Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
本当は前話で『官渡の戦い編』は完結させたかったんですが無理でした。
前半後半で分けたのに…なので今回は延長戦のようなものです。
さて、FGOでは新たな新イベント開始中ですね。オデュッセウス、カッケー!!
ああいうヒーロースーツとかドストライクの作者です。
それよりも、本編をどうぞ!!
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「もうっ、猪々子と斗詩は何をやっているのよ。敵の有力武将を引きつけるとか、今の段階でやる事じゃないでしょ。 早く体勢を立て直さないといけないのに、もー!!」
今の状況だと袁紹軍は曹操軍に負ける。
どうにか新たな打開策を考えないといけないのだ。
「麗羽さまは曹操を倒しに行くと息まいてあっちに行っちゃったし…って、え?」
混乱しそうになっていた田豊の肌にポツリと肌に冷たい粒があたった。
「あん? 何か雨が降ってきたな?」
「さっきまで晴天だったのに…いきなりなんて」
ところ変わって文醜たちの場面に。ここで異変が起きていた。暗雲が立ち込め、ポツポツと雨粒が肌に弾ける。
雨が降って来たのである。
「あめー」
徐晃の肌に雨粒があたる。特に気にしていないが、実際は危険である。
普通ならば濡れる程度だが、戦をしている最中ならば雨によって身体が冷えてしまえば通常時よりも動きが鈍くなる。
それが軍全体に関われば無視なんてできないものだ。
「まあ、この程度の雨くらい…」
ポツポツからザーザーと雨の勢いが強くなる。さらにもっともっと強くなる。
強風も発生して、態勢が崩れそうになりそうだ。
「雨じゃなくて嵐じゃん!?」
雨かと思えば更に上の嵐であった。もはや嵐の中で戦争なんて自殺もいいところである。文醜は驚く。
だが、これは自然に発生したものではなく、『龍の力』によって発生したもの。袁紹が嵐を発生させたのである。
更に嵐を発生させただけでなく、自分の軍に加護を与えている。
「嵐で雨がザーザー…いやゴーゴーか? まあいいや。なんか身体が濡れてないし、冷えないぞ」
「本当だね。もしかしてこれって麗羽さまの?」
文醜や顔良たち袁紹軍は嵐の中だというのにまったく平気そうだ。
身体が濡れてもいないし、冷えてもいない。強風で態勢も崩れてかけてもいない。いつも通りの状態だ。
「不思議…」
徐晃は文醜たちの様子を不思議そうに見ている。だが不思議そうに見ている場合ではない。
この不思議な状況が袁紹軍全体に発生しているのだ。嵐の影響を受けているのは曹操軍だけである。
今まで曹操軍が袁紹軍を圧倒していたが嵐によって形勢が逆転していく。もはや秘密兵器の投石器もこの嵐では役に立たない。
嵐によって曹操軍は陣形が崩れ始める。剣を振るう、槍を突く、矢を放つ。そういったものが十分にできなくなったのである。
その隙を嵐の中でも自由に動ける袁紹軍が仕返しと言わんばかりに攻めていくのであった。
「うう、凄い嵐っすー!?」
「姉さん、気を付けて」
曹仁も曹純も嵐の中では上手く戦えない。雨もどんどん強くなり、視界ですら悪くなる。
そんな悪天候でも袁紹軍はいつも通りに襲い掛かってくる。
兵の練度は曹操軍が上だ。しかし嵐による悪天候で曹操軍と袁紹軍の兵の練度を塗り替える。
「何で大丈夫なの?」
「さーなー?」
文醜は自分たちが何故、嵐の中でも平気なのか分からない。そもそも分かろうとしていない。
ただ自分たちが嵐の中でも普通に戦えるという事さえ分かれば他は特に気にもしないのだ。
顔良あたりは何故、平気なのか予想はついているようだが。
「きっと麗羽さまのおかげなんでしょうね」
こんな状況は袁紹以外が起こしたとは考えにくいからだ。そもそも彼女たちの近くでこのような状況を起こせるのは袁紹しかいないのだから、当然の予想である。
「こんな状況で貴女の実力は十分に発揮できないでしょうけれど、これも戦。手加減なんてしないよ」
「だな、悪く思うなよちびっこ」
顔良は『金光鉄槌』を、文醜は『斬山刀』を構える。そしていっきに徐晃に向けて振るう。
「くっ…」
文醜と顔良のコンビネーションが徐晃を襲おうとした時、何者かが2人を薙ぎ払う。
「きゃあっ!?」
「うお、誰だ!?」
徐晃の前に現れたのは哪吒であった。
「助太刀」
「誰?」
「哪吒」
