Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOの理想のパートナー診断をやってみました。
結果は子ギル君でした。自分でも予想外でしたね。
(そうかぁ…私は愛され弟キャラが理想なのか)

本編では曹操があの剣を使います(タイトルに名称が乗ってます)
ほとんどの読者様が剣の答えを分かってたみたいです。
まあ、まるわかりですよね。
そしてカルデア側では司馬懿(ライネス)の活躍が勝利へと導きます!!


官渡の戦い-倚天剣-

381

 

 

嵐の中で輝く2つの光。

1つは藤丸立香の令呪。そしてもう1つが曹操が鞘から抜いた剣である。

 

「な、なんですの?」

 

赤く輝く令呪。青く鈍く光る曹操の剣。

理由は分からないが袁紹は恐怖した。

 

「あら、その紋様ってやっぱ特別なものだったのね藤丸」

「はい。でもその剣は?」

「これは司馬懿を見つけた時と同じくらいに作らせた剣よ。剣の名は倚天剣」

「倚天剣?」

 

倚天剣。

三国志演義では曹操の愛刀とされており、「天をも貫く」という意味を持つ剣だ。

その切れ味は岩を泥のように斬るほどだと言われている。後に魏の宝剣にまで至る。

 

「この剣は司馬懿とは別の妖術師と腕の良い鍛冶師に作らせた特別な剣。まさかさっそく使うとは思わなかったわ」

 

倚天剣という剣に聞いた事がない藤丸立香だが、刀身を見れば素人の者でも業物だと分かるくらいの魅力と凄さがあったのだ。

英霊たちが持つ特別な剣などを見た時と同じ感覚である。

 

「そっちも何か奥の手があるのでしょう。それを見せてもらおうかしら?」

「勿論だとも。行くぞ我が弟子よ」

「はい師匠!!」

 

藤丸立香の手の甲に刻まれた令呪がより赤く輝く。

 

「令呪をもって命じる。師匠、宝具の発動を!!」

「任せたまえ!!」

 

令呪が赤く輝いた瞬間に司馬懿(ライネス)の魔力が高まる。

藤丸立香から司馬懿(ライネス)に妖力(魔力)のようなものが流れるのが見えた。そして司馬懿(ライネス)の身体が淡く光っていく。

 

「令呪による魔力を流し続けます。師匠、決めてください!!」

「渾沌に七穴、英傑に毒婦。落ちぬ日はなく、月もなし。とくと我が策御覧じろ。混元一陣!!」

 

トリムマウが液体に変化して地面全体に広がっていく。気が付けば周囲の空間が変化し、海の光景が広がった。

 

「これは…」

 

曹操も袁紹も空間が変わった事に目を見開いてしまうくらい驚く。

更に日輪と月輪が地平線から現れた瞬間に液体となった水銀が舞った。

 

「これで終わりだよ!!」

 

宝具『混元一陣』の発動。

幻の日輪と月輪が地平線から現れたとき、相手の得手は潰され、秘めていた弱点が露わとされる能力だ。

相手の得手とは袁紹の『龍の力』だ。力を潰されて袁紹は十分に『龍の力』を使えない。

 

「これは驚かされたわ。幻術…こんな光景を見せるなんてね」

 

空間が変化するほどの能力を見せられれば曹操でも驚く。ここ最近で一番驚いたものだ。

 

「驚きはこれからだよ曹操殿」

 

司馬懿(ライネス)の宝具の凄さは幻術ではない。その効果にある。

 

「ええい、こんなものわたくしの『龍の力』で……って、使えませんわ!?」

 

袁紹が『龍の力』で全てを吹き飛ばそうとするが何も起きない。

 

「無駄だ。もう君の『龍の力』は使えないよ。私のこの能力は相手の得手を潰すものだからね」

 

袁紹の場合、得手とは『龍の力』だ。

強力な宝具やスキルに依存した英霊相手にならば効果覿面の宝具。袁紹は英霊ではないが、『龍の力』に依存している部分は当てはまっている。

司馬懿(ライネス)の宝具によって『龍の力』は潰された。そして次に弱点を露わにする。

 

「まあ、弱点は最初からあったんだけどね」

「袁紹さんの弱点。それは曹操さんだね」

「正解だ。流石は我が弟子だ。観察力も推理力も落ちてないね」

 

