Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
いやあ、まだクリアしてませんが5章のオリュンポスの難易度は難しいですね。
令呪や石を使ってしまいます。
そしてPU2…早速回しました。あの英霊…カッコイイですね!!
さて、本編ではタイトル通り、何姉妹が久々の登場です。
どのような展開になるかは物語をどうぞ!!
408
揚州の建業へ向かう前に足休めがてら合肥に立ち寄ったカルデア御一行。
メンバーは藤丸立香、荊軻、李書文、燕青、武則天、秦良玉、司馬懿(ライネス)だ。残りのメンバーはどうしたかと言われれば別行動である。
残りのメンバーである諸葛孔明たちは荊州に向かっているのだ。彼らは荊州にいるかもしれない楊貴妃を探しに行ったのである。
藤丸立香たちはそろそろ雪蓮たちに顔を出さないと後が怖いと思ったので揚州の建業に向かっているのだ。
彼だけではない。荊軻や李書文、燕青もまた雪蓮たちの世話になったのだ。彼らもそろそろ顔を出しに行かなければならないのである。
「やっと合肥までついた。今日はここで休んで明日からまた建業に向けて頑張ろう」
「そうだな。流石に歩き疲れたよ」
陳留から合肥まで旅はなかなか大変であった。しかしアメリカ大陸横断をした経験があるため、そこまで苦ではない。
苦ではないが疲れるものは疲れるし、腹も減るものだ。
「お腹が空いたな…」
「なら、屋台で何か食っていかねえか主。ラーメンとかラーメンとか」
「ラーメンが食いたいんだね燕青」
ラーメンも良いが他の中華料理も食べたいものだ。これだけ屋台があるのだから食べ歩きも悪くない。
「よし、せっかくだし屋台を周ろう」
「お金はあるのかマスター?」
「もちろんだよ。イベント素材のあまりで金のズタ袋とか金の延べ棒とか」
ズッシリと金塊を出す。イベントのあまり素材。よくよく考えてみると高価な物や希少な物があったりする。
「それを堂々と出さないでくださいねマスター。せめてどこかで換金しましょう」
流石に屋台で金の延べ棒を出されたら屋台の店主も困るはずである。ギルガメッシュとかは普通にやりそうであるが。
「ラーメンはシメで食べるとして手で摘まめるものとか食べながら周ろう」
「あ、いいねぇ。主は分かってるぅ」
「食べ過ぎは注意だぞ弟子よ」
「師匠の分も買ってくるね。もちろん毒見はしておくから」
司馬懿(ライネス)のことは分かっている。
「おやおや、弟子は師匠に食べかけを食わせるのかな?」
「いや、そういうつもりじゃなくて…」
「それとも自分の唾液のついた物を食べさせたいと…まったく、とんだ性癖を持った弟子だな。ふふふ」
「違いますからね師匠!?」
こういう所でからかってくる司馬懿(ライネス)はいつも通りだ。彼女も面白がって藤丸立香をからかっているのが見て分かる。
「師匠ったら…とりあえず、あの屋台で肉まんを買ってくるよ」
指さした方向にある屋台に藤丸立香は向かって肉まんを注文する。
「すいませーん。この肉まんをください」
「いらっしゃませぇ!! おいくつですかぁ!!」
「6個くださ…あ」
「6個ですね。お待ちくだ……あ」
藤丸立香の目の前にまさかの人物たちがいた。
「えと、何進さんに何太后さん…ですよね?」
まさかの人物とは何姉妹であったのだ。
「立香く~ん!!」
「おお、あの時の小僧ではないか!!」
何太后は猫なで声で腕を組んできて、何進は喜色の声を上げた。
「久しぶりじゃない立香くん。会いたかったわぁ」
「え、いきなりなんですか!?」
いきなり抱き着いてきた何太后にドキドキしてしまう。前にも誘惑されかけたが平然を装っていたが実は内心、結構ドキドキしていた。
あの時は裏があると思って警戒していたのである。前は色々と陰謀が渦巻く洛陽にいたのだ。それに何姉妹の立場も后と大将軍であったので警戒しないわけはなかった。
