Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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ついに成都での決戦です!!
原作と同じ流れなので藤丸立香たちの出番はまだです。
ですが、そろそろオリジナル展開になっていきますので。立香たちを絡ませないとクロス作品の意味が無いですからね。


では、本編をどうぞ!!


成都での決戦

482

 

 

益州の都・成都。

城門の前に兵を展開して桃香たちを待っていたのは2人の将。厳顔と馬岱であった。

 

「馬岱ちゃん…」

 

馬岱は申し訳なさそうな顔をしている。

 

「ごめんなさい劉備さん。やっぱり姉様は…」

「仕方ないよ。それよりも…」

「お初にお目に掛かる。我が名は厳顔。我が主、劉璋に代わり、益州の全軍を預かっている者だ」

 

桃香たちは厳顔を見るのは初めてである。たくさんの戦いを潜り抜けてきた風格ある将だと感じられる。

紫苑はその辺りをを内側に秘めている雰囲気であるが、厳顔はむしろ隠さずに正面から叩きつけている感じだ。静と動というのが似合う。

 

「なら…厳顔殿、お願いがあります」

 

厳顔の覇気に気後れする事なく桃香は静かに口を開いて見せた。

 

「今すぐ軍を退いて、わたしたちに…ううん、この益州で困っている全ての人たちに力を貸してください」

「それは他州の貴公らに言われるまでもなく、我らが成すべきこと。お主らこそ大人しく兵を退いてもらおうか」

「以前送った書状の通り、新野に助けを求める人が来なくなれば、もちろんその言葉に従うつもりです」

「……ほぅ」

 

桃香の反論に意外そうな顔をする厳顔。小さく驚いたように声をついあげた。

そのまま静かに目を細めて続きを促してみる。

 

「ここに来るまで益州のことは見てきました。村や街の人たちはもちろん、役人や軍人さえ疲れ切っていて…わたしたちを侵略者と罵る人さえいませんでした」

 

桃香は侵略者と非難されると思っていた。しかし実際は逆であったのは驚きである。

侵略者に助けを求めているとも感じてしまうほどであった。

 

「……だからって、それが益州に軍を進めて良い理由にはならないぞ劉備」

「馬超さん…!!」

 

馬超の登場に厳顔と馬岱は静かに安心した。

 

「それは、わかってます。でもそうしないと、益州もわたしたちの新野も共倒れです」

 

お互いに何もしなければ滅びるのは時間の問題だ。

 

「わたしは新野の人たちも、助けを求めてくる益州の人たちの事も何とかしたかったんです…それは侵略と言われたとしても」

 

桃香は真っすぐに馬超たちを見る。

 

「馬超さん、厳顔さん、剣を置いてください。そして出来る事なら…わたしたちの下で益州の人たちを救うお手伝いをしてくれませんか?」

「断る」

 

桃香の言葉をキッパリと切り捨てた。

 

「馬超さん…」

「わしも右に同じだ。他の者はいざ知らず、それをあっさり受け入れては益州を預かる身としての立場がない」

「立場なんて言ってる場合じゃ…」

「その『なんて』に命を預けておるのじゃよ、わしは。劉焉殿の時代よりな」

 

厳顔は声を荒げも、怒りもしない。

 

「故にこの場には首を刎ねられる将はいても、降伏する将などはおらん」

 

ただ淡々と語るだけであるが、その言葉からは益州を守って戦ってきた将としての強い意志を感じる。

それこそが『誇り』や『プライド』と言うものなのだ。北郷一刀や愛紗たちは彼女の誇りが分かる気がした。

 

「劉備。あんたたちと戦ってから、ずっと考えてたよ。涼州を奪われて路頭に迷ったあたしたちを救ってくれた劉璋殿や厳顔に義を貫くのが正しいのか…それとも劉備みたいに、苦しんでる民を見て見ぬフリを止めて劉璋殿に刃を向けるのが正しいのか」

「馬超さん」

「けど…あたしじゃわかんないんだ。どっちが正しいのか、どっちが間違ってるのか。だから…教えてくれよ劉玄徳。あたしにこの戦場で」

 

最後の最後まで考えていたが、結局答えは見つからなかった。だから馬超は『殴って決める』事にしたのだ。

 

「それを決めるのは戦いじゃ…」

 

北郷一刀と愛紗は桃香の肩にそっと手を置いた。愛紗は桃香に対して小さく首を振って見せる。

もう何を話しても平行線だと分かったからだ。ならばやる事は1つである。

 

「悪いな一刀、関羽。あたしのワガママに巻き込んで」

「いいよ」

「…話せばわかるってのは、頭で納得できる奴らがする事なんだよ」

 

馬超はぽつりと言うと、握った拳で胸をどんと一つ叩く。

 

「あたしはここじゃないと納得できないからさ。あと一度だけでいい。あたしに付き合ってくれよ」

「そういう事だ。劉玄徳よ、互いの言い分、どちらが正しいか後はこの戦場で決着をつけさせてもらう!!」

 

これ以上の言葉はもう意味は無い。それが分かった桃香は絞り出すように言葉を紡ぐ。

 

「……わかったよ。なら、愛紗ちゃんあとはお願い」

「お任せください。全て、桃香さまの御意志のままに」

 

