すところを見るのは初めてだ。毎回会うたびに生えている腕というのも気色が悪いものだった。なにせ、日焼けの仕方もきちんと再現されていた。
垣根から見て木原はこれまで会ってきた人の中で一番未知の存在だ。絶対にレベル4の木原では歯が立たないレベル5に、恐れる心を抱かず共に行動する人はこれまで現れなかった。
「今まで能力を使って残酷な殺し方をしてる奴に言われる筋合いはないんだけど」
自分のなすべき使命を抱いている木原は、死ぬ可能性と隣り合わせでレベル5と関係を持つ。
例えば開発者の木原数多と既知の関係であるからと言って一方通行に接触し。昔馴染みと言って麦野沈利に会いに行き。共通の敵がいるからと言って食蜂操祈とお茶を共にする。
「それにコレは代替技術じゃない。元々無かったり失った器官の代わりに付けてるんじゃなくて、人が持たない性質を持たせるために付けてんの」
確率を操作できると言っても零をプラスにする事は、プラスをより大きくするよりも困難である。そこまで到達してしまえば彼もレベル5として認定されるだろう。
その零を僅かでもプラスにする為の技術。自分の体の殆どを全く新しいものに変えた。
「俺には関係ないから知らねぇな」
「無知は罪だぜ。それに未知を操る奴が言うセリフじゃないだろ」
「うぜぇ」
「未知といえば、このナイフに彫られていた『R.M.S』ってのは何だ?」
学園都市から持ってきた鞄の中に入れておいた処置セットを使って縦に大きな穴が空いた耳を、スペアに付け替えた。
その原因を作ったナイフ。形状は変哲もなく、刃渡りも一般的なサイズだ。唯一不釣り合いなのは性能だ。
「明らかに俺を狙っていただろ」
「一般人にそんなもの使ったら普通死ぬからな」
「更にこの技術は外の技術より進んでる」
「となると敵は学園都市か」
しかし学園都市の技術よりも遅れていることは垣根には黙っている。学園都市と魔術協会とは違う第三勢力の存在を広めることを得策だとは思わなかった。
存在や目的が明確になるまでは心の中に秘めておこうと考える。
「んでそのオマエを襲ったやつの顔はどんなだった」
「今は御使堕しによって見た目が入れ替わっているから、あまり参考にならないと思うけど」
それもそうかと垣根は納得する。
暫くすると、ばたばたと大きな足跡と共に上条がやって来た。
「インデックスが
「インデックスちゃんが火野を見掛けたなら、俺達が火野を見る事はないだろ」
「あっ」
「一方通行がこんなアホにやられたなんてな」
夕飯の時に流れていたニュースによると、28人を殺害した死刑囚。そんな人物がこの建物から野外に出たと聞いた上条が、先程木原を襲った犯人だと考えた。
最近非日常との接触が多くなったが、それでも今回のような日常がまるまんま非日常になるなんてことは平凡な高校生の精神を不安にさせ、視野狭窄を引き起こす。
その結果が垣根の辛辣な一言だ。
「ん? 木原先輩どうした?」
木原の目は暗闇の中でも犯人の顔を捉えていた。目の殆ど機能を自分で制御できるようにし、暗闇の中でも昼間のように見える目は確かに捉えていた。
見た人に精神的嫌悪感を与える身体を、ひしゃげた気味の悪い笑顔を浮かべる火野の顔を。
「あれは火野だった」
異なった影響下に居る両人から『同一人物』に見える彼がこの魔術の犯人であると、改めて相談する必要は無さそうだった。
◆
「これで火野を殺して終わりなら楽なんだけどな」
「やっぱり真相を知って黙ってやがったか」
海の家でかき氷を食べながら話す二人。
これから先は魔術の領域です、と火野の捜索に参加できなかった二人は一日暇を持て余していた。
「たしかにこれだけの為に俺を連れ出すなんて、リスクがあってもメリットがない。なら他に目的がある事くらい分かる」
「魔術の存在を認知しただけで、俺にとっては十分だけど」
「何年オマエに絡まれてるか忘れたか? オマエは最低でも達成する目標と他にも数個目標を設定するだろ」
「まぁね」
言い当てられた木原は拗ねたように言葉を漏らす。イニシアチブを獲られるのは嫌いだ。すべて見透かしたように振る舞うのが好きなのだ。
かき氷を食べ終え甘ったるい口の中をリセットする為に水を飲む。思った以上の効果は無かったようで、他に何かで誤魔化そうかと店の中を見て回る。
「そろそろ来るよ。心構えをしておいてね」
「分かってる」
「そのリミッターも解除するから存分に力を振るえ」
「随分と気前がいいじゃねぇか。口を酸っぱく能力を使うなって言ってたわりによ」
