Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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はい、早速更新です!!(頑張った)
今回は官渡の戦いの決着後の話です。これで官渡の戦い編は終了です。


官渡の戦い-決着後-

384

 

 

官渡の戦いは終わりを向かえた。

嵐が斬り裂かれてからは曹操軍は軍配が戻り、袁紹軍を制圧していく。

先程まで袁紹軍が圧倒していたのが嘘のようだ。

袁紹軍は瓦解し、軍の編成はもうメチャクチャである。あとは逃げ惑う獣を狩るだけにすぎない。

 

「もう終わりね。それにしても麗羽は何処に逃げたのかしら?」

 

龍が南方に飛んでいったあと、袁紹を確認しようとしたら消えていたのだ。

龍が出現している間に逃げたのかもしれない。

 

「あの龍は袁紹さんを逃がす為に現れたかもしれないね」

「まさか」

 

龍は皇帝の象徴だ。その関係は深い。

もしかしたら龍は霊帝を助けだそうという気概に気に入って力を貸し与えていたかもしれないのだ。

 

「何はともあれ、この戦は私たちの勝利よ。そしていっきに南皮を攻め落として終わりよ」

 

曹操の言う通り、あっという間に主不在の南皮を陥落させられ、河北四州も曹操の支配下に置かれる事になるのはこの後の話である。

 

「それにいくら袁家でも、ここから再起は難しいでしょうね。名の折れた名門に助けを乞われて拾う輩はいないでしょうし」

 

一瞬だけ劉備の顔が過ったが、すぐに考え直すのであった。

 

「………いないわよね」

 

官渡の戦いは色々あったが、歴史の流れと同じように曹操の勝利で終わった。

夏侯惇が率いる部隊や霞が率いる部隊などは既に制圧を終えて、次の準備に取り掛かっている。

 

「勝ったすー!!」

「そうね。姉さん」

 

嵐が発生した中での袁紹軍との戦いは苦戦を用いられたが、結果的には勝利。

龍の力なんてものがなければ順調に勝てていたかもしれない。

 

「それにしてもびしょびしょっす」

 

雨が降っていたのだから衣服が濡れるのは当然だ。そして今は嵐が消え去って蒼天が広がっている。

濡れた服を乾かすために曹仁は太陽に向かって身体全体を向ける。

 

「…乾かないっす」

「そんなすぐに乾かないわよ姉さん。ちゃんと洗って干さないと」

「じゃあ脱ぐっす」

 

曹仁は周囲なんて気にせずに服をスパーンと脱いだ。

 

「姉さん!?」

 

曹純の前には綺麗な肌を露出する姉がいる。

 

「何で脱いだの姉さん!?」

「だって服が汚れたり、濡れたら脱ぐのは当たり前っすよ」

「場所を選んで!!」

 

実は彼女の癖として服を脱ぎたがる、というのがある。その癖に妹の曹純はいつも悩まされているのだ。

羞恥心が無いのか、それとも裸体主義の感覚を持っているのかもしれない。

 

「えー…でも燕青は服を着てないっすよ」

 

燕青が服を着ていないというのは誤解である。

上半身を大きく露出したスタイルなだけでだ。

 

「あの方は、ああいう服装なんです。そもそも姉さんは女の子なんだから」

「じゃあ、上だけなら良いんすね」

「違います!!」

 

手のかかる姉がいる妹の構図である。

 

「大変だなぁ」

「え、青燕さん。今の姉さんを見ないでください!!」

「まずは姉に服を着せろよ」

「正論ですけど、後ろを向いてください!!」

 

「はいはい」と燕青は後ろを向くのであった。

後ろを向くと徐晃と哪吒が歩いてきた。気になったのは徐晃が哪吒の風火輪を物凄い目で見ている点。

 

「おう、そっちも片付いたか」

「逃げられた」

「そうなのか?」

 

顔良と文醜に関して言えば逃げられた。

嵐が斬り裂かれて、袁紹軍の軍配が悪いと判断されたのか、すぐに撤退したのである。

哪吒としては追いかけてまで討伐する必要はなかったので見逃した。徐晃も追撃する気はなかったようで、武器を収めたようだ。

 

「じーー」

「…」

「じーー」

「…」

「めっちゃ見られてるぞ」

 

徐晃の意識は風火輪のみ向けられている。

長年の夢が叶う方法が目の前にあれば、その気持ちを分からないでもない。

 

「貸して」

「否(のー)」

「貸してやれよ」

 

徐晃が空を飛ぶ日は近いかもしれない。

 

 

385

 

 

「うう…ひどい目にあったぁ。きょっちーも強かったけど、あのちびっこその二と急に現れた空飛ぶ奴も無茶苦茶だったな」

 

文醜たちは戦場から撤退して森の中まで逃げていた。

 