益州を巡る決戦が驚くほど静かに幕を上げる。

 

「互いに退路は無い。泣いても笑ってもここで決着よ」

「わたしたちが勝っても厳顔さんたちを泣かせるようなことには絶対しませんから!!」

「フハハッ、言いよるわ。しかし己の意思を通そうというのならば、そのくらいの意気でなくてはな」

「本気ですから…!!」

「ああ、そんなことはわかってるよ。だからここで白黒つけるんだ!!」

 

敵軍の大将は厳顔であり、更に涼州騎馬隊を率いる馬超。

厳顔は奇妙な形の武器を持っており、西涼隊の機動力は未だに健在である。

劉備軍は4万で、益州軍は6万。兵の差は2万であり桃香たちに退路はない。ならば速攻、一気の力攻めで攻めるしかない。

 

 

483

 

 

ついに成都で劉備軍と厳顔率いる益州軍と馬超率いる西涼騎馬隊がぶつかる。

 

「先方の愛紗さんは馬超さんと接敵。予定通り馬超さんとの一対一に持ち込んでます。部隊の指揮は次鋒の白蓮さんと楼杏さんに引き継ぎ!!」

「右翼も作戦通り、鈴々が押さえ込んでいる。厳顔が不思議な武器を使ってるって」

「不思議な武器…どんな形状だ詠殿」

「なんか大きくて横に長い鉄の武器だって」

「それだけじゃ分からん!!」

「それは鈴々ちゃんに任せましょう。部隊の指揮は?」

「そっちは焔耶が何とか。とりあえず戦線は維持してる」

「敵右翼の馬休さんと馬鉄さんがこちらに回り込もうとしてますが紫苑さんと俵さんが止めてくれてます。遊撃の星さんも回しましたし、こちらも大丈夫でしょう」

 

劉備軍の軍師陣が成都の決戦の状況をせわしなく早口ではっきりと伝えていく。軍師にとって戦場の情報は逐一報告が欲しいのだ。

朱里と筆頭に雛里、詠、真直、諸葛孔明、司馬懿(ライネス)という豪華な軍師陣である。

 

「大変だね兄上」

「お前も手伝えライネス!!」

「手伝ってるじゃないか」

 

諸葛孔明と司馬懿(ライネス)はサポートのはずだがサポート以上の働きをしている。

 

「ところで厳顔殿が変わった武器を使っていると聞くが兄上は知らないのか。前に一度会っているのだろう?」

「その時は変わった武器は持ってなかった」

 

もしかしたら持っていたかもしれないが黄巾党を討伐する時は使っていなかったのだ。

変わった武器というのは気になる。戦場は武器1つで変化するもの。情報は大事であり、情報を制した者が勝つ確率が大いに高まる。

 

「戻ったぞ」

「おお、荊軻殿。待っていたとも」

 

戦場の情報集のために荊軻や燕青には隠密行動をしてもらっている。

 

「厳顔殿が持つ変わった武器だが…あれは大砲だな」

「なんだと?」

「たいほう…って、何ですか?」

 

雛里の言葉にこの外史世界に大砲という武器が広渡っているという事はなさそうだ。雛里だけでなく、朱里たちも大砲を知っている感じではない。

そもそも大砲がこの外史に流通していれば戦争方法もまた変わっているはずである。

 

「火薬があるのは確認していたが大砲まであるとはな…」

 

広く流通はしておらず今のところ厳顔だけが持っているようだから特別な武器なのかもしれない。

 

「大砲と言うのは火薬を使用した武器だよ」

「そんなのがあるのですね…流石は博識な孔明さんと司馬懿さんです」

「その武器ってどれくらいの脅威ですか?」

「喰らえば簡単に軍隊を壊滅させられるぞ」

 

表情が引き締まる朱里たち。

 

「厳顔を相手してるのは鈴々ちゃんでしたね。すぐに増援を送りましょうか」

「いや、厳顔殿が持っているのが大砲ならば増援の兵を寄こしたら逆に鈴々の足手まといになるだけだ」

「そうだね。ただ当てやすい的を送るだけだ。それではいたずらに兵を失うだけになるよ」

「なら少数精鋭で送ります」

 

テキパキと指示を出していく。

 

「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、みんな…無事でいて」

「大丈夫ですよ桃香さま。愛紗さんたちは、きっとやってくれます」

 

不安な顔をする桃香を安心させるために朱里は声をかける。

 

「うん」

「でも、ここまで正面からの激突だけだと、私たちはすることがありませんね。まあ、厳顔さんの武器は気になりますけど」

「今回の戦いはそういう戦いだしね。変に策なんかに頼らない方がいいのよ」

「愛紗さんたちからも、そうするべきだとお話がありましたから」

 

今のところお互いに真正面からのぶつかり合いをしている。しかし油断はしていないのが軍師陣だ。

もしも何か変化があればすぐに対応できるように作戦は考えている。例えば漢中から伏兵の一団が攻めてきたりするなどだ。

 

「周囲の状況は?」

「静かなものです。この流れに乗って、漢中から伏兵の一団でも来るかと思ったけど…戦う体力が残っていないというのは本当なのでしょうね」

「成都より南も静かです。念のため、恋さんたちを警戒に回してますけど…この戦いは静観するつもりのようですね」

 