袁紹の弱点は曹操だ。三国志的に考えれば簡単に分かるもの。

彼女は三国志の中で誰に敗北したか。袁紹が敗北した相手は曹操である。これはある意味「一度倒した相手である」という部分に当てはまるのだ。

この事実は三国志という世界の中で認知されたものだ。三国志を知る者ならば袁紹が曹操によって敗北するという事を誰もが分かっている。

負けたという事は敗北者にとって弱点になるという事だ。その弱点が『混元一陣』によって、より明確に露わになる。

この外史では袁紹はまだ曹操に負けていないが、三国志という括りを考えて司馬懿(ライネス)は宝具を発動している。

今の袁紹は曹操を見ただけで理由が分からないが勝てないと心の底からジワジワと滲むように思ってしまうはずだ。

 

「…ぐぬぬ、このわたくしが華琳さんを怖いと思っている? そんなことありませんわ!!」

 

『龍の力』は潰されているというのに袁紹は無理矢理にでも発動しようとする。しかし発動はできない。

 

「更に龍自体にも弱点が露わになってる。まあ、概念的にだけどね」

『龍の力』にとっての弱点とは曹操が持つ倚天剣だ。

 

龍と倚天剣に関係は無い。しかし、司馬懿(ライネス)は官渡の戦いからいくつのも条件を見つけて弱点を作り出したのだ。

倚天剣は「天をも貫く」という意味を持つ。

意味を持つというのはとても重要な事だ。意味があるからこそ物事が成り立つ。

倚天剣の「天をも貫く」という意味が『龍の力』の弱点になるのだ。

『天』という言葉は『龍』と同じ意味を持つ。それは人々がその2つの言葉を結び付けたからである。

元々『天』と『龍』という言葉とても近いのだ。どちらも繋がりが非常に近く、同じである。

だからこそ、倚天剣の「天をも貫く」という意味がここで重要になる。『天』と『龍』という言葉が同じ意味になっているのならば倚天剣の「天をも貫く」という意味が突き刺さる。

概念的に倚天剣は龍を貫く事が出来るという事だ。これもまた司馬懿(ライネス)の宝具によって大きく効果が出るようになっているのだ。

 

「曹操殿。君の倚天剣で『龍の力』は斬れる手筈になっている。思いっきり剣を振り給え」

「ええ、分かったわ」

 

カチャリと倚天剣を強く握りしめて曹操は袁紹に向けて剣先を向ける。

 

「ひっ!?」

 

何故か分からない。袁紹は倚天剣を持つ曹操を見て、異様に冷や汗を掻く。恐怖しか浮かばない。

それは袁紹が曹操という弱点に、もしかしたら龍は倚天剣という弱点に恐怖しているからだ。

 

「わたくしが華琳さんに負ける…そんなことありえませんわ。わたくしは天から『龍の力』を手に入れたのですのよ!!」

 

袁紹はこの状況を認めない。

 

「華琳さんをケチョンケチョンにしたら次は空丹さまを助けに行かねばならないのです。こんな所で負けるわけにはいかないんですの!!」

「いいえ、貴女の負けよ麗羽」

 

曹操は倚天剣を大きく振りかぶる。倚天剣の一振りは嵐を斬り裂いた。

 

 

382

 

 

剣戟が雨音共にガキンカキンと響き渡る。

音の発生源は文醜と哪吒の勝負。

 

「おーー、お前ってば強いじゃん!!」

 

文醜は愛刀の斬山刀を縦横無尽に振り回す。

何故か分からないが身体がとても軽いのだ。雨も冷たくもなく、疲労も感じない。

今の状況ならば、ずっと戦える気分になっているのだ。戦いが好きな文醜は今の状況を楽しみ、戦に勝つ為に剣をふるい続ける。

 

「おらあああああ!!」

 

大きく縦一直線に振るって地面をも叩き割る。

龍の加護を受けている為、力も上がっている。

 

「すごい…ぶんちゃん。今日はとっても調子が良いのかな」

 

顔良は文醜の勢いに驚いているが、自分もまた調子が良い事は分かっていた。だが文醜ほどの勢いはない。

それはやはり意識の問題だ。文醜と顔良では戦いに対する意識が違う。

好戦的な人物とそうでない人物では力の振るい方は違うものだ。

 

「よそ見?」

「しないよ」

 

徐晃の大斧を金光鉄槌で打ち返す。

実はこれでも力持ちだったりする。金光鉄槌という大きすぎる槌を振り回すほどだ。

可愛い顔して何とやら、と言うべきか。もしかしたらこの外史の中でも上位に入るくらいの筋力の持ち主かもしれない。

 

「おらおらおらおらおら!!」

 

斬山刀の連続斬り。縦横無尽に斬りまくる。

一太刀でも喰らえばあとは、そのまま細切れにされる運命だ。

哪吒はその危険性を理解しながら躱していく。

 

