Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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こんにちは!!
FGOでは新OPが公開されましたね。
いきなりの公開でびっくりですよ。OPにはもう「全部が気になる」の一言ですね。
新たなキャラや、あのクモの登場の可能性も示唆されてました。
もう第2部の新章が気になります!!

そして8月10日の5周年SPも楽しみです。
声優陣さんが豪華すぎです。


新野での日常4

462

 

 

新野というより劉備陣営は今、とんでもない状況になっている。

正確には人間関係がとんでもない状況というべきだ。そんなとんでもない状況を作りたくて作ったわけではない。

たまたまと言うべきか、そういう運命の元によりそうなってしまったのか分からない。

 

「これどんな状況だよ…」

「ご…ご主人さまぁ」

 

小さくポソリと呟いたのは北郷一刀と桃香である。

今がどんな状況かと言われれば洛陽の主要人物たちが集合といったところである。

月と詠。傾に瑞姫。空丹に白湯、黄。

嵌めに嵌められ、殺しに殺されをした者たちだ。まさかまたこうやって顔を合わせる事があるなんて思いもしなかったはずである。

 

「久しぶりね傾、瑞姫」

「お久しぶりです空丹さま、白湯さま」

 

空丹は微妙な空気なんて気にせずに傾と瑞姫に声を掛ける。

 

「相変わらずお元気そうで何よりです……そして黄に董卓、賈駆もな」

 

傾は空丹たちに関して礼儀良く声を掛けるが黄や董卓たちには敵意マシマシで声を掛ける。

董卓たちの策で彼女たちが天上から地面へと叩き落されたのだから仕方ないのだが。

 

「おほほほ。傾殿も瑞姫殿も元気そうで…よく生きてましたね」

「本当よね。どこぞで野垂れ死んだと思ってたけど」

「はっ、この私が死ぬと思ってたのか?」

 

黄と詠、傾の3人がバチリと視線火花がほとばしる。

そんなバチバチ空間にいる北郷一刀と桃香は居心地が悪いのは当然である。しかし同じ陣営にいるので不和は起こせない。

始皇帝の存在を証明する時に顔を合わせてはいたが、ちゃんと会話をする事がなかった。

彼女たちが争ったのは知っている。しかし今は同じ陣営にいるのだから今のような状況は止めてほしいのだ。

 

(過去の遺恨を消すのは難しいって分かってる。でもせめて一緒にいる時は控えてほしいんだよな)

 

だからこそ桃香は一度、こうやって集めて顔を合わせたのだ。余計なお世話だがこの陣営のトップは桃香である。陣営の不和を起こさないようにするため動くのは当然であった。

 

「あの時は貴様らの方が一手上手だった。だが次は貴様らの番だぞ」

「はんっ、そんな事させると思うの?」

「気が付けばまた路頭に迷うのが傾殿だったりしますよね」

 

またバチリと火花がほとばしる。

 

「あ、あの喧嘩は…ダメだと思う」

「白湯さま大丈夫ですよ。これくらいちょっとしたものですから」

 

白湯がたしなめるがあまり効果がない。そもそも瑞姫が白湯の言葉を塞いだというのもある。

元とはいえ天子である献帝である彼女はナメられている。まだ幼く、未熟だからかもしれない。

白湯自身も早く皇帝として威厳を持ちたいのだがなかなか難しい。

 

「詠ちゃん、黄さん。空丹様と白湯様の御前ですよ。控えた方がいいと思います」

 

月の言葉で詠と黄は傾を睨みながらも黙る。

 

「ふん、董卓め。この私と瑞姫を殺そうとしてくれたな」

「あの時はそうした方が漢のためと思いましたから」

「てか結局、あんたたちを殺してなかったけどね。こんな事になるくらいなら殺しておいた方が良かったわよ」

「詠ちゃんってば」

 

実際は何姉妹を殺してはいなかった。ただ閉じ込めていただけであったのだ。

 

「正直に言うと董卓…貴様に対して油断していた。だが今度は負けんぞ」

「何進殿……私を殺そうとするのは構いません。それだけの事を私がしましたから」

「ちょっ、月!?」

「それは駄目だよ!!」

 

桃香がつい声を上げる。

 

