Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
今回はそのちょっと前の話になります。
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袁紹が陳留を目指して侵攻している。その情報を確認してからの曹操の動きは早かった。
すぐに戦の準備を完了させて曹操軍も袁紹軍を制圧する為、出立する。そもそも攻めて来る可能性を考慮していたので準備を終わらせるまで其れ程掛からなかった。
戦いの場は官渡辺りになる。これもこの外史の流れとして正常である。
「で、話とは何かしら? これでも麗羽の馬鹿が侵攻しに来てるから、急いでいるのだけど」
「それは私も分かっているよ。だが私と貴女のよしみで少しだけ時間をくれないか?」
「そうね。貴女と私のよしみで少しだけ時間を作ってあげる」
曹操達が官渡に出向く前に司馬懿(ライネス)は曹操に話をする為に時間を少しだけ貰った。こういう時の為に曹操と仲良くなって居たのである。
上の者と仲良くなっておくのは、こういう場合に役に立つものだ。
(ところで猫耳フードの女性が此方を睨んでいるんだけど、何でなの師匠?)
(ああ、アレは無視して構わない)
(あ、はい)
猫耳フードの女性とは言わずもがな荀彧である。
「袁紹との戦いについてだよ華…曹操殿」
「あら、それなら今から叩き潰しに行くつもりなのだけれど」
「正確には袁紹が持つ『龍の力』についてだよ」
カルデア側が曹操に話をしたい理由は袁紹の『龍の力』についてだ。
もしも『龍の力』が于吉関連ならば藤丸立香達も動かなければならない。貂蝉達から、于吉関連ならば解決して欲しいと頼まれているからだ。
そもそも今の自分達の状況を解決するにも于吉の捕獲は必要で有る。何故、この外史に藤丸立香達が居るのか、その答えは于吉が持っている可能性が有るのだから。
「ああ、それね」
曹操も袁紹が持つ『龍の力』に関して情報は持っている。幽州で袁紹が『龍の力』を使ったという情報は情報網を広げている諸侯達ならば知って居るのは当然である。
「もしも袁紹の『龍の力』が本物ならば私達もその戦に参加させて欲しいのだよ」
貂蝉の話だと袁紹が『龍の力』を持つ流れは無い。史実でもそのような話や似た話も無い。
その事から于吉関連だと予想して居る。于吉は以前も孫堅に鬼神を埋め込んだり、黄祖の部下たちに妖魔を埋め込んだりして改造している。
ならば袁紹に龍を埋め込んだという可能性は大いにあり得るのだ。
「もしも『龍の力』が本物なら…怪異関連のモノならオレたちも戦に参加させてください、御願いします」
藤丸立香は曹操に頭を下げる。この戦いが曹操と袁紹の戦争である事は理解して居る。余計な手出しをしているかもしれない。だが、しかし、藤丸立香達にも目的があるが故に指を咥えて見て居る訳にはいか無い。
「いいわよ」
「え、本当ですか曹操さん!!?」
意外にも簡単に了承してくれた。これには目をパチクリとさせてしまう。
もしかしたら曹操の性格上、戦争に部外者を入れるのは断られるかもしれないと思っていたからだ。
「ええ、そもそも司馬懿を見つけたのはそういう怪異を対処させる為だったしね」
陳珪から曹操が妖術関連の物を集めていたというのは聞いている。更に司馬懿(ライネス)からも聞いているが曹操は更に本物の妖術関連のモノを幾つか持っているらしいのだ。
「貴方達の事を知らない訳じゃないし。それに目を付けていた秦良玉や蘭陵王が貴方の仲間だっていうのなら多少は見込みが有るしね」
「ありがとうございます」
「助かるよ曹操殿」
曹操は話を案外分かってくれる人物であった。普通ならばある意味、怪しい集団であるカルデアを即決で受け入れる事はしてくれない。此所は藤丸立香達が旅をしてきた特異点などでは無いのだから。
「貴方達の事は軍に教えておくわ。桂花」
「良いのですか華琳様!?」
「ええ。お願いね」
「分かりました……うう、何でこんな奴等を?」
荀彧が物凄く睨んでくる。特に藤丸立香を。
(メッチャ睨んでくるんだけど…何で?)