「よろしく。あと助太刀に感謝」
既に曹操と袁紹の戦いに藤丸立香たちが参戦している。そもそもこの状況でカルデア勢が動かないわけがない。
何処からどう見ても怪異である。曹操からも怪異に関しては動いて良いと許可をもらっている。
助太刀には哪吒だけではない。
「助太刀するぜ」
「誰っすか? てか反董卓連合で会ったような…」
「燕青だ。よろしくな」
「よろしくっすー!!」
「元気いいねぇ、アンタ!!」
ノリの良さそうな曹仁に燕青は軽く笑う。こういう人物は嫌いではない。
「大丈夫か?」
「貴女は確か…荊軻さん?」
「私も助太刀しよう。というか各箇所で既に私らの仲間が動いている」
「…助かります。流石にこれは予想外な状況です」
まさか嵐が発生するなんて予想は出来なかった。曹操も予想外であったはずだ。
「お姉さまはこのような状況を考えて荊軻さんたちをこの戦いに参加させたのですね」
「かもしれんな。だが元凶をどうにかせねばこの嵐は止められんぞ」
元凶とは言わずもがな『龍の力』を使う袁紹だ。
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「おーほっほっほ。これが本当の『龍の力』ですわ!!」
嵐のよって官渡は大荒れである。大雨で視界は悪く、強風で態勢も崩れそうになる。
「そしてこの神々しい姿。素晴らしいと思いませんか?」
「いや、大雨すぎてよく見えない」
「あなたには聞いてませんわ」
「いや、藤丸の言葉に私も同意なのだけれど」
藤丸立香の言葉に曹操はウンと頷く。袁紹の姿は大雨によって良く見えない。
「ぐぅぬぬぬ!!」
何はともあれ、袁紹の起こした嵐は脅威であることは間違いない。実際に袁紹軍は曹操軍を逆に追い詰めていっている。
「まあ、いいですわ。こっからが本番ですわ。すぐにケチョンケチョンにしてあげますからね!!」
両手を広げると雨粒が集まっていき、大きな大きな雨粒が生成される。
「これが『龍の力』の使い方ですわよ」
大粒の雨がグニャリと変形していき、槍のようになった。
「喰らいなさい!!」
水の槍が一直線に放出。狙いは変わらず曹操だ。
「師匠。水の槍を水銀の鞭で崩してください!!」
「分かってる」
トリムマウの両腕を鞭に変化させて乱雑に振り回して飛来してくる水の槍をぐちゃぐちゃに崩す。
「リャンさん。今の内に袁紹さんの懐に入り込むんだ!!」
「了解です!!」
水の槍を崩した瞬間に秦良玉は袁紹の懐に入り込んでトネリコの槍を振るうが水の壁を生成されて防がれてしまう。
龍は水を司ると言われている。『龍の力』を使う袁紹が水を操るのは不思議ではない。
袁紹の周囲には水が漂っている。大雨も降っているので水という変幻自在の武器は無限にあるという事だ。
「こういう風にもできますわ」
水を集めてトリムマウが変形させたハンマーのようにして殴りかかる。
「あ、パクったなアイツ」
「言っている場合ですか師匠」
変幻自在の武器というのは脅威だ。剣にも槍にも何にもでも出来る。
想像力が豊な人物ほど変幻自在の武器は化けるのだ。
「危ないですね。ですが負けません」
トネリコの槍を真っ直ぐに投げる。
「こんなもの当たるもんですか」
水の鞭を作り上げて弾く。
「またパクったな」
トネリコの槍を弾いて視線を戻すと秦良玉が消えていた。
「あら、どこに行ったんですの?」
「ここです」
槍を投げた瞬間に秦良玉は袁紹の視界からすぐさま抜けるように跳んだのである。
人間は相手が視界から抜ければ消えたと思ってしまう。その瞬間だけ思考がほんの一瞬だけ止まる。
その一瞬を見逃さない。
「せい!!」
横腹に渾身の蹴りを喰らわす。
「横腹に衝撃!?」
蹴り飛ばされてゴロゴロと転がるがすぐに立ち上がる。
「ですが問題無しですわ」
渾身の蹴りであったのにも関わらず、すぐに立ち上がったのは頑丈であったからではない。秦良玉は袁紹の横腹に蹴りを喰らわした時に違和感を感じていた。
蹴った瞬間、足に重い感覚を感じたのだ。具体的には海や川を蹴った感覚である。
「ふう、水の塊を横腹に配置させるのが遅かったら折れてましたね」
「折れれば良かったのに」
「さっきからいちいち、うるさいですわよ華琳さん」
袁紹は水を周囲に浮遊させており、変幻自在とは盾にもなるという事だ。
これでもかというくらい袁紹は水を操る力を上手く利用している。
「もっと凄いものを見せてあげますわ」