「貴様は…この陣営の劉備とか言ったな。ちょっと黙っておれ」

 

傾は大将軍時の威圧を桃香に向ける。

 

「うう…」

「桃香」

「ご主人様?」

「桃香はこの陣営の頂点だ。ここで負けちゃダメだ。俺も力になるからさ」

「ご主人様…ありがとう」

 

桃香はこの陣営のトップ。相手は元大将軍とはいえ落ちた身であり、桃香の陣営で厄介になっている身だ。ならば桃香が強きに出ないとナメられる。

 

「あー…みんなの遺恨は俺じゃ想像が付かないけどさ。今ここにいる場合は止めてほしいんだ」

「なんだ小僧」

「北郷一刀って言う。天の御使いなんて言われてるよ」

「ああ、お前も立香と同じの…」

 

北郷一刀は『天の御使い』であり、劉備軍のトップでもある。劉備陣営は桃香と北郷一刀の2トップなのだ。

 

「あまりここで問題は起こさないでほしいんだ」

「仲良くしてください……と言われても難しい事は分かってます。でもここにいる間は問題を起こすような事は止めてください」

「ふん、言うではないか成り上がりが。だが余は大将軍…」

「元でしょ。ここは桃香の陣営でここの頂点は桃香だ。余計な事はしないでほしい」

 

北郷一刀と桃香は目を逸らさず真っすぐ傾を睨みつける。

トップが舐められるわけにはいかないのだ。

 

「何進殿。ご主人様と桃香様の言う通りですよ。ここでは大人しくしておくべきだと思います」

「ふん。許さなくてもいいとか、大人しくしてろとか…矛盾ばかりだな董卓」

「そうですね。しかし勝手な行動は出来ないのは確かです」

「貴様は守られているようだからな。そう言えるほど余裕って事か」

「そういうつもりじゃ…」

「ふん」

 

チラリと傾は北郷一刀と桃香を見ると2人の目は真っすぐに視線を飛ばしているままだ。

見れば分かる。2人の目は絶対に折れないと言っているようなものだ。

 

「チッ…業腹だが確かに言っている事は一理ある」

 

一理あるというより、まんま正論である。

 

「姉様。ここでは大人しくしておきましょう」

「瑞姫、いいのか?」

「ええ。確かに嵌めに嵌められ、殺されに殺そうとした関係だけど今ここにいる全員が劉備殿のところにお世話になっているのは事実。なら劉備殿の言う事は従うべきよね」

「むう…瑞姫がそう言うなら」

 

傾は何処か納得がいっていないようだが我慢してもらうしかない。

冷静に考えてみると何姉妹は劉備陣営にお世話になるのは事実。今の彼女たちは大将軍という名と霊帝の后という過去の栄光しかない。

それだけでは劉備陣営に勝てるわけではない。そもそも劉備陣営は董卓たちに懇意だ。何姉妹たちが復讐しようとしても止められる事は間違いなし。

桃香がいの一番に反応したのが証拠だ。もしも何かしたらどうなるかなんてすぐに瑞姫は分かったのである。

今の自分たちでは結局の所、逆らえる事はできはしないのだ。

 

「瑞姫が言うからしょうがない。しかし董卓、恨みは忘れんからな」

「構いません。しかし貴女のやった事も忘れないでください」

「ふんっ」

 

バチリと火花が散る。

大人しい月の強き姿というよりも洛陽にいた頃の董卓の姿というべきだろう。今の月はいつも大人しい感じでなく、威厳のある雰囲気を醸し出していた。

 

「一応…なんとかなったのかなご主人様?」

「たぶんな」

 

劉備陣営は本当に様々な者たちが入り込んでいる。実は彼女たちだけではないのだが、それはまた別の話である。

 

「ところで…ずっと気になっていたけど董卓と賈駆のその姿って」

「私と詠ちゃんはここではご主人様…北郷一刀様の従者をやってます」

「ふーん」

 

瑞姫は月と詠の姿が気になったのだ。

2人が劉備陣営で厄介になっているのは分かっていたがどういう扱いになっていたのか気になったのだ。

空丹と白湯は天子であるため丁重な扱いを受けているのは分かる。黄は洛陽にいた頃と変わらずに空丹のお世話係だ。

月と詠は北郷一刀の従者という形になっている。ならば自分たちはどのような形に落ち着くのか気になるところである。

 