(気にするな弟子よ)
何故睨んでくるかは荀彧の性格に由来するのだが、それが分かるのは別の話である。
「最も、貴方達の出番が有るか分からないけどね」
自信が漲っている曹操であった。
368
官渡の戦いで藤丸立香達カルデア勢も参加する事になった。
袁紹の『龍の力』について調べるために曹操軍と一緒に官渡まで一緒に行けるのは大助かりだ。
「だけど勝手な行動は出来ないと言われているがね」
「それはしょうがないな」
諸葛孔明、司馬懿(ライネス)、藤丸立香の3人は官渡での戦いについて袁紹がどう動くか、後ろに居るであろう于吉がどう動くかを予想をたてる。
「曹操から言われたのはたった1つだ我が兄よ」
勝手な行動をしない事である。
曹操と袁紹の戦いに勝手な行動をされて場を荒らされては困るという事だ。藤丸立香達が動くのは袁紹の『龍の力』が出た時のみ。
『龍の力』のという怪異が現れるまでは三国志の流れ通りの官渡の戦いなのだ。カルデア勢が動くのは本来の官渡の戦いから外れた時のみである。
「それは当たり前だろうな。だが、この世界の袁紹のあの性格なら必ず使うだろう」
「私は袁紹に会った事がないのだが…それほど分かりやすい人間なのか?」
「会えばどのような人間かすぐに分かる」
確かに袁紹ならばガンガンに『龍の力』を使ってくる。そもそも幽州で力を誇示するため既にガンガンに使用したほどである。
「袁紹の奴が于吉の操り人形になって居るかもしれない以上、警戒して行くぞ」
龍、ドラゴンとは幻想種の中でも最高位。天災と同じである。
その天災が如き力を使ってきたら戦は大混乱に成るのは必至。三国志の官渡の戦い処では無くなる。
「白蓮さんの話だと袁紹軍で異能は袁紹さんしか持っていないって話なんだ」
「なら袁紹だけを狙えばいいって事だね」
袁紹を止めるイコール袁紹軍の敗北に繋がる。
「黄祖との戦いよりかはマシかもな。今の情報だけだと注意するべきは袁紹だけだからな」
だが、埋め込まれている『龍の力』という部分はこの世界に来てから一番の異能である。
「袁紹が、于吉がどう動くかを何通りかシュミレートしておくぞ」
藤丸立香たちは来るべき戦いの為に急いで準備する。何せ、これから直ぐに官渡へ向かうのだから。
「ここに居ましたか!」
「お久しぶりですー!」
作戦会議をしていると声を掛けられた。
「お久しぶりです立香殿」
「久しぶりやーん!!」
「久しぶりなのー!!」
ぞろぞろ5人が顔を出してくる。全員が見知った顔だ。
「お久しぶりです!」
楽進、李典、于禁、程昱、郭嘉の5人である。
彼女達は藤丸立香達がこの世界に来てから最初の頃に出会った人達である。
「いやぁ反董卓連合の時に居るって聞いてたけど、忙しくて話が出来なかったしなー。皆さんの話を聴いて急いで来たんよー!」
反董卓連合で楽進たちも参加して居た。しかしお互いに忙しくて話も出来なかったのである。
楽進達は藤丸立香や玄奘三蔵を見かけた時は声を掛けたかった程であったのだが。反董卓連合の時はやはりタイミングが無かったとしか言えない。
「本当に久しぶりですね」
「我が弟子が曹操殿と顔見知りと知っていたけど、他にも知り合いがいたのだな」
「うん。てか、楽進さん達がこの世界に来て最初くらいに出会った人達なんだ」
この異世界に転移して最初に出会った人物たち。色々あって、ある村で別れて以来だ。
また縁があって再会したという形かもしれない。星は桃香の所で、楽進たちは曹操の所で。本当に不思議な縁である。
「お元気そうでなによりですー」