「避けてばっかじゃ勝てねーぞ!!」

「無問題 勝つ」

「どうやって勝つんだよ?」

「こうやって」

 

哪吒は風火輪を噴射させて飛んだ。

 

「へ?」

 

空を飛べるという事は地面に立って動く時よりも自由に、普通では予想出来ない動きが出来るということだ。

斬山刀の振りかぶりに対して大きく飛んで文醜の真上をクルリと周りながら躱した。

 

「貰った」

 

文醜の背後に周った哪吒は回転蹴りで蹴り飛ばした。

 

「ふぐお!?」

「え、きゃあ!?」

 

蹴り飛ばされた文醜はそのまま顔良を押し倒すようにぶつかった。そして、そのまま揉みくちゃと転がっていく。

 

「痛っつー…アイツやるなぁ。って斗詩の柔らかいお尻が…良いな!!」

「ちょ、今は戦いの最中!!」

 

顔良と文醜がイチャイチャしているのを無視して徐晃はある一点を見る。

 

「おおー、飛んでる」

 

徐晃は戦っていた顔良たちよりも飛んでる哪吒を羨望の眼差しで見ていた。

 

「どうやって飛んでるの?」

「風火輪」

 

何処からどう見て哪吒の両足に装備されている風火輪からジェット噴射で飛んでいる。

 

「シャンもそれで飛べる?」

 

徐晃の夢は鳥のように広い空を飛び回る事だ。戦の最中であるが、目の前に自分の長年の夢を体現させた人物がいる。

無視なんて出来はしない。

 

「…さあ?」

「後でシャンにも貸して」

「否(のー)」

「そんなー…」

 

そもそも徐晃が風火輪を使えるかが問題である。

 

「む」

「あ…」

 

哪吒と徐晃は何かに気付き、天を見る。そこには嵐が斬り裂かれた光景が広がっていた。

 

 

383

 

 

大雨の中で夏侯惇はいつもの大剣でなく、別の剣を持っていた。

足元には袁紹軍の兵士たちが大量に倒れていた。その全てを夏侯惇が斬り殺した結果である。

 

「次ぃっ来い!!」

 

大雨だろうが強風だろうが、嵐にも負けずに夏侯惇は覇気を発しながら剣を構えて立っている。

その姿に『龍の力』の一部を貰った袁紹軍の兵士たちは恐怖した。

先ほどまで袁紹軍は巻き返して来たかと思えば夏侯惇の活躍で一部の袁紹軍は壊滅状態になっている。

夏侯惇の強さもそうだが、彼女の持っている剣も活躍の1つだ。いつもは愛刀の七星餓狼ではなく、曹操より渡された剣。

その剣の名は『青釭剣』。刀身は青白い光明を放っていた。

倚天剣と対を成す剣で、鉄を泥のように切断するほどの切れ味を持っているのだ。

 

「来ないならこっちから行くぞ!!」

 

ぬかるんだ地面も気にせずに走り出して袁紹軍の兵士たちを斬り殺していく。

たった一太刀で鎧ごと胴体が真っ二つ。この事実に袁紹軍の兵士たちは蜘蛛の子のように散り散りになって逃げていった。

 

「我が名は夏侯惇。曹操様の剣だ。絶対に折れることなく、敵を斬り殺す!!」

 

彼女のような人物を一騎当千の将と言うのだ。

 

「どうやら終わったみたいだな。次の戦場に向かうか?」

「ん、ああ。お前も付いて来い李書文。反董卓連合でもそうだったが、お前も強いからな」

 

李書文の背後には山積みになった袁紹軍の兵士たちがいる。

 

「華琳さまの所に向かいたいが…大丈夫と言われたからな。次は霞の方は大丈夫だろうから秋蘭の所に行くぞ季衣、流琉!!」

「はい!!」

「分かりました!!」

 

夏侯惇の部隊を立て直して、すぐに移動しようとした瞬間にある光景が目に入った。

 

「春蘭さま、アレ見て!!」

「何だ季衣…ってアレは」

 

天を見ると暗雲が渦巻く嵐が斬り裂かれた光景であった。

 

「決着の時か」

 

李書文は小さく呟いた。

 

 

384

 

 

司馬懿(ライネス)の宝具と曹操の持つ倚天剣が合わさり、嵐を斬り裂いた。

 

「な、なんですのーーーーー!?」

 

嵐が斬り裂かれた。それは袁紹の敗北を意味する。

倚天剣の一太刀を見て、袁紹は戦意すらも切断されたのだ。心の底から勝てないと思ってしまった。

勝てないと思ってしまった時点で戦いは終わりだ。

 