「とりあえず、劉備のところでお世話になるけど…私たちの扱いはどうなるのかしら?」

「余は大将軍だぞ。好待遇を求めるぞ」

「元ですけどね。ふふ」

「何か言ったか黄」

「いえ、なにも」

 

ギロリと睨みつけて黙らせる。

 

「どうしよっかご主人様?」

「一応、いくつか考えてきたけど…」

 

元とはいえ、傾は大将軍で瑞姫は空丹の后だった過去を持つ。特に瑞姫は空丹の后という事でどうするか悩んだくらいだ。

 

「で、どういう案が出たんだ?」

「元肉屋だったと聞いたから肉屋をやらせてみようとか」

「却下だ!!」

「あら、良いと思いますわよ」

「そうね」

 

ニヤニヤと笑う詠と黄。狙って言ったはずだ。

 

「貴様らだな肉屋を提案したのは!!」

 

世界線が違ければ何姉妹は肉屋を経営する事になるのだが、それはまた別の外史の物語である。

 

「別の案は無いのか。てか、我らも空丹様たちのように丁重に扱え。大将軍だったのだぞ!!」

「そう言われるとそうなんだけど…でも月は相国だったし」

「ぐ……」

 

相国という役職は傾も知っている。その役職を出されてしまうと流石に言い返せない。

 

「で、他の案は無いのか?」

「うーん。やっぱ月たちと同じように従者というか従女をやってもらうとか?」

「なんだと、この大将軍だった私が従女など…」

 

月たちと同じように従者をやってもらうのが一番無難ではある。

大将軍に就いていたのだから仕事は出来る。だからと言って、いきなり劉備軍の中枢を任せるような仕事はさせない。

そもそも傾たちが桃香たちの元に来てから日が浅いので彼女たちの事をよく知らないのだ。よく知らない者をいきなり役職に就けさせるなんて事は出来ない。

いきなり愛紗たちのように将を任せた所で兵士たちは不満しか出ないはずだ。

役職を得るにはやはり地道な努力をするか、自分の才能を上の者に認めさせるしかないのである。

 

「え…まさか私もやるの?」

 

瑞姫が一瞬だけ顔を引き攣る。空丹の后をしていた身として自分自身で従者をやるとは思わなかったのである。

尤も藤丸立香たちと合流する前は肉屋を経営していたのだから従者をやる事に抵抗云々は今更かもしれない。

 

「じゅ、従女か…」

「うぐぐ…」という感じに決めあぐねている感じの顔の傾。

「なによボクと月があんたの従女をやってあげてるのにまだ足りないって言うの? これだから男は」

「いや、そういうわけじゃないって」

 

美しい従女を侍らせたいから言ったわけではない北郷一刀。

 

「…えーっと一刀くんだっけ?」

「そうだよ。何太后」

「貴方って劉備と同じ地位なんだっけ?」

 

もしくは桃香よりも上かもしれないと予想している。なんせ桃香や愛紗たちが北郷一刀の事を「ご主人様」と呼び親しんでいるからだ。

 

「まあ、一応」

 

劉備軍のトップは桃香と北郷一刀の2トップである。正確には桃香を支える相談役のような地位だ。

 

「へえ、そうなのね」

 

ニヤリと蠱惑的に微笑する瑞姫。その笑顔を見てゾワリとする北郷一刀。

 

「姉様。ここは一刀くんを落とせばいいんじゃない?」

「ああ、なるほど。そういう事か」

 

瑞姫の案を聞いて傾もニヤリと蠱惑的に笑う。

陣営のトップに男がいるならば何姉妹の色香で骨抜きにしてしまえば良いと判断。瑞姫は北郷一刀を見て自分たちの色香でたやすく落とせると思ったのである。

 

「ちょっと気をつけなさいよ」

 

詠がちょんちょんと北郷一刀の肩をつつく。

 

「気を付けるって何が?」

「たぶん、あいつらあんたに狙いを定めたかもよ」

 

色仕掛けによる篭絡に気をつけろという事だ。

 