もしかしなくても勝った方に従うつもりなのだ。

 

「とはいえ、この戦いもそう長くはかからないでしょう。状況の把握だけは怠らずにお願いします。事態が動くのはもうすぐだと思いますから」

「ねえ、朱里ちゃん。ひとつお願いがあるんだけど」

「どうかなさいましたか桃香さま?」

 

 

484

 

 

成都の城門前では愛紗と馬超が一騎打ちをしていた。

 

「ちぃっ」

「馬超よ。お主、本気で来ると言ったな」

「それがどうした…!!」

「だが…どうしてお前は、そんなに苦しそうなのだ」

 

愛紗は馬超が何処か戦いに集中していないのに気付いていた。

 

「う、うるさい。あたしが苦しんでるなんて…そんな事はない!!」

「それならそれで構わんが、そのように乱れた心で振るう槍などこれ以上相手をする気にもならんぞ」

 

戦いに集中していない武人と戦う気にはならないという事だ。

 

「言うじゃないか。だったらこの一撃を!!」

「通じんと言っている!!」

 

青龍偃月刀で馬超の一撃を打ち返す。

 

「そんな…あたしの本気の一撃が」

「本気? 私の知る錦馬超の槍は、このような寝ぼけた一撃ではなかったはずだぞ」

 

戦が始まる前に馬超の言葉を聞いて吹っ切れたかと思っていたが違った。葭萌関で戦った時よりも弱く感じる。

 

「難しい事を考えるのは苦手なのだろう。それにこの間、鈴々と戦っていた時はもっと楽しそうだったぞ?」

「そう見えたか?」

「ああ」

「…そっか、そうだな」

 

せっかく決戦前に李書文(老)から難しく考えずにいろと言われたのにこれでは意味が無い。殴って決めることにしたのだ。

馬超は恥ずかしそうに笑った。

 

「よし、なら難しいことはちょっと忘れる」

 

馬超は息をゆっくりと吸った後、大地に響くほどの雄叫びをあげた。

 

「…む」

 

彼女の雄叫びに少し威圧されてしまうがすぐに気を保つ。

 

「ふう、すっきりした。悪いな…さっきまでのあたしは確かに弱かったよ」

 

馬超は己の獲物を持ち直す。仕切り直しだと言わんばかりだ。

 

「行くぞ関雲長!!」

「ほう、良い顔になったではないか。ならば、今度こそお相手仕ろう」

 

愛紗も武器を構え直す。

 

「我が名は馬超。西涼の勇者・馬騰が娘、錦馬超だ。五胡にも轟くこの名前、恐れぬのであればかかってこい!!」

「我は関羽。劉玄徳の第一の妹にして、姉を守る剣である。馬騰が娘、錦馬超…相手にとって不足なし!!」

 

お互いに名乗り上げる。

 

「「いざ、勝負!!」」

 

 

485

 

 

「なるほど…あれが噂に聞いた西涼の騎馬隊なのね」

「やはり馬の扱いが上手いな。名に馬が付いてるからか?」

「それは…どうかしらね俵殿」

 

大きく回り込んでいる騎馬隊にひるがえるのは見慣れた馬家の旗。

率いているのは馬休と馬鉄。馬超の影に隠れがちであるが、2人もれっきとした馬家の一員。

個人の武勇ならともかく、兵の運用や機動力に関しては馬超に引けをとらない。

そんな西涼の騎馬隊を相手するのが紫苑、星、俵藤太である。

 

「総員、本陣に回り込まれるな。弓で牽制用意…放てぇ!!」

「当たりませんなぁ」

「まあ、当てるつもりは無いですから」

 

弓が大きく放物線を描いて地面に突き刺さる頃には馬休率いる騎馬隊は弓の有効射程から大きく距離を取った後だ。

近づかせないのが目的であるため当たらなくて良いのだが、それでも嫌と言うほど西涼騎馬隊の機動力を見せつけられる。

 

「総員、もう一回近寄るよ」

「一気に抜けるからね。蒼たちに付いてきて!!」

 

馬休たちは元気いっぱいやる気いっぱい。まだまだ戦意十分。

 

「ふむ。あの二人が右翼の指揮官か」

 

星と紫苑たちの率いる左翼は基本的に弓中心の足止め部隊。直接対決は遊撃部隊の星に任せてもかまわないくらいであるが出来るだけ馬家の皆を傷つけたくない、乱戦に持ち込ませたくないというのが本音である。

 

「馬休たちがまた近づいてまいりましたぞ」

「なら、少しわたくしにお任せくださいませんか?」

「構わんがどうするのだ?」

「あの二人は無力化させた方が良いのでしょう。星ちゃん、向こうの動きが鈍ったらすぐに突っ込んで」

「承知」

 

星が頷いたのを確かめると紫苑は音もなく弓に二本の矢をつがえる。

 

「……はっ!!」

 

矢が放たれたが音はしなかった。ただ大気が切り裂かれる感覚が肌に伝わってくる。そして次の瞬間に大きく回り込んでいた馬休と馬鉄は頭を殴られたみたいに馬上で身体をのけぞらせた。