「…正直、自分も驚いたわ。この剣がこれほどの威力を発揮するなんてね」

 

曹操も倚天剣の威力に驚いていた。

 

「良い剣ね」

 

後にこの倚天剣が曹操の建国する魏の宝剣になっていくのだが、それは先の話である。

 

「私の力もあってこそ…というのを忘れないでくれたまえ」

「分かっているわ司馬懿。褒美に私の閨に招待しましょうか?」

「それは褒美なのかい?」

「夏侯惇や荀彧なら泣いて喜ぶわよ」

 

その2人はちょっとアレなだけである。

するりと曹操の綺麗な手が司馬懿(ライネス)の頬に触れる。

 

「それは…ちょっと」

 

ここで藤丸立香が師匠の貞操を守る為に曹操と司馬懿(ライネス)の間に入る。

その行動に対して司馬懿(ライネス)はニヤリとする。

 

「おやおや、我が弟子よ。もしかして嫉妬したかな? ん?」

「いや、そうじゃなくてですね」

「ふふ…否定しなくとも良いのに」

 

ニヤニヤと微笑する。

 

「仲が良い師弟関係ね」

「曹操殿。もっと弟子の困った顔が見たいので手伝ってくれたまえ」

「あら、それは面白そうね」

 

曹操まで司馬懿(ライネス)の悪い趣味が移ったら大変である。そもそも曹操もそういう趣向を適合しそうだからこそ怖い。

 

「さて、面白そうな話だけどまだ戦はまだ終わってないわ。これから決着をつける」

 

曹操はもう一度、倚天剣を握り直す。

 

「次の一太刀で決めるわ」

 

曹操が袁紹に向けて倚天剣を振りかぶろうとした瞬間に彼女から大きな光が発した。

 

「なにっ!?」

 

大きな光と共に袁紹から4本脚で鷹のような翼が生えた龍が飛び出してきたのだ。

龍はギロリと曹操達を見る。龍の睨みは誰もが恐怖してしまう。

流石の曹操も本物の龍に睨まれるのに対抗は出来ない。倚天剣を持っていようが本物は袁紹が『龍の力』を使うのと全く違うのである。

 

「く……っ」

「リャンさん、師匠。曹操さんを守って!!」

 

そんな時に藤丸立香の声がいの一番に響く。

彼も龍やドラゴンの睨みは怖いと思う。だが、今まで上位のドラゴンと戦ってきたのだ。

恐怖で動けなくなるなんて事はもうない。彼はもう恐怖で足が動かない人間ではないのだ。

 

「藤丸…あなた」

「任せて。龍と戦うのも初めてじゃないから。リャンさん、師匠、行くよ」

「はい。マスター」

「やれやれ、さっきより大変そうだね」

 

藤丸立香、秦良玉、司馬懿(ライネス)は龍を前に立ち向かう。

3人の目には意志の強さを感じる。それは龍を倒すという心意気が強く感じるのだ。

その目を見た龍は暴風を起こした瞬間に南方へと飛び去った。

 

「逃げた…いや、見逃してくれた?」

「どうでしょうか。しかし、これで戦いが終わりであることは違いありません」

 

龍と戦う事になるかと思えば、戦う事にはならなかった。龍は何を思って南方に飛び去ったか分からない。

 

「秦良玉の言う通りね。流石に龍が出てきた時は焦ったけど…これで終わりよ」

 

カシャリと倚天剣を鞘に納める。

天を仰ぐと嵐は消え去り、蒼天が広がっていく。

 

 




読んでくれてありがとうございました。
次回は2週間以内に更新したいです。

次回で官渡の戦い編は終了です。(前半後半からの延長戦でした。)
次々回はちょびっと日常編に入ります。

381
司馬懿(ライネス)の宝具と曹操の倚天剣の2つを組み合わせた内容でした。
色々と結び付けて袁紹の『龍の力』を倒しました。
この戦いを考えた時にどうやって勝利するかを考えた結果、こうなりましたね。
たぶん、組み合わせ的に問題無いと思います。

382
一方そのころ①
徐晃は哪吒は風火輪に興味津々。
この組み合わせの話はまた書いて行きたいです。
てか、真桜ちゃんならそういう発明をいつかしそうです。

383
一方そのころ②
倚天剣の話はズズイと出しましたが対の青紅剣はちょびっとでした。
青紅剣の話はまた今度にします。
もしかしたらその時は夏侯惇の手から離れて『彼女』の元にあるかもですが。

384
決着です。
『龍』の正体ですが…たぶん調べれば分かると思います。
容姿と南方に飛び去ったという点であの龍を指していますので。

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