「あんたただでさえ女に見境いがないんだから」

「いや、俺ってそんなに見境いがなくないからな。ていうか女にだらしないって言わないでくれよ!?」

「事実でしょ」

 

グサリと詠の言葉がストレートに刺さる。北郷一刀は女にだらしないと思われてちょっとショックを受けてしまった。

何はともあれショックは受けたが何姉妹から色仕掛けで篭絡されるかもしれないという危険は分かった。

これでも自分は劉備軍の2トップであり、男だ。ならば色仕掛けによるハニートラップは考えられる。

ハニートラップは昔からあり、現代でさえもある。まさか自分も色仕掛けされる身になるとは思わなかったが自分の立場を今一度再認識する。

 

「気をつけなさい。あいつらは、そういう事を躊躇いなくやってくるからね」

「…やっぱ彼女たちを従女にするのを辞めとこうかな」

 

女の罠ほど怖いものはない。北郷一刀はハニートラップを受けた事はないがドラマ等の影響で良いイメージは無い。

 

「……藤丸が連れてきたし、藤丸に任せようかな」

「それがいいんじゃない?」

 

連れてきたのは藤丸立香。そう言えばと藤丸立香は何姉妹から色仕掛けを受けていたような気がすると思い浮かべる。

やはり連れてきた者の責任という勝手な判断で何姉妹の面倒は藤丸立香に任せる事にした。

 

「~~という事で藤丸。あの2人を任せたぞ」

「唐突すぎない?」

 

いきなり何姉妹を任せたと言われても困るものだ。しかし彼女たちを拾って新野まで連れてきたのは藤丸立香たちなので責任が無いとは言えない。

そもそも彼女たちの助けになると言っているのだから何もしないわけにはいかないのだ。

 

「ところで傾さんと瑞姫さんのその姿って」

「似合うか立香?」

「私のは前にもう見せてるけどね」

 

傾と瑞姫が月と詠と同じように従女服(メイド風)を着ていた。

瑞姫は合肥で肉屋を経営していた時に来ていた給仕っぽい服であった。傾は肌の露出が多いモノトーンの従女服である。

 

「似合ってます傾さん、瑞姫さん」

「ありがとう立香くん」

「ふふふ、そうだろう。どうだ、今晩部屋に呼んでもいいんだぞ?」

「私も呼んで欲しいなぁ」

 

相変わらず色仕掛けを藤丸立香に仕掛けるのであった。その光景を北郷一刀は見て、ああいう感じに自分も何姉妹から色仕掛けを仕掛けてくるのだろうかと思うのであった。

 

「ところで傾さんの従女服って北郷一刀がデザインしたのか?」

「いや、何姉妹から出されたデザイン」

「なるほど」

 

話は戻って、結局のところ彼女たちは従女をする事になったのだ。

働かざる者食うべからずの精神である。2人は不満であったが渋々了承。

 

「指導係は月と詠」

 

ちょっと苦笑いの月と不満顔の詠の登場。

 

「そのチョイスは大丈夫なのか?」

「俺もどうかと思ったけど、2人に対抗できる人と言ったら月と詠くらいしか思いつかなかったからさ」

「美花さんは?」

「美花に最初はしようかと思ったけど、彼女も忙しいからさ」

 

普通の先輩従女では傾と瑞姫には舐められる。ならば不安ながらも対等で張り合える月と詠の方がまだ良いのである。

確かに何姉妹に対抗できる者と言われれば月と詠の名前が出るのは当然だ。

 

「まったくなんでボクがこいつらなんかを…」

「まあまあ詠ちゃん」

 

頑張ってとしか言いようがない。

 

「ていうか、瑞姫さんは空丹さまの后なんだから一緒にして同じような扱いをすれば良かったんじゃないの?」

「立香くんってば良い事を言うじゃない」

「あと傾さんもせめて瑞姫さんのお世話係みたいな感じにすれば良いんじゃない。黄さんみたいに」

「良い事を言うじゃないか立香。確かに可愛い瑞姫の世話なら喜んでやるぞ」

 

瑞姫絡みならば傾も不満はないようだ。

 

