Masked Rider BAGX-AID   作:ドラーグEX

5 / 9
第4話 battleのおわり!

「会って早々で悪いけど……。あんたのガシャット、いただくよ!」

 

突如現れたバイクに乗る赤い甲冑の戦士が繰り出す突進攻撃。

 

「ひょわあっ!」

 

紙一重で回避したエミは戦士に叫んだ。

 

「ま、待ってください! なんなんですか、これ! というか、早くデルムさんを病院に連れて行かないと!」

 

「他人の心配してる暇、あるわけ?」

 

ハンドルを捻るたび、ドルンドルンと威嚇するような音がうなる。

 

「し、ショウちゃん! こういう話し合いが通じなさそうな時はどうしたら!」

 

「二つに一つ。戦うか。逃げるか」

 

「よし、逃げる! って、無理だよぉ。あっちバイクだもん……。戦うとしても、私全然わかんないし」

 

エミとショウの話に、戦士は仮面の下で眉をひそめる。

 

「……なに? もしかしてあんた初心者?」

 

「は、はい! この姿になったのも今回が初めてで。正直、何が何だか……」

 

たはは、と愛想よく笑うエミ。

 

「はあ……」

 

ため息をこぼした赤いライダーは、剣を下ろし、バイクのハンドルを握りなおした。

 

「ちょっと。いいの?」

 

「初心者狩りは趣味じゃないから」

 

「そう……。あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ」

 

一人と一台の奇妙な会話を後ろから聞きながら、エミは両手を擦った。

 

「あ、あのぉ……。これは、見逃してもらえる流れ、ですか?」

 

「ええ。そういうことになるわね」

 

エミの問いかけにバイクの方が答える。

話すたびに車体の前半分がピコピコと動くのがエミには少し愛らしく見えた。

 

「自分の幸運に感謝しなさい」

 

「ど、どうも」

 

(優しい人だなぁ……。いや、優しいバイクさん?)なんて考えていると、バイクにまたがる戦士からも声をかけられた。

 

「次会ったら、マジでいくから」

 

仮面越しに伝わる威圧感に、エミは「ひええ……」と青ざめる。

苦笑したバイクに運ばれて、戦士の姿は夜闇の中へ溶けていった。

 

「はあ〜。なんだったの、本当に」

 

蛇に睨まれたような緊張感から解放され、エミは身体を弛緩させる。

 

「お疲れさま。そして、おめでとう」

 

ショウが労いと祝福の言葉をかけ、スロットホルダーに入ったままのガシャットを抜き、ドライバーのレバーを閉じる。

するとエミの姿がバグゼイドから元の部屋着姿に戻った。

 

「あなたはこの瞬間から歩みだした。神様への道を。仮面ライダーバグゼイドとして」

 

「仮面ライダー……。もしかして、さっきの人も?」

 

コクリと頷いたショウは、次の瞬間ふらりとエミに倒れこんだ。

 

「ショウちゃん!?」

 

「少し……疲れた。ねえ」

 

「う、うん?」

 

「私……本当に、あなたのところにいても、いいの?」

 

星を宿した瞳が不安そうに揺れる。

エミはこの銀の少女が、家を飛び出した時に発した言葉を気にしているのだと理解し、微笑みとともに、柔らかい銀色の髪を撫でた。

 

「もちろん。レイコさんも、待ってるよ!」

 

「うん……」

 

頷いたショウは、小さな手でエミの服を握る。

迷子の子どもが母親を見つけたように。

その顔は、安堵に満ちていた。

 

「お、おう? わたしは一体なにを?」

 

二人の近くでは、目を覚ましたデルムが地面に倒れていた自分自身に目を白黒させ、首をかしげていた。

 

 

「いやぁ、エミちゃんがいてくれてよかった。まさかあんな道端で倒れてしまうとは」

 

「き、気をつけてくださいね? あはは……」

 

戦いの終わった帰り道。

目を覚ましたデルムは夕方の会合が終わって帰路についた時からの記憶がなかった。

エミはショウの助言で怪物になっていたことは彼には秘密にすることを決め、適当なうそをついたのだ。

 

「だが、私が言うのもなんだが、女の子がふたりで夜中に出歩くのは関心しないな。最近はなにかと物騒だから」

 

そう言うデルムはショウを抱きかかえている。エミが頼んだのだ。

 

「ご、ごめんなさい。ショウちゃんにこの街のこと、いろいろ見せてあげたくて」

 

「いや、いいんだいいんだ。この子もレイコさんの親戚で、お姉さんっぽく頼られたかったんだろう?」

 

エミはさらにもう一つの嘘をついている。

ショウをレイコの親戚で、エミの妹のようなもの、ということにしているのだ。

 

しばらくして、三人は『ラ・ジェルム』の前についた。

 

「エミちゃん!」

 

店先で待っていたレイコが、三人を見つけて駆けてくる。

 

「ああ、よかった。ショウちゃんを見つけられたのね」

 

「うん!」

 

「でも、どうしてデルムさんが?」

 

「実は、道で倒れていたところをエミちゃんに助けてもらってね。いやいや、お恥ずかしい」

 

ショウを地面に下ろしたデルムが、困ったように笑う。

 

「まあ、そんなことが」

 

「念のため、明日にでも病院に行きます。何事もなければ、またお店に来させてもらいますよ」

 

「ええ。お待ちしてますわ」

 

「エミちゃん、それじゃあね。ショウちゃんもお姉さんと仲良くするんだよ」

 

「……うん。ばいばい」

 

小さく手を振るショウに温和に笑ったデルムを見送り、レイコに促されてエミとショウは家の中へと入った。

 

「ご飯、あっためておくから。エミちゃんはショウちゃんをお風呂に入れてあげて」

 

「はーい」

 

それからエミはショウと共に湯船に浸かって汚れを落とし、レイコの作った夕飯を食べたあとはすぐに寝支度を終わらせてエミの部屋のベッドに向かった。

 

「あー、疲れたぁ……」

 

ベッドの上で大の字になったエミは、所在なさげに立っていたショウを手招きする。

 

「ショウちゃんもおいで。一緒に寝よう」

 

おずおずとベッドに上がったショウがエミにぴったりとくっついて横になる。

 

「んふふ。ショウちゃんあったかい」

 

抱き枕のようにショウに腕を回すエミ。

ショウは星の瞳をじっと見ながらささやくように呟いた。

 

「聞かないの?」

 

「ん?」

 

「さっきのこと、あなたにはなにもかもが未知だったはず。私のことだって、何も知らないのに。なのに、あなたはなにも聞いてこない」

 

「確かに聞きたいこともあるけど、今はショウちゃんと一緒に寝たいなぁ」

 

大あくびをするエミに呆れた顔をしたショウだったが、口の端をわずかに上げた。

 

「……私も。答えるより、今は眠りたい」

 

「えへへ。お揃いだ」

 

「けど……」

 

「けど?」

 

「私は、あなたを巻き込んでしまった。神様への道に……。きっと……あなた、は……」

 

そこがショウの限界だった。

最後まで言い切ることなく、スゥスゥと寝息を立てはじめてしまった。

 

「……寝ちゃった」

 

ショウの寝顔を見ていると、エミも自分の中の眠気がいよいよ強さを増していくのを感じていく。

 

「神様への道……神様って、なんのことなんだろう」

 

考えようとしても、眠りに片足を突っ込んだ意識では、まともに頭は回らなかった。

 

「まあ、明日で、いっか……」

 

エミもショウの後を追うように、睡魔に身を委ね、枕に頭を沈めきった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。