Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは。
FGOでは5周年リアルイベントが中止になったり、映画キャメロットが延期になったりと残念ですね。こればかりはしょうがないです。

それにしても今回のサブタイトルはやりすぎてしまったか。
(投稿しておいてなんだけど)


お朕朕タイム

455

 

 

劉備陣営の主要人物たちが大広間に集まった。

集まった者たちは「曹操が攻めてきたのか?」だったり、「桃香さまとご主人さまが結婚でもするのか?」だったりと口から発せられている。

 

「結婚って…どこから出てきた」

「えへへ」

 

桃香が恥ずかしそうに嬉しがっていて、愛紗の嫉妬の視線がギラめいた。

 

「結婚するのか北郷?」

「いや、結婚なんてしないから」

 

つい否定してまって桃香が頬を膨らませて北郷一刀を可愛く睨んでいた。

可愛いけど一旦、置いておく。今回の議題はそれらではない。先ほど、北郷一刀に「結婚するの?」と聞いた藤丸立香たち御一行についてだ。

 

「また会えて嬉しいよ藤丸……と言いたいところだけど、それよりも先に話したいことがあるんだろ?」

「そうなんだ。本当は再会を祝してゆっくりと今までのことを話したいところなんだけど、その前にまず紹介もとい説明しないといけないからさ」

 

紹介もとい説明と言った。カルデア御一行の誰かを紹介するということだ。

漢の元大将軍の傾と霊帝の后である瑞姫の紹介ではない。確かに彼女たちの紹介もそうだが、もっと紹介せねばならない人物がカルデア御一行にいるのだ。

北郷一刀や桃香たち一部の人間は最初に出会って知っているが今でも信じられないのだ。だからこそ今この場で説明してもらう必要がある。

 

「もったいぶる必要もないから出てきてもらいましょう!!」

 

藤丸立香は手を扉の方に向けると秦良玉と蘭陵王が左右から開けた。

開かれた扉からカツンカツンと音を立てながら白と蒼を基調とした美しい人物が大広間に入ってきた。その美しき姿に目を奪われる者も現れたほどだが、それよりも圧倒的な存在感、王としての風格など全て逸脱している。

大広間に集まる者全てが、その人物に対して敬意と畏れを抱いてしまう。

カツンカツンとその人物は桃香の元へと迷いなく歩いて、目の前で止まる。

 

「うむ。朕の出迎えご苦労であったな」

「は、はい」

「まあ、実際はこんな事までしなくてもよかったが立香のやつがちゃんと紹介した方が良いというもんだからなぁ」

 

「はっはっはっは」と笑いが響く。彼の風格に誰もが身体が動かせなかったがある人物が最初に口を開いた。

その人物とは黄であった。

 

「ちょっと貴方!!」

「む、なんだ?」

「今自身の事を『朕』と呼ばなかったかしら?」

「そうだが」

「その自称は貴方が使っていいものではありません。『朕』という自称は天子様…ここにおわす霊帝様が使われる自称なのですよ。なんて不敬な!!」

 

この外史の時代的に『朕』という自称を使っていい人物は皇帝・天子のみだ。空丹を至上主義としている黄ならば怒るのは当然だ。黄でなくとも『朕』という自称を使う意味が誰もが分かるはずである。

普通ならば桃香の目の前にいる人物に対して不敬だとこの場にいる者たちは思うはずだが、何故か違和感ないと思ってしまっている。黄も認めたくはないが違和感が無いと思ってしまったが、空丹至上主義として最初に注意することが出来たのである。

 

「そんなこと言われても『朕』という自称はこの朕そのものを指す言葉なのだぞ」

「なっーー、ふ、不敬すぎますよ貴方!?」

「それよりも隣にいるのが霊帝か。なら更に隣にいるのが献帝だな。立香より聞いていたが…まだまだ幼いではないか」

「無視しないでください。貴方は誰なんですか!?」

「おっと、朕としたことが名乗るのが遅くなったな。ならば心して聞くがよい!!」

 