「それは俺と桃香も一応考えたんだけど…」

「ならそれで良かったじゃないか!!」

「黄が大反対したから」

「黄のやつ!!」

 

更に黄から贅沢好きな何姉妹と事前に聞かされて劉備陣営の財を無駄使いされてしまうと言われて一理あると思ったのもある。

尤も黄は空丹の傍に何姉妹を置いておきたくないという感情もあったからだ。

 

「とりあえず彼女たちは従女をしてもらう事は決まったんだ。で、最初は藤丸も一緒に監督してもらおうかと思ってさ」

「了解した」

 

要は仕事の立ち合いみたいなものだ。それくらいならば構わないと藤丸立香は了承。

 

「今日は何するの?」

「月たちに従女の一通りの流れを何進…いや、傾たちと一緒にやる事になってる」

 

北郷一刀たちは傾と瑞姫から真名を預かっている。流石に何進と何太后という名前は使えないからだ。

 

「まずはおつかいからだな」

「初めてのおつかい!!」

「使いくらい教えてくれんでも出来るわ」

 

小さい子供ではないのだから使いくらい出来ると言う2人。彼女たちの言い分は何となく分かる。

 

「ボクも教えなくてもいいと思うけど…しょうがないからね。教えてあげるわ」

「教えなくていいわ」

「この…!!」

「喧嘩は駄目だよ詠ちゃん」

「向こうがこっちの善意を捨てるからよ」

「貴様から善意を感じないからな!!」

「いいから行きましょ」

 

何とも不思議な光景だ。洛陽のトップにいた4人がいがみ合いながらも従女をしているなんて誰も予想できなかったはずである。

正史ではなく外史だからこそあり得た光景。カルデアに様々な時代の英雄が会合するくらいの奇跡かもしれない。

彼女たちの心情と雰囲気はともかく。

 

「じゃ、行ってみよう。ドレミファドレミファ…」

「ナレーションは俺がやる」

「あんたら何わけの分かんない事を言ってんのよ」

 

詠たちには絶対に分からない。分かるのは日本に住む人くらいかもしれない。

 

「で、何を買えばいいんだ?」

「田舎だから店も少ないんじゃない?」

「はいはい。買う物はここに書いてあるから」

「ふん」

 

奪うように傾は詠から買い物リストを取る。

 

「じゃ、付いてきなさい。案内するから」

 

案内付きのおつかいなんて、おつかいじゃ無い気がするがツッコミは止めておいた。

 

「で、何を買ってくるの傾さん?」

「ん? ああ…ほれ」

 

傾が藤丸立香にヒョイと買い物リストを見せる。

 

「何々…」

 

買い物リストを上から見ていくと豚肉、キャベツ、ピーマン、長ネギ。

 

「今日は回鍋肉かな?」

 

更に筆に硯、墨、本なども書かれていた。

 

「これは朱里ちゃんや雛里ちゃんかな?」

 

矢などの武器の消耗品もリストに入っている。

 

「これは愛紗さんたちかな?」

 

メンマ。

 

「これは星さんだな。絶対」

 

メンマと言えば星。

 

「よく分かるな」

「たぶん誰でも分かると思う」

「そうか?」

 

劉備陣営を知らないと分からない。

 

「こんな面倒な仕事はさっさと済ませるか」

 

やる気は無いが仕事をさっさと終わらせたいようだ。

 

「そんな事を言うものじゃないよ傾さん」

「なら私にやる気を出させてくれ」

「……頑張ったらご褒美を出すとか?」

「おっ、言ったな」

 

ペロリと舌なめずりをして藤丸立香を見る。

 

「じゃあお前を貰おうか」

 

ガシリと片腕で藤丸立香の首を回して引き寄せる。

 

「そういうご褒美はありません」

「男をご褒美として貰って何が悪い」

「そういう問題じゃありません」

「おいおい…裸で一緒に寝た仲じゃないか」

「裸で寝てません。まあ、傾さんがいつの間にか入り込んできて一緒に寝たというのは事実だけど」

「一緒に寝たのだから次に進んでも良いのではないか?」

「ぐ…なんとも魅力的な言葉だ」

「なら」

「でも駄目です」

「この生意気で強情な!!」

 

