《リメイク》とある科学の確率操作   作:々々

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 施設で木山とお話して終わるはずだったんだけど、何か沢山登場しちゃって着地点が大幅にずれた感じ。

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閑話2-2

 

 

 case.3 奪い合い(A・・ )

 

「とか言ってたくせに、着いてすぐに居なくなるとか頭可笑しいだろ」

 

 やって来た施設のソファーに座りながら悪態をつく。インデックスと舞夏は大広間で交流を取っているが、黒夜は流石にそこまでは出来なかった。こんな汚れた手で、無垢な子供たちと触れう合うことが出来なかった。

 応接室からその様子を見るだけ。あちらの光景は彼女には眩し過ぎた。

 

「コーヒーはいかがかね」

 

 ここの施設の管理人として木原に紹介された女性、木山春生が氷が浮かんでいるアイスコーヒーのグラスを差し出して、声を掛けてきた。

 首肯で済まし、グラスを受け取った。

 その様子を見て木山は微かに笑みを浮かべる。

 

「彼は面白いな。私の次は君のような少女か、節操がないと言えばそうだが意外と筋は通っているのか」

 

 見た感じと雰囲気は美しいと思えるのだが、目の下に薄っすらとある隈とレディーススーツに白衣のファッションが残念感を出していた。

 黒夜は木山の発言に興味を持った。

 

「おや、何も聞かされずにここに連れて来られたのかい?」

 

「まぁ」

 

「ふむ。そこあたりはまだ人との付き合いが慣れてないと取るべきか、私が説明する事を見越して伝えなかったのか。まぁいい、君がこうして暇ならそれ相応の役にはなれるさ」

 

 夏だというのにホットコーヒーを一口のみ、喉を潤す。

 

「君は『木原分数』という人間をどう見る?」

 

「自分勝手でこっちの都合なんか気にしない糞野郎」

 

「随分な言われようだな」

 

 所感はそんな所だ。本人にも言ったことだが、いきなり現れて連れ去って放置する、なんてことをされたら当然良い印象は抱かない。それに今日も何だかんだ言ってイニシアチブを取られっぱなしだし、イライラしている。

 

「と言うことは彼の思惑通り、君に悪感情を抱かせる事に成功していると言うわけだ」

 

「アレはあいつの素だろ。何言ってんだ?」

 

「ではそれでいい。自分の意見を持つということはとても大切だからな」

 

 心の掌握についてのプロフェッショナル二人から、手解きを受けた木原の心理操作はそう簡単に解けるものではなかった。木山も研究者や教職者として少しは知識があるものの、それでは敵わない。

 むしろその程度では解けないほど強く掛ける理由が存在していると考察した。

 

「彼はある目的を達成する為に行動している。そのためなら過程はどんな手段をとってもいいと考えている」

 

「あいつらしい」

 

「けど、彼と行動するにつれて歪みが存在する事に気付けた。歪み、というよりも目的と過程のすり替えだな」

 

 机に設置されているメモ帳とボールペンを使って説明を始める。

 

「普通は『目的』があるから【行動】が存在するだろう。しかし彼の場合は、【行動】したいから『目的』を設けている」

 

 例えば『肉を食べる』という目的の為に【肉を調理する】という行動が生じたとする。

 実はそれは【肉を調理】したいから『肉を食べたい』という目的を設けているということ。

 

「目的よりも行動の方が大事。だが、それを認識しないようにしているのか?」

 

「おそらくそうだろうな」

 

 となると彼が言った『他者の自分だけの現実を埋め込められた能力者が欲しい』という目的は本心ではなく、【黒夜海鳥を手に入れる】方が狙いだったという事になる。

 

「意味がわからない」

 

「そうだろうな。私もどうして彼がこんな思考回路を持っているか分からない」

 

 また一つ木原に聞かなければいけない事が生まれた。しかし、まず帰ってきたら窒素爆撃を御見舞しないと、このモヤモヤはきっと解消されないだろう。

 

 

 case.3 奪い愛(・B・ )

 

「ねぇねぇ、分数お兄ちゃん! 分数お兄ちゃん? 無視しないでよ」

 

「何でこんな所にいるんだよ」

 

 黒夜達を木山に預け次の目的地に向かう途中で、ここ最近で一番会いたくない人物と会ってしまった。ただでさえ、木山からあの事件以降の経過を聞き、分数が手配した施設の使い心地を確認し改善点を探すという工程が出来なくなったことにイライラしていたところだった。