そう言えばと思って名乗り始める。その人物の名前は誰もが想像できるはずのない名前であったのだ。

 

「三皇を超越し、五帝を凌駕せし覇者。それこそが始皇帝、即ち、朕である!!」

 

始皇帝の名乗りが大広間に大きく響き渡った。

 

「「「え……ええええええええええええええ!?」」」

 

そしてほぼ全員の驚きが大広間に響き渡った。

彼女たちの驚きは当然だ。いきなり目の前に大陸を統一した始皇帝が現れたのだから。

 

「う、嘘をいいなさい。貴方が始皇帝だなんて…そもそも始皇帝を名乗るなんて不敬を通り越して死罪ものですよ!?」

「えー、朕ってば始皇帝なんだけど」

 

軽くフランクに言い返す始皇帝。しかし黄の言い分は他の者も分かる。

『朕』という自称を使い、始皇帝まで名乗る。これは不敬云々の話ではない。始皇帝は桃香たちの時代より過去の存在だ。

不老不死を求めたという逸話を聞いているが不老不死になれずにこの世を去った。

視線を集めている始皇帝を名乗った彼が人生の中でも一番の王の風格を持っている人物だとしても、彼が始皇帝だという証拠が無い。

証拠が無いからこそ愛紗たちは怪しみ、不敬すぎるのではないかと思ってしまっている。

 

(ご、ご主人さま。桃香さま。ほ、本当にあの方が始皇帝なのですか!?)

(う、うん。だって始皇帝様って名乗ってるし)

(いや、桃香さま。名乗ってるからって、本物だという確証はありませんよ…)

(え、そうなの?)

 

桃香は人を疑わない。美点でもあるが弱点でもある。

 

(本物だよ)

(ご主人さま?)

(今から藤丸が説明してくれる)

 

王の風格、圧倒的な存在感、完璧な容姿と人間として完成された存在。証拠が無いのに始皇帝と認めたくなってしまう。

 

「すいません。みんなの混乱は当然だと思います。だからこれから説明致します」

「うむ。説明しよう!!」

 

これから説明するのは嘘と真実を混ぜた内容だ。始皇帝にはこの外史の問題を攻略するためには我慢してもらうことにしている。

この外史は汎人類史ではなく、三国志演義が元になった異世界もとい三国志演義の流れに似た異世界なのだ。だから始皇帝も何とか納得してもらった。

 

「あのー、立香さん。このお方が始皇帝だという証拠があるのでしょうか?」

「あ、月」

「おお、こやつが董卓か。朕の知ってる董卓と全然違うのう」

「ひゃわ!?」

 

月が聞いてくれたおかげで説明の流れが掴めた。

 

「まずこの人が始皇帝という証拠を説明しますね。まずはコレを見てください。月や黄さんなら分かると思います」

「これはまさか…!?」

「な、何で藤丸殿が玉璽を持っているのですか!?」

「旅の途中で拾いました」

「「拾っ!?」」

 

藤丸立香が出した物は玉璽であった。

 

「ちょっ、拾ったって何処で拾ったのですか!?」

「ちょっとした戦場で」

「戦場!?」

 

玉璽を何処で拾ったかはこの際、置いておく。始皇帝の存在を認めてもらうために玉璽の力を使うのだ。

 

「玉璽には特別な力が込められてます。これも漢室にいた月や黄さんなら分かると思います」

 

玉璽の力。最初に玉璽に特別な力が込められていると知ったのは洛陽で拾った時に雷火に教えてもらった時だ。

雷火でさえ玉璽の力を知っていた。ならば漢室にいた月や黄ならば玉璽の力を知っていてもおかしくない。実際に傾や瑞姫は知っていた。

 

「玉璽の力?」

「桃香ちゃんたちは流石に知らないからしょうがないわね」

「何か知っているんですか風鈴先生?」

「ええ。玉璽には特別な力が込められているというのは藤丸くんの言う通りよ」

 