アジトから車の中に転移させられた後に付けられたピアスの形をしたキャパシティーダウン。木原を名乗るが木原一族としての性質を持っていない落第者であるテレスティーナ=木原=ライフライン、木原幻生の孫が作った物にしてはあまりにもお粗末過ぎる品物を嫌々改良したものだ。
木原一族の技術を出来れば流用したくなかった分数はテレスティーナを、小型化を
「外で使うだけの価値がある事が起きるのさ」
時は満ちた。
ミーシャと自分を語る他の位相から堕ちてきた天使。『神の如き者』であり、あらゆる天使の中で最も偉く最も強大な力を持つ『天使長』とされる存在。
木原はソレが姿を表すのを感じ、にやりと笑った
◆
その名の通り星々を掌握し、意のままに操る事が出来る魔術だ。その影響は計り知れない。なにせ少しでも地球の自転や地軸、公転がズレるだけで人類は滅亡する。
人類には言葉遊びにしかならない事が、天使ならば実行可能となる。ましてや、被害を出さずにそれら全てを行えてしまう。
その結果の『夜』、自らの属性を強化するのに適した環境へと変化させる。遠くの星々を意のままに操作し魔法陣を作り出す。地球にその効果が及ぶように光の速度を変える。
言葉通り人間と次元が違う。足止めとしての役割を果たすだけでも息はあがり、聖人であっても天使には敵わない。己の身と心と魂に自ら刻みつけた魔法名を解放しても、その身は天使の足元にも及ばない。
「天使ってのはここまで頭おかしいのか。自分に最も適した状況にする為に天体の操作をする魔術。それに伴う位相の軋轢からの火花は己の中に閉じ込めると」
「あなた達! どうしてここに!?」
ここは既に魔術が支配する空間。科学と民である二人が居ていいような空間でも、人間が居ていい空間では無くなっている。
未知の圧倒的な力を目の前に、垣根は無意識に笑みを浮かべる。
「早くここから逃げなさい!」
「それは出来ない相談だ」
垣根の言葉の次には『神の力』からの攻撃が襲い掛かってきた。背後の海の水を持ち上げ、神裂に斬られた翼を再生する。
再生が完了すると同時に、海水を持ち上げた際に生じた水滴に
十字教徒ではない人間を排除するという考えではなく、この場に現れた異物を排除すべく放たれた一撃。肩に付いたホコリを払う程度の攻撃だが、人からすればたまったものではない。数秒の過程で放たれたそれは本来ならば防ぎようのない攻撃だった。
これまでの戦闘で聖人としての力を引き出し続けてきた神裂の体は動かない。垣根と木原を助けることが出来ない。
「はっ」
垣根の背中から生える翼。その一翼を水流の軌道に合わせて振るう。水流と翼が触れ合うと水は姿を無くし、魔法陣を作った水滴の天使の力が枯れるまで続いた。
「天使って
「awkra怒ksagr」
「分かる言葉で話せよっ!」
魔法陣ではなく、水で作り上げた翼を使い垣根に襲いかかる。垣根は背中に生えた純白の翼を使い、三次元的に攻撃を避け続ける。
神裂はその光景を見て思ってしまった、翼を持つモノ同士の戦いを見て『天使同士』の戦いだと思ってしまった。それか木原が垣根を連れて来た真の目的だと知らずに。
偶像の理論というものがある。
姿や役割が似ているもの同士はお互いに影響しあい、性質・状態・能力などとしても似てくるというものであるが、それはあくまで魔術サイドにおけるこれまでの歴史積み重ねと位相の関係によって齎されているものだ。
それを
位相の揺らぎに干渉し、天使を出来るだけ不安定な形でこの位相にやってくるように調節した。身体に宿る魔力の量を減らし、今は『神の力』の位相からの魔力を横から掠め取り垣根への攻撃を抑止している。
本来ならば
「これで後は誰かがこの魔術を片付けてくれれば、終わりだ」
表情は変えず、しかしながらも声は吐き出すようにしか出せない木原は内心で歓喜の声をあげている。
これで現れた天使が『神の如き者』だったならば満点と評価していたところだが、その点に関しては全くの不確定事項であり、どの天使が降臨しようが関係がなかった。
むしろ『神の力』の持つ性質を受け取れるメリットがあるため甲乙付け難い。
取り敢えず木原は喉が渇いた。
これにて4巻終了。
垣根に偶像の理論を適応するのは、お風呂で閃いたときからやりたくて仕方が無かったです。
次は閑話を挟んで、6巻で木原の能力を説明していこうかなと思ってます。
魔術側の味方を出したいですがまだまだ先になりそうな予感。新約まではモチベが続かないからその前で落とし所を探しているけど、そこまですらどうなるかって感じです。
がんばります。
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