 

「返事しないとヤッちゃうよ?」

 

「それはどの『木原』のやり方だ?」

 

「分数お兄ちゃん!」

 

「そんなやり方はしない」

 

「そうだったね、やるのは不足(ふそく)お兄ちゃんだもんね」

 

 鈴のような声を聞いて分数は足を止める。先程まで後ろを付いて歩いてきていた少女は、分数の前に立つ。夏の太陽を遮る為の麦わら帽子、その下辺りから生える二本の髪の尻尾。ピンクのTシャツとホットパンツはまるで店員のおすすめのような組み合わせ。異彩を放つのは首から下げられたいくつかの電子機器。

 木原円周は純粋な笑みを浮かべて、俯く分数の顔を下から覗く。

 

「ねぇ、分数お兄ちゃんは本当に木原を辞められると思っちゃってるの? ふふふ、おかしい」

 

「コンタクトでグラフを見てるのか。この気味の悪い感じ、病理の手を使って諦めさせようとしてるのか」

 

「ありゃ、バレちゃった」

 

「覗き見に来てるんだからわざとだろ」

 

 嫌いなもの(木原)の一端に触れて冷静さを取り戻す。止めた脚を再び前へ進める。

 

「んで、なんでいるんだ?」

 

「お兄ちゃんが面白そうなことしそうだなって思ったから。当たって良かった」

 

「俺のデータを取りに来たのか」

 

「えへへ、どうでしょう?」

 

 この手合いの、あしらい方は知っている。無視だ無視。あざとく裾を引っ張る円周を無視して、先程通った道を逆へ進む。

 途中、工事中を知らせる立て札があったが視界に収めながらも中へ進んでいく。

 

「ねぇねぇ、今日の敵は誰なの? あっ、待って。今考えるから」

 

 円周はこの現状を楽しんでいた。分数と出会うまでの日々の全ては、この世界の規則や法則を学習する為の時間でしかなかった。物を見てそこから円周にとって未知の既存の知識を学習し、人と触れ合いその共通点から規則を見出す。

 それが当たり前であって、日常だった。木原不足と出会うまでは。

 

「いたっ!」

 

「前見て歩けよ」

 

 昔を思い出しながら歩いていたせいで、前方が不注意となっていた。立ち止まった分数に気づけずそのまま背中に顔をぶつけた。少し苛立って円周の方を振り向く分数の先に、三人の人影が見える。

 全員が顔を隠す覆面を付けており、着ているものは上下が一緒になっているつなぎ。明らかに昼間の公園に相応しくない三人を更に怪しくするのは、背中に背負われたリュックサック程の大きさの金属の箱。そしてそこから伸び手に持っているホースだった。

 木原達の声に気づき、三者全員が声の方を向き臨戦態勢を整えている。

 

「気づかれたんだが」

 

「うん、うん。分かってるよ、分数お兄ちゃん。こういうとき『木原』ならこうするんだよね」

 

 何度も何度も見返し、理解した分数のグラフとデータは頭に刷り込まれている。外部からの入力が無くて、完璧に引き出す事が可能だ。

 その事を理解していた分数は服の襟の部分を後ろから掴んで、突っ込もうとする円周を止める。

 

「分数お兄ちゃんともっとお話したいのに、あいつら邪魔なんだよ? なら潰さなくっちゃ」

 

「見事な『模倣』ありがとうございます。でも、あいつらは俺の敵だ。それを部外者に横取りされるのは気に食わない。なんなら、お前をぶっ潰すのを先にしてもいいんだぜ?」

 

「強がりばっか。でもまぁ、お兄ちゃんのデータがもっと採れるならいいかな」

 

 おとなしく引き下がる。首から下げている端末を起動して、録画を起動して撮影に移る。ちなみに、ここまでの音声は別の機器で撮っていたりする。

 

「さて、黒夜海鳥の情報を入手してくる無理難題を木原典型から依頼された、暗部の下部組織『アルファ』の方々。そのホースで吸い込んでたみたいだけど、何か良いものは取れたかな?」

 

 質問の返事は炎だった。

 ホースの先を向けると、手元のスイッチを押す。そして勢い良く吐き出された炎は分数と円周を包む。

 

「対象及び部外者の排除成功」

 