玉璽の力。その1つが王の資質を見出すという力である。

 

「玉璽を持つと王の資質を持つ者は龍の幻影を出します。人によって龍の幻影は様々で、龍の大きさや色が違うみたいですね」

「藤丸くんの言う通りね。私も玉璽の力をそうだと聞いているわ」

「そうなんですね」

 

劉備の陣営に官軍で働いていた風鈴や楼杏がいる事はとても助かる。此方の説明に信憑性を持たせてくれる。

 

「始皇帝。これを持ってみてください」

「いいぞ。でもコレ何か変な感じがするんだがな」

「え、それってどういう…」

 

始皇帝が気になる事を言いながら玉璽をヒョイっと持つ。すると玉璽から黄金の龍の幻影が現れた。

 

「黄金の龍…それって!?」

 

黄金の龍の幻影を出した事で黄や月、風鈴たち漢の中心近くにいた人物たちが驚いた。

 

「嘘、黄金の龍の幻影は…」

「どうしたんですか風鈴先生!?」

「この事はごく一部の者しか知らない事よ…私は月ちゃんから教えてもらったわ」

「私は白湯様から教えてもらいました…玉璽を持って黄金の龍の幻影を出したのは始皇帝ただ1人。そう記録に残ってます」

 

玉璽を持って龍の幻影を出す者は王の資質を持つ者だけ。人間1人ひとりが違うのだから龍の幻影も別々。

藤丸立香が見たのは雪蓮に武則天、始皇帝。3人の龍の幻影は異なった。始皇帝の龍の幻影は今まさに出ている黄金の龍だ。

雪蓮は燃え上がる炎のように赤い龍であった。武則天は紫色で毒々しくも美しい龍であった。

千差万別。玉璽を触った者は、その人物しか出せない龍の幻影。ならば同じものを出す者はいない。

 

「文書では黄金の龍を出したのは始皇帝のみ…なら目の前にいるのは本当に!?」

 

黄は信じられないといった顔をしていた。それは月や詠たちもだ。

ある記録では始皇帝が玉璽を触った時に出した龍の幻影は黄金だったとの事。ならば同じ黄金の龍の幻影を出した人物は始皇帝ということだ。

 

「本物…!?」

 

ある人物が始皇帝の元へと歩いていく。その人物とは空丹であった。

 

「空丹さま!?」

 

空丹は静かに始皇帝の前に立つ。

 

「あなたが始皇帝陛下なのね」

「うむ。そういうお主は霊帝らしいな」

「ええ、霊帝で天子。でももう皇帝じゃないみたい」

「話は聞いておる。漢帝国は終わったらしいな。悲しいことだ…確かに今のお主は皇帝ではない。だがお主が霊帝で天子なのは間違いないぞ」

 

始皇帝と霊帝の会合。

 

「く、空丹様…」

「このお方は始皇帝陛下。本物よ黄」

「ほ、本物なのですか」

「ええ、玉璽の力が物語ってる。それと…なんていうのか分からないけど、この人は本物だって分かるの」

 

空丹自身も目の前にいる始皇帝が本物だと確信している。そもそも玉璽の力を見なくとも空丹は本物だと感じ取っていた。

彼女自身も何で目の前の始皇帝が本物かと確信したか分からない。証拠も無いが彼女の身体が、魂が目の前にいるのが本物だと確信しているのだ。

彼女の中に生まれる確信は皇帝同士の何かなのかもしれない。この感覚は白湯も生じている。

 

「そ、そんな…」

 

空丹が認めている。ならば黄は何も言えない。そして自分が言った数々の非礼が蘇ってくると顔が青くなる。

 

「し、しし…始皇帝陛下。い、今までの無礼、も、も、申し訳あり、ありませ…」

「構わぬ。信じられないのは確か故…最初のお主の反応は当然である。だから許そう」

「た、たた、多大なる慈悲…か、感謝いたします」

 

