Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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久しぶりの更新です!!
お待たせいたしました。

FGOの水着イベントは今年も面白かったです!!
メインクエスト後のサブイベントも良かったですよね。ふじのんとのサブイベントは本当に良かったです。あとエミヤとのサメ釣りも面白かったです。

そういえば前話はやはり賛否両論でしたね。
やっぱ好みがあるから仕方ないかあ。


ではでは、本編をどうぞ。



新野の難民問題

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大陸の情勢は日に日に変化している。特に曹操の情報が多い。

朱里の調べでは現天子である少帝の権威を大きく凌駕し、大陸全土を飲み込まんとする勢いで拡大しているからだ。

 

一方の雄である孫策は真っ向から曹操と対立している。袁術から孫呉を取り戻し、徐々に力を取り戻しているのだ。

恐らくいつまでも州牧という肩書きを良しとせず、曹操から下に見られないように近いうちに独立を宣言するかもしれない。

 

そうなると劉備たちも黙ってはいられない。いずれは彼女たちと同じ立場にならないといけないのだ。でなければすぐに曹操か孫策のどちらかに飲み込まれてしまうからだ。

野心がない劉備もとい桃香。未だに領地拡大といった事は望まない。

 

彼女を重ねている劉表としてみれば荊州を貰ってくれるとありがたいと思っているくらいだ。しかし桃香は丁重に断っている。

彼女の夢は大陸を平和にする事。その夢は嘘じゃない。嘘ではないが今の現状では叶うはずもない。

曹操と孫策に渡り合うには国を興す必要がある。今の劉備陣営が国を興すとして最も理想的な場所。

曹操の支配地でもなく、孫策の領土でもなく、中原ともそれほど離れていない場所。そして悪政がはびこっていて奪い取っても良心がそこまで痛まない都合の良い場所は益州。

 

その場所は劉備陣営の誰もが想像していた。なんせ益州からの難民がよく新野に来ているからだ。

朱里たちは斥候を放っては情報収集をしている。今はそれくらいしか出来ない。しかし、最初に言ったように大陸の情勢は日に日に変化している。

 

桃香の元にまさかの凶報が入る。劉表の御隠れだ。

体調が悪いとは聞いていたがいきなりの凶報である。荊州牧である劉表が亡くなったという情報が大陸に広がればまた大きな変化が訪れる。

簡単に言うとトップを失った国にほど侵略しやすい国はない。そもそも荊州では派閥争いが激しいのだ。

これから荊州内にいる曹操派閥や孫策派閥、または別の派閥が動き出す事は誰もが想像できる。

 

これから荊州はどうなるのか。桃香はこの状況でどう動くのか。

 

 

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庭の東屋で珍しい組み合わせを北郷一刀と白蓮は見かけた。

その組み合わせとは何かの書類を眺めている桃香と麗羽である。

彼女たちはあの食事会や、劉表の葬儀に出てから妙に仲が良くなっているのだ。それはそれで良い事である。

更に驚いたのがその中には始皇帝もいたのである。彼もまた書類を真剣な顔で読み込んでいる。

始皇帝がそこに居るだけで物凄く空気が違う。

 

「どうしたんだ。なんとも凄い組み合わせと言うか何というか」

「うん…漢中から逃げてくる人たちの受け入れもそろそろ厳しくなってきて。それで麗羽さんと始皇帝陛下に相談してるの」

 

桃香の発言に北郷一刀と白蓮は口をそろえて「「はあああ?」」と驚いた。

 

「ちょっと何ですの、二人揃ってその声は。始皇帝陛下にとても不敬ですわよ」

「構わんさ。てか、その声は朕に対してじゃないと思うし」

 

桃香が始皇帝に相談するというのは分かるし、寧ろ贅沢すぎるくらいである。そもそもよく始皇帝が相談に乗ってくれたものだ。

2人が驚いたのは桃香が麗羽に相談しているという部分だ。それはそれで失礼であるが。しかし2人が驚くのは無理もない。

やはり彼女の性格からして、そういうのが出来ると思わなかったからである。何でもかんでも真直たちに全部丸投げしていると思ったからだ。

麗羽は大体、何かしらやらかしてフォローに猪々子たちが走り周って最終的に真直が胃を痛めるというイメージしかない。

そんな麗羽が助言とは考えられないというか逆に興味があるくらいである。

 

「そこな2人はまだまだ人を見極める目が未熟だな。確かにお主らの気持ちは分からんでもないが…彼女もまた国を治めていたのだ。彼女もまた選ばれし者だろうに」

「ああ…始皇帝陛下に認められるなんて光栄ですわ」

 

始皇帝陛下に褒められてうっとりする麗羽。

 

(中華を統べる龍にはなれないが…でも報告から聞くと龍の力を扱っていたらしい。え、結構なかなかな器の持ち主?)