大量の雨粒が袁紹の真上で集まっていき、ニュルリと伸びる。完成したのは水の龍であった。
「水の龍よ。華琳さんを食っちゃいなさい!!」
水の龍が口を大きく開けて迫りくる。
「トリムマウ。水銀の刃になれ」
「はい、お嬢様」
トリムマウは液体に戻って流動の刃となる。
真っ直ぐに来る水の龍を流動の刃となったトリムマウは真っ向から切断した。
「なっ、水の龍が!?」
「うん。綺麗に切断できたね」
「ぐぬぬ…なかなかできますわね」
水の龍は袁紹が考えたとっておきであったのだ。簡単に破られてちょっとだけショックのようだ。
「ですが、華琳さんもろとも貴方方を仕留める方法を今思いつきましたわ!!」
ニヤリと笑う袁紹。その笑いは勝利が見えたという感じである。
「この大量に降る雨粒を全て矢のようにあなた方に放てばいいんですわ」
「……まったく、そういう事だけはすぐに思いつくんだから」
流石にその考えは曹操も苦く思ってしまう。今、降っている雨粒が矢のように飛んで来れば身体が穴だらけになると容易に想像できたからだ。
藤丸立香はウォーターカッターを想像する。超高圧で放たれれば絶命は確実である。
「その余裕そうな顔ももうすぐ絶望に歪むといいですわね」
正直なところ曹操は袁紹が扱う本当の『龍の力』に対して警戒している。そして『龍の力』を完全にものにしている袁紹にも警戒しているのだ。
普段は煩わしい存在で格下に見ているが、ここぞという時の爆発力には評価している。
ぐだぐだであり、様々な人間の思惑があったが袁紹は反董卓連合を結成させた事例があるのだ。無能だと馬鹿にされているらしいが無能が反董卓連合を結成させたりする事はできない。
どれだけ酷い統治と言われても無能な人間が上に立つ事はできない。袁紹には冀州の南皮を治めるだけの実力があるという事だ。
曹操は心の何処かでは袁紹を認めている。それでもただの同族嫌悪のようなものや腐れ縁というのは否定しないが。
「これで終わりにしますわ!!」
袁紹はビシっと指を曹操たちに向けた瞬間に無限に降る雨粒が弾丸のように一点集中で放たれた。
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嵐の中では曹操軍と袁紹軍のぶつかり合い。戦況は袁紹軍に軍配が上がっている。
その理由はやはり袁紹の扱う『龍の力』で戦況をひっくり返したのだ。嵐の影響で曹操軍は体力を削られている。しかし袁紹軍は『龍の力』の加護で守られているため普段通りに戦えているのだ。
この差はとても大きい。嵐の中で自由に動けるというのは大きすぎるのだ。
袁紹が分かってやっているのならば戦いの事をよく理解しているということだ。どうすれば自分たちが有利に勝てるのか分かっている。
「正直に言って本当に予想外です」
「どうした于吉?」
「いや、何であそこまで彼女が龍の力を扱えているのですか…」
「あの者が凄いからではないのか?」
「いや、そんな人物じゃないのですが。てか、無能という評価なんですがね」
于吉にとって袁紹の評価は無能である。簡単に騙せて操れる存在だと思っていた。
「あれで無能なのか? まあ、確かに馬鹿そうには見えるが」
袁紹は『龍の力』を完全にものにしている。嵐を巻き起こしたという事は天候を操ったという事である。
それはもはや神に近いレベルの力であるのだ。
「この外史の彼女は予想外過ぎる…」
自分の予想よりも超える動きをする袁紹に于吉は頭を抱える。しかし、結果的に于吉の望む流れに向かっているので特に問題はない。
「ただ過程がまったく予想外です」
「お前の策の1つとして此処で曹操を潰しておきたいようだが…」
「ええ。特異点を作るようなもので本来の流れから崩したいのですよ」
「本来の流れならば曹操軍が勝つからな」
于吉は外史を壊すために様々な策を用いてきた。
まずは張譲を利用して朝廷の中身を変えようとした。次に過去に跳んで孫呉を滅亡させようとした。3つ目はまたも張譲を利用して反董卓連合の未来を変えようとした。
どれも本来の流れが外れるものばかりだ。人類史の焼失と同じで外史も焼失に繋がるのだ。
「最もこの世界…外史というのは様々な未来を許容しますからね…何がセーフでアウトかは色々と試しておきたいのですよ」
張譲が朝廷を完全に掌握する外史。孫呉が黄祖に敗北する外史。怨霊の張譲によって反董卓連合が壊滅させられる外史。
どれも三国志の流れにないルートだ。それがこの外史で許容されるか否か。