ポンポンと黄の頭を撫でる始皇帝。軽く笑っているが黄は笑える状況ではない。

 

「ほ、本当に本物なんですね」

「本物だと言っているであろう劉備よ」

 

玉璽の力と霊帝である空丹が始皇帝と認めた。ザワつく周囲たちは当然の反応だ。

 

「ほ、本当に始皇帝…」

「ねえ、ねえ。あの人が始皇帝なのか愛紗?」

「あ、ああ。そうみたいだ。し、信じられんが」

 

今でも信じられないが事実だ。

 

「風鈴先生が嘘を付くはずがないし、空丹様も認めたんだ。本物なんだろう。うう…あの方が始皇帝なのか。凄いピリピリするぞ」

「白蓮殿の言う通りだな…物凄い覇気だ。正直に言って今まで出会ってきた者の中で一番の覇気だぞ」

 

始皇帝を一目見た瞬間から緊張していたが本物だと分かった瞬間により緊張してしまう。

 

(信じてくれて良かった…でも始皇帝がこの場にいるっていうのも凄い状況なんだよな)

 

嘘は言っていない。目の前にいる始皇帝は本物だ。ただ違う点があるとすれば別世界の始皇帝という事。

 

「あ、あの…質問よろしいでしょうか始皇帝陛下」

「うむ、良いぞ娘よ」

「ありがとうございます。私は諸葛孔明と申します」

「ほお、諸葛孔明」

 

始皇帝はカルデアの諸葛孔明と外史世界の諸葛孔明を交互に見た。小さく「全然違うじゃん」と呟く。

 

「貴方が始皇帝陛下だというのならば…何故、今までお隠れになっていたのでしょうか?」

 

朱里だけでなく此処にいる全員が疑問に思っている事だ。存命していたのならば何故、表舞台から姿を消したのかが分からない。

始皇帝の存在や偉業についてはこの大陸に生きる者ならば誰だって知っている。大陸を初めて統一した偉大なる皇帝だ。

偉大なる皇帝が存命していたならば今の世も大きく変化していたはずである。もしかしたら大陸は荒れずに平和になっていたかもしれない。

 

「朱里ちゃんの言う通りです。陛下が存命ならばこの大陸は平和になっていたのではないのでしょうか…」

 

桃香もつい思った事を口にしてしまった。偉大なる始皇帝ならば桃香の願う平和な大陸を実現できたのではないかと思っている。

異聞帯の話になるが始皇帝は実際に平和の大陸どころでなく平和な世界を実現した功績を持っている。

 

「その話かぁ…」

「何か理由があったのですか?」

「説明すると色々とややこしいのだが…簡単に言うと朕はこの大陸に居なかったからだな」

「い、いなかった?」

 

この質問は絶対にされると思っていた。だからこそ質問の返しは用意している。これもまた嘘と真実を混ぜたものだ。

 

「朕が不老不死を求めていたという逸話は知っているな?」

「は、はい」

「恥ずかしい話だが死にかけていた時の朕はけっこうヤバくてな。もう色々とやらかしたものだ。はっはっはっはっは」

 

始皇帝は軽く笑っているが桃香たちは笑えない。

 

「ま、色々とあって不老不死になったのだ」

「ふ、不老不死なのですか!?」

「あ、その説明はまだだったな」

 

不老不死。全人類の夢が1つ。

 

「うむ。朕ってば不老不死だぞ。どうやって不老不死になったかは教えられんが…簡単に言うとあるロストテクノロジーを解析し、肉体のサイバネ化に成功したのだ」

「ろ、ろす?」

「さ、さいば?」

 

朱里や雛里などは始皇帝の言った言葉が分からなかった。北郷一刀は横文字の意味が分かる。

 

(過去の中国にロストテクノロジーなんてものあったか? てかサイバネ化って…え、そういう意味での不老不死?)