 

実はちょっとだけ興味を惹かれているというか面白そうだと思っている始皇帝。

 

「わたくし、幼い頃から上に立つものとして教育を一通り修めていますもの。領地の経営なんて、基礎中の基礎ですわ。おーっほっほっほ!!」

 

始皇帝に褒められていつもより高笑いが大きいのであった。

 

(白蓮、麗羽がこういうの出来るって知ってる?)

(いや、真直たちからはロクな事にならないから、こういうのはさせないようにしてるって聞いたけど…)

(だよな…でも始皇帝が認めてはいるんだよぁ)

 

始皇帝を疑うわけではないが、それでも何処か納得できない。しかし麗羽は思ったよりずっと真面目な表情で桃香から渡された資料を眺めている。

 

「…この状況はあまりよろしくありませんわねえ」

「うん、朕もマズイと思う。思うっていうかダメだな」

 

始皇帝も麗羽も今の新野の状況をハッキリと言い放つ。

 

「農地は陳登ちゃんから教わった事を使いながら良くはしてると思うんだけど…」

「それは別の問題ですわ。第一、桃香さん。あなた、無計画に人を受け入れ過ぎですわよ?」

 

麗羽の発言に北郷一刀と白蓮は息を飲んだ。今の発言は北郷一刀たちが桃香だからと気を使って言えずにいた一言だ。

 

「でも、わたしを頼って遠くから逃げてきた人たちだんですよ。それを断るだなんて…」

「お黙りなさい!!」

「ひゃう!?」

 

彼女の性格からして難民を受け入れないという気持ちは分かる麗羽であるが、ここは事実は口にしていく。

 

「新野の経営が立ち行かなくなったら、困るのはどなた?」

「それは…新野に暮らす人たち、ですよね」

「それはおわかりのようね。今の状況だと秋の収穫はまあ良いとして、来年の今頃には立ち行かなくなりますわよ。それが分かっていて、ただ手をこまねいているだけなのは…紛れもない悪手ではありませんの?」

「…だったらどうしたら」

「そんなものは簡単でしょう。土地を広げれば良いのですわ」

 

開墾って事ならば既にやっている。白蓮はフォローするように口にする。

 

「開拓したところで、土地の広さには限りがあるでしょうに。だから白蓮さんは白蓮さんなのですわ」

「私が私ってどういう事だよ」

「でも、他に土地を広げるって…?」

「荊州のどこかの領地をいただくか…ああ、華琳さんから豫洲をいただくのも良いですわね。汝南なら、わたくしの縁者も少なくありませんし」

「それって、侵略じゃないですか!!」

 

顔が曇る桃香。

 

「それが何か?」

 

曇る顔の桃香に対して麗羽はポカンとした表情で言い返す。

 

「民や臣下に与える土地を増やす事に何の問題がありまして?」

「でもそれは、他の人の者を奪うってことで…曹操さんと同じじゃないですか」

「華琳さんのやり口とは全く別でしょうに…」

 

2人の考え方に大きな違いがある。麗羽は桃香の反論にまるで宇宙人でも見るような視線を向ける。

思った以上に麗羽からまともな助言だ。だてに名門袁家の当主を務めているわけではないということかもしれない。

 

「……麗羽のやつ、あそこまでちゃんと考えられるのに…なんで河北じゃああだったんだ?」

「それは俺が聞きたい」

 

桃香たちが平原にいた頃、麗羽の治める冀州から良い噂は聞いていなかった。しかし平原で流れてきた人を受け入れきれなくなった等という報告は無かった。

もちろん当時の桃香は今ほど有名では無かったし、他の隣接する州に流れた人もいたはずだから逃げる人も今よりずっと分散はしていた可能性はある。

それでも今の益州よりマシだったのかもしれない。

 

「…桃香よ、ちと良いか?」

「は、はい始皇帝陛下」

「お主は何を躊躇っておるのだ。麗羽が言った事は何も間違っておらんぞ」

 

始皇帝もまた桃香が躊躇っている事に不思議そうにしていた。何故なら始皇帝も麗羽の言葉に何も間違っていないと思っているからだ。

 

「で、でも…」

(ふむ、この娘は土地を侵略するのに禁忌感を抱いておるのか…しかし劉備でありながらそれはどうなのだ?)