「まあ今は小さな策という穴を所々に空けていきます。そして後に大きな穴を空けて外史を壊してあげますよ」
于吉は小さな策をいくつか用意している。そして大きな策を5つ用意しているのだ。
「まあ、まずはこの戦いがどのような結果になるかですね」
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大雨の弾丸による集中砲火。この場合は集中砲水かもしれない。
無限に降る大雨の弾丸は曹操たちを無慈悲に貫いていく。
「ふう、こんなもんですわね」
大雨の弾丸が止み、普通の大雨に戻っていく。
「ちょーっと、やり過ぎましたわ」
必要以上に集中砲火させた事でまともに被弾していればただの肉塊になっているはずだ。
もし、そうなっていたら見るのも億劫な気持ちになる。
「何だかんだ私塾からの付き合いでしたが終わりはあっけないものですわね華琳さん」
少しだけ暗い気持ちで息を吐く。
「昔から気に入りませんでしたが死んでしまうと、それはそれで寂しいものですわね。ですが華琳さんがわたくし以外の者の手で殺されなかったのは救いでしょう」
袁紹は勝手に思い出を話すように独り言を呟いていく。
「わたくし以外に殺されていたらきっと死んでも死にきれないでしょうからね。で・す・が、このわたくし、袁家の当主に殺された事を誇りに思いなさい。おーっほっほっほ!!」
ザーザーと大雨の中でも袁紹の高笑いは響く。
「そして、このわたくしの覇道をあの世で指を咥えて悔しながら見ているといいですわ。おーっほっほっほ!!」
最大のライバルと思っていた曹操を仕留めた事で最高のハイテンションになっているのか高笑いもいつもよりボリュームが大きい。
「この戦い。わたくしの完全勝利ですわーーー!!」
ビシィイっと勝利のポーズを決めるのであった。しかし、ここで袁紹がもう聞くことが無いと思った声が聞こえてきた。
「勝手に殺さないでくれるかしら」
「その声は!?」
すぐに大雨の弾丸を集中砲火させた場所を見ると銀色のブヨブヨした大きな球体があった。
「なんですかアレ!?」
トリムマウである。
「間に合って良かったよ。流石にあんなものを喰らえば肉塊になりかねないからね。流石の私も肉塊にはなりたくない」
「私もだわ」
トリムマウが元の状態に戻ると中から曹操や司馬懿たちが無事なままで出てくる。
「助かりました師匠」
「はい、司馬懿殿がいなければ危なかったです」
藤丸立香も秦良玉も無事である。
「何で無事なんですの!!」
「そりゃあ、この私が防いだからに決まっているからさ」
「この妖術師風情がこのわたくしの『龍の力』を防ぐなんて。ならば、もっとわたくしの凄いのを…!!」
「悪いけど、そろそろ貴女の番はお終いよ麗羽」
袁紹が更にとっておきの技を繰り出そうかとした瞬間に曹操が割り込む。
「それってどういう意味ですの?」
「今度はこっちの番。反撃って事よ」
曹操は腰に携えていた剣を抜く。
「こういう事態を想定して準備したコレを早速使う事になるとはね」
鞘から抜かれた刀身は嵐の中でも光り輝いていた。
「さて、弟子よ。此方も反撃といこうじゃないか」
「はい、師匠!!」
藤丸立香の令呪も赤く光り輝く。
袁紹が操る『龍の力』は強大だ。しかし、だからと言って諦めるわけにもいかない。
曹操も藤丸立香たちも対抗できないわけではない。今まで袁紹のターンばかりであったが今度は曹操たちのターン、反撃の番である。
嵐の中で2つの光が輝くのであった。
「反撃だ!!」
読んでくれてありがとうございました。
次回は今度こそ2週間以内に更新したいです。
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官渡の戦い、別の所での戦いですね。
カルデア側も異変を感じて参戦していきます。
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袁紹が本気を出しました。
性格はいつも通りですけど力は誰だよレベルです。
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くどいようですが、于吉は袁紹の活躍に驚きっぱなし。
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そろそろ、曹操も藤丸立香たちも反撃です。