Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
進みは遅いですがちょくちょく進行中です。ボイジャー君が良い!!
気付くのが遅かったですが恋姫では革命のプレミアム版が出るそうです。
公式ページの蓮華、桃香、華琳の扉絵が綺麗ですね。
では、本編をどうぞ!!
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「「これまでのお話ぃぃぃぃぃ!!」」
筋肉モリモリの漢女2人がサイド・チェストを決めながら目の前に現れた。
「お・ひ・さ~。わたし貂蝉、旅の踊り子。恋に恋する純情漢女で、年齢はぁナ・イ・ショ!!」
「私は卑弥呼。貂蝉の師匠であり、この東方をかつて守った漢女道の継承者である。年齢はもちろん内緒だ。謎は漢女を美しく装うものだからな!!」
貂蝉たちはある外史を見つけてビンビンドキドキっと謎の反応をキャッチしたのですぐに謎を解明するために「シュワッチ」と転移した。
「そのある外史でわたしたちはご主人様並みにキャワイイ藤丸立香ちゃんというオノコに出会ったの。いや、もう立香ちゃんはご主人様並みにキャワイくてカッコイイものだから浮気しそうになっちゃったわぁ」
「立香だけでなく他の者たちも出会った。カルデアと言って英雄や偉人を召喚し、特異点を修復する組織のようだ。立香だけでなく他にもなかなかなオノコたちの集まり。私は華佗一筋だが…つまみ食いしたくなるわ」
藤丸立香たちはわけも分からず『外史』という異世界に迷い込んだらしい。彼らからすればいつもの事のようで、いつもの事ならば原因は『聖杯』との事だ。
聖杯が原因ならばカルデアの任務であり、回収することで解決するらしいのだ。貂蝉たちからしてみればイレギュラーの存在。
カルデアという組織を見極める為に一緒に行動する事になったのだ。
「流石は英雄や偉人たち。わたしたちの筋肉がビンビンと反応するくらいの強さを持っているわ」
「うむ。漢女として戦いたくて拳を握るほどの者たちだ」
貂蝉たちはカルデア一行と旅を続けて洛陽まで赴いた。洛陽では董卓という者のところに入り込んで黄巾の乱に参加したのである。
「だけど黄巾の乱で事件が起きたのよね。まさかのまさかで于吉ちゃんと再会したの」
「于吉とは私たちと同じ『管理者』だ。だが私たちとは対立している」
「ええ。他にも左慈ちゃんって子もいるけど、黄巾の乱では于吉ちゃんだけに再会したわ。すぐにビンっと来たわ。この外史の謎の反応は于吉ちゃんが何かしてるってね」
貂蝉たちが今いる外史は于吉が何かしているのは確かだと判明した。
貂蝉たちはカルデアの協力して于吉を捕まえる事を決めたのである。于吉を捕まえる事でカルデアがこの外史に迷い込んだ理由も分かるかもしれない。
「そこから先が大変だったのよねえ」
「于吉のやつは様々な策を用いてこの外史に異変を起こそうとしている」
太平要術の書を使うために黄巾の乱を起こしたり、十常侍の張譲を利用したり、過去に戻って孫呉を滅亡させようとしたりだ。
更に反董卓連合では怨霊となった張譲を利用して反董卓連合の結果を変えようとしていた。どの策もこの外史の流れをおかしくするものであった。
「反董卓連合ではついに左慈ちゃんと再会したのよね」
「話を聞くに左慈は今まで無い『凄味』があったそうだな」
「于吉ちゃんと左慈ちゃんの目的は外史の消滅。そんな事は天が許してもわたしたちが許さないわぁん!!」
于吉たちがやっているのは歴史の改変。特異点を作り出しているようなもの。
カルデア一行も協力してくれて助かっている。
「また于吉ちゃんたちと外史をめぐる戦いが始まったのよね」
「今回は私も本気で戦う。この鍛え上げられた筋肉をムンムンと使う時が来たようだ」
反董卓連合が終わった後は劉備陣営に厄介になり、徐州へと拠点したのである。