尤も今も警戒していないわけではない。警戒するがそれは危険な感じはなく、面倒くさいという感じがするのだ。
「久しぶりだな…確か立香という名前であったよな」
「はい。藤丸立香です」
「ふふふ…」
何進も密着しそうになるくらい近づいてくる。
「まさか我々に会いに来たのか? ふふふ、やはり我らの美貌が忘れられなかったのだな?」
どこからそのようなコメントが出てくるか分からないが、この雰囲気は間違いなく藤丸立香を誘惑している雰囲気だ。
「いや、あの…」
「ねえねえ立香くん。私たち困ってるの。助けてぇ」
「そうだ。お前は私に向かって、何か困ったことがあれば力になると言っていたな。ならば今こそ力になってもらおうか」
確かに何進に「何か困ったことがあれば力になる」と言った。その言葉に嘘はない。
彼女たちが本当に困っているのならば力になる。
「困っているんですか…そうには見えないですけど」
「困っておるわ!!」
「屋台繁盛してるじゃないですか」
「それは関係ない!!」
屋台の繁盛は関係ないようだ。
「貴様は分かって言っているんじゃないだろうな!!」
何姉妹の転落人生は少しは知っている。月たちに将軍の座を引きずり降ろされたのだ。
その後は死んだと噂になっており、真相は定かではなかった。しかし反董卓連合では実は生きていたと諸葛孔明から報告を受け、その後は行方不明になっていたのだ。
「無事だったんですね何進さん、何太后さん」
「この私が死ぬはずがないだろう」
「でも、ここまで大変だったのよ。本当に大変だったのよ」
大事なことなのか2回言った。
確かに彼女たちからしてみれば今まで大変であったかもしれない。后、将軍だった者が転落し、落ちぶれた。
彼女たちを恨む者はいる。将軍、后でなくなったならば恨みを晴らそうと復讐しようとしてくるかもしれない。
上に立つものは恨まれるものだ。それは上に立つ者の宿命。
彼女たちは身を守りながら合肥まで逃げてきたのである。
「もうこの逃亡生活に耐えられないの。そろそろ安心した生活がしたいわ。ね、だから助けて立香くん」
ギュウギュウと腕に何太合の胸が当たっている。もしかしたら当ててるのかもしれない。
男を誘惑する1つの手だ。この手でよく男は陥落する。
「困っているなら力になるよ」
「本当か!!」
「流石は立香くん。やっぱりそこらの芋とは違うわ」
(芋?)
またも面倒な者達に絡まれてしまったものだ。しかしカルデアでは面倒な者たちと絡まれる、巻き込まれるなんて日常茶飯事である。
そもそも何姉妹よりも面倒で厄介な者なんて何人もいる。本当にいつもの事である。
「助けると言っても何に困っているのですか?」
復讐者に命を狙われているのか。生活が困難なのか。
屋台が繁盛しているので生活には困っていなさそうである。命を狙われているのは確かに困っている以上の問題だ。それならば力にならないといけない。
再開して次の日には殺されていたなんて事になっていたら後々、藤丸立香は後悔する。
「この生活に困ってるのよ。贅沢できないなんて嫌!!」
「そうだ!!」
「ああ、そういう…」
どうやらそこまで困っていないかもしれない。
「困ってるわよ!!」
困っているか、困っていないかと言われれば本当に困っているらしい。
后、将軍だった者ならば今の状況は確かに耐えられないかもしれない。
贅沢三昧であったのにいきなり貧困生活になってしまえば辛いかもしれない。
「うーん…助けてと言われてもどうしよう」
生活に困っていると言われても、逆にどう助ければよいか困ってしまう。
彼女たちの言葉を考えるに贅沢な生活、漢帝国のトップに立っていた時代に戻りたいという事だ。
流石に藤丸立香の力ではそんな事は出来ない。
(うーん…彼女たちを保護してくれる人に頼むしかないのかな?)