 

「ほう。これが噂に聞いた黄漢升の弓の冴えか」

 

馬休と馬鉄だけではなく、周囲を囲んでいた馬家の騎馬隊たちも何が起こったか分からないようで思わずスピードを緩めてしまっている。

まさにチャンスだと言わんばかりだ。この瞬間を星は見逃すつもりはない。

 

「とりあえず捕まえて参ります。お前たち、付いて来い!!」

 

星は戸惑う馬家の右翼めがけて隊を率いて一気に突っ込んだ。

 

「…流石ね。あれくらいじゃ落馬したりはしないか」

「それよりも紫苑殿の方が流石だ」

 

紫苑はかすらせないで鉢金の中心に当てたのだ。しかも流れ矢の威力も殺すように計算して撃った。

馬休と馬鉄は頭の一番頑丈なところに一撃喰らって軽い脳震盪を起こしているはずだ。

理屈は分かるが馬上で上下する相手の額をピンポイントで狙う腕には驚くしかない。

 

「見事っ、としか言いようがないな」

「ふふっ、ありがとう俵殿」

 

本当に見事だったので俵藤太は弓兵のクラスとして疼いた。彼はバトルマニアではないが紫苑の弓の腕を見せられては武人として黙ってられないというのが本音である。

紫苑の弓の腕も見事だが俵藤太も負けていない。カルデアのシュミレーションで源頼光、坂田金時、牛若丸たちに力を貸してもらって大ムカデ退治を再現したことがあった。

その時にあの平安時代最強の神秘殺し源頼光の髪飾りだけを撃ち落とす離れ業をやってみせたのだ。ただし、『源頼光の髪飾りを撃ち落とす』という言葉に騙されてはいけない。

坂田金時の攻撃に耐え、源頼光の刀をすり抜け、牛若丸の防御を越え、更にマシュ・キリエライトの盾の扱いの上達を計算に入れた上で矢を盾で跳弾させて源頼光の髪飾りだけを撃ち落としたのだ。これを聞けば彼の実力が分かるはずである。

 

(いやはや本当に見事な腕だ。もしも彼女がカルデアにいたらアーチャーの連中が黙っていないやもしれんなぁ)

 

もしもアタランテやアーラシュたちが居たら弓の腕を競い合ったかもしれない。

 

「さて、星ちゃんが敵部隊を制圧したら他の所の援護に回りましょうか」

「そうだな。それに厳顔殿がいる戦場が気になる。それは紫苑殿もそうだろう?」

「そうですわね」

 

紫苑と厳顔は知り合いだ。黄巾の乱では共に黄巾党を戦った仲でもある。

複雑な気持ちになるが、乱世では味方だったのが明日に敵となるなんて当たり前だ。

 

 

486

 

 

「ふむ…さすがここまで来ただけあって、よく戦うものだ。その奮闘に応え、馳走してやらんとな」

 

厳顔は鈴々が本気を出すにふさわしい武人だと認めた。だからこそ己の切り札を出しみ惜しずに使う。

 

「くらえぃっ、豪天砲の一撃を!!」

 

豪天砲の引き金を引いた瞬間に鈴々の頬を掠めて後ろで大きな爆発が起き、劉備軍の兵たちが吹き飛ばされた。

 

「次は当てる」

「なんなのだ、あの変な武器!?」

 

流石の鈴々も冷や汗を掻く。

 

「あれってもしかして火薬かな~?」

「そうだよ、絶対そう。そんなの使うなんてもったいないよ。赤字だよー!?」

 

電々や雷々も驚いている。この時代では火薬はとても貴重であり、使えば強力な武器となる。そもそも火薬はどの時代も強力な兵器になるものだ。

 

「これも勝利のためよ。費用は劉璋殿に持っていただくしのう」

「くうー、お金持ちめ!!」

 

悔しがるのはそこではない。

 

「あれは豪天砲。桔…厳顔殿が持つ特別な武器だ。気をつけろ、直撃したら命は無いぞ!!」

「知ってるの焔耶?」

「ああ。前に一度だけ見せてもらったことがある」

 

紫苑と焔耶は厳顔と知り合いだ。だからこそ話したい事は色々とあるが今は無理である。

何せ厳顔が焔耶に対して何か話そうとしない。今は戦いに集中しろという事である。その事が分かったからこそ焔耶も厳顔に何も話そうとしない。

戦って語り合えという事だ。

 

「盾を構えても軽くぶち抜いてくるぞ!!」

「ふふん、この豪天砲を前にして一切の守りは無意味ぞ!!」

「どうするんだ鈴々?」

「そんなの簡単なのだ」

 

鈴々は恐怖せずに真っすぐに飛び込んだ。

 

「おい、そんなまっすぐ!?」

「当たらなかったら、どうってことないのだー!!」

 

確かに当たらなければ意味は無い。当然な事であるが、当たらないという部分は絶対ではない。

 

「その心意気や良し。だが的が小さいからと言って、外しはせんぞ」

「焔耶、こいつは鈴々に任せるのだ。にゃああああああ!!」

「ああもう…総員、鈴々の攻撃を援護しろ。あの二人に敵部隊を近づけさせるな!!」

 