「そっちもね」
最初の頃は誰にも仕えておらず、旅をしていたが全員が曹操の元に仕えている。彼女たちはこれから曹操軍で活躍していく事になる。
「話を聞きましたが立香殿達も袁紹軍と戦うとの事ですが、本当かい?」
「うん。と言っても出番があるまで待機だけど」
曹操のゴーサインが無ければ藤丸立香たちは何も出来ない。
「そうなのですか。ですが立香殿達が居れば助かります」
あの村での戦いを思い出している楽進。しかし、今回の戦は盗賊達と戦った時とは規模は何もかも違うのである。
それに藤丸立香達は怪異以外で戦う事は好まれない。貂蝉達としては正常な戦で彼等には手出しはしてほしくないと思っているのだ。
「でも立香はん達の出番は無いかもしれへんけどなー」
「それってあの投石器みたいなやつがあるから?」
「……えっ!?」
ピシリと固まる李典。
「え、ちょ…何でぇ!!?」
投石機は官渡の戦いでの秘密兵器だ。この事を知っているのは曹操軍でもごく僅かである。
その秘密兵器をピシャリと当てられれば李典の反応は当然である。程昱や郭嘉も似たような反応をしていた。
「投石器?」
「それが真桜ちゃんが作ってた秘密兵器なのー?」
どうやら楽進と于禁はまだ知らなかった様だ。
「只者じゃないと思っていましたが…」
「立香お兄さんもなかなか鋭いですねー」
「いやぁ…」
本当は未来の知識なのでズルみたいなものである。それで評価されても申し訳ない。
「分かっていても内緒にしておいてーな」
「それは勿論!」
秘密兵器と言っているのだからベラベラと話す訳にはいか無い。此所でベラベラ話せば曹操に殺されそうだ。
「えー、教えて欲しいのー。ね、凪ちゃん!」
「え、私は別に…」
「あ、教えたらアカンからね立香はん!!」
何と言うか相変わらずといった感じである。
369
元、官軍の張遼こと霞は反董卓連合で夏侯惇との一騎打ちに敗北して曹操軍に降った。
その後の彼女はどうなったかは分からない。月は心配して居るが、霞なら何だかんだで元気にしてるというのが詠の予想である。
詠の予想は正解であり、霞は曹操軍で将を任されている程だ。案外、曹操の所で上手く順応して居る。
「一騎打ちの殺し合いをしていた同士であったのに、今では仲間か」
夏侯惇と霞は2人して仲良く袁紹軍との戦をする為に準備していた。殺し合いをしていた同士が仲間になっているという事例は案外あったりするものだ。
「李書文やーん!」
「む、お前か」
李書文はこれでも反董卓連合で夏侯惇と霞の一騎打ちを見届けた。ある意味知り合い以上の関係かもしれない。
「そう言えば、劉備ん達と一緒に来たんだっけ?」
「ああ。連絡がもういっているかもしれんが、儂らも袁紹軍との戦いに同行する事になった」
「あ、そうなんや!」
「なんだとぅ!?」
霞は特に驚いた様子も無いが、夏侯惇は初耳のようだ。
「何でお前が!?」
「儂だけではないのだがな」
「そうじゃくて、何で私たちの戦に同行するんだ!!」
「後で曹操殿に聞け」
説明が面倒と思ったので李書文は適当に丸投げした。
「多分やけど、袁紹が手に入れた龍の力関連やろ。本当に袁紹の奴が龍の力を手に入れたか信じられへんけど」
大正解である。
「んん?」
「華琳ちゃんって反董卓連合で怪異を見てから妖術関連の探し始めたやん。司馬懿ちゃんを見つけたのも怪異対策やったろ」
「そうだっけか?」
「そうや」
夏侯惇は妖術関連に関してよく分かっていないようだ。彼女の性格上、そういう物は難しすぎて頭痛のタネに為る。