ガシリと首を軽く絞めてくる。背後から絞めてくるので背中に柔らかい感触が伝わる。

 

「ぐ…後ろに柔らかい肉まんが!!」

「なんだ、お前もしっかり反応してるじゃないか」

 

ニヤリと笑いながら傾はより密着してくる。

 

「ほら、おつかい行くよ傾さん!!」

「なあ、ちょっとそこの宿屋に行かないか立香?」

「傾さん仕事しろ!!」

 

という一連の流れを見ている瑞姫は「あれ? 何か前より距離が近くなった?」と思うのであった。

 

(そう言えば司馬懿ちゃんが言ってたわね。立香くんって仲良くなると遠慮が無くなってくるって)

 

最初に出会った頃より仲良くなっていると身近にいた瑞姫だからこそ分かるのだ。

 

(流石は姉様。私も負けてられないわね)

 

瑞姫も藤丸立香に抱き着いていく。

 

「あら、良い話してるじゃない。私も混ぜてぇ」

「瑞姫さんも参加しないで!!」

 

見る人が見ればモテモテで羨ましいと思うはずだ。分かる人が見れば誘惑と言う名のハニートラップを受けていると思うはずだ。

羨ましいのか、怖いものか分かったものじゃない。

 

「うわー、あれがハニートラップ…か?」

「あいつも大変ね。ま、藤丸なら何だかんだで大丈夫そうな気もするけど。ね、月?」

 

詠が同意を求めようと月を見ると彼女はハイライトを失ったかのような目をしていた。

 

「月!?」

「はうっ!? …私は大丈夫だよ詠ちゃん」

「大丈夫だったのソレ!?」

 

初めて見た月の表情に詠は心配するというか、慄いた。

 

「え、大丈夫なのよね? 変なのが取り憑いたりしてないわよね?」

「取り憑いているって…詠ちゃんてば、そんなわけないよ」

 

前に張譲という名の怨霊に取り憑かれていた経験のある月。まさか憑かれやすい体質になっていないか心配になってしまうが先ほどの表情とは関係が無い。

 

「立香く~ん」

「立香、ここが大きくなってないか?」

「瑞姫さん息を耳に吹きかけないでください!! 傾さんは変なところ触んないで!?」

 

またも月の目のハイライトが落ちた。

 

「月!?」

「だ、大丈夫だよ詠ちゃん!!」

 

ちょっと大丈夫には見えない月。

 

「あんっ、もう立香くんたら何処触ってるのよ。でも立香くんなら構わないわよ?」

「瑞姫の何処を触ったんだ立香。なんなら私のも触って良いぞ。ククク…胸か、尻か?」

「触ってないんですけど!?」

「本音は?」

「触れるもんなら触りたい」

「なら良いではないか。ほれほれ」

 

目のハイライトオフ。

 

「月ぇ!?」

 

こんな状況であるが北郷一刀から一言というかオチの言葉。

 

「おつかいしろ!!」

 

 

463

 

 

「ふんぬう!!」

 

野太い声と共にポージングを決めるのは貂蝉。

 

「ねえ、どお?」

 

貂蝉は自分のポージングを近くにいた李書文に感想を聞く。

 

「…どーでもいい」

「え、酷いわ!?」

 

正直に言うと本当にどうでもいい。

 

「何でポージングをしているか聞いてくれる?」

 

李書文はそのまま無視して歩いていく。

 

「ちょっと無視すんじゃないわよぉぉぉ!!」

「うおお!?」

 

めちゃくちゃ迫って李書文の肩を掴んで顔を近づかせる。流石の李書文も驚いてしまう。

 

「ちょっとくらい感想を聞いても良いじゃなーい!!」

「わ、分かったから…離れろ」

 

どうどうと落ち着かせる。

 

「で、どうかしら?」

「……良い筋肉だと思うが」

「そうじゃないの。こう…可愛いオノコがときめちゃう感じはないの?」

「ない」

 

きっぱりと否定する。

 

「酷くない!?」

「いや、無いだろう」

 

もしかしたら貂蝉の筋肉にときめくオノコがいるかもしれないが李書文は居ないとはっきりと言うのであった。

 

