Fate/Experiment site   作:もみあげ

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亜種聖杯戦争

「ライダー出てこい」

 

呼ばれた声に反応してチビで太った男が何もない空間からふわりと現れた

 

「呼んだかマスター」

「当然だ、お前も感知してるだろう?」

「あぁ、近くにサーヴァントが現れたな、突然なので、今現界したのか気配遮断を切ったのかは分からんが」

「同じサーヴァントであるお前なら私より詳しく所在が掴めるだろう。さぁ、早く討伐に向かうぞ!」

 

いきり立ち戦闘準備を始める自分のマスターにライダーは溜め息混じりに忠告する

 

「いやいや、普通に考えて無策で会敵するなんてあり得ないだろ」

「私は構わんが?」

「マスターが構わなくても我が構うわ」

「何故だ、ライダー?聖杯戦争はサーヴァントを使役したマスター同士で戦い最後の1騎に残った者が聖杯を得て願いを叶える、そうゆう物だぞ、敵は即座に排除せねば」

「分かってんじねーか、つまりこの聖杯戦争を勝つ為には、最後の1騎残ればいいんだ、極論、我らが戦わずとも他の者達が潰しあってくれれば良いのだ。」

「漁夫の利で勝者になれと…」

「そうゆう事だ、戦わねばならない時は戦うが、わざわざ危険に突っ込む必要など無いではないか」

「成る程、だが駄目だ。それでは高みには登れない、私には実戦が必要なのだ、名声を得るにしても全ての敵をなぎ倒し私の力を存在知らしめる型でなくては!」

 

そう、駄目なのだ

証明せねばならない

この才能を血の力を

高みへ、更なる深淵へ、《根源》へと至る為に

私は…

 

 

 

-1ヶ月前-

 

「つまり、その亜種聖杯戦争に参加しろと?」

「はい、今回の開催地は日本の【日野浦】で行われます。」

「確かに十数年前から各地で行われている儀式だとは聞いているが、まともな成功例は殆ど無く、成功は100に1の出来損ない儀式だとも聞いているが」

「確かに他の聖杯戦争は正に規模も質も悪い出来損ないの亜種でしか無いでしょう、しかし、私達の聖杯戦争はそこいらの雑魚魔術師が行う聖杯戦争とはモノが違います」

「ほう…」

 

ロンドンの魔術師の集まる秘匿された学園都市【時計塔】に数あるカレッジの一室で怪しい男から私は聖杯戦争への参加を持ちかけられていた

相手の男は見た目は兎も角、話し方が怪しい

詐欺師が年寄りを騙す時に使いそうな口調でどうにも胡散臭い

 

「では、どう違うのか教えてくれるか」

「勿論ですよ、ですが先に確認されて頂きたい事があります。まず聖杯戦争の内容に付いて、どの程度の知識をお持ちで?」

「魔術師が使い魔を使い戦い、聖杯を得る儀式ぐらいしか知らないな」

「成る程、分かりました。では1からご説明致します。」

「あぁ」

 

何故か小馬鹿にされた様な気がする、わざと知らない振りをしたが、実際は聖杯戦争その物には以前から興味があり、調べていた位だからその事は置いておく

 

「私達の開催する聖杯戦争は冬木のソレと同様マスター7人が英霊を1騎ずつ召喚、サーヴァントとして契約し自分以外のマスターと覇権を争い最後の1人が聖杯を手にするそう言った儀式です。」

「英霊…」

「左様、聖杯戦争のサーヴァントは英霊則ち過去に神話や伝説の中で為した功績を残した英雄が選ばれます。」

「その様な霊格の高い者を使い魔とする事が出来るのか?」

 

当然の疑問だろう伝説を残す様な存在は神格化され精霊にも匹敵する

どんなに才能や能力に優れていたとしてもいち魔術師程度では《位》が高すぎて手に負えない。

それは《魔法使い》ですら無理なのではなかろうか。

 

「そう、普通ならば不可能、しかし其れを可能にしているのが聖杯です、日野浦と言う限られたエリア内とは言え、願望機たる聖杯の補助を受ける事で英霊をサーヴァントとして使役する事が出来るのです」

 

聖杯の存在が英霊のサーヴァント化を可能としているならば、規格外の魔術礼装と言える。

ならばその聖杯は願望機としての機能も期待できるだろう。

つまりそれは…

 

「そして、召喚されるサーヴァントにはそれぞれクラス分けが存在し、各クラスそれぞれに特徴がございます。マスターは振り分けられクラスのサーヴァントを使役し戦って頂きます。勿論、本家同様にクラスの被りはございません。」

「7つのクラスに特徴…」

「クラスは[セイバー][アーチャー][ランサー][ライダー][キャスター][アサシン][バーサーカー]となります。」

 

ここら辺の情報も調べた物とほぼ変わらら無い。

・セイバーは剣の英霊【対魔力】を持ち優れた能力を持った者が多い最優の戦士

・アーチャーは弓の英霊【単独行動】でマスターから離れても行動できる遠距離主体の戦士

・ランサーは槍の英霊【対魔力】を持ち俊敏性に優れた接近戦主体の戦士

・ライダーは騎兵の英霊【騎乗】のスキルで高い機動力を持ち、宝具の手数で戦う戦士

・キャスターは魔術を行使する英霊【陣地作成】で自分に有利な環境を作り戦う術者

・アサシンは暗殺者の英霊【気配遮断】を使用た搦め手を得意とする殺し屋

・バーサーカーは狂気の英霊【狂化】される事で理性を失う代わりに能力を強化された戦士

ここまでは他の亜種聖杯戦争と変わらない

まぁ他の亜種聖杯戦争は聖杯不完全で不成立、出来ても2騎から5騎程度でまともに機能していないらしい

サーヴァントも偏りが酷く、大体は召喚用の触媒を奪い合う魔術師同士の諍いがメインだとも聞く

だがそれは私にとっては、余り関係無い

優れた召喚システムと願望機の存在、ソレは根源に至る可能性そのものに思える

 