豪天砲は強力な武器だ。それ1つだけで軍隊を壊滅させる力がある。

超火力であるが弱点が無いわけではない。豪天砲の弱点は弾切れがあるという事。弾切れまで耐えれば勝ちだ。

 

「でええええい!!」

「よ、はっ、ほ!!」

「おりゃあああああ!!」

「にゃーー!!」

「ええい、ちょこまかと!!」

「ちょこまかしないと当たっちゃうのだ!!」

 

ちょこまか動く鈴々は正解の行動だ。照準を合わさせてはいけない。

 

「おのれ。武人ならば正々堂々と受け止めてみせんか!!」

 

「無茶言うのだ。当たったらダメって言ったのはそっちなのだ!!」

 

鈴々の正論である。

 

「桔梗さん、無事!?」

「当たり前だ。他の連中はどうだ?」

 

ちょこまかと回避に専念していると厳顔の元に馬岱が駆け寄って来た。

彼女の顔は焦っていた。

 

「蒼たちは負けちゃった。残ってるのはたんぽぽたちと姉様だけ………ぐっ!?」

「なら、これで終わりにしてやる!!」

 

厳顔と馬岱が合流する前に焔耶が入り混んで邪魔をする。

 

「ああもう…人が話してる時に邪魔しちゃダメって、お母さんに教わらなかっ…て、ちょっ!?」

「でりゃあああああ!!」

「ちょっと、相手なら後でしてあげるから、せめて報告だけさせてってば!!」

「鈴々、こいつはワタシが押さえる。今のうちに桔…厳顔殿を!!」

「…えええ、いや、それはちょっと空気読むのだ焔耶」

「味方の援護だぞ!?」

 

何も彼女は間違った事はしてないのに鈴々から呆れられるのは納得いかない。

 

「援護にしてもやり方があるでしょ」

「なのだ…」

「お前はどっちの味方だ!?」

 

焔耶の言い分は正しい。

 

「ははは、元気があって結構結構。そのくらいの覇気がなければ、この乱世を生き抜く事など出来まいて。益州でこの戦の趨勢を見守っておる馬鹿どもも、それが分かれば良かったのだがな」

「厳顔…」

 

暗い顔をした鈴々を見て口を閉じる厳顔。

 

「と、つまらん話をしたな。蒲公英も話はもうよい。後は魏延を何とかせい!!」

「えええ、こいつの相手したくない」

 

物凄く面倒そうな顔をする馬岱。

 

「なんだとー!?」

 

本当に相性が悪いのかもしれない。

 

「ほれ張翼徳。こちらもそろそろ決着をつけようではないか!!」

「わかったのだ。だったら、この一撃で…勝負なのだ!!」

「応。こちらこそ手加減せんぞ!!」

「そんなのいらないのだ!!」

 

そろそろ決着がつく。

 

「鈴々!!」

 

厳顔と鈴々がいる戦場に足を運んだのは北郷一刀と哪吒。

諸葛孔明が厳顔の豪天砲の危険性を伝えた事で急いで援護を出したのだ。

 

「でえええええい!!」

 

豪天砲を放つ姿を見て北郷一刀は普通に驚いた。

 

「ええええ、何あれ!? この世界ってああいう武器があるの!?」

 

何処からどう見ても大砲だ。話は聞いていたが本当に大砲があるとは思わなかった。

この時代に火薬があるのは確認しているが大砲まであるのは驚きである。

 

「あんな武器ってあったの電々!?」

「あんなのないよー!?」

 

近くに居た電々に聞いてみるとやはりよくある武器ではないようだ。しかし、そんな話をしている間にも厳顔と鈴々の戦いは続く。

諸葛孔明が援護として哪吒を選んだのは豪天砲が宝貝の類かと予想したから。もしかしたら似たような兵器があったかもしれないが三国志の歴史で大砲のようなものは無かったはずだ。

大砲なんて兵器があるはずないのに厳顔が持つ武器は大砲。しかし宝貝の類と言われれば納得できる。この外史世界は幻想の類が残っているからだ。

 

「哪吒、あれって宝貝か?」

 

ジっと哪吒は厳顔が持つ宝貝を見る。

 

「否 宝貝じゃない」

 

豪天砲は宝貝ではない。大砲という脅威は無くならないがより特別な武器というわけではなさそうだ。それでも三国志の時代に大砲がある理由は解明されない。

気になるが今はそれよりも鈴々の無事かどうかが大切だ。

助けに行こうとするが哪吒が止める。気持ちは分かるが北郷一刀が助けに行ったら砲撃に巻き込まれるだけである。

 

「決着つく」

 

歯がゆいが今は見届けるしかない。

 

「でりゃあああああああああ!!」

「にゃああああああああああ!!」

 

鈴々はギリギリで砲撃を回避したと同時に一撃を厳顔に叩きこんだ。

 

「……やれやれ、まさか正面からのぶつかり合いでわしが遅れを取るとはな」

「でも、すっごく強かったのだ」

「そうか。張翼徳よ、早くわしの首を取れ」

 

豪天砲に寄りかかった厳顔を鈴々はしばらくまっすぐ見つめた。北郷一刀が何かを言おうとしたが次の鈴々の言葉で止まる。

 