 

桃園ブラザーズを思い出す始皇帝。もしも桃園ブラザーズを冷凍保存から目を覚ましたら国盗りを考えるくらいの危険性があると前に予想したことがある。

桃園ブラザーズと桃園シスターズは違うからしょうがないのだが。

 

(朕の知る劉備と目の前にいる劉備。同じ劉備であるが世界が異なればこうも人柄は違うものか)

 

目の前にいる劉備は何処か覇気が無いというか戦に消極的。

群雄割拠の時代で戦に消極的なのはとても痛手だ。あの国は弱腰だから狙い目だと他の国から思われる。なれば狙われやすくなるのは当然である。

防衛が上手くても守ってばかりでは勝てはしない。勢力を伸ばさないで守ってばかりでは防衛が強くてもいずれは崩される。

ただでさえ劉備陣営は勢力図として弱い。曹操と孫策の陣営が勢力を伸ばさないわけがない。気が付いたら大きな力をつけた国に囲まれて終わりだ。

この群雄割拠の時代で自陣を守っていくには戦に強くならないといけない。戦わなければならない。勢力を広げなければならない。

 

「桃香よ。其方の夢は何だ?」

「わたしの夢は…大陸のみんなが笑顔で平和な世の中になる事です」

「うむ。素晴らしい夢だ。その夢を馬鹿にする輩はおらんだろう」

「あ、はい。ありがとうございま…す?」

 

急に夢を褒められたのでちょっと疑問形の桃香。

 

「そもそも人の夢を馬鹿にする者はおらんさ。居ればそやつは相手の夢を馬鹿にして優越感を抱くどうしようもない奴だ」

 

どんな夢だろうが馬鹿にしてはいけない。夢の為に努力する姿は素晴らしいのだから馬鹿にする理由なんてないはずだ。

 

「大陸の平和。それは朕も目指したものだ。そして朕のやり方で平和にしてみせた」

「天の国ですね」

「そうそう天の国」

 

正確には異聞帯。その異聞帯では始皇帝は中国大陸だけでなく本当に世界統一を果たした。そして彼の考えた統治を続けたことで戦という概念が消え去り、本当の意味で平和になった世界だ。

 

「朕がもしも天の国にいかず、この大陸に留まれば平和にさせたのだがな」

 

そういう設定である事を忘れないで話していく始皇帝。

 

「それは…」

「しかし出来なかった。何かの運命だったのか…それとも朕以外の誰かの役目だったのか。それは誰にも分からん」

「……今からはやろうと思わないのですか?」

「思わんさ。この大陸では朕は死んだ事になっている。今更、朕が出ても意味は無い」

 

そもそも世界が違うので統治する気はない。どうしてもって言うなら大陸統一してもいいかなって軽い気持ちはあるようだが。

尤も軽い気持ちで大陸の覇権を手に入れられても困るものである。

 

「お主の夢は素晴らしい。しかしその夢を果たすためにどうするか考えておるのか?」

「う…」

「夢を掲げるのは構わん。誰もがその権利がある。しかし本当に夢を実現させるために努力せねば意味は無い。ただただ夢を語るだけで動こうとしなければ馬鹿にされる。流石に朕もそれは否定できん」

 

本当に夢を実現させる為に努力する者は馬鹿に出来ない。しかし夢を語るだけで何もしようとしない者が馬鹿にされるのは当然だ。

 

「桃香、其方は本当に大陸を平和にするために何かしようと頭の中では考えておるのではないか?」

 

彼女は成り上がってここまで来た。ただの娘から今では多くの民や仲間から慕われている者になるまで成長した。

ここまで成り上がったのは、なあなあで来たわけではない。本気で誰かを助ける為に戦ってきたからだ。

 

「朕がはっきりと言おう。其方は国を興し、王になれるぞ」

「……っ!?」

 

始皇帝から王になれると言われて嬉しいのやら畏れ多いのか複雑な気持ちになる桃香。

隣で羨ましそうな顔で見ている麗羽はちょっと置いておく。

 

「そんな…私が王だなんて」

「なれるぞ。だが、なろうと思わなければなれんがな」

 

王になれる素質はある。しかし素質があろうと無かろうと、王になろうと目指さなければなれるものもなれない。

 

「其方の夢を実現させるためには王になる事だぞ」

「それは…」

「其方は実は気付いておるのではないか?」

 