元とはいえ、彼女たちは漢の大将軍と皇帝の后だ。保護させるにしてもこの大陸でも名の広まっている者しか出来ない。
「知り合いに保護をしてもらうように口利きしてみるよ」
「ほう、それは誰だ?」
「曹操さん」
この大陸で頂点に近いのは曹操だ。勢力も拡大しており、一番力が集まっている。
これならば何進たちも納得するかもしれない。
「曹操はダメだ!!」
曹操は駄目のようだ。
「貴様、本当に分かって言っておるのではないだろうな!!」
曹操が駄目ならば他の候補は無い。
これからの行先である建業にいるであろう雪蓮たちか、もしくは桃香たちくらいだ。
2人の事を思い浮かべるが、現実だと厳しいという他無い。まだ藤丸立香は知らないかもしれないが、彼女たちは彼女たちで大変であるのだ。
雪蓮は袁術から鎖を引き千切るために離反を起こしている。桃香は曹操から逃亡の最中だ。
「うーん…他の候補だと、孫呉の孫策さんか、徐州の劉備さんくらいかな」
「その2人も無理だ!!」
「何でですか?」
「劉備は曹操から逃亡中だ。そして孫策は袁術を裏切った」
この事実にすぐに理解した。
雪蓮は袁術からの鎖を引き千切り、独立しようとしていた。それがたまたま今だったのだ。
桃香の方に関しては曹操が徐州を近いうちに攻めると聞いていた。まさか逃亡するとは想像できなかったものだが。
これでは2人に何姉妹を保護してもらえるように口利きなんてできない。
「ごめん。無理だった」
「諦めるな!!」
「じゃあ、立香くんの力を貸して」
「オレの力?」
何太后は藤丸立香が有している戦力を知っている。彼が洛陽で月の客将をやっていた頃、活躍を聞いていた。
彼の部下は相当な手練れだと聞いている。その戦力さえ手に入れば使いようはいくらでもあるのだ。
藤丸立香が部下たちの主であるならば、彼を陥落させてしまえば手練れの部下たちは操り人形だ。
強い戦士は今の世では重宝される。ならば各勢力に入り込めることは可能だ。
田舎だと言っていたが力があれば益州や荊州などで伸し上がることも可能であるのだ。のし上がればいずれは都へ返り咲くことができる。
何太合はすぐさま行動を移す。
「ねえ、私を守ってぇ」
耳元で物凄く甘い声が聞こえる。彼女の可愛さ、美しさも相俟って、そこらの男ならば一瞬で陥落だ。
ここから何太后は色仕掛けをより濃厚にして攻めようと動こうとする。
洛陽にいた頃、自分の魅力が効かなかった事を根に持っている。それも加えて今度こそ落とそうと考えているのだ。
「立香くん、もしも守ってくれたら私…」
「ウチの主に何してんだてめえら」
ここで藤丸立香セコム隊が1人の燕青の登場である。
「つーか、てめえら。あん時の気に入らねえ奴らじゃねえか」
ギロリと視線で何進と何太后を射抜く。
「ひっ!?」
「き、きき、貴様は!?」
何故か藤丸立香の背中に隠れる何姉妹であった。
「……主よぉ。ほんと、面倒事に絡まれるなぁ」
「これオレのせいじゃないでしょ」
409
まさか何姉妹と再会するなんて思いもしなかった。
関わってしまった以上、無視することは出来ない。それに彼女たちはどうやら気になる情報を持っているようだ。
情報の交換と引き換えに、彼女たちの力になれる事をする。そのような取り決めを決めたのだ。
「そっか。桃…劉備さんたちは曹操さんと戦うでも、降伏するわけでもなく、逃げる事を選んだんだ」
「ああ。まあ、確かに劉備の戦力では曹操のやつには勝てんだろうからな」
実は何姉妹は徐州にいたのだ。これを聞いた時は少し驚きである。
世の中は狭いというのはこういう事かもしれない。
「それにしても民も含めて20万以上での逃避行か」
「これは驚きですね。20万の逃避行とは…」
秦良玉も驚きのようだ。彼女だけではなく、武則天や燕青だって驚いている。2人からしてみれば「無謀だ」と思う。
「最初は揚州に向かったけど、袁術の裏切りによって今度は荊州に向かったんですね?」
「ああ」
桃香たちの逃亡先は荊州だ。ちょっとした偶然なのか、諸葛孔明たちの行先も荊州である。無事に桃香たちが荊州に辿り着けば、諸葛孔明たちと合流するかもしれないと思うのであった。
「そして孫策さんは袁術さんを裏切ったと」