「反董卓連合が終わった後は一時の平和だったな」
「ええ。一時の平和でわたしは一刀ちゃんや立香ちゃんをのぞき見…もとい観察しながら筋肉を鍛えていたわ。もちろん漢女力もね!!」
「私も華佗との距離を縮めるために色々と観察しながら…フフフ」
一旦ここで貂蝉と卑弥呼が平和のひと時を思い出しながら妄想を始めた。
もしもこれがテレビであったら『しばらくお待ちください』とテロップが流れる。
「平和なひと時は一瞬であった。袁紹という人物が『龍の力』を使ったという情報が入ったのだ」
「真偽を確かめるために立香ちゃんたちが調べに向かったのよね」
「うむ。我らは我らで他に情報が無いか調べる為に劉備陣営に残ったのだ」
「立香ちゃんたちは曹操陣営に厄介になって、無事に袁紹の『龍の力』を解決したみたいなのよね」
藤丸立香たちが曹操と共に袁紹の『龍の力』を打ち破ったというのが貂蝉たちが知っている情報だ。その後の藤丸立香たちが何をしているかは分からない。
「そこから先は立香ちゃんたちと合流しないといけないわね」
「ウフン」とウィンクをする貂蝉。
「ここから先はわたしたちと一刀ちゃんと桃香ちゃんたちの話ね」
曹操が徐州に攻めてきたのである。
「桃香ちゃんは戦うでもなく、投降するでもなく、逃げる事を選んだのよね」
「まさか民たちも付いてくるとは思わなんだ。これも劉備の人徳やもしれん」
逃亡劇は苛烈さを極めた。
最初は袁術を頼ったが裏切られた。次に目指すは荊州。
荊州までの道のりが厳しかったのだ。長すぎる旅路に曹操軍から襲われるといった攻めだ。
「しかし天は桃香ちゃんに味方したの。それに鈴々ちゃんのあの活躍とか凄かったわぁ」
「何とか曹操から逃れて荊州まであと少しという所の巣湖までようやく到着したのだ」
「巣湖では劉表が船を出してくれたのよね」
荊州の劉表は桃香たちを受け入れる事を快く決めてくれ、船を巣湖まで出してくれたのだ。
更にその船にはまさかの人物たちが乗っていたのだが、それがカルデア一行。分かったのは玄奘三蔵が大きな声で知らせてくれたからだ。
「ここまでが、これまでのお話よん!!」
貂蝉と卑弥呼がモスト・マスキュラーのポーズを決めて、これまでのお話を終えるのであった。
「なあ2人とも空に向かって何を話してるんだ?」
「あら華佗ちゃん。んーと、これまであらすじ的な?」
貂蝉たちは劉表の手配した船に乗って荊州へと目指している。
「いや、本当に何をやってるんだ…」
「あら孔明ちゃん。そう言えば立香ちゃんは?」
「別行動だ。向こうの用事が済めば荊州に来る手筈になってる」
「そうなのね。ところであっちにいる子は誰かしら。新しいお仲間?」
「ああ」
貂蝉が視線をある方へと向ける。その先には桃香たちと紫苑たちが話している姿であった。
その中に見慣れない人物がいるのだ。しかし『彼女』からは何か特別な力を貂蝉と卑弥呼はビンビンに感じ取っている。
「玄徳殿。おひっ…さっ、あっ、しさ…おひ」
「ちょっと落ち着いて。玄徳さま、お久しぶりでございます。魏延に黄忠です」
「はい、お久しぶりです。洛陽で会って以来ですね」
「久しぶりね桃香ちゃん!!」
「こんにちは」
「三蔵ちゃんまで…また会えて良かった」
桃香たちの目の前にいるのは紫苑と魏延だ。彼女らと会うのは反董卓連合以来である。
更に玄奘三蔵までいるとは驚きである。あと1人は知らない人であった。
「はい。ひとまずはお互い、ここまで無事だったことを喜びましょう」
「黄忠様と魏延様は、劉表様へとお話を通すのにとても力になってくださいました」
美花が彼女たちが来てくれた理由を話してくれる。
「ありがとうございます!! なんてお礼を言ったらいいか…」
「いえっ、玄徳殿がお困りの所、力になれるのは光栄の極みです」
「劉表様はここにある船だけでは足りないだろうと応援を出してくださいました」