「文ちゃん、これからどうしよう?」

「本陣も夏侯淵と曹洪にやられてたしなぁ…麗羽さま、大丈夫かな?」

「たぶん、大丈夫じゃないかも」

「そっか…おかしい人を失くしたなぁ」

 

そこは「おかしい」ではなく「おしい」である。

 

「勝手に殺さないでくださいます!?」

「うわっ、出た!?」

「死ぬかと思いましたよ…」

「ひゃあ!?」

 

おしい人を亡くしたと思っていたら、その本人が現れたのである。

更に軍師の田豊もいる。

 

「うう、麗羽さま、真直、もう悪口なんか言いませんから、大人しくあの世に逝ってくださいませ…むにゃむにゃむにゃ」

「で、す、か、ら。勝手に殺さないでくださいます?」

「へ、生きてる?」

「死んだらここにいるわけないじゃないですか」

「なんだ…良かったぁ」

 

袁紹も田豊も無事であったのだ。

実は袁紹は龍が起こした暴風で戦線から離脱されて田豊の元まで飛ばされて来たのである。

短期間であったが袁紹に宿っていた龍が最後に助けてくれたのかもしれない。

 

「良くありませんわ。本陣もあのクルクル小娘に落とされてしまうし!!」

「そういえば、さっき張遼の騎馬隊が北に向かってましたしね。恐らく…」

「あー。だったら南皮も危ういですね」

 

予想は正解で曹操は既に南皮に向けて進軍する準備を始めているのだ。

 

「な、なんですって…真直さん、全軍を集結させて至急南皮へ…」

「その全軍が、もうこの4人だけなんですってば」

 

袁紹軍は既に壊滅状態。これから軍を再起するのはほぼ不可能だ。

 

「ああ、なんたること。これからわたくしはどうすればいいんですの!!」

「どうするって言われても、なぁ…」

「とりあえず…ですね」

 

これからどうするか。そんなものは決まっている。

 

「いたで、袁紹や!!」

「ここから逃げる事を考えません!?」

 

まずは逃げる事である。

 

「追えー、逃がすな!!」

「待てなのー!!」

「待てって言われて待つ馬鹿がいるもんかー!!」

 

そのセリフは様式美だ。

 

「斗詩さん、もっとお急ぎなさい。真直さんも!!」

「軍師になに無茶言ってるんですか!?」

「お待ちなさい。これ以上の逃亡に良い事などありませんわよ!!」

「なんだかわたくしと喋り方まで被っている小娘がいますわ。ああもう、これだから曹一門は不愉快なのですわ。不愉快でたまりませんわー!!」

 

グチグチと不満を言いながら袁紹は誰よりも早く逃げるのであった。

 

「っていうか何で麗羽さま、こういう時だけ走るのそんなに早いんですか!?」

 

「待ってくださいよーーー!!」という声が響く。悪運が強いのか袁紹達は逃亡に成功するのであった。

 

 

386

 

 

徐州にて。

桃香たちは陳留から徐州に戻ってきてから曹操との会談の内容を皆に説明した。

 

「そうですか。曹操さんは、そんな事を」

 

陳留の都を見物する間もなく、戻った桃香たちを迎えてくれたのは朱里たちであった。

 

「うん。わたしのせいでみんなにもまた迷惑をかけちゃうと思う。…ごめんね」

「そう何度も謝らないでください、桃香さま」

「そうだよ。それより徐州を守ってくれてありがとう桃香さま」

「うん。陶謙様だって曹操さんに同じ事を言われたらぜったいにイヤだって言ったはずだもん」

「月ちゃん…雷々ちゃんに電々ちゃんも」

 

月たちは慰める。彼女の言葉は間違いではないと言ってくれるのだ。

 

「けど、官渡の決着もついたし、桃香の方針も決まったなら、この後の事は考えておかないとな…」

「………は?」

 

北郷一刀はつい間の抜けた声を出してしまった。それに対して白蓮は「あれ、変な事を言ったか?」という顔をする。しかし陳留に行っていた組は白蓮の言った言葉につい聞き返してしまう。

 

「何? 官渡の戦の決着がついた、とは?」

「ええっと、袁紹軍が陳留の曹操軍に戦を挑んで…ほぼ半日で壊滅した話は…?」

「き、聞いてないよ!?」

 

桃香ですら知らない情報だ。

 

「まさかもう終わったのか!? 陳留から帰ってくるまでの、こんな短期間で!?」

「はい。袁紹さん以下の主力は現在は行方不明。曹操さんは既に河北四州を合併すべく動き出していると聞いていますが…」

「なんと…事実は講談を超えるとはいうが」

「まさかそこまでとは…」

 

曹操は三十万以上、袁紹は更に上の兵力を持っていた。それらを動員していても一瞬で終わる時は終わるようだ。

 

「…どんな戦だったんだ?」

「まだ詳しい情報は集められていませんが…『龍の力』で嵐が発生したとか…」

「嵐?」

「はい。ですが曹操が特別な剣で斬り裂いたとか」

 