「ああ。袁術は撤退して建業に戻った。孫策の奴ならば今頃、袁術を討つために全軍で建業に向かっておるだろう。いや、既に戦いは終わって孫策が建業を取り戻してるかもしれんな」
いずれは雪蓮が袁術に対して謀反を起こす事は分かっていた。それがついにやってきただけにすぎないのだ。
そんな時に顔を出すのは邪魔になるかもしれない。せっかく会いに訪れたが、会うのは控えようかと考えるようになる。
(でも、せっかくここまで来たし…様子を見て会うかどうか決めようかな)
建業の近くまで向かって、顔を出せない様子であったならば諦めるしかない。
「まあ、戦中に顔を出したら独立するのを手伝えと言われそうではあるがな」
荊軻の言う通りかもしれない。これでも藤丸立香たちは孫呉に所属して戦った事がある。
まず、間違いなく戻ったら荊軻と李書文と燕青は駆り出される可能性は大いにある。
「駆り出されるって…」
「これでも孫策たちとは深い仲なのだよ秦良玉よ」
「そうなのですか荊軻殿?」
「ああ」
于吉、黄祖との戦いはとても厳しい戦であったのだ。忘れる事はできない。
「特に主なんかはより深い仲であったぞ。なんせ孫呉の種馬だからな」
「ええっ!?」
「どういうことだ我が弟子よ?」
「その話は妾も詳しく聞きたいのう」
「何も無かったですから!!」
藤丸立香が孫呉では種馬。言い方を変えると天の血を孫呉に入れる為にそのような事になってしまったのである。
ヘタレが発動してしまったので雪蓮たちとはそのような事は一切何もなかったが。
「マ、マスター。だ、駄目ですよそんな事は!?」
「まったく…弟子も男という事か。で、どのような事をしたんだね?」
「嘘をついたら拷問じゃぞ?」
「だから何もありませんでしたから!!」
本当に何もなかったのは事実である。
「本当か~? あの呉の者たちにどんな事をしたのかね。この師匠だけでいいから言ってみるといい」
司馬懿(ライネス)は藤丸立香が困っているので楽しそうに迫る。
心のどこかで弟子が孫呉の種馬であったというのに妙なイラつきがあったので、それを解消するためにも弄っているのもある。
「本当に何もありませんでしたから!!」
「それはそれでつまらんと言うか…男としてどうなんだ?」
もしもここで藤丸立香が「やりました」と言えば不機嫌になる未来があるのだが、それはまた別の物語であり、外史であるのかもしれない。
「ぐ……でも」
「でも?」
「なんというか…やってはいけない気がするような」
「どういう意味だね?」
「世界の意思というか…」
「何を言っているんだ我が弟子は」
もしもここに貂蝉がいれば「だってこの物語はR18指定じゃないからねん」とか訳の分からない事を言ったかもしれない。
「世界の意思とか関係無いだろ」
何処か呆れ顔の司馬懿(ライネス)であった。
「まあ、マスターもそろそろ大人の階段を登るべきだよなあ」
「いきなり何さ燕青!?」
まさか燕青までこのような事を言ってくるとは思いもしなかった。
「女を抱く事で男として一皮むけるってあるしな」
人によって様々であるかもしれないが燕青の言った事は間違ってないかもしれない。
「主もそろそろ経験しとけば?」
「そんな簡単に経験しろって言わないで!?」
「主が頼めばヤらせてくれる奴らはいるだろ」
「いないよ!?」
「いる」
確実にいると言う燕青。その顔は本気で言っている顔であった。
「一応聞くけど…誰?」
「フェルグス」
「男じゃないか!!」
バレンタインイベントを思い出してしまう。今も部屋のカギは取ってあるらしい。
「あっはっはっはっは。悪い悪い、冗談だよ」
「冗談にしても質が悪いからね!!」
「本当の事を言うとたくさんいる」
「たくさんって…そんな事無いよ」
本当に鈍感なのか、気付いているけど手を出していないのか。それは分からない。
「実は案外近くにいるかもしれないぜ?」
「近くって…」
近くにいる女性だと荊軻、武則天、秦良玉、司馬懿(ライネス)だ。
そんな事を言われてしまえば意識してしまう。だがここで視線を下に落とした。
もしもここで視線を彼女らの誰かに向けたら、そういう意味になる。
(あれ…何でこんな状況になったんだ!?)