「元来英霊の召喚には触媒が必要でした。英霊はその信仰度合いによって力の有無が変わります、開催される地域に土着した英霊が質然強くなり、触媒もそれに合わせた方が良くなるのが必然。しかしそれでは公平性にかきます。ですので我々の行う聖杯戦争では特別な触媒を必要としない召喚を行います。」

「なに?!」

「はい、この《宝玉》には各クラスの触媒データを組み込んでおり、マスターとパスを繫ぐ事で自動的に英霊を選択し適正な召喚を行います。」

「特別な召喚儀式や詠唱が不要だと…」

「その通りです。しかも宝玉には前もってクラスの確定を行なっておりますので召喚時のランダム性も御座いません」

 

召喚の操作、このレベルは初めてだ

今まで調べた聖杯戦争の中でも聞く限りでは特別な物であるのは確かなようだ

 

「サーヴァントには宝玉を通して命令を下したり魔力を供給する事になります。ですので宝玉の破壊=敗退となりますので悪しからず。」

「その宝玉とやらで『絶対命令』は可能なのか?」

 

本来の聖杯戦争ではマスターが令呪を身体に刻みその力でサーヴァントを強制的に従えさせると言う、そうしなければ自我のある英霊に命令を聞かせる事など不可能だからだ

 

「おや、やはり見込んだ通り、気付いてしまいましたね、はい残念ながら宝玉には令呪同様の機能はございません。ですがマスターと適正の高い英霊が召喚されますので反逆されて死ぬなんて事は無い筈です。」

 

胡散臭さここに極まる、わざと危険な情報を伏せた説明をしていた事をあっけらかんと明かしてきた。

 

「優れた魔術師であるマスターならば自身の力でサーヴァントを従わせる事が可能なのです。そして貴方にはその力がある筈です。」

「ほう」

「貴方様の《家系》その《血脈》は凡に埋もれる筈は無いのですから」

「成る程、其れが私にこの話を嗾けた理由か」

「どうですか?貴方様にとってメリットは充分なのでは?」

 

この胡散臭い男はどうやら私の事を良く調べてきているようだった。

 

「能力を示すのならば持ってこいの場ですよ。聖杯戦争は、だから調べていたのでしょう?自らを示す場所として、ねぇ」

「わかったような事を…」

「分かってますとも、だから来たのですから」

 

確かに私は探していた、自らの才能を血を示す場所を

名家に生まれ、何不自由無く魔術師としての道を歩んで来た、名門である時計塔に籍を置き、その才能を遺憾無く示してきた

だが足りない。

圧倒的に足りない。

このままでは至れる気がしない。

根源に

究極にして無なるモノに

自他共に認めている、私に才能が有ると

代々受け継がれている《魔力回路》の本数も間違いなく時計塔トップクラスだ。

だからこそ分かってしまう。

このままでは至れないと

辿り着けないのだと

魔術師の家系は根源に至る為に跡継ぎに魔力回路を引き継ぎ、回路の本数を増やして行く事でいつか根源に至る事目指している

今が駄目なら次へ、それも駄目ならまた次へと

だが私は自分が至りたいのだ、掴みたいのだ

あらゆる魔術師の望むモノを

その為に自分に足り無い物を求めた、その為に見下していた《現代魔術論科》のロードエルメロイ二世の講座を受けたりもした

その中で聖杯戦争の事を知ったのだ

知り合いの中では実際に亜種聖杯戦争に加担した者さえ居た、その話を聞き、聖杯戦争の情報を得れば得る程に時計塔に居るだけでは得られない物が得られる気がした

経験した事の無い魔術での実戦、聖杯を手にした事で名声、そこには可能性があった、魔術の最先端、神秘や奇跡の体現が

身を焦がすような焦燥感を焦りを目の前の怪しい男は見抜いた上で誘いをかけにきたと言う。

知らないふりなどもう意味がなかった

 

「私の演技もお見通しか」

「はい、それはそうと如何ですか?今なら貴方様の任意でサーヴァントのクラスをある程度選べますよ」

 

通販の決まり文句の様に勧誘の言葉が紡がれる、其処に胡散臭さが溢れてくるが

 

「サーヴァントの特性をある程度掴んだ上で準備まで出来ると」

「はい、まぁ残念ながらセイバーとキャスターに付いてはもう先約が御座いますのでそれ以外となってしまいますが」

 

どうやらもう2人の参加が決まっているようだ

 

「構わんさ、私の力を示す為の場か良いだろう、その亜種聖杯戦争に参加しよう」

 

自身を危険に晒す行為が馬鹿げているのは承知の上で怪しい男のあまりに胡散臭い話に乗る事に決めた

 

「ではサーヴァントはどれを選ばれますか?」

「私の英霊は…」

 

 

 

-1ヶ月後-

 

「ライダーよ、私は止まる訳には行かないのだ」

 

ライダーは呆れて溜息をつく

 

「全くたいした向上心だよ、ほんと…」

「楽はさせんぞ、ライダー、お前も一度は上り詰めたのだろう?」

「まぁな、その後どうなったかは察して欲しいところだかね」

「はっ、だが『不可能は無い』のだろう?」

「言ってくれるなぁ」

 

私とライダーは顔を見合わせてニヤリと笑う

 

「では行こうか、颯爽と駆け抜けて聖杯を手にしよう」

「仕方ねーな、行ってやるよ」

 

時計塔から来た男、ウォーマ=ビルストンはライダーと共に夜の深淵に駆け出して行った

 




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