まだ完全に確実な情報が掴めていないため真実がどうか分からないが、実際はほぼ正解だ。

その中に藤丸立香たちも活躍していたのだが。

 

「その中に藤丸たちは?」

「曹操が妖術師を抱えていたという情報があったので、その妖術師というのが藤丸さんたちだと思います」

「そっか」

 

たった半日で官渡の戦いは終わったが、中身はとても濃い戦であったのだ。

その事実が分かるのはまた後日となる話。

 

 

「いずれにしても、曹操さんが河北四州を勢力下に治めるのは時間の問題ですし、予告があった以上、我々も手を打たねばなりません」

「…そうだな」

 

朱里の言葉に北郷一刀は頷くしかなかった。

曹操が予告した事がフェイクでなければ、最初の目標は涼州。そして次が徐州となる。

狙いが徐州に向いた時、桃香と北郷一刀たちがどう動くのか。それはそう遠くない未来である。

 

 

387

 

 

官渡の戦いは曹操の勝利で終わった。

結局のところ三国志の流れに沿った形である。それが正しいのだから変ではない。

于吉としては袁紹が予想外の動きばかりするので「もしかしたら」と思ったが、これも裏切られた。

 

「予想外な事ばかりでしたが…結局は負けましたか」

 

まさかこの外史の曹操が倚天剣を使うとは思わなかった。

これもまたこの外史が他の外史と比べていくつか違うという事である。本来ならば曹操は倚天剣を使う事はないのだから。

 

「もしかしたら他の外史でも曹操は倚天剣を持っていたかもしれませんが、このように使う事は無かったからですかね」

 

曹操が作らせた倚天剣。これも警戒すべき1つとして頭に入れておく。

 

「それに新たなカルデアの戦力も見れましたし。これも今回で得るものの1つでしたね」

 

司馬懿(ライネス)の能力は警戒度が高く評価。弱点を作り出すというのは誰もが恐れるものだ。

于吉にも弱点はある。そこを突かれれば于吉だってただではすまないのだ。

「気を付けないといけませんね」と小さく呟くのであった。

 

「それにしてもこの策を潰されましたか…なら次の策を準備しに行きますか」

 

于吉の次の策。彼は様々な所に策を仕掛けている。

現段階の外史は群雄割拠の真っ最中だ。その後は三国が対立するまでに至る。

彼の中では三国が対立する箇所が本番だ。それまでにメインの計画を準備しつつ、小さな策で色々とそぎ落としていきたいのである。

 

「次の策は…また孫呉ですね。またも私自身が動きますか」

 

2番目の策では過去に戻って孫呉の歴史を歪めたがカルデア勢に修正されてしまった以来である。

 

「また過去にでも行くのか?」

 

『鬼』が呟くが于吉はそれを否定する。

 

「いえ、違いますよ。違う方法です」

「違う方法?」

「はい。前の時では調整が間に合わなかったアレと私の呪術を使って孫呉を落とします。正確には孫策を消せればと思います」

 

于吉の次の策は孫策を狙ったものである。

 

「この段階で孫策が死んだら孫呉がどうなるか…ま、それは成功次第ですね」

 

于吉は早速、次の策を実行しに動くのであった。

 

「あ、その前に…南方に飛び去った龍を捕まえにいくの手伝ってくれません? あの龍にはまだ利用価値があるので」

 

于吉ならば1人で龍を捕まえる事はできるが、簡単ではない。幻想種の最上位の存在を相手にするのは流石の于吉であっても骨が折れるほど大変であるのだ。

『龍の力』は最上のものだ。まだ利用できるのならば捕獲しておきたいというのが彼の本心である。

 

「断る」

「そう言わないでくださいよ」

「嫌だという意味じゃない」

「じゃあ、どういう意味ですか?」

 

于吉が『鬼』の言葉に疑問を抱く。

 

「今から向かっても、どうせ食い荒らされてるぞ」

「ああ…」

 

今の言葉で全てを察した。

 

「あの蟲は成長途中だから食欲旺盛だ」

「それは諦めるしかないですね」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回は二週間後予定です。

前書きにも書きましたが、今回で官渡の戦い編は終了です。
次回からは日常編に入ります。そして日常編が終われば次は…孫呉独立編に入る予定です。(たぶん)


384
官渡の戦いは終了!!
これだけです。

385
今後の袁紹はどうなるのか…。
まあ、原作通りで曹操の言う彼女たちを拾う輩の元へ。

386
桃香と北郷一刀たち。
原作でも同じように官渡の戦いが半日で決着がついたのに驚いてます。
(中身は相当濃い戦だったんですよ)
そして、ここからどう動くのか…それは原作の方で。
次に北郷一刀たちが藤丸立香たちと再会するのは…あの辺かな。

387
予想外すぎて疲れた于吉でした。
そして次に于吉はまたも孫呉へ。
どんな物語になるかはゆっくりとお待ちくださいね。

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