「そんなのしないのだ」

「なんだと?」

 

まさかの言葉に聞き返してしまう。

 

「お姉ちゃんは厳顔と馬超にこれからも力を貸して欲しいって言ったのだ。だから厳顔の首を取るのは…鈴々の役目じゃないのだ」

「…むう」

「それとも厳顔は勝った鈴々の言う事は聞けない?」

 

その問いに次に黙ったのは厳顔。そのまま無言で見つめ合う2人。

 

「……ふっ」

 

厳顔は急に噴き出した。

 

「あははははは、面白い事を言う。だがそうだ、確かにその通りだ。負けを認めた以上、勝者に従うしかあるまい。お主の主人に降ろうではないか翼徳」

 

敗者は勝者の言う事を聞く。武人として文句は言えない。

 

「鈴々!!」

「あ、お兄ちゃん。厳顔、鈴々がやっつけたのだ」

 

ニッコリ顔の鈴々。褒めてほしいと伝わってくる。だからこそ鈴々の頭を優しく撫でる。

 

「すごいな…お疲れさま」

「えへへ」

 

凄く嬉しそうだ。そんな彼女を見て哪吒はマスターに頭を撫でられる牛若丸を思い出す。

 

「ああ、玄徳殿の隣にいた小僧か」

 

厳顔の表情は勝負に負けて降ったばかりだっていうのにびっくりするほど清々しいものであった。

 

「馬休と馬鉄の二人はもう拘束したわ」

「黄忠…紫苑か。久しぶりだな」

 

気が付けば紫苑たちも駆けつけていた。先ほどの発言からして無事に馬休たちに勝ったようだ。

 

「この間は我らの主が非礼を働いてしまったな」

「気にしないで。私も気にしてないから」

「まさかこんな事になるとは…人生とは分からんものだな」

「そうね。色々と話したい事はあるけど今は後にしましょ。それより馬岱さんは?」

「ん? 先ほどまでこの辺りで焔耶と戦っておったはずだが」

 

周囲を見渡すと焔耶と馬岱が居なかった。何処まで追いかけっこをしてるんだと思ってしまったくらいだ。

 

「…まあ良い。とりあえずこれだけ戦いぶりを見せておけば益州の残りの連中もおぬしらを認めようて」

「それって、まさか」

「このくらいの罪滅ぼしをせねばな。先代より劉璋殿をお預かりした身でありながら…益州がこうなったのは我が不徳のいたす限り。わしの首一つで事が収まるとは思わんが…」

 

劉焉の時代から仕えていた厳顔。何もしないで投降するには流石に面子がないというものだ。

 

「厳顔…」

「そう怖い目で見るな。他に責任の取り方を知らんのだ」

 

北郷一刀が鈴々の代わりに口を開く。

 

「その件は劉備から預かってます。さっき張飛が言った通りです。益州を改めてまとめるために、力を貸して欲しいそうです厳顔殿」

「やれやれ、黄祖と馬騰殿は戦場で見事に散ったと聞くが、劉玄徳は死人に鞭を打つのが好きと見える」

「かっこいい死に方よりも楽しい生を望んでるだけですよ劉備は」

「ふむ。少なくともこの世には美味い酒が山ほどあるしな。あの世には劉焉殿と酌み交わす酒があるかどうかも分からん。翼徳とも約束したし、益州の根性なしどもの調略は任せておくがよい」

「ありがとうございます」

 

まだ死ねないようだと心の中で呟く厳顔であった。察したのか紫苑は厳顔に声を掛ける。

 

「私たちにもまだやるべき事があるという事かもしれないわね」

「そのようじゃな。てか、今の年寄り臭い台詞だな紫苑よ」

「桔梗?」

「おおう…怖い顔」

 

紫苑に年齢などの話はタブーだが、それは別の話である。

 

「ともかく…あと残ってるのは劉璋殿と馬岱さん。それから…」

「翠か」

 

残りは城門で戦っている馬超のみかと思ったが、実は厳顔には気になる人物たちがいる。

 

(そう言えば戦場に出てたか?)

 

厳顔が気になる人物とは益州の劉備と暗影と呼ばれる龍仮面を被る者。

戦が始まる前は一緒に城門前に居たはずだが気が付けば居なくなっていた。別の所で戦っているのか、それとも既に討ち死にしたか。

益州の劉備はともかく、暗影の実力からして簡単に死んでいるとは思えない。

 

「なあ紫苑よ、ちょっといいか?」

「どうしたの桔梗?」

「此方の陣営の話なのだが…戦場である2人を見かけたか聞きたい」

 

 

487

 

 

「せやああああああああああああああ!!」

「おおおおおおおおおおおおおお!!」

 

雄叫びが成都の城門前で響く。

 

「愛紗ちゃん…馬超さん」

「これは凄いわね」

「はい」

 

2人の戦いを見守っているのは桃香と護衛としての風鈴と恋がいる。

 

「…何か来た」

 

気配を感知した恋が右を見る。つられて右を向く桃香と風鈴。

 

「待てぇぇぇ!!」

「待つわけないでしょ。って劉備さん!?」

 