 

横文字のせいで近未来のイメージが湧いてしまう。秦の時代からは想像が出来ない。

 

「朕が不老不死になった瞬間にだ…何故か朕は別の世界…いや、別の大陸に居た」

「それって…」

「ちょっとかどうか分らんが…噂になっている天の国というやつだな」

「天の国!?」

 

ここで始皇帝が言う天の国というのを異聞帯にしており、元の国というのを汎人類史の事にしている。

彼は異聞帯の始皇帝。始皇帝が不老不死になり、人智統合真国シンを存続させたことで異聞帯として定められた。

今の説明でこの大陸から天の国にいつの間にか来ていたと言うのを汎人類史から異聞帯としてなってしまったという形で説明しているのだ。

ある意味、嘘ではない。見方にもよるが始皇帝は嘘は言っていない。

 

「始皇帝陛下が天の国に…」

 

ここで桃香たちは北郷一刀や藤丸立香を見る。

 

「ご、ご主人様は始皇帝陛下を知っていたの?」

「あ、ああ。まあ、知ってる」

 

北郷一刀には既に事情を話している。上手く説明をするのにあたり、相手方に此方の理解者がいるとよりスムーズに説明が進む。

 

「天の国で始皇帝の名は広まっているよ」

 

彼の言う言葉は嘘を言っていない。『始皇帝』という名はビッグネームだ。

中国の偉人で『始皇帝』の名を知らない者はいない。北郷一刀が始皇帝を知っているというのは嘘ではない。

 

「え、じゃあ天の国って始皇帝陛下の国なんですか!?」

「うむ。人智統合真国シンという名の国だ!!」

 

まさかの事実に驚いていく桃香たち。

 

「な、なるほど。始皇帝陛下…天子様の国だから天の国。ご主人様と藤丸さんは天の国から来られたから天の御使いなのですね…」

 

朱里と雛里は勝手に納得していく。その納得は藤丸立香たちにとって都合の良いものである。

 

「何で教えてくれなかったのご主人様?」

「あー、えっと」

「それは朕のせいだな」

 

北郷一刀が言い淀んだ瞬間に始皇帝がフォローする。

 

「この大陸では朕が死んだ事になっておるのだろう。ならば朕が存命していたという話を出したら大きな混乱を起こすと思ったからである。考えてみろ、いきなり天の国から来たという者が、実は始皇帝が存命していると言ったなら混乱もとい信じられぬだろう」

 

天の国というのがどんなところか分からなく、流星と共に大陸に現れた天の御使いが「始皇帝は存命していて、天の国は始皇帝が治める国」なんて言えば混乱以上の問題だ。

始皇帝の言葉は誰もが納得してしまう。確かに誰も信じないし、混乱する話だ。

 

「ごめんな皆」

「いいんだよご主人様。始皇帝陛下が伏せておくように言われてたんなら仕方ないよ」

「そうなるとご主人様は始皇帝陛下の命で天の国から来たということになりますよね。予言にあった大陸の乱世を云々は…」

「この大陸には異変が起きている。それはお主たちも身に覚えがあるのではないか?」

 

思い出すは反董卓連合。反董卓連合では怪異が起きたのだ。

 

「朕てば死んだ事になってるし、今さら出張っても混乱を巻き起こすだけだから静観してたんだけど…流石に異様な異変が起き始めておったからのう。無視できなかったゆえに立香たちを使いに出した」

 

ここで北郷一刀ではなく藤丸立香の名前を出したのは始皇帝と北郷一刀は繋がっていないという真実だ。先ほど北郷一刀が言い淀んでいた時にフォローしたが、その時も「朕が伏せさせていた」という風に命じた言葉ではない。

良い感じに桃香たちは都合の良い解釈をどんどんとしていく。解釈違いではあるが嘘は言っていない。

 

「生まれ故郷の異変を静観なんて出来るはずがない」

 

この大陸とは言っていない。誰だって故郷に何かあれば思う事はある。

 

「立香たちには異変を調査させた。可能性としては聖杯も考えたが…」

(聖杯…そう言えば立香は聖杯とやらを探していると最初に出会った時に言っていたな)