「本当に、何から何まで…うう」
感極まって桃香は目から涙を流してしまう。助けてくれた事がとても嬉しくて心に染み渡ったのだ。
困っている時に誰かが手を差し伸べてくれる事は一筋の光のようなものである。
「あっ、おお!? 玄徳殿!?」
「ごめんなさい…でも本当に、嬉しくて…」
「あ、はっ…はぁぁ」
何故か乙女の顔をした魏延。桃香の泣き顔を見てちょっとだけ興奮しているのだ。
「桃香ちゃんこれ使って」
玄奘三蔵は桃香に涙を拭う布を渡す。
魏延はそれを見て「しまった!?」という顔をしていた。慌てて自分の懐から同じように探して渡す。
「あ、大丈夫だよ魏延さん」
「そ、そうですか…おのれ」
「なんでアタシを睨むの魏延さん?」
乙女の嫉妬である。
「劉表様は玄徳殿を受け入れてくださいました。玄徳殿たちにはあてがわれる地がありますので、そこまで案内しますわ」
「本当にありがとうございます!!」
「良かったわね桃香ちゃん」
「はい。それにしても三蔵ちゃんにまで会えるなんて思いもしなかったよ」
「アタシたちがここにいるのは仲間と合流するためだったんだけどね」
「仲間?」
「それは私の事ですね」
ニッコリと愛らしい笑顔で小さく手を挙げた女性。先ほどから玄奘三蔵の隣にいた女性だ。
この外史だとまだ伝統になっていないかもしれないが、いずれ中国の伝統衣装になる背中と脇が大きく露出した肚兜を着ており、綺麗な生足を出している黒髪の女性。
桃香は彼女を見て「わあ、可愛らしい人だなぁ」と思う。そして何処か色気も滲み出しているとも思うのであった。
簡単に言うと彼女の可愛らしさに目を奪われたという事である。桃香だけでなく北郷一刀も同じく目を奪われている。
(可愛い人だな。そして何処か色気もあるような…そして生足が良い!!)
「ご主人様」
「は、はい。なんだ愛紗?」
「ご主人様は女性に目が無いのは分かってますが鼻を伸ばし過ぎです」
「いや、そんなことないぞ。てか、女性に目が無いって…」
「事実です」
ここでも乙女の嫉妬が燃え上がっていた。そして何故か愛紗と魏延が頷き合った。
(三蔵法師の仲間って事は西遊記の誰か…いや、藤丸の仲間って広く考えると中国の偉人の誰かか?)
彼女の正体が誰か予想しようとしたが本人の口から名前が出された。
「あたしの名前は楊貴妃です。よろしくお願いしますね玄徳さん」
「あ、はい。よろしくお願いします」
まさかの名前が飛び出た。
「楊貴妃!?」
まさかの偉人すぎて北郷一刀はつい叫んでしまった。
「わっ、どうしたのご主人様?」
「もしかして知り合いだったのですか?」
「い、いや…知り合いじゃないけど、知ってるっていうか」
叫んでしまったので桃香と愛紗がつい反応してしまう。
「楊貴妃ちゃんは北郷君と知り合い?」
「いえ、初めて会いますけど」
北郷一刀は楊貴妃を知っているけど知らない。知っているというのは偉人として知っているという事で、彼が未来の者だからだ。
「ご主人様。新手の軟派は控えてください」
「むぅ…ご主人様」
「いや、ナンパじゃないから!!」
桃香と愛紗は北郷一刀の腕をつねる。確かに鼻の下を伸ばしていたかもしれないが今のは理不尽だと思うでのあった。
何はともあれ北郷一刀は玄奘三蔵たちがここにいるという事は藤丸立香もいるという事を考えた。船の周囲を見渡すように探すが見つからない。
すぐ近くにいたカルデア一行の頭脳である諸葛孔明に聞いてみる。
「孔明さん。あの藤丸は…?」
「立香なら別行動だ。用事が済めば荊州で合流する手筈になっているからそのうち来るだろう」
「そっか。色々と相談したいことがあったんだけどな。なら待つしかないか」
北郷一刀はちょっとだけ口元がにやけていた。久しぶり男友達に出会えるといった感情の嬉しさが表れているのだ。
(ほんとマスターは女だろうが男だろうが誰とでも親密になるな)