焔耶と馬岱であった。

 

「馬岱ちゃん」

「桃香さま、どうしてこのような所に!?」

 

総大将である桃香が戦場の真ん中にいるのに驚く。一番安全に居なければならない総大将が居れば誰だって驚くものだ。

 

「朱里ちゃんにお願いしたんだよ。この勝負の結末は…わたしがちゃんと見届けなきゃいけない戦いだって思ったから」

「劉備さん…ごめんなさい。たんぽぽ、姉様を止められなくて」

「気にしないで。戦いを止められなかったのはわたしたちも同じだし…何を言っても、馬超さんは退かなかっただろうから」

 

その結果が愛紗と馬超の一騎打ちだ。

 

「馬岱さま。その方は…!!」

 

馬岱を守りに来た西涼騎馬隊。

 

「劉玄徳殿だよ。でも、たんぽぽたちからは手を出さないで。それをしたら西涼の兵はこの戦いに泥を塗る事になっちゃうから。姉様に恥をかかせちゃダメだよ」

「はっ」

 

西涼騎馬隊は武器を下す。しかし馬岱をすぐに守れるように近くに待機したままだ。

 

「劉備さんもそれでいいよね」

「うん。わたしたちもこの戦いを見届けに来ただけだから。馬岱ちゃんたちに手を出すつもりはないよ」

 

全員の視線が愛紗と馬超の一騎打ちに集まる。

 

「おおおおおおおおおおお!!」

「せえええええええええい!!」

 

視線なんか気にもしない2人は青龍偃月刀と銀閃十文字槍を振るい続ける。

 

「姉様…負けないで」

「愛紗ちゃん」

 

桃香と馬岱はお互いに大切な人の無事を祈るしかなかった。

 

「桃香!!」

 

戦いを終えた鈴々と投降した厳顔を連れた北郷一刀たちが見たのはまだ戦いの音が止まらない愛紗と馬超の一騎打ち現場。

 

「あ、一刀さん」

「ご主人様」

「桃香も来てたのか。それに馬岱も」

「うん、朱里ちゃんたちにどうしてもって」

 

本当ならば総大将である桃香に安全な所に戻れと言うべきであるが愛紗を心配する気持ちを流石に否定できなかった。

周囲をよく見ると馬岱たち西涼騎馬隊の一騎打ちを静かに見ていた。どうやらこの場で乱戦にしようとは思っていないようだ。

これなら大丈夫だろうと思うが警戒を解くわけにはいかない。風鈴も恋も分かっていると思うが今一度、桃香を守るように頼むのであった。

頼み終わったら皆と同じように北郷一刀も一騎打ちを見守るのであった。

 

「隙ありっ!!」

「その程度で隙だと思うな!!」

 

愛紗の一撃に籠る気迫はいつもとは桁が違う。そして馬超も馬から降りて、お互いの間合いで壮絶な打ち合いを続けている。

辺りに響き渡る激しい音は、いつしか他の戦いの音さえ駆逐し、打ち合わせる他の刃も止めるほどだ。やがてこの戦場で行われるただ1つの戦いになる。

本当に愛紗と馬超の一騎打ちだ。彼女たちの勝敗によって全てが決まるかもしれない。

気が付けば星に連れられ、馬休と馬鉄も2人の一騎打ちを見守っていた。

 

「やれやれ、戦いはこっちの負けみたいだな」

 

一瞬だけチラリと周囲を見て馬超は厳顔や妹の馬休たちが負けたと理解する。

 

「それで? お前もここで槍を置くか?」

「冗談だろ。ここであんたに勝って、一矢報いてやるよ。益州軍に錦馬超ありってな」

 

戦には負けたからと言って、愛紗の一騎打ちに負けるつもりはない。最後の最後まで戦い抜く。

 

「そうでなくてはな。鈴々や紫苑たちも手柄を立てたようだ。この関雲長だけが手ぶらなど恰好も付かん」

「お互い、負けられない理由が増えたって事だな」

「全くだ。故に、私はこの一撃に全てを掛ける!!」

「それはあたしも同じだ。なら、行くぞ!!」

 

2人は大きく間合いを取ると、お互いに得物を真っすぐに構える。そして大きな雄叫びを上げながら同時に走り出した。

青龍偃月刀と銀閃十文字槍が交差した瞬間に決着がつく。

 

 

488

 

 

最後の激突の後、ただ一人その場に立っていたのは愛紗であった。

 

「私の勝ちだ。馬超」

「……ああ。お前たちの活躍はずっと噂で聞いてたけどな。まさか、本気のあたしにまで勝つなんて思わなかったよ」

 

馬超は大の字で倒れていた。

 

「どうする。このまま首を刎ねるか?」

「それを決めるのは私ではないよ。決めるのは…」

「愛紗ちゃん、馬超さん…!!」

 

首を刎ねるかどうかを決めるのは劉備軍の総大将である桃香だ。

 

「来たな、劉備」

「馬超さん…」

「負けたよ。気持ちいいくらいスッキリにな。そしてやるだけやったつもりだ…処刑でも何でも好きにしろよ」

「しませんよ。するわけないです」

 