 

星は藤丸立香たちの最初の出会いを思い出す。

 

「報告によると于吉とかいう妖術師だか方士が黒幕だと受けた」

 

于吉という名は桃香たちも既に聞いている。于吉には出会っていないが仲間の左慈という者に北郷一刀は襲われた。

証拠人として燕青と美花は実際に戦った事もある。彼女たちも異変に巻き込まれ始めているのだ。

 

「なるほど…異変が大陸の乱世へと繋がっている。だからこそ天の御使いであるご主人様と藤丸殿が現れたのですね」

 

愛紗も納得していく。彼女だけではなく、集まっている皆が納得しているのだ。

 

「本当ならば立香たちだけに任せようとしたが結構、ややこしそうだったので朕も来てみた」

「えと…そんな軽い感じで来たのですか?」

「うむ」

 

ここで桃香たちは始皇帝についてまとめると、彼は秦の時代にて不老不死を実現。しかし原因不明であるが別の大陸に飛ばされたらしい。

その別の大陸で新たな国を建国し、天の国となった。その後、生まれ故郷である大陸に大きな異変が起きていると察知。

異変解決のために天の御使いを遣わした。1人目が北郷一刀であり、2人目が藤丸立香である。

異変は大陸全土を巻き込むまでも発展すると予想し、始皇帝自ら大陸に戻ってきたという事だ。

 

「…という事でしょうか」

「概ねそれでよい」

 

グッと親指を立てる。

 

「始皇帝陛下自らまでが来てくださる…それほどまでの異変がこれから起きようとしているのですね」

「そうなる前に黒幕を潰しておきたいところだな。しかし、朕が来たからには安心せよ。全て問題なく解決してみせよう!!」

 

始皇帝の覇気に皆は何処か「大丈夫だ」と思ってしまう。それほどまでに大きく包み込んでくれるような力を感じさせてくれるのだ。

 

(あらヤダ…凄い。これがそっちの始皇帝なのね。はっきり言ってこの外史の誰よりも規格外じゃない)

(うむ。全身の筋肉がビンビンと反応しておる。私が出会ったオノコ中でも圧倒的にズバ抜けておる)

(てか…目の前にいる始皇帝ってオノコかしら? 男でも女でも漢女でもない感じがするんだけど)

 

貂蝉と卑弥呼は外史の管理者として始皇帝を観察したが感想は「あり得ないくらい凄い」という月並みのものだ。

はっきり言って目の前の始皇帝を別の外史に『天の御使い』としての役割を押し付けて転移させたら物凄い事になりそうである。恐らく三国時代に至らずに秦が再建国される。

補足だが目の前の始皇帝の性別は『朕』である。

 

「そ、それにしても始皇帝陛下は何故、不老不死になったらこの大陸から消えてしまったのでしょうか?」

「さあ?」

「さあって…」

「分からないんだからしょうがないではないか。まあ、『不老不死』になったからかもしれん……朕が消えた後の秦がどうなったかは心残りであったな」

「不老不死になったから…」

「神の仕業か…世界の意思なのか」

 

ある意味、世界の意思なのかもしれない。

 

「でも、戻ろうとはしなかったのですか?」

「此方側を確認できたのがつい最近だったし」

「え、つい最近だったんですか!?」

「うん。そしたら異変が起きてるし…だから立香たちをまず送った」

「そ、そうだったんですね…」

 

カルデアでこの外史世界(特異点)を観測したのはつい最近だ。藤丸立香がレムレムで転移したという意味での話である。

これも嘘ではなく、解釈違いである。

 

「あ、あの…まだ先の事かもしれませんが、異変が解決したらその後はどうするんですか?」

 

桃香は気になる事を質問する。異変はまだ解決の「か」の字も出ていないが、解決したら始皇帝はその後どうするのか気になったのだ。

異変が解決したら始皇帝はこの大陸を天下統一しようとするのかと思ってしまったのである。

 