北郷一刀が諸葛孔明に藤丸立香について聞きに来る前にも月やら張三姉妹やらが聞きに来たのだ。「藤丸立香は?」と。
彼はどんな人でもほぼ仲良くなれる能力でもあるのかもしれない。様々な人間と仲良くなれるという力は希少で凄い力である。
(まあ、北郷もマスターと同じ力を持ってそうだけどな)
北郷一刀も人と親密になれる力を持っている。
それは桃香や愛紗たちを見れば分かる。彼もまた藤丸立香と同じく天然ジゴロで一級フラグ建築士かもしれない。
「ところで新しい仲間の楊貴妃さんってもしかして、あの世界三大美女の…」
「その楊貴妃だ。あと世界三大美女という称号は日本だけらしいぞ」
「おお、あれが世界三大美女の…」
男として世界三大美女に反応するのは当然だ。先ほどもそれで楊貴妃をじっくりと見てしまって愛紗に釘を刺されたばかりである。
「そう言えば聞きました。袁紹を倒したって」
「倒したのは曹操だ。我らは『龍の力』の方を解決しただけだ」
「一瞬で終わったと聞いたんだけど」
「戦争自体はすぐに終わったが中身が濃すぎただけだ。いや、濃かったのは袁紹か」
官渡の戦いは確かにすぐに終わった。中身が濃すぎただけである。
特に袁紹は『龍の力』を使いこなしていたというのが驚きである。噂だととても酷い(お馬鹿的な)人物だと聞いていたが、噂はアテにならないと思った。
『龍の力』を使いこなしている時点で彼女も何かしら才能があるという事かもしれない。実際に袁紹には何か『力』を持っているのは確かだ。
「まあ、その袁紹がお前たちの所にいるなんて予想外だったがな」
「いや、俺だって白蓮が袁紹たちを拾ってきた時は驚いたんだけど…」
官渡の戦い以降、袁紹たちは逃亡していた。その逃亡中に白蓮が拾ってきてしまって、あれよあれよと桃香たちの陣営に入り込んでしまったのである。
「あー!! あんたはあのチビっ子と一緒にいた奴じゃん!!」
文醜が指さしたのは哪吒である。官渡の戦いでは哪吒は徐晃と共に袁紹軍の二枚看板である文醜と顔良と戦っていたのだ。
「あ、本当だ」
「好久不见(久しぶり)」
哪吒も2人の事を覚えていたので挨拶をするのであった。
「え、まさか曹操さんの追手とかじゃないですよね…?」
「違う」
てっきり曹操の追手と勘違いした顔良であったが違うと言った瞬間にホっとするのであった。
「良かったぁ…」
「なあなあ、せっかく再会したんだ。あの時の決着をつけようぜ!!」
「ちょっと文ちゃんってば」
「いいじゃん。あの時は消化不良だったんだし。な、良いだろ…えーと」
「哪吒」
「哪吒って言うのか。アタイは文醜だ。で、こっちは嫁の顔良」
「嫁?」
「おお、そうだぜ。アタイの最高の嫁だ!!」
「ちょっとってば、もう!!」
何故かイチャイチャを見せつけられる哪吒であった。
この船では今回のようなまさかの再会があったりする。文醜たちと哪吒だけではなく、別の所ではまさかの再会をしていた。
「あ…ああっ、お前は!?」
「えっ…嘘。生きていて!?」
「チッ、見つからないように隠れようとしたってのに」
魏延と紫苑が見つけたのはまさかの人物。その人物とは孫堅もとい炎蓮であったのだ。
「生きていたのですか孫堅殿」
「ああん? オレは孫堅じゃねえぜ。オレは炎蓮だ。この名前しかないんで孫堅じゃねえ」
「それ…真名。っでも、どこからどう見ても孫」
「違う。だから言いふらすんじゃねえぞ」
ギロリと目で黙らせる炎蓮。
「色々と事情がおありのようですね。分かりました。貴女は孫堅殿ではない…私どもの見間違いでした」
「ああ。やっぱ話が分かる奴は助かるもんだな。良い女だよあんたは」
あまり触れない方がいい話であるがやはり気になるものだ。劉備陣営の者たちは彼女の正体が分かっていないようだが諸葛孔明たちに聞けば分かるかもしれない。
(劉備殿は知っていて保護しているのかしら?)