難しい事は軍師たちに任せて、自分は剣を振り回す方が性に合っている。
「ヨージュツだかカーイだか知らんが全部斬り伏せればいい。反董卓連合で起きたのと同じだろぉ?」
「まー、確かになぁ」
怪異だろうが剣で斬る事が出来れば解決に繋がる。怪異なんて物は専門家でなければ解決できない物だが夏侯惇や霞にとってみれば怖くもなんとも無いのだろう。
『龍の力』を持っている袁紹でも気にせず夏侯惇と霞は勝利の為に剣を大いに振るうはずだ。
「袁紹如き、軽く捻ってやる!!」
「そやそや。袁紹には色々と落とし前をつけたいしな」
霞にとって袁紹には恨みしかない。反董卓連合の事件はとても根深いものだ。
「悪いがお前の出番なんか無いぞ!」
「出番が無ければ、無いで良いのだがな」
三国志の歴史通りの『官渡の戦い』ならば李書文も戦いには参加しない。彼女たちの戦に手を貸すなんて不粋な真似なんてするわけがない。
彼女達の戦に手を出さないのが一番良いのだが、袁紹の『龍の力』という部分が不穏なのだ。三国志の歴史に無い流れを修正する。それは特異点を修正するのと同じである。
「…む、その剣は前に持っていたか?」
夏侯惇が帯刀している剣に目がいった。反董卓連合の時には持っていなかった剣だ。
「ああ、この剣か。ふふーん! この剣は華琳さまから貰い受けたのだ!! 羨ましいだろう!!?」
「いや、特に」
「何でだ!?」
羨ましいかと言われればそうでもない。だが夏侯惇が腰に帯刀していた剣は名剣であるのはすぐに分かった。
「これは反董卓連合の時のような異常事態に使えと言われてるんだ。あ、でも通常時でも使っても良いって言ってたか」
「あー、それ華琳ちゃんから貰った剣か。なんちゅう剣やっけ?」
「確か…せ、せーこう剣、だったか?」
「せいこう剣?」
何処かで聞いた事のある剣だと思う。
(せーこう剣、せいこう剣…まさかあの剣か?)
李書文の考えが正解ならば曹操は『あの剣』を持っているはずである。曹操が『あの剣』を持ってるのは三国志的に納得してしまう。
370
曹操軍の準備は万端。
官渡に向けて出陣した。その中に藤丸立香達も混じって居る。
これから『官渡の戦い』が始まるのだ。しかし、ただの官渡の戦いにはならない。
袁紹には『龍の力』が、曹操には集めた妖術関連や藤丸立香たちがいる。これで普通で終わるはずが無い。本当は普通に終わって欲しいものなのだが。
「どうなると思う我が弟子よ?」
「分からない。でもオレらのやるべき事はする。そうでしょ師匠」
「その通りだ我が弟子よ」
官渡の戦いが始まる。
読んでくれてありがとうございました。
次回はこのあとすぐです。(たぶん)
今回は前書きに書きましたが官渡の戦いの前の話。
雑談話のようなものでした。
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藤丸立香「オレたちも同行していいですか?」
曹操 「いいわよ」
藤丸立香「即答!?」
てな、感じです。
368
久しぶりの絡みでした。
最初の頃に出会った恋姫キャラたちですね。
今回は少しくらいの絡みでしたが、日常編ではおおいに絡む話を書いていきます。
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夏侯惇が持っている剣とは何か?
まあ、分かる人は分かります。曹操が持っているであろう剣も。
てか、ほぼ答えを書いているようなものですからね。
370
次回は『官渡の戦い編』が本格的に始まります!!