桃香は何も考えていないわけではない。彼女にだって考えているのだ。

何も考えずにここまで到達できるわけがないのだから。前に曹操と会談した時にだって何も考えていなかったわけではない。ただ何も言えなかったのだ。

曹操の覇気に負けて言えなかったのか。自分の本音を曹操に言いたくなかったのか。それとも他に理由があったのかは分からない。

 

「大陸を平和にするために何を考えている。このまま新野の地で過ごすのも構わん。しかし、それでは其方の夢は叶わない」

 

彼女の夢は大陸の平和。新野や徐州を治めていたの夢の実現の練習のようなものだ。

 

「今、動かなければいずれ詰むのは其方も心の底で分かっておるだろう。ならば今できる最良は分かっておるな?」

「それは…」

 

新野に逃げてくる難民問題を解決するには土地をより開拓する事ではない。

土地を開拓する速さよりも難民が流れてくる方が勝っている状況だ。そもそも麗羽も言ったが開墾する土地には限界があり、更に土地の限界よりも難民の方が多すぎる。

より難民を受け入れるためには更なる土地が必要なのである。もう新たな土地を手に入れなければ解決はしない。もしくは難民の受け入れを拒否するしかない。

難民の受け入れ拒否は桃香はしない。なのに受け入れは続ける。なら新たな土地を手にいれるしかない。

もう何をすべきか最初から決まっていたのだ。ただ陣営のトップである桃香が動かないだけである。

 

「戦や侵略が嫌いならば何故、台頭してきた」

「苦しんでいるみんなを無視するなんて出来なかったんです。わたしにも何か出来ると思ったんです」

「ならば其方がやるべき事は決まっている」

 

桃香たちがやるべき事は決まっている。

騒ぎの元を絶つのだ。新野に難民が逃げてくるのは益州の統治が上手くいっていないから。益州に居たら死ぬかもしれないと民たちが思っているから逃げているのだ。

 

「朕だったら益州の州牧を討つ。代わりに朕が統治する」

 

劉璋を討ち、そのまま益州も手に入れる。そうすれば土地も手に入り、難民問題も解決する。

民に与えられる領地が増える、益州の民は逃げずに済む。一番の解決法だ。

 

「始皇帝陛下の威光でも戦って侵略するしかないんですか」

「先ほども言ったが今の朕は死んだ事になっている。朕を全面的に出しても向こうは笑って無視するさ。そもそも朕が皇帝になる前なぞ血みどろの戦いしかなかったぞ」

 

始皇帝が大陸統一した方法もまた戦に勝ってこそだ。

 

「益州の民は重税を課され、千里の道を越えて郷里を逃げ出すほどに困っている。討つ名目はいくらでもある」

 

侵略行為に正当性を持たせる方法はいくらでもある。

 

「支配者というのは何をしようと、必ず何か言われるものだ。朕なんて何回も反論されたし、暗殺も何回されたことか。はっはっはっはっは!!」

 

笑えない。

 

「始皇帝ジョークだ」

 

冗談でも笑えない。

 

「ならば自分の考えを貫き通す事が大事だぞ」

「自分の思うように…」

「桃香よ。本当に何がしたいのかもう一度考えてみるが良い」

「……はい」

 

ぴしゃりと言い放った言葉に桃香は黙る。

 

「麗羽よ。其方の言いたい事を朕が言ってしまったな」

「いえいえ、始皇帝陛下からのお言葉ほどありがたいものはありませんわ」

 

静かに席を立つ始皇帝と麗羽。

 

「話はここまでだな。この後、麗羽からある人物らとお茶をする約束をしたのだ。ええと…空丹であったな。その者らとお茶する約束。後の話は臣下たちにするが良い。親身になって聞いてくれるだろう」

 

始皇帝の視線が北郷一刀に向けれれた。流石に緊張してしまう。

 

「そこの…北郷一刀と言ったな」

「は、はい」

「其方は立香と似ている。ならば其方も桃香に何をしてやれるか考えておくとよいぞ」

「はい」

 

始皇帝の言葉がとても重く感じるのであった。

 

 

468

 

 

「桃香お姉ちゃん、みてみて。お米、いっぱいとれたよー!!」

 

始皇帝と麗羽からの相談を受けてから収穫の秋が訪れた。

 

「璃々ちゃん元気だ。気を付けるんだよー」

「璃々、皆さんのお邪魔にならないようにね」

「うん!!」

 