ちょっとした事だが魏延は昔の事を思い出して震えていた。
「あん? もよおしたのかお前。前みたいに漏らすなよ」
「やっぱ貴様、孫堅だろ!?」
「違う」
「違くないだろが!!」
昔のトラウマを払拭するために魏延は炎蓮に突っかかるのであった。
魏延の人生の中で強すぎる者は炎蓮であった。彼女はいずれは超えて見せると負けた時から鍛錬を欠かしていない。
絶対に倒して見せるという決意は硬い。
「あの時の仕返しがしたけりゃいつでも相手になってやるぜ」
「やっぱ孫堅だろ!!」
魏延がいつ炎蓮を超えるかは分からない。だが不可能ではないはずだ。可能性はゼロではないのだから。
「てか、お主。あのまま揚州に残らなかったのか」
「おう藤太か。腹減ったからまた握り飯作ってくれ」
「構わんが…こうやって見つかったのだ。いずれはバレるぞ」
「じゃあバレないように隠れてるぜ。どーせ隠居するつもりだったからな」
そして炎蓮が実は生きていたという事実が孫呉に伝わるのもいつになるか分からない。
「この先どうなることやら」
船の上で色々と再会を果たした者たち。それでも船は荊州へと近づいていくのだ。
荊州へと入り、桃香達があてがわれたのは荊州に入って更に西北へと進んだ場所にある新野という土地。
すぐ北には曹操の勢力地が迫っている。言わば門番の役割を与えられたということだ。対曹操の最前線送りも同然であるが、受け入れてくれただけでも助かっている。
贅沢は言えないし、そういう事を期待されているのも分かっていた。とはいえ徐州を追われて以来、やっと腰を落ち着かせる場所を得られたのは精神的にも肉体的にも嬉しいものだ。
この新野の地で桃香たちの新たな生活が始まるのであった。
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新野の地で新たに生活が始まって太陽が何度も昇っては沈んだ。
新たな地では色々と分からない事もあったが地盤を固めることに精を出していた。そのおかげか最近では少し新野も落ち着いてきている。
少しは安定してきたが、まだまだやるべき事はある。特に一番大変な目に遭っているのが桃香である。
荊州の一部をあてがわれた事で桃香も荊州を守る一角となったのだ。定期的に劉表をトップとする会合や会議にも参加するのは当たり前。
参加して情報を共有するのは良いのだが余所者の桃香は他の者たちからあたりが冷たかったりするのだ。
本当に彼女たちは信用できるのかと思われたり、実は荊州を乗っ取るために他の州や県も探っているのではないかと疑われたりと。
会議の度に紫苑が色々と庇ってくれてはいるが桃香自身、精神的にキツイものがある。
荊州トップの劉表は桃香を疑っておらず、寧ろ好感を持っているが周りがそうではないのだ。荊州も一枚岩ではないということである。
「うう、疲れる…ご主人様ぁ会議だけでも代わってぇ」
北郷一刀は桃香と同等。そういう事では彼も劉備陣営のトップでもあるのだ。だからと言って彼は好き放題しているわけでなく、トップでありながらも雑用などをこなしているのだ。
そういう人間だからこそ桃香や愛紗たちから好意を持たれているのだ。
「代わってあげたいけど、俺なんかがいきなり出てきたらそれこそ不信感が強まるぞ」
「うう~」
こればかりは頑張ってもらうしかない。しかし本当に桃香が限界になった時は交代する気ではいる。
「お疲れ様です桃香。気分が落ち着くお茶をどうぞ」
「ありがとう美花さん」
淹れてもらったお茶をクピリと飲んで一息つく。
「ふひー…」
お茶を飲んでリラックスできたのかつい口から間の抜けた声が出てしまった。
「失礼します…っと休憩中でしたか?」
「朱里ちゃん。ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」
「此方は民たちからの声をまとめたものです」
「ありがとう朱里ちゃん」
徐州からついてきてくれた民たちも今では新野で生活している。新たな生活が始まったばかりであるから不便な事や困った事が起きるかもしれない。
だからこそ桃香は北郷一刀の案でアンケートを取ってみたのだ。何回か繰り返して何を解決するべきか、何を優先していくかを決めていくのだ。