「しかし、随分と威力が高かったな。これじゃ骨しか残らないんじゃないか?」

 

「そこまでしろってのがクライアントの命令だ」

 

 火炎放射器の形式は多岐にわたる。今回支給されたのは、3つで1つの火炎放射器。ホースの先から射出されるレーザーで対象を位置を補足し、脇二人が炎上しやすい薬品を対象を囲むように配置する。そして真ん中の一人が炎を放つことで着火させる。

 その後は計算された式に従い、風が送られ炎のドームが完成する。中は蒸し焼き状態を通り超え、アスファルトすら溶かす高温に水は失われ人の形を保っていられなくなる。

 

 

 

 パキンと何かが割れる音がした。

 

「おいおい、この程度で俺様をぶち殺せると思っているのか? そんなわけ無いよなぁ? だとしたらとんだ笑いもんだな、オイ」

 

 炎の()から声がする。そう、聞こえてくるのは壁の向こう側からなのだ。本来は半球形になっている筈の炎が、地面に対して直角に立っている。

 

「回収用のホースとバックパックに火炎放射器の機能をぶっ込むのは効率的だ。そして三人がそれぞれの役割を持つってのは考えてなかったが、それでも対処出来る域を出ない」

 

 炎の壁はどんどん高くなっていき、制御が効かなくなっていく。自らに被害が及ぶことを恐れて、火炎放射器を停止させる。

 炎のカーテンは消え、二人が姿を現す。

 先程まで浮かべていた嘲笑は消え。顔には無が存在している。

 

「エアカーテンを使った対炎装置。瞬時展開とか、二層構造にしたりとか結構な量の技術を合わせた『分数』の最高傑作の内の一つだから解説してやるところなんだろうが、生憎と今の俺様はそんな気分じゃなくてな」

 

 後ろでニコニコ笑っている円周の首元を掴む。

 

「何しやがった?」

 

「うん、うん。分かってるよ、病理おばさん。こういうとき『木原』ならこうするんだよね。私は分数お兄ちゃんも好きだけど、一番好きなのは不足お兄ちゃんなんだ。だからね」

 

 徐々に呼吸が苦しくなるにも関わらず、にこにこと笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

 

「分数お兄ちゃんには諦めて貰わなきゃ。私がどうやって他者の思考をインプットしてると思ってるの? それをお兄ちゃんにしてあげる事なんて、『木原』のやり方を使うと簡単なんだよ?」

 

「ちっ」

 

 舌打ちを残して、円周を後方へ投げる。円周はうまく受け身を取り、これから始まる戦闘へのワクワクを積もらせていく。

 

「撃て!」

 

 リーダーと思われる男の声で、武器を火炎放射器から鉄砲に変え射撃が行われる。鳴り響くのは合わせて3つの銃声。

 

「はぁ。そんなんじゃ駄目だ駄目。練度も数も何もかも全然足りない」

 

 3つの銃声と共に壊れた3丁の鉄砲。

 

「三位一体の理論骨子自体は面白みがある。だがそこから先は凡人だな。脳波リンクや一つに同期しての発射、考え無くてもこれ位は出るさ」

 

 銃を構えて冷淡に言葉を並べる。

 三回の発射で的確に、寸分の狂いもなく銃口に弾は入っていった。既に三人の銃は破壊され、使い物にならない。

 

「驚く顔すんなよ。こんなの一度成功したら、その成功と同じ感覚で行うだけさ。こんな風にな」

 

 同じ様に三連射。

 全て頸動脈を傷つける軌道を辿り、首からは大量の血がドクドクと止めどなく流れ続ける。

 

「ちっ。情報を引き出すのを忘れた」

 

 後ろを見ると円周は姿を既に消していた。消える前にこの状態を()いてからにしろよ、死体を蹴り八つ当たりしながら食蜂に連絡を取る。

 また借りを作ることになるが、この状態(木原不足)で生活をする時間を早く終わらせたかった。

 

 

 

 

 case.3 恨み愛(・C)

 

 

「待っててね、不足お兄ちゃん」

 

 

 

 

 




木原分数:主人公

木原不足:過去の分数

黒夜海鳥:観測者

麦野沈利:腐れ縁

木山春生:傍観者

食蜂操祈:協力者

垣根帝督:メインプラン

????:信仰者

木原円周:敵

アレイスター:共謀者
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