璃々はみんなの手伝いが出来るのが嬉しいのか、電々や俵藤太たちと混じって身ほどもある稲の束を一生懸命に運んでくれていた。

周りで稲を刈っている人たちもその様子を嬉しそうに眺めていて、辺りからも収穫の喜びと余裕みたいなものが伝わってくる。

劉表が亡くなってから荊州はゴタゴタだ。そんな中で紫苑と魏延こと焔耶が劉備陣営に入る事となった。既に真名の受け取りはしている。

 

「稲の収穫は良いものだ。これぞ秋の風物詩だな」

「風物詩?」

「璃々もいずれこの良さが分かるぞ」

 

俵藤太が璃々に稲刈りのしかたを優しく教えていた。

稲の収穫が終わったら、次は秋まきの麦の準備が始まる。しばらくは食糧事情も安定はするかもしれない。

農業の効率の良いやり方や管理の仕方は陳登からの教えの賜物。

徐州から随分と遠く離れたが、ここまでついてきてくれた人たちに彼女の教えはしっかりと根付いている。

 

「玄徳さま。ありがとうございます」

「おかげで今年は落ち着いて冬が越せそうです」

「うん。皆さんもお疲れ様!!」

 

今、声を掛けられた人たちは益州から逃げてきた人たちだ。

嬉しそうな顔をしているのはとても良い。しかし、まだまだ益州からの難民は流れてくる。受け入れが厳しい状況だ。

日に日に増えており、来年の春より先は想定した収穫量でもまかない切れるかどうか分からない。

土地の開墾はもちろん、収穫量を上げる為に土壌の改良や効率の良い人たちの配置まで出来る事は可能なかぎり進めている。

進めてはいるが新野の土地にも限られているし、限界がある。

冷たい言い方になるが、この土地はもう一杯だから受け入れられない。しかし桃香はそれを良しとしない。

理想を示すのは君主の仕事なら、桃香のしている事は正しい。しかしそれが現実に出来るかどうかと考えれば難しいものだ。

視線を桃香を向けると今も益州からの逃げてきた人たちに感謝されまくりだ。

 

「…あの皆さん」

 

そんな中、益州から来た人たちに桃香は自分から声を掛けていた。

 

「皆さんはもといた益州に帰りたいですか?」

「それは…」

 

生まれ育った土地であるから帰りたくないと言えば嘘になる。

彼女の問いに周りの人たちは言いづらそうだ。

 

「劉璋さまじゃなくて、劉備さまが治めて下さる益州なら…戻りたいですけど」

「ははは、そりゃそうだ」

「それなら戻りたいなあ」

「あ、あはは…」

 

まさかの返事に桃香はちょっと苦笑い。

もちろんそれは農民の人たち流の笑い話かもしれない。しかし本音も少しは入っているかもしれない。

それから少しだけ話してから農民たちはまた作業に戻る。

 

「……益州か」

 

ポツリと呟いた後、桃香は始皇帝と麗羽の相談した時の事を思い出す。

桃香は朱里と雛里の元に近づいて絞り出すようにある事を口にした。彼女からは絶対に言わないであろうと思っていた一言だ。

 

「ねえ、朱里ちゃん、雛里ちゃん。二人がいれば益州は取れる?」

 

この言葉に含まれる意味は重い。

本当ならば桃香だって言いたくなかった言葉だ。しかし新野はこれ以上どうにもならない。

 

(理由があっても他の人の土地を力で奪うのは悪い事だと思う。でも自分の土地の人を苦しめるのはもっと悪い事だよ…これ以上はもう)

 

理由があっても侵略行為にまだ抵抗を感じている桃香。しかし、抵抗を感じて何もせずにいては統治している民を苦しませる。そんな事はもっと出来ない。

桃香は自分の心を苦しめながらも覚悟を決めるのであった。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回は1週間後に更新予定です。早く更新出来たらします。

今回から蜀ルートにあった益州攻略編に入ります。
どんな展開になるかはゆっくりとお待ちください。
まあ、オリジナル展開になります。原作では出てこなかったキャラが出てきますので。

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只の語りみたいなもん。


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桃香が麗羽と始皇帝に相談。
始皇帝に相談とか普通に凄いというか、羨ましいというか。
まあ、今回はなんか説教ぽくなっちゃいましたが。
もしかしたら始皇帝っぽくないかもと思われるかもしれません。
そして麗羽は無能なんてイメージが付いてますが、彼女は彼女でちゃんとまともに冀州を治める為に考えていたというのがここで分かったんですよね。

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ここは原作と変わらずですかね。

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