「うん。最初の頃より困りごとが無くなってきているね。良かった良かった」
「最初は色々と民たちからあれやこれやとたくさん困りごとがあったからな」
新たな地に来てから最初は本当に大変であった。忙しすぎて手が回らない程であったのだ。
「本当に大変でしたよ。私と雛里ちゃんだけじゃ足らないくらいでした。だからこそ孔明さんが居てくれて助かりました」
本当に大変であった為、朱里は徐州や平原でも力になってくれていた自分と同じ名を持つ諸葛孔明を頼ったのである。
「いやはや本当に孔明さんが居てくれて助かりましたよ」
諸葛孔明なら今も部屋で缶詰状態で手伝ってもらっている。本人からしてみれば「何で私がこんなことをしなくちゃならないんだ!!」と不満を口にしながら何だかんだで手伝っている。
「孔明さんって本当に私と同じ考えで動いているみたいで仕事がしやすいんですよね」
(まあ、世界が違えど同一人物みたいなもんだからな)
「…倒れないように気を付けながら手伝ってもらわないと。どれくらいの無茶なら大丈夫かな…ブツブツ」
(おっと、朱里のちょっと黒い部分が見えた気が…頑張ってくれ孔明さん)
過労死枠の諸葛孔明。外史でも彼の扱いは変わらない。
「あれ…これって」
「どうした桃香。なんか対処が難しそうな内容でもあったか?」
「ご主人様…これ見てみて」
「何々…ああ、これは対処が難しそうだな」
内容を読んでみると北郷一刀も難しい顔になった。
「どんな内容なんですか?」
「ああ、見てくれ朱里」
「えーっと……なるほど。これは孔明さんたちの案件ですね」
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新野では張三姉妹のコンサートが開かれていた。
「みんな大好き~!!」
「「「てんほーちゃーん!!」」」
「みんなの妹~!!」
「「「ちーほうちゃーん!!」」」
「とってもかわいい~!!」
「「「れんほーちゃーん!!」」」
新野でも張三姉妹の歌は大人気である。彼女たちの歌を聴くために頑張っている民だっているのだ。
更にこのコンサートには張三姉妹だけでなく、他にも舞台に上がっている者がいる。
「そしてとってもキレイな~」
「「「ユゥユゥちゃーん!!」」」
地和が先ほどと同じように観客に掛け声を返してくれるように叫ぶと「ユゥユゥ」と返ってきた。
張三姉妹の他に舞台の上にいるのは楊貴妃だった。彼女は楽器を弾いて張三姉妹の歌に組み合わせている。
「「「ほわっほわっほわあああああああああ!!」」」
今日のコンサートも大成功であった。
「やっぱ凄いわユゥユゥ。貴女の演奏は最高よ!!」
「本当に良い演奏だったよ。お姉ちゃんもユゥユゥさんの演奏の虜になっちゃそう」
「最初はまさか貴女が荊州で活躍した音楽家だなんて思わなかったわね」
彼女たちが荊州まで来たのはもちろん桃香たちに付いてきたからであるが、それとはもう1つ理由があった。
旅の商人から荊州には幻想的な曲を弾く音楽家がいると聞いたからだ。そんな噂を聞けばすぐに人和は自分たちの歌に組み込めないかと思ったのである。
「ありがとうございます。皆さんの歌もとっても素晴らしいですよ」
楊貴妃のルックス、楽器の腕は人和から見て合格点であった。すぐに楊貴妃を『数え役満☆姉妹』に入れようと勧誘したのだ。
勧誘は嬉しかったが楊貴妃はずっと『数え役満☆姉妹』には居られない。彼女はカルデアのメンバーだからだ。
そのため、ずっとは無理だが時々の応援という形ならばという事で『数え役満☆姉妹』に入る事になったのだ。
「それにして本当に縁って不思議なものねー。ちぃたちが会ってみたかった貴女が立香の仲間だなんてね」
まさか楊貴妃が藤丸立香の仲間だなんて地和は聞いて驚いたくらいだ。そして不思議な縁を感じたのである。
「本当だよね~。立香くんったらユゥユゥさんが仲間にいるんなら教えてくれても良かったのに」
「しょうがないわよ姉さん。私たち誰も立香さんに楽器が上手い人がいないか聞いてもなかったし」
もしもカルデアにいるアマデウスやサリエリ、トリスタンの事も聞いたらすぐに交渉するかもしれない。
ネロとエリザベートに関してはどうなるか分からない。