話の始まりは孫呉の種馬云々からである。まさかここに話が至るなんて思いもしない。
藤丸立香は視線を下に向けたまま。女性陣はどうしているかというと全員が藤丸立香に視線を向けている。
彼女らも己のマスターが自分に視線を向けるのを逃さないようにしていたのだが、彼が視線を下に落としてしまったので当てが外れた。
(視線をこっちに向けんか。なんだつまらん)
(むむむ、なぜ妾に視線を向けんのじゃ。妾のパーフェクトボディに目を奪われるはずなのに!!)
(マ、マスターと…いやいや、何を考えているんですか私は!? 私の理性は鉄壁です!!)
(ふむ…我が弟子とか。まあ、やぶさかではないな)
女性陣は思い思いの事を考えていた。
「話がズレておるぞ。これからどうするかの話ではなかったのか?」
「そ、そうだよね!!」
ここで李書文が話の流れを戻してくれた。
(ありがとう李師匠!!)
心の中で李書文に感謝するのであった。
「と、とりあえず建業の方に行くことは変わらないよ」
雪蓮たちは独立のために袁術と戦っている。様子を見に行って顔を出せるような雰囲気でなければ、諦めるしかない。
その後は楊貴妃と合流するために荊州に向かう手筈である。
「まあ、そういう流れです。何進さん、何太后さん」
何姉妹たちの状況は分かった。今度は藤丸立香たちの状況を伝えたのである。
力になると言ったが、何処まで力になれるか分からない。今出来るとしたら彼女たちが向かいたい場所まで一緒に向かう事だ。
彼女たちは合肥から出ようとしているならば一緒に出て、お目当ての場所まで護衛しながら向かうという事ならば出来る。
「ねえ、立香くん」
「なんですか何太后さん?」
「うふふ、私が経験させてあげましょうか?」
「その流れは先ほど切りましたので蒸し返さないでください」
まだ誘惑することを止めない何太后であるが、先ほどの言葉を口にした瞬間に武則天と秦良玉に怖い視線を向けられたのですぐに黙った。
「行きたい場所があるならそこまで護衛する事は出来ますが」
「むう…そうさなぁ」
「ねえ、姉様。護衛してもらいましょうよ。私は早くここから出たいわ」
「瑞姫がそう言うなら…それと聞きたい事があるぞ立香よ」
「何ですか?」
「路銀…金はあるのか?」
藤丸立香は懐からある物を出す。
「金の延べ棒があります」
「立香く~ん!!」
「ふふふ、私はどうやら貴様の事を侮っていたようだ」
何姉妹が左右から抱き着いてきた。
「ねえねえ、立香くん。私ぃ欲しい物があるの~」
「私もだ。なに、タダとは言わん。買ってくれたら私たちが寝室で極楽を見せてやるぞ?」
金の延べ棒を見せたらまたも態度を変えた。とても分かりやすいと思う他ない。
何はともあれ、何姉妹が藤丸立香たちに付いて行く事となった。
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孫呉が袁術を裏切り、反旗を翻した。
この未来を予想していなかったわけではない。孫策を裏切らせないためにも張勲は袁術に色々と吹き込んで鎖を何重にも巻き付けていたのである。
何重にも鎖を巻き付けて飼いならそうとしていたが、孫策は牙を磨きに磨いていたようだ。凶悪な獣はいつの間にか鎖を少しずつ引き千切っていた。
今までこき使っていたが、こうやって反旗を翻されると急に死の恐怖が襲ってくる。
(どうにかしてお嬢様を守らないと…でも江東の麒麟児に勝てるわけないしな~)
袁術より孫策を討つように命じられた張勲はトボトボと廊下を歩いていた。
袁術軍にも兵士の数は足りているが孫呉の兵士たちに勝てるかと言われれば良い答えは思いつかない。
(勝てないですよね…)
袁術軍の兵士と孫策軍の兵士の練度の差だって分かっている。普段から訓練しない兵士としている兵士だとどちらが勝つかなんて明白だ。
それでも大切な袁術を守るためにどうにかしなければならない。
(どうにかして孫策さんを止めないと…お給金を4倍くらいにすれば止まってくれるかなぁ?)