「異変を解決したら朕、帰るぞ」

「え、帰るんですか!?」

「うん。だって朕、この大陸だと死んでいる事になっておるだろう。死人に口なし。今更、朕が出てきても混乱を起こすだけだ。ま、朕ならその混乱すらも治めて統一してみせるがな。はっはっはっは!!」

 

異変を解決したら帰る。たったそれだけ。

 

「今の大陸の情勢は今を生きている者がどうにかしろ。それがさだめである」

 

異変に関してはカルデア側の案件も関わっている可能性があるから動いている。しかし異変を抜きにした場合の大陸の天下統一争いは今の時代を生きる者たちだけの問題だ。

 

「この大陸をどうしていくかはお主たち次第という事だ」

 

 

456

 

 

始皇帝がこの外史世界に降臨した時のための説明が終わった。

 

「どーにか信じてもらえて良かった」

 

本物の始皇帝がこの外史世界に存在することは大混乱だ。全ての者に信じてもらう事は出来ない。

だから外史世界の中心人物たちにさえ存在を確認してもらえれば良いのだ。始皇帝自身もこの外史世界で秦を建国するつもりはない。

藤丸立香と共にカルデアに戻るために異変を解決するだけだ。

 

「あの者たちが劉備たちか…朕の知ってる劉備たちではないな。ブラザーズじゃなくてシスターズだったし」

「でしょうね」

「だが、何処か似ている部分はあった」

「そうなんですか?」

「うむ。世界は違えど劉備たち…三国時代の英雄というやつだな。まあ朕の治めたシンだと三国時代はこなかったけど」

 

異聞帯の始皇帝はずっと秦の時代が続いていたため三国時代は無い。しかし、劉備たちは生まれてきたようだ。

 

「なかなか面白い世界だ。これからどうなっていくか興味がある。ま、どうなっていくかはこの世界を生きる者たちが決めていくことだがな」

 

この外史世界の未来はこの世界を生きる者たちが決める。

 

「で、朕たちがやるのは于吉を捕まえる事が優先であったな。アレは人間ではないだろ」

「はい。于吉は『管理者』という存在です」

 

『管理者』。この外史世界を管理、観察する上位存在。

 

「神……とは違うな」

「ええ、神様なんかじゃないわよ。わたしたちは」

 

ぬぅんっと現れた筋肉漢女たち。

 

「おお…なにコレ?」

 

始皇帝の「なにコレ」発言。流石の始皇帝も貂蝉と卑弥呼のある意味圧倒的なビジュアルに驚いた。

 

「わたし貂蝉!!」

「私は謎の巫女、卑弥呼だ!!」

「マジか」

 

流石の始皇帝も貂蝉がこんな筋肉漢女とは予想外のようだ。ボソリと「立香が寝言で言っていたのはこの事か」と呟いていた。

 

「管理者か…上位存在なのは分かった。お主らが此方側にいるという事は『管理者』という組織も派閥があるようだな」

「ええ。わたしたちと于吉ちゃんは今、絶賛ビンビン敵対中よ」

 

于吉たちの目的は外史世界の破壊。世界崩壊である。

 

「世界の滅亡…国の崩壊云々ではなく、星が、世界が消えるレベルの話か?」

「そうよ。流石に桃香ちゃんたちにそこまで話してないわ」

 

世界が滅ぶなんて聞いても実感が湧くはずがない。

 

「出来れば桃香ちゃん達には己の役割を果たしてほしいところね」

「役割とは『劉備』や『曹操』という人物として歴史を進めてほしいという意味か?」

「異変は出来ればわたしたちだけで解決したいけど…もう難しいかしらねえ」

 

この外史世界は三国志もとい三国志演義を元になったか、同じような流れをもった異世界だ。

劉備たちが外史世界を回す駒のような存在だと当てはめるのならば彼女たちがすべき役割があるということだ。

 

「劉備が蜀を建国然り、曹操が魏を建国然りと言ったところか」

「ええ。まあ、わたしとしてはどのような未来になっても肯定するけどね」

 