「今までは妖術で楽器を弾かせていたけど…ユゥユゥが加わったおかげで一段階以上に演奏が上がった気がするわ」
「地和さんって妖術使えたんですね」
「ちょっとだけね。最初は自分たちで弾いていたけど、歌と踊りまで入れたら楽器弾くのは難しいからね」
地和はこれでも妖術が使える。最初は楽器を弾きながら歌っていたが、芸を変える為に踊りを加えようとしたが楽器を弾きながらの踊りはできない。
だからこそ考えたのが妖術で楽器を弾くことであったのだ。その芸当は成功して黄巾党が出来上がるくらい人気が爆発した。
「最初は失敗しちゃったけど、今度こそ歌で大陸の覇権を手に入れてやるんだから」
「大きな夢ですね」
「もちろんよ。絶対に絶対に一番になる!!」
張三姉妹の夢は変わらず歌で大陸の天辺を取ることだ。
「大陸の1番を手に入れる為に色々とやりくりしてるのよ」
張三姉妹は黄巾党のような事が起きないように発言や行動には気を付けている。
「そろそろ次の段階に進みたいなって時にユゥユゥさんに出会えて良かったわ」
今の『数え役満☆姉妹』は桃香たちと共に動いている。平原や徐州、そして今は荊州の新野にて名を広めているのだ。しかし大陸で1番になるためにはまだまだ先は長い。
大陸で一番になるにはやはり大陸中を周って自分たちの歌を広めなければならないのだ。そういう事ならば旅芸人時代や黄巾党時代は何だかんだで大陸中を周っていた。
「うーん…そろそろ桃香さんたちの所から離れて大陸を周った方が良いかしら?」
「それは確かにねー。何だかんだで桃香たちに付いてきちゃっただけだしね」
「それはお姉ちゃんちょっと寂しいかな。桃香さんとは仲良くなったのに」
「そういえば天和姉さんって桃香と仲良いわよね」
桃香と天和は気が付けば仲良くなっていた。お互い何処か似ている部分があり、歌手とファンの間柄で関係が良好だったのもあるかもしれない。
「大陸で1番を取る為だもの。別れはしょうがないわよ。それに一生の別れってわけじゃないし、天和姉さんが会いたくなったらまた会いにくればいいじゃない」
「うん。そうだよね」
一生の別れではない。会おうと思えば会える。
「でも大陸を周るならやっぱ護衛は欲しいわよね。最初は3人だけで旅してたけどやっぱ護衛がいるのといないのじゃ全然違うし」
「そうね。それと藤丸さんが言っていた『まねえじゃあ』だっけ。それも欲しいわね」
「確かお世話係みたいなもんだっけ?」
「だったらお姉ちゃんは立香くんをお世話係に任命したーい」
(むむ…!!)
天和の藤丸立香お世話係任命宣言で楊貴妃は乙女の勘がビリリっと反応する。
「本当に姉さんは立香の奴を推してるわね」
「だって立香くんってカッコイイし可愛いんだもん。とっても気が利くし」
「私も姉さんに賛成だわ。藤丸さんなら大丈夫そう」
「まあ確かに。ちぃなら燕青と蘭陵王を更に加えるわね」
(むむむ。マスターったらここでも女性に気に入られてますね)
藤丸立香が英雄誑しもとい人間誑しなのはもう分かっているが、それでもこう新たな女性が出てくると気が気でない。
何度も言っているが藤丸立香は狙って誑し込んでいるわけではない。だからこそ藤丸立香を好いている者たちにとっては悩みの種ではある。
「なら今度は立香くんに付いて行こうよ。それならユゥユゥさんも一緒だし」
「あ、そうね。確か孔明は立香はいずれ荊州に来るって言ってたから…また荊州から離れる時に今度は付いて行くのも良いかも」
「わーい。立香くんとまた旅が出来るー!!」
(特に天和さんがマスターの事を一番気に入っているようです。これは油断できません!!)
ただでさえカルデアではマスターを好いている英霊は多すぎる。実はマスター争奪戦の方が聖杯戦争よりも過酷だなんて言われているほどだ。
溶岩水泳部の清姫、源頼光、静謐のハサンは愛が重いが本物だ。特異点などの記録を見るとマシュ・キリエライトやメルトリリス、ジャンヌ・オルタ、エレシュキガル、シャルロット・コルデーたちなんて物語に出てくるメインヒロインそのものだ。
他にもマスターに対してストレートに好意を口にしたり、誘惑したりする英霊はいる。誰が言ったか分からないが聖杯戦争ならぬ正妻戦争。
(これはユゥユゥも負けてられません!!)