考えに考えていると袁術軍の将の1人が張勲の前に現れる。
「張勲様。どうしましょうか?」
「ん…とにかく出陣ね。出来るだけ孫策さんの足を止めないと」
「はっ!!」
取り合えず迎え撃たねばいけないので将に兵士を出来るだけ門の前に集めるように伝える。
孫策軍はもはや目と鼻の先。今すぐに攻めてこないのはこちらの動きを待っているか、様子を見ているかだ。
(籠城しても…勝てる気がしないなぁ)
悪知恵は袁術同様にすぐに思いつき、策を出すのも張勲の専門分野であるが、今回に関しては逆転する策が思いつかないのである。
「どうしましょう…玉璽や『宝剣』の威でどうにかなりませんからね?」
虎の威を借るつもり玉璽に何かを期待したいが難しい。
「あーあ、あの玉璽と『宝剣』がこうババーっと凄い力でも発揮してくれませんかねー」
「発揮できますよ」
「ひっ!?」
背後から不気味な声が聞こえた瞬間、すぐさま振り返る。背後には謎の道士が立っていた。
(妖術師…それとも道士。あれ、どっちも同じでしたっけ?)
「玉璽と宝剣にはある力があります。その力を発揮すればこの戦いに勝てますよ」
「あなたは誰ですか?」
「私の名前は于吉。孫策に恨みがある者です」
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ノウム・カルデアにて。
「ふーむ。立香のバイタルは正常のままか」
「はい、始皇帝さん。ですが先輩は未だに起きる様子はありません」
藤丸立香がレムレム睡眠をしてからまだ起きない。これもいつもの事である。
「秦良玉たちが消えてから他に消えた英霊はいるか? 仙女とか会稽零式とか」
「いえ、虞美人先輩と項羽さんはカルデアにいます」
前に赤兎馬、陳宮、司馬懿(ライネス)、李書文(老)、楊貴妃が消えた。恐らく藤丸立香のレムレム睡眠に関係している。
今までの情報を整理すると中華系の英霊がカルデアから消えているのだ。1騎だけ例外がいるのはまだわかっていない。
中華系の英霊ばかりならば、虞美人や項羽もいずれ呼ばれる可能性は高い。そしてマシュ・キリエライトの前にいる始皇帝だっていずれ呼ばれる可能性は大いにある。
「まったく立香め、なぜこの朕をいの一番に呼ばんのだ。朕と立香の仲ではないか。朕ちょっとプンプン怒っちゃうぞ?」
「ええと…先輩が任意で呼んでるわけじゃないと思いますけど」
レムレム睡眠の時は藤丸立香が任意で呼んでいるわけではない。何かしら転移先や、出会った英霊に関係する者が呼ばれているのが多いのである。
始皇帝もいずれ呼ばれるかもしれない。もしかしたらこの後、すぐにでも呼ばれる可能性だってあるのだ。
可能性があるからこそ中華系の英霊たちにはいつでも呼ばれてもいいように準備はしておいてくれと連絡が入っているのだ。
「それにしても…立香がいる時代は三国時代か」
「はい。日本では三国志はいろいろと題材にされている有名な時代です!!」
「そのようだな。カルデアのライブラリで三国志のデータを見てみたが…いやはや、朕の知るものと全く違ったからのう」
汎人類史の三国志と人智統合真国シンでの三国志はまったく違うのだから当たり前だ。そもそも異聞帯では三国志のような戦いがあったかと言えば否だ。
全く別の流れを通っているのだ。始皇帝の口から「桃園ブラザーズ」なんて言葉が出たことから三国志の登場する武将は同じように居た事は確かであるが。
「なんか寝言? からだと三国志に出てくる武将が女性のようだが」
「いつもの事ですね」
「うむ。いつもの事だな」
男だと思っていたが女性であったなんて英霊世界では日常茶飯事だ。
「でもあの絶世の美女、貂蝉が男だったというのは驚きましたが…」
「筋肉ムキムキらしいな」
