とあるビルの屋上でその男は佇んでいだ。
百万ドルの夜景などとは程遠い夜景ではあるがスエーデンの実家の寂れた街の夜景に比べたらまだ良いなどと考えながら、その男は上司の連絡を待っていた
屋上に来てから30分が過ぎた頃にスマホに着信が入る、盤面には上司の名前が確認できた
「待ってましたよ、Dr.ルー」
『いやいや、すまないね、ちょっと問題が発生してね』
「まぁ、それは構わないのですが、どうやら今し方サーヴァント同士が一戦交えた様子です。」
『それはこちらでも確認している、反応としてはセイバーとキャスターのようだ』
「珍しい組み合わせですね、自力で劣るキャスターが序盤でセイバーと当たるというのは」
『まぁ、いいデータが取れたよ、どうやらどちらもまだ脱落してはいない様だしね』
「セイバーと正面から向き合ってキャスターが逃げ果せてると、成る程、今までには無いケースですね」
『ああ、今回の実験は、かなり期待が出来そうだよ。過去27回の実験でアップデートされて来た最新の〈聖杯戦争〉だからね』
スマホ越しに上司の興奮が伝わってくる
上司のDr.ルードビア=バレステノンの熱意が狂気がまるで目の前に居るかの様に感じられた
「既に6騎のサーヴァント召喚が確認されてます。後1騎で本来の聖杯戦争と同様の数が用意できた事になります」
『あぁ、遂にここまで来れたんだ、魔術師の間に広がった願望機生成の儀式・聖杯戦争、だが未だまともに聖杯戦争を成功させた者はいない。私も含めてね』
「そうですね、初めての時はサーヴァントすら召喚出来ませんでしたしね」
『其れが遂に7騎用意出来るまで来た、この〈亜種聖杯戦争〉も本家と同じ騎数を用意するに至ったのだ、実に素晴らしいぃぃ!』
スマホから耳に響く程の大声が聞こえてくる
更にガチャガチャと何が崩れる音を同時に聞こえて来た
どうやら興奮し過ぎて何を崩したのだろう
こうなった時のDr.の話は長い、ここは早く切り上げた方が良いと考え、強引に本題内容に話を進める事にした
「Dr.ルー、それではこれから最後のサーヴァント〈バーサーカー〉の召喚に入ります」
手のひら大の「宝玉」を取り出す、薄紫色の透明度の高い水晶球にはバーサーカーを示す刻印が刻まれていた。
この宝玉こそが今回の聖杯戦争のサーヴァント召喚用の媒体兼魔法陣兼管理用の情報端末である。
実際の聖杯戦争には特定の範囲内の霊脈上で召喚用の魔法陣と英霊召喚用の触媒を用意し降霊の詠唱を行う事でサーヴァントの召喚を行う。
しかし、本家の聖杯戦争の骨格全ては情報として流れては来なかった。
アバウトに全体像だけ伝えられ其れを元に現在も各地で亜種の聖杯戦争が繰り広げられている。
『今更ではあるが君がこの〈実験聖杯戦争〉に参加するメリットは‘何も無い’と思うのだが?』
「まぁ、そうなんですけどね。ただマスター側からしか観察出来ない事もあるかもしれませんので」
『うん、それなら良いのだけどね』
先程までの興奮が治まって来たななどと考えながら、でも実際は私の事などどうでも良いと思っているのだろうという事は分かっている。
握りしめた宝玉に自らの魔力を注入する
同時に宝玉は眩い光を放出し始めた。
注入された魔力を切っ掛けに召喚システムが起動、内包された魔法陣と詠唱を読み込み蓄積された媒体データから魔力にあった英霊を具現化する
男が今回召喚したバーサーカは
老人だった
「バーサーカの召喚に成功しました。」
『素晴らしい、遂に7騎の召喚に成功した、ここまで遂にここまで…』
感極まっているDr.を聞き流しながら今召喚された英霊を観察する
見た限り東洋人の様で昔の中国の映画に出てきそうなチャイナ服を着ている、深いシワに長い髭、曲がった背骨でお世辞にも英霊には見えなった。
『して、どの様な英霊を召喚したのかな?さぁ聞かせてくれたまえ、送られてくるデータだけでは分からない事が多過ぎるのでね』
「男性の老人です」
『ほう、老人、老人ねぇ…』
流石のDr.も戸惑っている様だ、正式な召喚方法では無い為、英霊の召喚に不備が生じてしまう可能性は高い、正式なら生前最も力があった全盛期の姿で召喚される筈なのだが、多分に含まれる独自解釈込みでの召喚システムによる弊害を鑑みたとしても目の前のサーヴァントはやはり特質だった
『こちらで観測している数値的にはバーサーカーの物で間違いないようだが』
「面白い、実に良いサンプルデータが取れそうです。」
『君が良ければそれで良い、引き続き《令呪》無しでのバーサーカー制御のデータ採集をお願いするよ』
「任せて下さい、良いデータをお土産にしますよ」
男はほくそ笑む、命懸けになる戦いを前に不安要素の出現を愉しむ様に
この日から老人サーヴァントと共にヴァルド=オーグレーンの
宝玉のデザインはFGOの輝石をイメージして下さい。