マスター藤丸立香も罪な男である。そのうち刺されたりしないか怖いところだ。
「こんな所にいたのかお前たち」
「あれ、孔明じゃない。どうしたのよ」
公演の休憩中に諸葛孔明が顔を出してきた。
差し入れを出しに来たわけではない。
「どうしたのよ?」
「ちょっと聞きたい事がある。楊貴妃もだ」
「ユゥユゥもですか?」
「ああ。話と言うのは…お前ら近隣住民に迷惑かけていないか?」
「いきなり失礼ね!!」
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いきなり諸葛孔明に失礼なことを言われた張三姉妹と楊貴妃。流石に乙女として傷付いた。
「うう…酷いです孔明さん。ユゥユゥたちは住民に迷惑なんてかけてません」
「そうよそうよ!!」
「酷いよ孔明さんー!!」
「黄巾党という前科があるとはいえ、私たちは何もしてないわ」
もしもここに司馬懿(ライネス)が居れば諸葛孔明に対して「乙女をいじめるとは兄上は良い趣味してるな」とからかってくるかもしれない。
「あー…すまん。言葉が足りなかったというか説明をしなければならないな」
彼女たちに何故あのような事を言うに至った経緯の始まりは諸葛孔明の元に朱里がある案件を持ってきたからである。
ある案件とは新野の森から不思議で奇妙な音色が流れてくるというものだ。真夜中に音色が新野の生活区まで流れてきて民たちに不安が広まっている。
不思議で奇妙な音色を確かめに民の誰かが確かめに行ったが帰ってこらず、行方不明になったという話も出ている。
「音楽関係だとお前たちが関わっていると思ってな」
「濡れ衣よ」
「はい。ユゥユゥたちはそんな事してません。それと行方不明って本当ですか?」
「いや、それは誇張された部分だろう。朱里が民たちの事を調べると誰かが行方不明になったという情報はないそうだ」
噂というのは良くも悪くも誇張されてしまうものだ。
「この案件は怪異かもしれないから専門家である我らに丸投げ…もとい真相を解決してほしいというわけだ」
「そういう事だったのね」
「まだ怪異と決まったわけじゃないが…もしかしたらお前たちが森で秘密の練習でもしてるかと思ったがな」
「だから違うわよ」
楊貴妃も張三姉妹も森の奥で秘密の特訓なんてしていない。
「なら今夜、その森の奥に行って犯人をとっ捕まえちまえばいい話だ」
「炎蓮殿か」
諸葛孔明の後ろからズンズンと歩いてきたのは炎蓮だった。
「その仕事オレにくれよ。そろそろ暴れた…じゃなかった。身体を動かしたい気分なんだ」
「構わんが…実際のところ何があるか分からんからな。此方は哪吒を行かせるつもりだ」
怪異解決なら哪吒や玄奘三蔵がより専門家であるはずだ。
「ならちぃたちも行くわ。どんな音色を流しているか分からないけど、それでちぃたちのせいにされて評判を落とされるなんてまっぴらだわ!!」
「ならユゥユゥも行きます。頑張ったらマスターに褒められるかな」
急遽怪異解決に行く事になったのであった。
読んでくれてありがとうございました。
次回の更新予定も2週間以内の予定です。
今回は北郷一刀や諸葛孔明たちsideの話でした。
立香たちと合流する話になるかと思ったけど、それはもうちょっとだけ先になりました。
そしてやっと楊貴妃を登場させられましたよ。
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貂蝉と卑弥呼がサイドチェストを決めながら画面に埋まるほど映ったと思ってください。
そろそろこの2人を登場させたかった。
あらすじ的な話は革命の漢女編(呉と蜀)のを参考にしました。
あの最初の出だしは面白かったですね。
ついに桃香たちは荊州に到着しました。
前にも書いたような気がしますが桃香たちの逃亡編は原作で確認してください。
原作では黄祖も登場しますので。
更に桃香たちはカルデア組とも合流しました。
桃香と三蔵ちゃんが再会に嬉しがっているでしょう。
一刀は立香と会えなくて寂しそうでしたが、2人の再会はもうちょっと先です。
楊貴妃もやっと登場。
彼女の可愛さと色気に一刀もドキリ。そして愛紗に釘を刺される。
まさか正体が世界三大美女なんて驚きもするでしょう。
男だったら一目見てみたい存在ですからね。
荊州へ向かう船では様々な再会があります。
桃香たちとカルデア組だけではありません。
まずは袁紹たちですね。彼女たちとの絡みはこれから書いて行こうと思ってます。
更に炎蓮と魏延達。
流石に隠し続けるのはもう限界ですからね。何か事情があるということでこの場は落ち着いた形に。
桃香も炎蓮が只者じゃないってくらいは気付いています。
魏延はトラウマ払拭のため頑張ってます。
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荊州の新野をあてがわれて桃香たちは新たな生活が始まりました。
詳しくは原作を確認ください。
諸葛孔明は朱里に捕まって早速、手伝わされてます。
そして孔明たちの案件とは…
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張三姉妹の歌は良いですよね。「ほわっほわっほわああ!!」
そしてまさか楊貴妃も彼女たちのコンサートに加わっているという。
地和は妖術が使える。これはアニメ版の設定ですね。
アニメでは呪符のようなものを楽器に張り付けて演奏させていた場面もありました。
マスターに対する楊貴妃の気持ち。
まだ彼女が活躍するイベントはありませんが彼女もマスターラブ勢なんじゃないかと思ってます。(個人的に)
バレンタインイベントでは好意的でしたから。
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孔明たちの案件とは怪異関係のものでした。
炎蓮や張三姉妹に楊貴妃を活躍させる話にしたいつもりです。