「筋肉ムキムキの貂蝉が想像できません…」
「朕も」
あの貂蝉を見たらカルデアでもほぼ8割が驚くはずである。
「先輩は何を見たんですか…」
何を見たかと言われても筋肉ムキムキの貂蝉を見たとしか言えない。
「それにしてもいつ呼ばれるか分からんのならば、こちらからもアプローチしてみるか」
「それならキャスター陣営の皆さんも頑張ってます」
下総国の時もカルデアのキャスター陣営が色々と試していた。今回も同じように頑張ってもらっている。
「知っておる。だからもっと違うアプローチの仕方に変えようと思っている」
レムレム睡眠による転移。正確には夢を介した転移能力。
時折、契約した英霊たちの夢にも繋がって明晰夢のように動けることができるがこれも夢を介した転移能力の派生かもしれない。
この事からマスターとサーヴァントは夢を介して繋がる事が証明されている。マスターがサーヴァントの夢に入れるのならば、逆もまた然り。
藤丸立香が夢を介して別世界に転移しているならば英霊の方から藤丸立香の夢に繋がれば彼が転移している世界に向かう事ができるかもしれないのだ。
「確かに…それはありますね」
「だろう?」
「ですがそう簡単に先輩の夢に繋がるなんて…」
「というわけで朕、色々と作ってみた」
始皇帝の手には近未来映画に出てきそうな機器やらチューブやらを持っていた。
「何ですか…それ?」
「立香の夢を繋げる機器。そうさなぁ…『夢に繋がる君』とでも命名しておくか」
なんとも即興で適当に命名したものだ。
「これを立香の頭に繋げて…そして朕に繋げる」
「だ、大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫だ。たぶん」
「本当に大丈夫なんですか!?」
「物は試しだ。それに発明とは失敗し続けてなんぼのものだ」
「失敗前提ですか!?」
発明は100の失敗によって1つの成功を生む。そのような言葉を誰かが言っていた気がすると始皇帝は添えた。
「では立香の夢へとダイブだ。レッツ、レムレム!!」
「爆発オチはやめてくださいね!?」
始皇帝は藤丸立香の夢へ繋がるために色々と試行錯誤するのであった。
読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後くらいを予定しています。(GWに入るかもしれません)
408~409
タイトル通り、やっと何姉妹の登場です。
彼女たちは恋姫キャラの中でも好きなキャラなんですよね。
これから原作にはないオリジナル展開で活躍していきます。
諸葛孔明たちは荊州に向かっております。楊貴妃の捜索ですね。
楊貴妃合流編は孫呉独立編の次になります。そしてそのままオリジナル展開に入って行くかもです。具体的には楊貴妃と張三姉妹をメインにした話。
金の延べ棒。一定の者を黙らせるパワーワード。
何姉妹…これにやられました。
バトル・イン・ニューヨークでのあまり素材です。
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まだ藤丸立香たちは雪蓮たちと合流していませんが、孫呉独立編は始まっています。
今の所、原作通りに進んでいますが袁術側に于吉が登場。
これからオリジナル展開。異変が起きていきます。
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一方そのころのカルデア。
始皇帝がいろいろとやっています。
ちょっとはっちゃけていますが元々、フランクなお方なので違和感がないと思って書きました。
自分としては始皇帝メインのイベントがやってくれないかと静かに期待しております。
もっと始皇帝のカッコイイ活躍や面白活躍とかほしいですね。