「うう…まだまだ漢女力が足りないってことね」

「そういう話では無いと思うが…てか、急に何だ?」

「いや、最近のご主人様…じゃなくて一刀ちゃんってば急に男らしくなったじゃない?」

「知らん」

「それはやっぱり大きな修羅場を潜り抜けたからだと思うの」

「まあ、徐州からこの荊州の新野に来るまで相当、苛烈な逃避行だと聞いたからな」

 

劉備陣営が曹操陣営から逃げる為に戦った。その逃避行は確かに修羅場であったのだ。

修羅場を乗り越えた者は誰であれ成長するものだ。北郷一刀は修羅場を乗り越えて男として1つ成長したのである。

 

「奴も意外と成長はしたと思うがな」

「ええ、そうね。桃香ちゃんも愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも成長したと思うわ」

 

劉備陣営の皆が成長したのは確かである。

 

(まあ、でも桃香ちゃんはまだもうちょっとかしらね)

「話が終わったなら儂はもう行くが」

「って、まだ話は終わってないわよん!!」

「まだあるのか」

「実は一刀ちゃんが男らしくなってキュンキュンしちゃうんだけど」

「そうか…」

「その男らしくなった理由が他にもあると思うの。それはやっぱ女を知ったからだと思うのよね」

「そういう話は専門外なのだがな」

 

男が女を知る。人にもよるが確かに男として成長するかもしれない。逆もまた然り。

 

「ある一時から桃香ちゃんや鈴々ちゃんたちが急に成長したというか女らしさも上がったのよね。やっぱり一刀ちゃんのおかげでもあるのよ」

「お、おう」

「なら漢女であるわたしなら一刀ちゃんをもっと成長させると思わない!?」

「………」

「どお?」

「帰っていいか?」

 

ただの戯言と判断して李書文は去っていくのであった。

 

「もう、冷たいわねん。7割は冗談なのに」

 

3割は本気という事のようだ。

 

「でも一刀ちゃんや愛紗ちゃんたちも、もっと強くなってもらわないといけないのは確かなのよねん。この外史はもしかしたら他の外史と違って何処か違うし」

 

貂蝉はいくつもの外史を見て回っている。中には強烈な外史も存在していた。今回の外史も普通の外史ではないのは確かである。

寧ろ、上位に位置するくらい強烈な外史かもしれない。

 

(立香ちゃんが言う特異点並みかもしれないわね)

 

この外史は于吉によって様々な変化が起きている。

貂蝉の見立てだとこの外史は蜀ルートを辿っているが所々にズレが生じているのだ。

 

(この外史は別の外史の流れも加わっているのよね…やっぱり孫呉を救うためとは言え、立香ちゃんを過去の呉に送った影響かしら。わたしも流れを修正しないとね)

 

藤丸立香を過去の呉に送って2人目の天の御使いにしてしまった。藤丸立香が呉ルートの天の御使いをこなした影響である。

もしかしたら于吉はこの流れも予想して動いた可能性がある。何が何でもこの外史をズレさせたいようだ。

 

(于吉ちゃんはこの外史をどうしたいのかしら…外史の消滅を願っているのは確かだけど、その過程までは読めない)

 

未だに于吉がこの外史に何を仕込んでいるかまでは完全に分かっていない。ただ怪しい場所があるので卑弥呼が秘密裏に調べに行っている。

 

「卑弥呼の帰りを待つしかないわね」




読んでくれてありがとうございました。
次回はこのあとすぐ…かも。


今回も日常編でした。まだもうちょっと日常編は続くんです。

462
傾たちと月たちの再会。
この物語だと再会するとこんな感じになりました。

そして傾たちは肉屋ではなく、従女になりました。
月たちの後輩ですね。先輩後輩関係は良好そうではなさそうです…。
瑞姫の姿は原作でもあった姿のままです。なんかウェイトレスっぽいと私は最初思ってしまった。
傾の姿は天下統一伝にある従女の姿です。露出の高いメイド服ですね。

月に謎の感情走る…その感情の正体は一体?
ハイライトオフ。


463
貂蝉のポージング…が全てじゃなくて、ちょっとした雑談。
なんだかぐだぐだと書いてしまった気がします。
卑弥呼がある場所の調査に向かっているという事を書きたかっただけですね。



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