それが様々な外史の誕生を良しとする貂蝉の考えである。

 

「ま、でも基本的にハッピーエンドが良いけどねん」

 

貂蝉や卑弥呼は外史世界を静観する。彼らが動くのは通常では発生しない異変が起きた時のみ。

この外史はまさに通常では起きない異変が起きているからこそ貂蝉と卑弥呼は動いている。

 

「話は聞いたわ。建業で于吉ちゃんが現れたのよね」

「はい。正直に言うと始皇帝が来なかったら負けていたかも」

「あやつめ…まさかあの剣を、軒轅剣まで用意しておったのか」

 

前に于吉が言っていた事を思い出す。「今回は違う。本気だ」と言っていた。

袁紹の『龍の力』と建業で于吉と戦った事件。どちらも今まで観測してきた外史世界ではなかったものだ。

本当にこの外史世界は今までとは違う。

 

「曹操と孫策の方で于吉の策が働いていた…ならば劉備のところでも何かしら事件が起こるやもしれんな」

「いえ、もうチラホラと起きてるわ。新野の森で起きた怪異……そして桃香ちゃんの剣が盗まれたって事件がね」

 

怪異の事は諸葛孔明や楊貴妃から聞いている。そして張三姉妹が更に人気になったことも。

怪異に関しては于吉が用意した可能性が高いらしいが桃香の剣が盗まれた事件の方はまだ分からない。

 

「敵の本拠地は分かっているのか?」

「いいえ。分かればわたしたちが今頃、突貫しにイクんだけどねえ」

 

貂蝉も卑弥呼も于吉や左慈が何処を本拠地にしているか分からない。彼ら様々な場所に現れては消えていく。

最初は張譲の所、次は黄祖の所にいた。今回だと袁紹や袁術の所でも策を仕掛ける為に赴いていた。しかしそれらは本拠地ではない。

敵の本拠地を探す為に貂蝉たちは探しているが見つからない。

 

「もしかしたら…という場所はあるんだけどね」

「ほう、何処だ?」

「五胡よ」

 

五胡。

そこはこの外史世界にとって無視できない場所。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。もし早く更新できればします。

今回の物語は始皇帝が何でこの外史世界にいるのか?という事を桃香たちに説明して、納得してもら回でした。
(けっこう無理な説明だったかもしれませんが…汗)

455
始皇帝の存在を認めてもらうために嘘と真実を混ぜた説明でした。
嘘は言ってない。ただ解釈が違うだけです。
異聞帯が天の国だったり、汎人類史が恋姫の世界だったりと解釈違い…無理やりだったかな。

玉璽の力。
前にオリジナル設定で王の資質を持つ者は龍の幻影が出る云々はこの時の為であったのです。龍の幻影の色や大きさ云々は今回で追加しました。

空丹さまは始皇帝が本物だと何故か分かった。
これはなんというか魂が本物だと感じ取った…皇帝同士にしか分からない『何か』という感じなやつです。
そして黄の最初の始皇帝に突っかかる描写。まあ、当然でしょうね。
普通は始皇帝だと最初は信じませんし。

不老不死
桃香たちにはロストテクノロジーとかサイバネ化とか分からないのでしょうがない。

始皇帝は外史世界で新たな勢力として天下の争いには参加しません。
参加したらどうなるんだか…(本当に秦の再国しそうだ)


456
始皇帝も貂蝉と卑弥呼のビジュアルにはびっくりです。
まあ、部下にあの韓信がいたのでもしかしたらビジュアル面や濃い個性をもっている人物に対して慣れてるかもしれませんがね。
韓信の実装待ってます!!

FGOでは桃園ブラザーズ。恋姫では桃園シスターズ。
FGOで実装されたら3人とも男性キャラなのかな。

そろそろ『五胡』についても触れていくかもしれないです。
蜀ルートだとラスボスみたいな感じ。この作品だと…まだナイショです。

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