彼女の言葉はハッキリとしていた。その言葉に甘すぎる。そして優しいという言葉が浮かぶ。

 

「お前はホント、変わらないのな」

 

葭萌関での桃香と対峙した時の馬超は怒りや戸惑いを叩きつけてたが、地面に大の字に寝転んだ馬超はまるで憑き物が落ちたみたいに爽やかな表情で笑って見せた。

 

「馬超さんも変わりません。あの平原で会った頃の…わたしが憧れたかっこいい馬超さんのままです」

「懐かしいな…ホント、懐かしいよ。せめて涼州が陥ちた後…徐州に落ち延びれれば、こんな事にはならなかったんだろうけどな」

 

そんな言葉はただの妄言だ。『もしも』の話にすぎない。

 

「もうその徐州もありませんけどね」

「そういやそうだ。でも…あの頃に戻れたらいいのにな」

「戻る事もやり直す事も出来ませんけど、わたしたちの関係を戻すだけなら出来ると思います」

 

過去には戻れない。過去は変えられない。だが未来はいくらでも可能性がある。

 

「馬超さん。もう一度、お友達になってくれませんか。わたしに力を貸してください」

「いいのか? お前にあんなひどいことを言っちゃったのに」

「言ったでしょう。その通りだって」

 

自分のやっている事は侵略行為だ。酷い事を言われる事を覚悟してきている。

 

「益州を侵略してるのは…曹操さんと同じ事をしてるのは本当の事ですから。それでも力を貸してくれますか。わたしに…ううん、わたしたちを慕ってくれる新野と益州の人たちのために」

「………そうだな」

 

小さく呟いてチラリと視線を向けたのは主香の隣に無言で控える愛紗だった。そして次に視線を向けたのは妹たちだ。

 

「あいつらにあんな顔をさせてばっかりなのも、いい加減キツいしな」

 

馬超を心配そうな顔で見る馬岱たち。自分がここで死んだら妹たちを悲しませる事になる。

既に色々と迷惑をかけてしまったのだから、これ以上は迷惑をかけるわけにはいかない。姉として今度は妹たちから迷惑をかけてもらいたいものだ。

 

「あたしの真名、あんたに預けるよ桃香。いや、桃香さま…だな」

「ありがとうございます翠さん」

 

お互い呼び合った真名を合図にして馬超のもとに弾かれたように駆け出した馬家の3人。本当に心配であったのだ。

 

「良かった…」

 

ホッと安心する桃香。

 

「見事な戦いだったぞ翠」

「桔梗まで負けるとは思わなかったな」

 

妹たちに支えられ立ち上がった馬超の元に近づいて厳顔は褒める。

 

「ははは、見事な負けっぷりだったぞ。あの鈴々という将、小さいがなかなかやる」

「鈴々ちゃんも本当にお疲れ様!!」

 

元気いっぱいの笑顔で桃香の返事に応える鈴々。

 

「さて、劉玄徳殿。勝者である張翼徳の命に従い、この厳顔、貴公に我が真名をお預けいたす。桔梗という我が真名、預かっていただけるだろうか」

「もちろんです。ありがとうございます!!」

 

これで成都での決戦は幕を閉じた。

 

「でしたら、残るは成都の劉璋殿だけですね」

「いや、それなのだが…」

 

厳顔が何かを言おうとした瞬間に男の声が響いた。

 

「この戦、まだ我らは負けていない!!」

 

成都での決戦はまだ幕を閉じていない。

男の声が聞こえた者たちの視線が成都の城門に向けられる。城門は硬く閉じたままであるが視線は更に上に上がる。

城門の上に立っているのは整った甘い顔の男であった。

 

「劉備…!!」

「え、わたし!?」

「あ、いや、そうじゃない」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回の更新は2週間後予定です。

次回にてついにオリジナル展開!!
益州の劉備が何かを起こします!!


482
成都での決戦!!
読むと分かるかもしれませんが原作と同じ流れなんですよね。


483
軍師陣営。豪華メンバーでお送りいたしました。


484
愛紗と馬超の一騎打ち!!


485
紫苑たちside。
ここでは原作でも紫苑の弓の腕を披露したシーンでした。
俵藤太の幕間に似たような感じだと思ったので組み合わせてみました。
紫苑も俵藤太も弓の腕は達人級ですね。


486
厳顔戦です。
482でもちょっと触れましたが彼女が持っている武器は『豪天砲』。
最初は彼女の武器を見て違和感というか驚きでした。
あれ、大砲なんて三国志にあったっけ?という風に。
私の知識不足かもしれませんが確か三国志に大砲なんて無かったと思います。
北郷一刀も『豪天砲』を見て「大砲なんてあるの!?」みたいなニュアンスで驚いていましたからね。
正直に言って厳顔の武器があればどの戦場も勝てそうに思えるのは自分だけでしょうか。


487
愛紗と馬超の一騎打ちに佳境!!
原作でもこのシーンは胸熱展開でしたね。


488
一騎打ち 決着!!
愛紗の勝利でした。そして桃香たちの勝利が決まった瞬間…ではありません。
まだまだこれからです。これからがオリジナル展開です。
空気だった藤丸立香たちもやっと活躍します。
ついに益州の劉備が動き始めます。

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